2023.01.16NTTリーグワン2022-23 D1 第4節レポート(静岡BR 22-34 BR東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第4節 カンファレンスA
2023年1月15日(日) 14:00 ヤマハスタジアム(磐田) (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 22-34 リコーブラックラムズ東京

勝負を分けた15番の明暗。マット・マッガーンが古巣相手に大暴れ

体を大きく傾けるフォームが特徴的なリコーブラックラムズ東京のマット・マッガーン選手のプレースキック

静岡ブルーレヴズとリコーブラックラムズ東京のフィジカル対決。期待どおり、観ている側も思わず体に力が入る激しい戦いとなったが、相手が14人になった時間帯にうまく得点を重ねたリコーブラックラムズ東京が34対22でホストチームを退け、価値ある2連勝を飾った。

中でも活躍が光ったのが、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたリコーブラックラムズ東京の15番(フルバック)、マット・マッガーンだ。トライが一つ、コンバージョンゴールが二つ、ペナルティゴールが5つで計24得点。成功率もトライ後のコンバージョンキックが2/3、ペナルティキックが5/6と左足のキックが冴えわたった。

その高いパフォーマンスに対してマット・マッガーン本人は、「自分が誰なのか、強みは何なのか。チャンスが回ってきたらスターティングでもベンチでもそれをしっかりと見せるということにフォーカスしています」と冷静に分析する。

前半36分の自身のトライにつながった場面では、新ルールの「50:22」(自陣の内側からボールを蹴って、相手陣の22mラインの内側でバウンドしてタッチになった場合、キックしたチームのラインアウトで再開できる)が適用される見事なキックを見せたシーンも今節のハイライトとなった。 「(50:22のキックは)かなり練習はしていて、それが使えるポジションだったので。準備が良かったと思います」(マット・マッガーン)と、ボールの回転を工夫した正確なキックで形成を一気にひっくり返した。

マット・マッガーンが2017年に来日して最初に所属したチームがヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)。ミックスゾーンでチームOBの五郎丸歩氏と再会した際には、満面の笑みを浮かべながらハグを繰り返し、記者たちには「僕のキックの先生です」と紹介した。

ヤマハスタジアムについても「良い思い出があります。戻ってこられて楽しいし、うれしいです」と語り、古巣で成長した姿を存分に披露した。

一方、開幕4連敗となった静岡ブルーレヴズは、同じ15番のキーガン・ファリアが前半と後半でイエローカードを受けて約20分間を14人で戦う状況になり、その間にスコアを突き放された。前回のホストゲームでも終盤のシンビン(10分間一時的退出)の時間に逆転されて敗れている。
「そこは自分たちに責があると思いますし、同じようなペナルティが続いているので、選手と対話をして、いま自分たちに何が必要なのかしっかり議論して進めていきたいと思います」と堀川隆延ヘッドコーチは修正を誓った。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの堀川隆延ヘッドコーチ(右)、クワッガ・スミス共同キャプテン

静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ

「非常に残念な結果です。いろいろな要因はあると思うんですけど、やはり自分たちのイエローカード、レッドカードも含め、20分間14人で戦わざるを得ない状況になったこと。ここは相手がどうこうではなく、自分たちに責があるものだと思いますし、そういった部分をしっかり修正しなければいけない。同じようなペナルティが続いていますけど、まずは何を変えられるかということで言えば、一つひとつ課題を改善していく。自分たちの成功を阻害する要因を省いていくために……。敗戦が続いていますけど、自分たちのスタイルを見失うことなく、次の試合に向けて準備をしていく必要があると思うので、ここから本当に僕らが立ち上がれるのか。そういう状況だと思いますし、まずは次の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦に向けて良い準備をしていくしかないと思います。選手と対話をして、いま自分たちに何が必要なのか、しっかり議論して進めていきたいと思います」

