2022.12.27NTTリーグワン2022-23 D2 第2節レポート(S愛知 37-31 日野RD)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第2節
2022年12月25日(日) 14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 37-31 日野レッドドルフィンズ

ピッチ内外で深まる適応。ラーメンをパワーに正確な右足で歓喜を生む

プレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞、豊田自動織機シャトルズ愛知のティム・スウィル選手

クリスマスにパロマ瑞穂ラグビー場に集まった観客は、偶然にも1,225人。その全員が熱くなるような試合を両チームは演じたが、軍配が上がったのは豊田自動織機シャトルズ愛知のほうだった。

前半の豊田自動織機シャトルズ愛知はミスが多く、相手の圧を受けてしまい試合の主導権を握れない。立て続けにトライを奪われ、7対23というスコアで前半を終えた。しかし、「死に物ぐるいで」(山口知貴キャプテン)後半に向かうと、前半に受けていた圧を見事に押し返し、後半34分で逆転に成功。3分後にリードを奪われたが、すぐに再逆転し、最終的には37対31で開幕連勝を果たした。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは、6本のキックをすべて成功させた、南アフリカ出身のティム・スウィル。今季からチームに加わり、開幕戦でデビューを果たしたが、「開幕戦はキックの面でうまくいかなかった」(ティム・スウィル)と反省を口にしていた。しかし、それも1週間で完璧に修正。ホストゲームが続いたアドバンテージも生かしながら、ゲームメークの面でもチームに貢献し、劣勢に立たされていたチームに勢いをもたらした。

その正確なキックはもちろんのこと、相手を振り切る走力や、ボールの配球力も武器としている29歳。過去の故障もあって、来日前後は多くの苦労があった。しかし、キックと同様に日本の環境にも適応。「ラーメンが好きです(笑)。南アフリカから最近来日したガールフレンドもラーメンが好きで、クリスマスシーズンに彼女と一緒に過ごせることができてよかった。彼女のおかげで今日のプレーができたと思います」と微笑ましく語ってくれた。真摯にラグビーに向き合いながら、日本での生活を楽しむ姿を見ると、今後の期待も増すばかりだ。

ディビジョン1昇格、日本一を狙うには、彼の正確無比なキックは必要不可欠。2023年も彼の右足から多くの歓喜が生まれることは間違いないと確信させてくれるような、素晴らしいパフォーマンスだった。

(斎藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、山口知貴キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「まずは、メリークリスマス(笑)。タフな戦いで僅差のゲームでしたが、勝点4を取れたことに満足しております。内容を振り返ると、反省すべきところはもちろんありますが、シーズン序盤なので、すべてがうまくいくとも思っていないです。勝てて課題を得られたところはポジティブに捉えていいと思っています。本日はありがとうございました」

──劣勢だった前半を振り返って。

「前半はわれわれが準備してきたことがまったくできなかったと思っています。その要因として、日野レッドドルフィンズさんのセットプレーやディフェンスのブレイクダウンのところで、自分たちが思いどおりにできなかった。そこが前半の反省点かなと。ただ、組織として崩されたシーンはあまりなかったので、修正はできるかなと思っていました」

──(前半を終えて)7対23というスコアはどのように捉えていましたか?

「射程圏内かなと思っていました。前半は自分たちのエラーから失点につながっていることもあったので、流れを引き戻せれば、十分に立て直せると思っていました」

──流れを引き戻すために修正したところは?

「われわれはしっかりとしたアタックをするチームスタイルでやっていますので、まずはシンプルにボールを前進させていくこと、それを継続していくことにフォーカスしました」

──後半の内容について手ごたえは?

「後半に見ていただいたラグビーがわれわれの目指しているラグビーで、あれをすればこのリーグでも戦っていけると考えていますので、さらに自分たちがやるべきことに対する自信をもてたと思います。昨季やそれ以前の結果、今季のプレシーズンを振り返っても、自分たちがディビジョン2で通用しないとは思っていません。ですので、この結果に大きな喜びがあるかというとそうでもなくて、自分たちがやってきたことへの自信を再確認できました」

──次節に向けて。

「次の相手の浦安D-Rocksさんは、非常に戦力の整っている強豪チームだと思っています。われわれはそういうチームに対して、競って戦い切るというビジョンを掲げて準備してきました。今日出場していないメンバーも含めてすごくいいコンテスト(競争)、雰囲気でやっていますので、浦安D-Rocks戦に向けてではなくて、この3週間でもう一度高め合うために、チーム内で競争し合うことにフォーカスしていきたいと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
山口知貴キャプテン

「えー、メリークリスマス(笑)。まずは勝点4を取れたことが良かったと思います。反省すべき点もたくさんありますが、プレーしていて、また交代して途中からベンチで見ていて、今日の試合で(チームとして)一つステージが上がったというか、戦術やスキルも大事な部分ですけど、死に物ぐるいで勝ちを狙いにいくというメンタル面のレベルが上がったと思います」

──日野レッドドルフィンズに抱いた印象は?

