2022.12.27NTTリーグワン2022-23 D1 第2節レポート(横浜E 27-27 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第2節 カンファレンスB
12月25日(日) 12:00 昭和電工ドーム大分 (大分県)
横浜キヤノンイーグルス 27-27 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

残り5分、S東京ベイの猛追。忍耐の先の痛み分け

横浜キヤノンイーグルスのファフ・デクラーク選手(左)と話し合う田村優選手

前半の試合展開を目の当たりにして、昨季のあの一戦を想起したファンもいたかもしれない。NTTジャパンラグビー リーグワン2022 ディビジョン1第12節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイは、まるで無限ループのようなペナルティーの渦に陥り、横浜キヤノンイーグルスに敗れ去った。今回もまた、(クボタスピアーズ船橋・東京ベイにとって、そしてチームのファン、通称「オレンジアーミー」にとって)あの痛かゆい時間が再現されてしまうのか、そう感じた観客は決して少なくなかっただろう。

「前半はすごく良かったです。ほぼ(相手を)コントロールできていました」

先発出場したファフ・デクラークがそう語ったとおり、試合開始早々に横浜キヤノンイーグルスはゲームを掌握。開始13分で10点リードとし、まさに“相手の光を消す”戦いを展開して試合をリード。ペナルティーに手足を取られたクボタスピアーズ船橋・東京ベイは、暗闇の中でもがき続けた。

だがその姿は、いかなる荒波に打たれても決して崩れることのない、強靭なテトラポッドのように美しくもあった。それでも後半、残り時間8分を切った時点で得点差は10。万事休すかと思われた、そのときだった。

「とにかく忍耐強さが必要な試合だった」

フラン・ルディケ ヘッドコーチは、そう戦いを振り返った。あきらめたら、そこですべては終わる。しかし、あきらめかけた自分に打ち勝つことは、最も偉大な勝利でもある。ラスト5分で見せた怒とうの猛追。両者痛み分けという結末には、低迷期から不撓不屈の精神で這い上がってきたクボタスピアーズ船橋・東京ベイのチームとしての生き様が表れていた。

「おそらく勝てた試合だったと思います。同点に終わってすごく悔しいですが、今日の試合で(チ-ムは)自信をつけられたと思います。(南アフリカ代表で同僚の)マルコム・マークス選手? イヤがらせはできませんでしたが、チームとしては、ああいった重要主力メンバーをしっかりとコントロールして抑えることができたと思っています」(ファフ・デフラーク)

「なかなか首を絞め切れなかったというか、そこが自分たちのチームとしての若さかなと思います。こういう経験をしないと、悔しさであったり、自信も生まれてこないと思うので、いいレッスンになったと思います」(田村優)

苦杯はいずれ必ず血肉となり、その経験は人や組織をより強固なものにする。それは上記二人のコメントにあるように、相手の横浜キヤノンイーグルスも同様である。リマッチは3月18日の江戸川区陸上競技場。戦いの幕は、まだ開いたばかりだ。

(藤本かずまさ)

横浜キヤノンイーグルス

横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督(左)、梶村祐介キャプテン

横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介監督

「最後にするっと勝ちが逃げていってしまいました。それでもポジティブな部分もあったし、次の東京サントリーサンゴリアス戦に向けてまた、いいスイッチが入ったなと思っています。あと、クリスマスプレゼントで(小倉)順平にスパイク買ってやろうかなと思っています(笑)」

──「ポジティブな部分もあった」とお話しいただきましたが、具体的にはどういった手ごたえを感じたのでしょうか。

「クボタスピアーズ船橋・東京ベイの強いフォワードに対して、前半しっかりとタフに戦っていました。また今日のゲームプランの遂行力というところは素晴らしかったと思います。勝てなかったけれど、成長を感じている選手はいると思います。ただ、ここで勝ち切るチームじゃないといけないと思います」

──大分の会場でも赤いジャージーを着ているファンの方が増えてきました。ご覧になっていかがだったでしょうか。

「大分のファンの方たちも、ホームのチームだという思いで応援してくれるので、すごく力になります。ただまだまだ、もっともっと楽しいラグビーの魅力を伝えられれば、ファンも自然に増えてくると思います。そうなれるように、まずはいいゲームをして、横浜キヤノンイーグルスのファンをどんどんと増やしていきたいと思います」

──昨季はトップ4をあと一歩のところで逃してしまいました。今季の目標と、それに向けてオフシーズンにどういった取り組みをしてきたか、そしてこれからの試合の意気込みをお願いします。

「昨季はトップ争いをしていたのですが、最後のほうに失速感がありました。そこは本当に選手層だと思っています。いま、どんどんとその層は埋まってきています。別府でもいいキャンプができましたし、徐々にチーム力が上がってきています。

あとは、こういう接戦という経験がまだまだ少ないチームなので、経験値をしっかりと増やして、ラグビーのナレッジが上がってくれば、ゲーム状況によって選択するプレーの判断だったり、時間の使い方だったり、ディシジョンメイキングのオプションだったり、そういったところのレベルが上がってくればもっともっといいチームになっていけると思います」

