NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2(リーグ戦) 第4節
2023年1月21日(土) 12:00 AGFフィールド (東京都)
日野レッドドルフィンズ 26-41 浦安D-Rocks
敗戦の中に見えた光明。新たな配置で感じたコンビネーションの手ごたえを日野RDは反撃につなげる
ここまで1勝2敗の日野レッドドルフィンズはAGFフィールドにてここまで3連勝で首位を走る浦安D-Rocksと対戦した。
ともに強力なフォワードをようするチーム同士の対戦とあって、どちらが先手を取るか注目されたが、序盤は浦安D-Rocksが優位。「マイボールラインアウトはほぼ確保でき、接点の部分やモールでも上回ることができていた」(中島進護)と、浦安D-Rocksの選手たちの1歩目の動きが早く、3つのトライを奪って0対20と大きくリードした。
しかし、日野レッドドルフィンズも前半終了間際に思い切ってフロントローに濱野隼也を投入したあたりから盛り返す。「前半はフォワードがしっかりファイトしてくれたおかげで、20点に抑えることができた」とロックの木村勇大も手ごたえを感じ、「感触としては全然負けていないぞ、と。後半は陣地を取れるし、しっかりなすべきことをしようと意思を統一して臨みました」とフルバックの北原璃久も虎視眈々と逆転を狙っていた。
後半は、バックスタンドにある金属製の旗竿がぐらぐらと揺れるほどの強風を味方に日野レッドドルフィンズが攻め込む。前節までスタンドオフのポジションだった北原がフルバックに入っていたが「普段、スタンドオフの位置にいる際、フルバックから情報を積極的に伝えてほしいと感じていたので、そこを意識してプレーした」と最後列から大きな声で情報を味方に与えてチームを落ち着かせると、スタンドオフのサイモン・ヒッキーが風も計算した上での正確なキックで相手陣へと侵入。後半5分にはモールを押し込んでペナルティトライを奪うと、このプレーで浦安D-Rocksのリサラ シオシファが2枚目のイエローカードで退場。14人となったこともあり形勢は一気に逆転した。
次のキックオフからの攻撃では、密集の真横に空いたスペースをスクラムハーフの橋本法史が駆け抜けてゲインラインを突破、相手にタックルをされながらもパスをつなげるオフロードのプレーでウイングのチャンス・ペニへとつなぎ、そこから一気にトライまで結び付けた。狙いどおりの形が出て14対20と6点差まで追い上げ、スタンドにつめかけたファンに逆転への期待を抱かせた。
ただ、浦安D-Rocksは14人の状況で逆襲にあっても「一人が二人分の仕事をするというメンタリティーを全員がもって戦っていた」(中島)と集中力を切らさず対応。粘り強く守って日野レッドドルフィンズのペナルティを誘発し、そこから逆襲のトライに結び付けて試合を決定づけたのはさすがだった。
日野レッドドルフィンズにとって、敗れはしたものの「オフロードでボールをつないでトライにつなげるシーンを多く出せた。新しい形を見せられたと思います」と北原が語るように明るい要素も多くあった。箕内拓郎ヘッドコーチも「この配置によるコンビネーションは今後もっと良くなる」と評価。ペナルティが多いなどディシプリン(規律)の部分に課題はあるものの、強敵相手にも最後まであきらめない戦いをファンに見せられたことは、次節からの反撃へとつながるはずだ。
(関谷智紀)
日野レッドドルフィンズ
日野レッドドルフィンズ
箕内拓郎ヘッドコーチ
「お互いに非常に激しい戦いで、途中まで勝敗は分からない展開でした。しかし、われわれ日野レッドドルフィンズとしてはペナルティをしてしまったことで泣かされたのかなと。そういう点でリズムがつかめなかった、それがすべてではないかなと言える試合でした」
──今日の試合ではここまでスクラムハーフで先発していたオーガスティン・プル選手をセンターに、スタンドオフの北原璃久選手をフルバックに変えて臨みましたが、その意図は?