──ハーフタイムでハーフ2人(9番と10番)を代えましたが、交代した意図を教えてください

「今週、このゲームに向けて9番、10番のところで本当に、トレーニングを含めて良い準備をしてきたんですけど、相手のプレッシャーの中でハーフ団のゲームコントロール力があまりにも実行力がなかったので、そこは思い切って後半から代えることにしました。それによってゲームのテンポは作り出せたと思いますし、代えた効果というのはあったかなと。ただ、今日代えられた9番、10番はこの経験を生かしてほしいなと思います」

──「規律が乱れてしまう」というところで、具体的に何から修正していけばいいと考えていますか。

「まず一つはブレイクダウンだと思います。ボールを持ったとき、相手のコリジョンのところの判断など、しっかりビデオを見ないと今日のところはわかりませんけど、とにかく起こっている現象に対して自分たちがどう改善するのかは引き続きやっていきたいと思います。あとは危険なタックルなどに関しては、ウチの大きな課題だと思います。そういったスキルトレーニングを含めて、われわれコーチ陣の責任だと思うので。次週以降、そういった危険なプレーがないように、しっかり指導していきたいと思います」

──ラインアウトとモールでも少し苦戦した印象でしたが、そこは想定外な部分ですか?

「そうですね。やはり実際に並んでみると相手は本当に高くて、相当プレッシャーを受けていたなと。なので、人数をいろいろ局面局面で変えていったりと、大戸裕矢はよくやってくれたと思います。確かに前半、いろいろ攻めたい局面でボールがうまく球出しできなかったところもありますけど、やはり頭を使って工夫していく以外に方法はないと思うので、引き続きそこは改善をしていきたいと思います」

──前半のシンビンのあった時間で3トライを奪われた中、後半は流れを引き戻した部分があったと思いますが、ハーフタイムには攻撃でどういう指示を伝えましたか。

「アタックするエリアを広げたのが一つです。前半はキッキングゲームを重視していた部分があるんですけど、得点を取りにいかなければいけない、アタックしなければいけないという意味では、アタックするエリアを拡大していったというところ。あとは、ゲームのテンポを出す上でのボールの動かし方は、ハーフタイムに伝えました」

静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス共同キャプテン

「本当に残念な結果となりました。自分たちのペナルティ、規律という部分でゲームを失ってしまったと考えます。しっかりとこのゲームを分析して、敗因を追求して、タフにハードワークを続けていきたいと思います。まだシーズンは長いので、また一つひとつしっかりと良い準備をして、自分たちの一つひとつの行動、アクションに責任を持って進んでいきたいと思います。そして私達を支えてくれる皆様、ファンの皆様のために、しっかりとここから立ち戻ってきたいと思っています」

──前半の最後にジャッカルしてからすぐに突破をしかけたと思いますが、そこで状況を変えたいという気持ちを感じました。そのあたりはどう考えていたのでしょうか?

「前半は自陣のほうでプレーしていた時間が長くて、すごくプレッシャーを受けていたので、とにかくボールを速く展開させて、しっかりと攻めていきたいという気持ちを持っていました。モールのほうでも自分たちがやろうとした結果が得られませんでした。なので、そういったところで何とかゲームを変えようという気持ちで取り組んでいました」

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「勝てて本当にうれしいです。80分間のバトルになると思って、しっかりそれに向けて準備してきました。本当にそのとおりになったなと思います。良いスタートは切れたと思います。コンバージョンのほうがなかなかできなかった中でも、みんなが辛抱強く戦って、前半の後半20分が良かったなと思いました。後半は少し規律のところでもう一度見直しが必要かなと思うこともありますが、ここ2週間ホームでなくアウェイでフィジカルな2チームと戦って勝てたという結果は、すごくうれしいです。プレシーズンやシーズンがスタートしてからもずっと頑張ってきた結果が見えてきたのかなと思います」