横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介キャプテン

「自分たちとしては、80分間プランをしっかりと遂行できて、内容的にはさほど悪くなかったと思います。ただ、要所で簡単にスコアを与えてしまったり、規律の部分で少し守れない部分があったりと、初戦に出た反省の部分を自分たちがコントロールできずにまた同じ失敗をしてしまったなという部分がありました。次の試合に向けてまた課題をもらいましたし、(今後も)こういった試合が続いてくると思うので、競った試合をしっかりと勝ち切れるように、もう一度しっかりトレーニングというところから質を高めていきたいと思います」

──大分の会場でも赤いジャージーを着ているファンの方が増えてきました。ご覧になっていかがだったでしょうか。

「自分たちとしては合宿も大分でさせていただいています。本当に温かく皆さんに迎え入れていただいています。ただ、今日も含め、まだ気持ちのいい勝ち方のゲームを皆さんにお見せできていません。これからまだ何試合か大分でやらせていただくので、見ていて気持ちいいラグビーを皆さんにお届けできたらなと思います」

──次の東京サントリーサンゴリアス戦に向けてどういったところを修正して、またどういった良さを生かして臨みたいですか。

「まずポジティブなところは、今日のようにキックを中心としたいろんなラグビーができるというのが自分たちとしても自信が持てたので、いろんなラグビーに対応していけるチームになってきたのではないかと思います。

反省点で言えば、規律の部分。トップチームとの戦いの中でペナルティーを犯してしまうと簡単に自陣に入られてしまうので、そこは前回の試合からも学びましたが、引き続き修正していきたいと思っています」


クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「引き分けという結果に関しては、本当にチームの力だと思います。先ほどロッカールームでも言っていたのですが、試合をとおして我慢して忍耐強く戦っていたところ、8分という残り時間が少ないところで相手に取られたあと、最後の最後で(私たちが得点を)取れたところに今日の試合内容が示されていると思います。また、横浜キヤノンイーグルスもすごく賞賛されるべき、いい試合だったと思います。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのリーダー、選手たちのことも褒めたいと思います。チームを一つにまとめたところ、今週ずっと(一貫性を持って)取り込んでいたところ、正しいエリアでプレーして点数に変えていくところ。タックルや、プレッシャーが掛かったところで点数に変えられていました。キックゲームでの課題や学ぶべきところはできましたが、カウンターからあまりつなげられないところもありました。それでも(先週の東京サントリーサンゴリアス戦とは)違うスタイルで点数を取ることができたので、評価したいと思います」

──昨季2戦目の横浜キヤノンイーグルス戦では後半にペナルティーを重ね、敗戦を喫しました。そこで得た課題、そして今回の試合に向けて取り組んできたことは?

「昨季というよりも、先週の東京サントリーサンゴリアス戦と比べるとチームの形と試合の形が違うという点で、先週末の試合では前に出てモーメントを生んで、そこから点数に変えていくのがうまくいきましたが、今回は取れるところで取っていく、そういう我慢強さなどが出すことができた試合だったと思います。

今日の試合に関しては、とにかく忍耐強さが必要な試合で、(ファフ・)デクラーク選手などの、エリアをとるキックがすごく機能していて、私たちはペナルティーもとられました。相手をすごく賞賛すべきだと思います。私たちにはかなりプレッシャーが掛かっていました。

ただ、その中でも、取れるところで点数を取っていき、最後は同点にもっていきました。また、勝つことができたかもしれないという局面もありました。勝てなかったのは残念ですし、ハッピーではありません」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「同点ということで、結果に関してはすごく残念というか、難しい結果になったと思うのですが、フラン(・ルディケ)ヘッドコーチが言ったように、最後しっかりスコアをできて同点にもっていけたというのはチームの成長だと思います。先週の試合からもしっかりと一貫性を持ってこの試合に臨んでいたところだったので、もう少ししっかりと日々の練習から取り組んでいくことが大事かなと思っています。

今回は『大分に自分たちのいい足跡を残していく』というところをテーマにして臨んだ中で、別府キャンプもしていて大分にはすごく縁があるので、そういう意味ではすごくいい試合ができたかなと思います。ここでしっかりと切り替えて、年始の花園近鉄ライナーズ戦に向けていきたいなと思います」

──昨季2戦目の横浜キヤノンイーグルス戦では後半にペナルティーを重ね、敗戦を喫しました。そこで得た課題、そして今回の試合に向けて取り組んできたことは?

「昨季の試合はあまり参考にしていません。選手も変わっていますし、なかなか比較というのはできないのですが、ペナルティーはどの試合も大事になってくる部分だと思います。今日もペナルティーが少し多かったと思うので、修正してきていきたいと思います」

──「大分に自分たちのいい足跡を」とのことですが、選手の皆さんでどういうお話をされたのか、教えていただけますか。

「キャンプを張らせていただいて、もうここ3年くらい別府には来させてもらっています。テーマを決めるときにいろんな案が出たのですが、こうやって遠征して、自分たちが何を残せるかというところがすごく重要になってくると思います。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのラグビーというものをしっかりと見せてファンの方たちに喜んでもらうことが一つの大きなテーマだと思いますし、その中で大きなフォワードだったりバックスの展開だったりを見てもらうというのが大事になってくると思っています。

今日の試合で全部を見せられたのかと言うと難しい部分もあると思うのですが、これからの行動や、できる範囲でファンサービスをしっかりとしていきながら、そういったところでもいい足跡を残していきたいなと思っています」

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