「一つは前節の試合でのプレーでティジェイ・ファイアネが出場停止となったことで、浦安D-Rockさんはミッドフィールドが強いということもあり、プルをセンターに持っていって橋本法史をSHに配置したということです。そこで一人、外国人枠を使えるようになったので、ゲームメークをしっかりできるサイモン・ヒッキーを先発で起用し、フルバックに走力がありチャンスメーカーの北原を配置しました」
──この配置についての評価は?
「準備期間が1日少ないショートウィークだったのですが、試合に向け準備してきたことがしっかり出せたと思います。この配置によるコンビネーションは今後もっと良くなっていくでしょうし、次の試合に向けて非常に手ごたえはありました」
──スクラムやラインアウトといったユニットのプレーが重要だとの話でしたが、その点で今日の試合の評価は?
「僕自身の感覚での評価になりますが、ラインアウトではしっかりとボールも確保できましたし、序盤落ち着かない時間帯があったもののスクラムも最終的にはしっかり優位に運べたと思います」
──26対41という点差がついてしまいましたが?
「ノットリリース・ザ・ボールのペナルティもとられましたし、ハンドリングエラーもありました。攻撃中の小さなミスですか、やはりそういう点を規律の部分と一緒に今後修正をしていかなければいけないと思っています。やはり前半の風下の状況で自陣にくぎ付けにされたことによってペナルティがいくつか増えてしまった点は誤算でしたし、試合の入り方としてレフリーに悪いイメージを与えてしまったのかなと思います。前半最後のスクラムでフリーキックを取られたところも、あとで映像を検証してみないと何が起こったか分からないのですが、そういうプレーは軽率でしたし、インターセプトからトライされたところなども積み重なって最終的にスコアとなって差が表れたのかなと思っています」
──次の試合につながる収穫は?
「しっかりチームとして80分間ファイトし続けられたところが一つ。また、意図して取り組んできたプレーではしっかりトライがとれているという点はポジティブにとらえています。ディフェンスの面でもまだまだペナルティが多く規律という部分は課題ですが、低いタックルで相手の勢いを止めることができたプレーもたくさん見られました。次節に向けてはプラス1週間試合間隔が空くので対策もできますし、それらの点はわれわれとしてはいい収穫だったと思います」
──プロップの久富雄一選手について、途中出場もありましたが評価は?
「やはり試合に対してしっかり準備をする部分で素晴らしいものがあります。今日もディフェンスに関してとても頑張っていたと思いますし、スクラムも安定していました。常に自分に足らないものを修正していこうという気持ちを感じますし、けがをしない強い体を作っているというのは若い選手にとっても見習うべき点というか、『体が強くないと何もできないんだよ』ということを言葉で伝える以上に示しているのではないかと思います」
日野レッドドルフィンズ
堀江恭佑キャプテン
「前半の入りでは、バインドの距離だったり体重の掛け方だったりという点でスクラムが最初少し合っていませんでした。ただ、前半の途中から修正ができた感じはあり、スクラム第2列第3列の5人でもう少しプレッシャーを掛けていきたいところで、濱野隼也が交代で入ってきた時点でコミュニケーションが取れて、そこからは優位に立てました。モールに関してもいい形で組めば押し切れるという自信があり、トライにつなげられたプレーではそういうところが出せたと思います。ブレイクダウンに関してはレフリーともっとコミュニケーションを取らなければいけなかった、という反省があります。ディフェンスでもジャッカルが成功した場面もあったものの、逆にハンドを取られたりホールディングのペナルティを取られたりしたところもあった。そこはもっとレフリーの声を聞き対応することを課題にして臨みたいと思います」
──実際に戦ってみての浦安D-Rocksの印象は?