──「前半の後半が良かった」というお話ですが、そこで3トライを取れた要因を教えてください。

「ウチのゲームプランとしては敵陣でプレーするということで、その中で相手にシンビンが出たこともあり、ちょっとテンポを上げようというメッセージを伝えていて、それに対してのリアクションが良かったですね。良いトライも決めましたけど、フォワードがすごく良かったので、ハーフタイム前のラストモール、あれもかなりビッグプレーだったなと思います。チームのファイトする力というか、そこがいま正しいレベルにあると思います」

──プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたマット・マッガーン選手のプレーはどう評価していますか。

「スバラシイ、ホントすごい良かった(日本語で返答)。選手としても成長しています。カルチャーのところだったり、自分のラグビーもしっかり理解しているので、そういったところをしっかりリードしてくれています。本当にチームにとって大事なメンバーです。今日はキックも良くて、ゴールキックも良かった。なかなかみなさん見えないところだと思いますが、ディフェンスのところでのリードやコミュニケーションだったり、スタンダードをしっかりリードしてくれています」

──2試合続けて先発の堀米航平選手のプレーについて感じていることを教えてください。

「すごく良いですね。こちらがやってほしいことをしっかりとやってくれていて、2週間とも自分たちのゲームプランをしっかり理解して、今日もそれをしっかり遂行してくれたかなと。ウチには本当に良い10番が2人いるので、このままかどうかはまたわからないですけど、この2週間は堀米選手がフィットしたかなというところで良いパフォーマンスを見せてくれていると思います」

──次節、埼玉パナソニックワイルドナイツとのゲームになります。連勝という形で試合に臨めるいま、どんな気持ちですか?

「相手はチャンピオンチームなので失うものは何もない。タフなビジターゲームが2試合続いて、それに勝つということがターゲットだったので、それができました。今度はホームに戻って、駒沢(オリンピック公園総合運動場陸上競技場)で自分たちのファンの前で戦えるということで、みなさんにぜひ応援してもらいたいと思いますし、彼らの前でしっかりと誇りに思ってもらえるようなパフォーマンスを見せたいと思ってます。良いチャレンジです」

リコーブラックラムズ東京
松橋周平ゲームキャプテン

リコーブラックラムズ東京の松橋周平ゲームキャプテン

「本当に勝てて良かったです。やっぱりアウェイでの連勝というのはかなり大きいものですし、僕たちは昨シーズンから開幕で負けていたので、この2連勝というのはかなり僕たちにとって自信につながります。やっとリコーブラックラムズ東京のやるべきことがチームに浸透してきたのかなと思います。勝ちましたけど、必ず修正しなければいけないところがあるので、リコーブラックラムズ東京としてやることは変わらず、その中でしっかり修正していくというのは必ずやっていかなければいけないですね。特に後半の入りは、ディシプリンの部分はかなり言っていましたけど、キャプテンである僕から反則をしてしまったりしてチームを乱してしまったこともあったので、例えば後半最初の入りは、あまりブレイクダウンにコミットし過ぎず、ディフェンスに集中する、タックルのほうだけに集中するなど、そういう部分をちょっとマインドセットを変えたりして、次の試合では修正していきたいと思ってます」

──先ほどピーター・ヒューワット ヘッドコーチから「プレシーズンの頑張り」という話がありましたけど、2試合続けてフィジカルな相手に勝てたというのは、どういうふうにプレシーズンの頑張りがあったのか。もしチーム練習の中で変化や、去年とまた違いがあるのであれば教えてください。

「フィジカルの部分は去年から何も変わってないですけど、マインドセットの部分、準備の部分ですごく良い準備ができています。我慢するところは我慢して、出すエリアで出すというそれだけのことなので、それがしっかり浸透してきてフィジカルが出やすくなってきているのかなと思います」

──マインドセットが良くなっているというのをもう少し具体的に教えてください。

「リコーブラックラムズ東京のラグビーがどういうものかというのを、もう1回全員で再確認できて、それをどうしっかり実行するかという部分のマインドセットですね」

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