NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第12節(交流戦)
2025年3月22日(土)14:30 IAIスタジアム日本平 (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 31-25 リコーブラックラムズ東京
150キャップの隣で刻まれたファーストキャップ。スクラムの伝統は脈々と受け継がれていく
前半はリコーブラックラムズ東京のシンビンもあり、静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)が24対7で折り返した。だが、後半は静岡BRが風下になって苦しい展開となり、ペナルティも増加。同33分には24対20とワントライで逆転される点差まで追い上げられた。
だが、そこでチームを勝利に導いたのは、後半14分から出場してトップリーグ時代を含む公式戦通算150キャップを達成した日野剛志のトライだった。
「無我夢中で『サネレ(ノハンバ)!』と呼んだらパスが来たので、置くだけでした」と日野は振り返るが、走れる、ラインブレイクもできるフッカーとして150試合の中で多くのトライも重ねてきた。
チームとしても、今季は前節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦を含めて接戦を勝ち切った試合が多く、それが9勝3敗の4位という好成績につながっている。
「今日もああいう苦しい状況になったときに、全員が最後の最後まで力を振り絞ってハードワークして、守り切れるようになってきました。もちろん途中で雑な部分もあったり、ペナルティが多くなったり、うまくいかないこともたくさんありましたけど、今季は最後で力負けする、息切れすることがなくなりました。それはチーム力の底上げができているからだと思います。23人の力が上がって、今日も苦しみながらも勝てたというのは良かったです」
そう語る日野自身には、節目の試合で先発を外れた悔しさもあったが、「どうやったらチームにインパクトが出せるかを考えながらやっていましたが、自分は自分のプレーしかできないので、どんな状況でも自分のプレーをやり続けようとイメージしていました。その点では良かったと思います」とチームのためにすべてを尽くした。
また日野がファーストキャップを記録した2012年のジャパンラグビー トップリーグ開幕戦は、隣でスクラムを組んだヤマハ発動機ジュビロ(現在の静岡BR)のレジェンド・山村亮が100キャップを記録したゲームだった。そして自身の150試合目では、アーリーエントリーの稲葉巧が初出場して一緒にスクラムを組んだ。そこにも日野は運命的なものを感じている。
「稲葉も150試合出て記念Tシャツ作ってもらえるように頑張ると言っていましたし、彼の力やポテンシャルはすごい。それをもっと生かしてあげられるように、また組むチャンスがあったら頑張りたいです」
新人の作田駿介の台頭も含めて、静岡BRの最大の武器であるスクラムがこうして次世代に受け継がれていくことも実感できた一戦。今季2度目の3連勝には、レジェンドの記録達成だけに留まらない大きな価値があった。
(前島芳雄)
静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督
「先週は、雨で、コンタクトが多くなった中で、良い試合をしました。なかなか選手のコンディションも整わなかったですが、今日は厳しい環境の中で本当にたくさんのサポーターの方に応援していただきました。そのおかげで、6点差で何とか勝てたと思います。(試合の)中身は、こういう試合もあるかなという感じでしたが、勝つことができました。いろいろなところでたくさん勉強したことが出たんじゃないかと思います」
──今日の試合は接戦になりましたが、ゲームプランどおりにできた部分とできなかった部分を聞かせてください。
「プランは遂行していたんですけど、その中でペナルティを取られたりして、選手も戸惑いながらプレーしたところもあって、プランうんぬんよりもペナルティの多さ(の影響)があったと思います」
──前節から6人、大幅にメンバーを変更。なおかつ新加入の選手も試す機会があったと思いますが、どう評価していますか。
「本当にプレッシャーの掛かる点数での出場だったんですけども、それぞれ自分の仕事を確実にこなしてくれました。もちろんチームの層も厚くなりますし、いろいろな特徴をもっている選手がいて、本当にチーム一丸となって向かっていくという意味では、非常に良いプレーをしたんじゃないかと思います」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「今日は本当にタフな試合になりました。リコーブラックラムズ東京はすごく強い相手でした。先週も勝ったことで勢いがあったと思いますし、自分たちも今日の試合はタフになると思っていました。自分たちが良かったところとしては、80分間しっかりとディフェンスをすることができて、最後まで難しい時間帯も耐えることができたことが、勝てた要因だと思っています。今年のリーグワンは、どの試合もすごく接戦になっていて、どのチームも侮れないですし、自分たちも毎週毎週、1試合1試合にしっかりとフォーカスしてプレーをしていかなければいけないと思っています。特に今日は1年に1回のIAIスタジアム日本平(での試合)ということで、自分たちとしてもオール静岡のジャージーを着て、みなさんの前でプレーできたことをすごくうれしく思っています」
