NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第3節 カンファレンスB
2023年1月8日(日) 12:00 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)
花園近鉄ライナーズ 12-77 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
圧巻のマルコム・マークス劇場。聖地でハットトリックの「世界最強フッカー」が見せつけた万能性
ディビジョン1昇格後、初のホストゲームに挑んだ花園近鉄ライナーズが1月8日、東大阪市花園ラグビー場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイを迎え撃った。開幕から2連敗を喫し、昇格後初勝利を目指した花園近鉄ライナーズだったが、今季のディビジョン1では最多となる13,664人の観衆が見つめる中で、圧巻の攻撃力を披露したのはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。一つのペナルティトライを含めた11トライの猛攻で、花園近鉄ライナーズを圧倒した。
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフィジカルにやられて、大差が付いてしまいました」
屈辱的な大敗に水間良武ヘッドコーチは脱帽していたが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの強力フォワード陣に関しては警戒していたはずだった。そんな分析と対策をモノともしなかったのは「世界最強フッカー」として知られる南アフリカ代表のマルコム・マークスだ。
鮮烈なトライショーの口火をマルコム・マークスが切る。前半6分にラインアウトからモールで押し込み、この試合最初のトライ。そして、天理大学時代のチームメートであるシオサイア・フィフィタとの初対戦に燃える藤原忍が同10分にトライを決め、試合の主導権を引き寄せたクボタスピアーズ船橋・東京ベイが同14分、フロントローの流動性で魅せた。
敵陣右サイドでマルコム・マークスが絶妙のキック。「フォワードとしてはキャリーしたほうが良かったかも知れないですけど、裏のスペースが空いていた」(マルコム・マークス)。そのボールを受けたオペティ・ヘルがタッチラインを踏んでいたとTMO(テレビジョンマッチオフィシャル)で判断され、海士広大のトライは取り消されたが「フロントロー(1番、2番、3番)がミックスしてそういうふうにできるのは楽しい」とマルコム・マークスは胸を張った。
20分に、防戦一方の花園近鉄ライナーズのセミシ・マシレワにトライとゴールキックを決められ、22分にはオペティ・ヘルがシンビンになり、苦しい時間を強いられるかに思われたクボタスピアーズ船橋・東京ベイであったが、28分にはマルコム・マークスが自身二つ目のトライで花園近鉄ライナーズを突き放した。
前半39分にも自身がスローを務めたラインアウトからモールを組み、「マークス劇場」の締めくくりとなるハットトリックを達成。前半だけで3トライを奪ったマルコム・マークスは後半4分にお役御免となったが、ラグビー界の「聖地」でその万能性を見せつけた。
ビジター3連戦を2勝1分で乗り切り2位に浮上したクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。小気味良いパスと的確なサポートに加えて2トライを奪った藤原はすでに次戦を見据えていた。「いいところだけじゃなかったので、自分たちの悪いところもしっかりとみんなでミーティングして次の試合で出していきたい」(藤原)。「オレンジ旋風」の勢いはそう簡単には止まりそうにない。
(下薗昌記)
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフィジカルにやられて、大差が付いてしまいました。ただ、選手たちはよくやってくれました。試合はまだまだ続くので、この悔しさを次週以降につなげていきたいと思います」
──ホストゲーム開幕戦ということで、多くのファンが来場していましたが、いかがですか?
「すごくうれしかったですね。クラブの理念として『感動』というのがあるので、今日の試合前に、『自分たちは感動するラグビーをしよう。そして、来てもらった方に感動してもらえるようなラグビーをしよう』とみんなに伝えて送り出しました。そういった部分もいくつかは出せたので、今回13,000人ぐらい(13,664人)ですかね。次はそれ以上(の方に)来てもらえるようになればいいなと思います」
──先ほどの話にあったように、試合展開は厳しかったですが、ファンの方々の手拍子やハリセンの音など背中を押すような応援もありました。
「私はスタッフなので、それがどれだけ選手に届いたかは分からないですけど、すごい声援など、ファンの(方が出してくれる)音はすごかったですね」
──ディフェンスで77点を取られたのは単純に個々の部分なのか、システムを見直した部分もあるのでしょうか?
「システムのところですね。システムを見直しましたけど、プレッシャーがあってやっぱりボールのほうに寄ってしまった。このレベルに慣れていくしかないですね」
──少しずつけが人も帰ってきてメンバーもそろってきましたが、その辺りのかみ合わせはいかがですか?