「ブレイクダウンのレベルというのが、先週対戦した清水建設江東ブルーシャークスさんと戦ったときとは違いました。前半はそういうところで受けに回ってしまったと思います。ハーフタイムにみんなで『死に物ぐるいでいこう』と話し合って、特にフォワードからやっていこうと。日野レッドドルフィンズさんは後半に失速しやすいという分析もあって、それを踏まえても後半は良いラグビーができたと思います。ブレイクダウンのところも圧倒できたと思います」

──個々のミスやペナルティーが多くなってしまったが?

「相手の圧に負けてミスした場合と、ただただミスした場合とありました。ただのミスは自分たちで直していくべきですが、相手の圧によってのミスは、こちら側が相手に圧を掛けることができていないから起きると思うので、後半のような戦い方ができれば、相手の圧が減って、ミスも少なくなると思います」

──後半、相手に圧を掛けることができた要因は?

「スキルやフィジカルというよりはマインドの部分が大きいと思っていて、ブレイクダウンで相手を倒して、(メンタル面で)支配するというマインドで後半はできたことが要因だと思います」

──劣勢の中でも選手間同士で鼓舞する姿が印象的でした。

「もちろん、どのチームも逆転すれば盛り上がると思いますが、劣勢のときにどういう声かけをするか、その盛り上げが必要なのか、エナジーを上げるよりかは本質的な話をしたほうが良いのではないかというところはコントロールしないとダメだなと思います」

──浦安D-Rocks戦に向けて、また競争が始まります。

「キャプテンでも競争の中に身を置いて、誰が出てもリスペクトをもちますが、自分がポジションを取りにいくという意識で3週間取り組みたいと思います」

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチ(左)、オーガスティン・プル共同キャプテン

日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ

「一言で言うと非常に残念な試合でした。前半は良い形でいけた部分と、途中から受けに回ってしまったことで、80分間戦うアグレッシブさがまだまだ足らないと思いました。中にはポジティブな部分もたくさんあったのですが、やっぱり勝利に結びつけなければいけないというところで、いくつかのミスであったり、エラーを犯してしまったりしたことが、最終的な結果につながったと思います。今年はこれで試合は終わりですけど、1月からのシーズン再開に向けて、また立て直してやっていきたいと思います」

──前半を振り返って。

「そんなに立ち上がりは良くなかったですが、セットプレーを起点に立て直すことができて、われわれの形である、オフロードやアタックができていました。ただ、一貫性を持ってそれをやり続けられないといけないですし、後半に向けては、やはり豊田自動織機シャトルズ愛知さんも盛り返してくるだろうという中で、『もう1回われわれがやってきたことをしっかりやっていこう』と話をして、後半に向けて送り出しました」

──後半、受けに回ってしまった要因は?

「豊田自動織機シャトルズ愛知さんのボールキャリアや、キープレイヤーをしっかり止めていこうとしたのですが、後半に向けて、彼らも圧力や強度を上げてきたところで受けに回ってしまったと思います。もちろん、われわれの大事な局面でのミスが響いているのは間違いないです。それらが要因で、試合の中で少しずつ(戦局が)変わっていったと思います」

──豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦した印象は?

「われわれとしてはディビジョン3から昇格してきたチームという認識はまったくなく、元々トップリーグにも所属されていたチームなので、しっかりリスペクトを持って臨みました」

──次節に向けて。

「いろいろやることはありますが、まずはここでさらに受けに回るのではなくて、やはりチームとしても積極的に、アグレッシブにアタックとディフェンスをやっていく。そういうマインドセットをしっかりもって、残りのシーズン臨まなければ変わらないと思います」

日野レッドドルフィンズ
オーガスティン・プル共同キャプテン

「箕内(拓郎)ヘッドコーチがおっしゃったとおり、選手としても、受けに回ったところがあって、自分たちで自分たちの首を絞めてしまうような試合になってしまいました。ただ、シーズンは長いので、ここからさらに良くなっていくためのスタートにしていきたいと思います。しかし、全体的には本当に残念です」

──前半の収穫ポイントは?

「前半はアティチュード(姿勢)のところがすごくよかったと思います。エリアマネジメントもしっかりできていて、脱出もしっかりできていたので、リスクのあるところで戦わなくてすんでいたのも良かったです。また、前半は僕らが追い風だったので、そこも使いながらディフェンスして、ターンオーバーしたボールからのアタックが機能していたかなと思います」

──後半に入って押し込まれる中、選手間で話したことは?

「後半は規律の面で、オフサイドなどのペナルティーが多くなってしまいました。豊田自動織機シャトルズ愛知さんのポジショニングがうまくて、良いところにボールを蹴っても取られて、そこから大きなランナーに走られてしまった形でした。チームとしては大きな学びになったと思います。点差をつけて勝っているところで、さらに引き離せなかった甘さも出たと思いますし、最初にも言ったように自分たちで自分の首を絞めていた結果になったと思います。ここからは良くなっていくだけなので、もっと勝っていきたいと思います」

──試合後の円陣で中心となって話していましたが?

「『この敗戦を学びに変えてもっともっと良くなっていこう』という話をしました。また、『ポジティブに捉えて、チームとしてまとまっていこう』という話もしました」

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