──150キャップを達成した日野剛志選手が勝負を決めるようなトライを決めましたが、どう感じましたか。
「本当に彼は特別な選手だと思っています。いつもグラウンドの中でも笑顔でプレーしていて、たまに怒るときもあるんですけど、本当に彼はラグビーを楽しんでプレーしているなと思っていますし、本当にたくさんの選手の良い見本になっていると思います。彼が150キャップを取れたことに対しておめでとうと伝えたいですし、彼がハードワークをしていることが、このチームにいる若い選手たちにとってもすごく良い見本になっていると思っています」
──後半なかなか厳しい戦いになりましたが、しのぎ切れた要因をどこに感じましたか。また、どういうことを考えてプレーしていましたか。
「風の影響がすごくあって、難しい状況でプレーをしなければいけませんでした。TJ・ペレナラというワールドクラスの選手が(相手に)いて、彼のキックで自分たちの裏のスペースに蹴り込まれて、難しい状況だったと思います。ただ自分たちとしてはシンプルにプレーをしよう、特別なことをやる必要はないということを話していたんですけど、自分たちのモールトライがキャンセルになってしまい、そのあともボールを持ち込んだけれどトライにならなかった場面が2回続いてしまった。遂行力という部分ではうまくいかなかったです。でも、自分たちが最後までしっかりと頑張り続けた、エフォートを保ち続けて戦い続けた結果が、最後に勝ちにつながったと思っています」
リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「いま、ロッカールームでもチームに伝えましたが、(チームの)エフォートをすごく誇りに思います。試合終盤にもまだ勝てるかもしれないという中でしっかりファイトを続けて、残念ながら実行力のところが大事な場面でうまく見せられなくて、そこが響いたかなと。ブルーレヴズと戦うのはいつも楽しみで、古巣のチームであり静岡に住んでいたこともありますし、前のキャプテンの堀川(隆延アシスタントコーチ)さんや昔のラグビーフレンドに会えるのは特別なものがあります。ブルーレヴズは本当に良いプレーをいま、していると思います。それが見られて良かったですが、自分たちとしては(敗れてしまい)すごく悔しかったです」
──対静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)ということで、どんなことを選手たちに指示して試合に入りましたか。
「ヨーロッパのラグビーのようなゲームをやるチームだと思います。すごく良いセットピースを持っていて、バックスにもパワーランナーが何人かいて、ボールキープもすごくよくしてくるチーム。クワッガ・スミスはスプリングボクス(南アフリカ代表の愛称)で僕の好きなプレーヤーの一人なんですが、彼らも自分たちが成功する形というのがすごくクリア(明確)だと思います。今日もそこは一貫していて、前半にチャンスをしっかり生かして、そのまま逆転させずにゲームを締めたのだと思います」
──プレーオフトーナメント進出が見える順位にいますが、プレーオフトーナメントをいまの段階で意識していますか。
「いま、リーグワンは5位から9位ぐらいまでかなり接戦なので、今日の勝ち点1というのはすごく重要だったのかなと思います。すごくエキサイティングなリーグですね」
リコーブラックラムズ東京
TJ・ペレナラ ゲームキャプテン
「僕も勝てなくて悔しい思いです。良いチームを相手に良いゲームプランを持って挑めたと思うんですが、自分たちの求めた結果は出ませんでした。チームに関してはすごく誇りに思います。フィジカルなチームを相手に、自分たちがしっかり戦えて、ほとんどの時間帯で自分たちのゲームプランが遂行できたかなと思います。自分たちのアイデンティティーというのも徐々に分かってきたのかなと。そこはすごく大事なポイントだと思います。
レギュラーシーズンは残りあと6試合です。しっかりとプレーオフトーナメントに向けて戦っていきたいと思うので、自分たちがどういうチームなのか、どうやって勝つのかということを知るのはすごく大事です。今日は勝てなくて悔しいのはもちろんですけど、ポジティブなこともたくさんあったと思いますし、来週につなげられると思います」
──後半風上に立ってスコアも追い上げることができました。あらためてフィールドの中でできたこと、できなかったことを聞かせてください。
「風は強かったです。だから正しいエリアでプレーすることが大事だと思いました。前半はしっかりキープして良いスタートが切れたかなと思っています。ターンオーバーになったとき、相手もしっかりボールをキープしてプレッシャーを掛けてきたと思います。後半は、風が自分たちに何かしてくれるわけではないので、自分たちがボールをしっかりキープして、フィジカルにいくことが大事という話をしていて、それはよくできたのかなと。フォワードも、強い静岡BRのパックを相手にしっかりとやってくれたと思いました」
──スタジアムの印象はいかがでしたか。
「ビューティフルだと思いました。到着したときに本当にすごいと思ったし、雰囲気も素晴らしかったし、ブルーレヴズのファンや僕たちのファンも素晴らしかった。スタジアム自体もすごく特別な場所なんだと思います。ピッチに出て行くときに富士山が見えて、特別なスタジアムだなと感じました。
(ペレナラの言葉を受けてマットソン ヘッドコーチが追加して)すごく芝も良くて、素晴らしくきれいなピッチだったので、傷めてしまってグラウンドキーパーには申し訳なかったです」