「フォワードもバックスもフィジカルの強い選手が多く、そんな首位の相手にチャレンジャーとして戦う中で、僕らのセットピースや接点の部分でどれだけ上回っていけるか、という試合でした。いい場面もいっぱいありましたし、逆に自分たちのブレイクダウンで苦しい状況の中でペナルティをするなど悪い部分もあったのでしっかり見直し、反省して次に向かいたいと思います」
──第5節に向けては?
「箕内(拓郎)ヘッドコーチの言葉にもあったとおり、勝敗に影響したのはペナルティや規律の部分。みんな、勝ちを求めて80分間最後まで戦い続ける姿勢を見せてくれました。あとは本当に結果だけです。次の試合に向けて結果を出したいと思います」
日野レッドドルフィンズ
北原璃久選手
──フルバックとしての出場でしたが?
「過去にもフルバックでプレーした経験はありましたし、前節の試合でも終盤は最後列でディフェンスなどもしていましたので、特に大きくプレーが変わったという感覚はありませんでした。ただ、10番(スタンドオフ)と15番(フルバック)では役割が違うので、今日は15番で求められる役割を遂行できるように意識してはいました。火曜日の段階でポジションは告げられたので今週の練習ではフルバックでしたが、何かあったときのために10番のプレーもできる用意はしていました」
──ハーフタイムでは選手間でどんな話を?
「後半は風上になるので自分たちがテリトリーをとれるのは間違いない。だから、みんなでやるべきことをやり切ってトライを取り切ろう、と話をしました。後半、トライを複数奪った中で、オフロードのパスをつないでトライにできたシーンが出たのは僕たち日野レッドドルフィンズらしいプレーとして、ポジティブにとらえられる要素だったと思います」
日野レッドドルフィンズ
木村勇大選手
──どんな気持ちでこの試合に臨んだのか?
「最初チーム内でのメンバー発表ではリザーブメンバーで臨むということでしたが、2日前にスタメンと言われました。ただ、リザーブでもスタメンでも準備することは変わらないですし、第2節でもそのような状況はあったので落ち着いて試合には臨めました」
──試合を振り返って良かった点と悪かった点を教えてください。
「細かい話をすると、序盤は日野レッドドルフィンズの3番側のほうからプレッシャーを結構受けていた状況でしたが前半35分ぐらいからそれを受けなくなり、リザーブの濱野隼也が交代出場したあたりからスクラムはとても良くなって、後半は逆に押せるようになり流れをもってくることができたと思っています。相手キックに対してのカウンターアタックや、相手のディフェンスがそろっていない状況で、たとえばチャンス・ペニがブレークしてからのオフロードパスで攻めるシーンは前節から出すことができていますし、セットプレーやスクラムでプレッシャーをかけられたこと、ラインアウトでのミスが少なかった点は良かったと思います。前半を0対20で終えましたが、もっと点を取られていてもおかしくない状況で耐えられたのは接点の部分などでみんなファイトできていたからだと捉えていました」
浦安D-Rocks
浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ
「今日の試合、選手たちのパフォーマンスを自分は誇りに思います。今週は数々の試練を強いられた試合でありました。それはウォームアップの時点でけが人が発生したのもそうですし、試合中には日野レッドドルフィンズさんから数々の試練を与えられました。それにレッドカードがレフリーから出されたことも含めて、そういった試練を乗り越えられた試合だったと自分は見ています。
前半では20点のリードで終えることができたのですが、チャンスを生かし切ることができていたらあと10点は取れていたような形を作り出せていました。後半に関しては厳しい戦いを強いられて日野レッドドルフィンズさんが巻き返してくる中で、自分たちもめぐってきたビッグチャンスを決め切ることができ、荒れた試合展開にはなりましたが勝利を手繰り寄せることができました」
──直前のアップでけがをした選手とは?
「スタンドオフのクリップス ヘイデンです。スクラムハーフとスタンドオフをカバーできるグレイグ・レイドローが出場することになって、自分たちのプレーが崩れることなく進められ、大変ありがたかったです。いまのところオテレ・ブラックも試合に出られない状態なので」
──スタメンを大幅に入れ替えましたが、その理由は?
