横浜キヤノンイーグルス(D1 カンファレンスB)

ファフ・デクラーク、ついに先発出場。田村優とコンビ形成

開幕戦を勝利で飾った横浜キヤノンイーグルスは今節、セカンダリーホストエリアである大分県でホストゲームを開催する。キックオフはクリスマス当日にあたる12月25日(日)正午。「何よりも勝つことが大事」と山菅一史が話すように、横浜キヤノンイーグルスは昭和電工ドーム大分で開幕2連勝を狙う。

いよいよ、南アフリカのスーパースターがスタートからピッチに立つ。今季の新戦力の目玉であるスクラムハーフのファフ・デクラークが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦の先発メンバーに名を連ねた。

日本デビュー戦となった前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦ではチームに合流間もない状況を鑑み、コンディション面を配慮されたため、ベンチスタート。後半14分に途中出場でピッチに立つと、攻守両面でスター選手たるゆえんを発揮した。

後半17分には先読みで相手の危険な攻撃をかぎ分け、絶妙なポジショニングから相手のアタックを阻止。「危険なスペースカバーもスクラムハーフの仕事」とはファフ・デクラークの弁だ。

さらに後半26分にはラックからのボールを持ち運び相手の目線を変えると、コリー・ヒルのトライを演出。「確実性を重視してパスを出した」と試合後のファフ・デクラークは涼しい顔でそう振り返った。

まさに“名刺代わり”のハイパフォーマンス。クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦に向けた練習ではスタンドオフ田村優との連係も冴え渡り、チームのステージが一段引き上げられたことを印象付けた。

対戦相手のクボタスピアーズ船橋・東京ベイには南アフリカ代表の同僚マルコム・マークスがいる。今節に向けて意気込みを問われたファフ・デクラークはこう言って語気を強めた。

「クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、コベルコ神戸スティーラーズとはまた違ったチャレンジをしてくる。相手は優秀なトップクラスの選手がそろっているので、しっかりと相手の分析をして試合に臨みたい」

ラグビー強国からやってきたファフ・デクラークの一挙手一投足からは、一瞬たりとも目が離せない。

(郡司聡)

南アフリカ代表、ファフ・デクラーク選手


クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

万感の思いで踏みしめた緑の芝。「不器用な僕にできること」

“天敵”東京サントリーサンゴリアスを18年ぶりに下し、歓喜に沸いた開幕戦。チームが歴史的勝利を挙げたその日、万感の思いを胸に緑の芝を踏みしめた男がいた。

「リーグワンで1試合もプレーできなかった同期の選手もいれば、僕より若いのに行き場を失ってしまった選手もいます。おこがましいですが、僕が頑張っている姿を見せることで、そういった選手たちを少しでも勇気づけることができればと思っています」

加藤一希に所属先・宗像サニックスブルースの休部が告げられたのは、昨季が開幕してすぐのことだった。ディビジョン3から2、そしてディビジョン1への昇格という未来希望図を描こうとした、まさにその矢先。「引退」の2文字が、リアルに脳裏をよぎった。

「有名選手でもない僕に(他チームから)オファーがくるとは思えませんでした。友だちのところで働かせてもらいながら大学院に通って……など、ラグビーを辞めたあとにどうするかをずっと考えていました」

そんな加藤に手を差し伸べたのがクボタスピアーズ船橋・東京ベイだった。今年7月からの2カ月間、トライアウト生として練習に参加。一縷の望みを、そこに懸けた。

「僕には失うものは何もありません。本当に全力で取り組みました」

道は、拓けた。トライアウト期間終了後、加藤は正式に加入した。ラグビーを続けられる喜びを噛みしめ、今季開幕のときを待った。

「不器用な僕にできることと言えば、一つひとつ手を抜かずに全力でやる、それしかありません。入団テストでは、そういったところを見ていただけたのかもしれません」

後半26分から出場した開幕戦では気負い過ぎ、緊張感が足手まといとなった。続く第2節、12月25日の横浜キヤノンイーグルス戦。より深まったラグビーへの愛情。そして、チーム、さらにはラグビーに取り組める環境への感謝の念。それらを表現するために、男は再びグラウンドへと向かう。

「相手にはたくさんのいい選手がいますが、まずは自分にフォーカスして、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのラグビーをできるように臨みたいです。チームには本当に感謝しています。僕が何らかの力になって、優勝という恩返しができればと思っています」

この不安定な現代にあって、絶望的状況はいつも自分の意思とは無関係にやってくる。でも、きっと大丈夫。頑張っているその姿。見てくれている人が必ずいる。

(藤本かずまさ)

トライアウトから這い上がってきた加藤一希選手(中央)



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