「これからですね。クボタスピアーズ船橋・東京ベイも開幕から3試合目で、相手コーチとも試合前に話したんですが『ようやくコンビネーションがかみ合ってきた』というような話をしていました。われわれとしても、いまいる選手でベストなパフォーマンスを出していくのは当然ですけど、選手がそろってずっと同じメンバーで出られればコンビネーションも合ってきて、もっと感動するようなラグビーをお見せできると思います」
花園近鉄ライナーズ
ウィル・ゲニア ゲームキャプテン
「コーチがおっしゃったとおり、やはりいまの悔しさを来週以降の練習につなげていきたいんですが、やはりこれだけフィジカルの面で圧倒されると、やりたいことはまったくできません。ディフェンスでも圧倒されたし、アタックでもそう。テンポを出していきたいとわれわれは思っていたんですけども、あれだけゲインラインを取られて、フィジカルでやられて、ブレイクダウンでもやられていると、やりたいことはできません。なので、そこに焦点を当てて、これからは努力していきたいです。やはり77点も取られるとさすがに落ち込みます」
──厳しい状況でも、ファンの方々の手拍子やハリセンの音など、背中を押すような応援もありました。
「サポートをもちろん感じました。いいプレーをしたら喜んでくださっているのも感じましたし、うまくいっていない時間帯は頑張って一緒に応援してくれているのを感じました。われわれは幸運なことにすごく熱いファンが付いていますので、その熱いファンにしっかり自分たちのラグビーを見せたいです」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「今日の結果に関してはすごくハッピーですし、いいパフォーマンスだったと思います。80分間の努力が見えた試合でしたし、リザーブメンバーを含めてスタートの全員がしっかり貢献してくれたことでああいう結果になったと思います。自分の中で一番満足がいったところは、プロセスに集中して、プロセスを追求してできたところ。スコアボードなどに関係なく、ハードワークをしてくれたところは非常に満足しています。ただ、課題はあるので、引き続き向上できるように進めていきたいと思います。東大阪市花園ラグビー場という会場で多くのクボタスピアーズ船橋・東京ベイのファンの方々も来られて、アウェイですけど、自分たちの“土台”として位置付けている場所に多くの方に来てもらえて今日は非常に良かったです」
──前節から日にちが空きましたが、一番注力してきたことを教えてください。
「まずは自分たちにフォーカスしてやってきました。横浜キヤノンイーグルス戦も非常に良いチャレンジだったんですけど、そこでの改善点や、良くするところを良くして、花園近鉄ライナーズに関しても質の高いラグビーをしているのは知っていたので、リスペクトを持ちながら、自分たちがやるべきことを、特に最初の10分間は遂行できたので、こういう結果につながったと思います。どれだけボールを保持してラグビーができるのか、アタックマインドをもちつつというところが、そこも横浜キヤノンイーグルス戦でできなかったことが、今日はしっかりとできた。そして立川(理道)キャプテンも言っていましたが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのラグビーができたところが大きいと思いますし、そういうところもいい結果につながったと思います」
──開幕戦から藤原忍選手を先発で起用されています。昨季はリザーブが多かったですが、彼の成長や今季の活躍をどうご覧になっていますか?
「藤原選手は確実に成長しています。プレシーズンでもハードワークをしてくれてスタートの立場を勝ち取りました。その部分も毎試合どんどん良くなっていますし、そういう成長が見られてうれしいです」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン
「試合内容は本当にヘッドコーチと同じというか、ゲーム中も同じようなメッセージを言っていたので、スコアボードを意識するわけではなくて自分たちでもやってきたことを、試合に出していくことを言い続けた結果がこういう点差になったので、そこに関してはすごくうれしく思います。ただ、反省する部分はありますし、次の試合に向けて修正する部分はしっかりと修正していきたいと思います。あと、本当に関西にもたくさん事業所があって、その方々がたくさん来てくれたので、ホストゲームのような感覚で試合ができましたし、たくさんの人たちにクボタスピアーズ船橋・東京ベイのラグビーを見せられて良かったと感じます」
──先ほど、スコアボードを意識しないという言葉がありました。とはいえ、77点という得点についてはどのように感じていますか。今後にはずみが付くようにも思いますが?
「スコアボードを意識しないというのは、(点差が開いているからといって)ゲーム中に雑なプレーにならないようにしようと、みんなに統一したい思いはありました。自分たちがやりたいことをやろうと思えば、スペシャルなプレーではなくて、やってきたことを出す。そう言い続けてきた中だったので、その中でこれだけ点が取れたのは良かったと思います。でも、ロッカールームに帰ってもみんなが次の反省点を話し合っていたので、そういうマインドセットはすごくいいのかなと思います」
──今日はゴールキックがすべて決まっていましたが、そのあたりも次に向けて大きいのでは?
「ゴールキックを蹴る選手たちは本当にこのチームの中で一番上手な人が蹴っているので、そこの責任はあると思いますし、自分たちもそこは信頼して任せているので、今後も決め続けてほしいと思います」