「大部分はローテーションによるものです。練習で良いパフォーマンスを見せている選手たちにアピールの機会をこのような日野レッドドルフィンズさん相手のビッグゲームで与えたいという意図があって選手を入れ替えました。イズラエル・フォラウやクリップス(ヘイデン)に関してはけがによる交代でした」
──コンタクトプレーでの、いわゆる接点の部分ではどちらが優位と見ていましたか?
「良かった部分もあるとは思いますが、自分たちが求めている最高のレベルではないという捉え方をしています。特にハーフタイムでも選手たちに伝えていたのですが、ボールキャリーの部分でボールキャリアの上体が高くなってしまうことが多かったのでそれがスローラックにつながってしまう状況が起きていたので、そういったフィジカルの部分を見せるということもありますが、向上の余地はまだまだあると考えています。引き続き取り組んでいきたいと思います」
浦安D-Rocks
中島進護ゲームキャプテン
「まずは勝てて良かったです。全体的には前節の試合からディシプリン(規律)のところで自分たちには課題が残ったところがあったのですが、そこをしっかりとこの試合ではコミュニケーションを取りながら修正することができたと思います。先ほどヨハン・アッカーマン ヘッドコーチも言っていたようにレッドカードが出て自分たちが急にキツい形になったときもしっかりと自分たちのやることを明確にして試合ができたからこそこのような結果になったと思います」
──実際に戦って日野レッドドルフィンズからのプレッシャーはどう感じていましたか?
「思っていた以上にすごいプレッシャーが掛かってきたのですが、そこは1回自分たちに立ち返って、準備してきたものをシンプルに出すだけだと試合中も話し合って臨みました。流れの中でフォワードが引いてしまう部分もあったことは確かですが、しっかりと自分たちのフォワードの力を出せたと感じています」
──試合の最後、ホーンが鳴ってボールを外に出せば勝利という状況でも攻め続けた理由は?
「『絶対最後トライを取りに行こう』と10番の(グレイグ・)レイドローとコミュニケーションを取りながら、最後まで諦めないところを見せようと。最終的には相手のペナルティからキックで外に出す形にはなりましたが、チャンスがあればアタックという姿勢を見せることができたと思います」
──レッドカードで14人になっても得点のペースが落ちなかったのは?
「一人減った状況になったときに、チームとしてすべきことを全員で把握し『もう1回自分たちのラグビーをやろう』と確認しました。シンプルですが、それでチームとして立ち直ることができ試合最後のキツい状況でも14人でやれるということを証明できました。試合中に一人が二人分の仕事をする、というメンタリティーを全員がもっていたので得点も取れたと思います」
浦安D-Rocks
上田竜太郎選手
──スクラムについて。
「日野レッドドルフィンズにはベテランや経験ある選手が多い中、いかに自分たちが取り組んできたことを出せるか、という意識で試合には臨みました。その結果、自分たちのスクラムが出せてプレッシャーも与えることができたと思っています」
──これで4連勝という形になりましたが、チームの試合後の雰囲気は?
「4連勝という結果となり、チームの雰囲気はとてもいいと思います。練習からも良い雰囲気でトレーニングできていますので、これを引き続き維持しながらディビジョン1に上がるために全力で取り組んでいきたいと思っています」
浦安D-Rocks
金廉選手
──スクラムで意識したことは?
「いかに自分たちのスクラムにフォーカスしてできるか、という部分をフロントローの3人が意識して臨みました。結果としていいスクラムが組めたんですけれども、修正すべき点はまだあるので引き続き直していきたいと思います」
──NTTドコモレッドハリケーンズ大阪から浦安D-Rocksに来て、スクラムコーチも変わったわけですが金選手が感じるスクラムの強みは?
「個々ではなく8人がしっかりまとまってスクラムを組むという印象が強くて、練習中からもその点を常にフォーカスして横のつながりも縦の連係も常に練習中から意識して取り組んでいます」