NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第5節 カンファレンスB
2023年1月21日(土) 14:30 江戸川区陸上競技場 (東京都)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 25-21 コベルコ神戸スティーラーズ
前半戦無敗、「えどりく」で不敗。S東京ベイが強豪チームとなった理由とは
後半開始早々、根塚洸雅が動いた。キックオフボールをキャッチするや駿足を飛ばし、相手のディフェンスを一気に突破。得点に大きく貢献し、それまでの試合の空気を一気に変えてみせた。
「前半はゴール前までチームが迫りながらもトライを取り切れないという(場面が続きました)。後半の最初に流れを作りたいという気持ちもありましたし、ウイングとしてトライを取り切りたいという気持ちもありました。少しギャップ(ディフェンスラインの隙間)があったので、勝負をしようという気持ちで、思いっきり行けたのが良かったです」
そう語った根塚の膝にはアイシングが施されていた。試合の前半に、痛めてしまったのだという。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのホームスタジアム「えどりく」(江戸川区陸上競技場)3連戦の第2戦。相手は難敵・コベルコ神戸スティーラーズ。グラウンドでは、観る者の心をひりひりさせる緊迫した攻防が繰り広げられた。
後半27分の時点で得点差はわずか4。さらには、ハードヒッティングな戦いの代償が、負傷による交代という形でのしかかる。後半33分、ロックのルアン・ボタに代わって、フッカーの杉本博昭がスクラムに加わった。チームとしての応急処置。それでも勝ち切った要因を、キャプテンの立川理道はこう分析する。
「ここ数年、タイトな試合(接戦)を経験できているのが大きいと思います。その中でリーダー陣だったり、いい選手がここぞという場面でいいプレーをしてくれるのがチームの強みだと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの試合後の記者会見でよく聞かれる言葉に「課題」、「反省」、「修正」がある。開幕節で天敵の東京サントリーサンゴリアスから18年ぶりとなる白星を奪ったにもかかわらず、チーム内に浮かれた空気は微塵もない。77点を獲得し大勝を博した第3節、花園近鉄ライナーズ戦後も選手たちはそれぞれの反省点を口にしていたとか。
課題や反省点を修正しながら積み上げてきたものが、時間をかけ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを強豪チームへと昇華させた。カンファレンス前半戦は無敗。「えどりく」ではこれで11連勝と不敗神話を継続。すべての困難は、いつか訪れる成功への壮大な前振りなのである。
(藤本かずまさ)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「コンニチワ! まずは勝ててうれしいです。コベルコ神戸スティーラーズとはここ数シーズン、最後まで結果がわからないような試合が多かった。お互いプライドもありますし、いい選手もいますし、いいチーム文化もあります。そういったところで、今日はいい戦いが見せられたと思います。
特に前半は、いいチャンスもたくさんあったのですが、コベルコ神戸スティーラーズのディフェンスが優れていて、ネバーストップでしっかりとディフェンスしてきたところに私たちは止められました。そこで我慢をしたところが良かったと思います。
また、ここにいる立川(理道)キャプテンをはじめ、リーダー陣の選手たちがしっかりと自分たちのプランを遂行し、しっかりとコントロールしてくれました。終盤にけが人が出てやりくりした局面でも、リーダーたちがしっかりと試合を運んでくれました」
──チームとしての成長については?
「そこに関してはチームエフォート(チームとしての努力)というところが答えだと思います。いいコーチ陣、いいスタッフ陣、そしてここにいる立川キャプテンをはじめ、いいリーダーシップを取れる選手たちがお互いにハードワークをしてきた結果だと思います。決して一人だけの努力というわけではないと思います。今日の試合に関しても、プレッシャーが掛かった場面、特に最後の4分などはみんなで一緒に戦ったところがうまくいったと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン
「まずは勝てたことが収穫だと思います。なかなか自分たちのペースで試合を動かせる時間帯は少なかったんですけど、それはコベルコ神戸スティーラーズのいいプレッシャーがあったからだと思います。そうした中でも自分たちがしっかりと、やるべきことを明確にやり切った中でスコアできたり、大事な時間帯でペナルティやスクラム、ラインアウトのプレッシャーを掛けられてポイントに変えられたのが大きかったと思います。こういう試合を通じてしっかりと成長していきたいと思いますし、今日出た課題をしっかりとクリアにしていって、次の試合に向けて準備していきたいと思います」
──後半開始早々にトライを決めました。ここぞという時の集中力などが発揮できている理由については。
「大事な時間帯で自分たちのペースに持っていくというのは、ここ数年やはりタイトな試合を経験できているのが大きいと思います。その中でリーダー陣や、いい選手がここぞという場面でいいプレーをしてくれるのがチームの強みだと思います」
──最後に4点差に迫られたり、本職と違うポジションでプレーをする選手が出たり、あの時間帯はキャプテンとしてみんなにどのような声を掛けましたか?
「まず大事なことは、みんなが同じ絵を見ているということです。もちろんフッカーの杉本(博昭)選手がバックローにいったり、(メンバー交代で)いろいろとやりくりをしながらだったのですが、役割というものが一人ひとりにはあるので、そこを大事にするということ。そして先ほど言った、チームとして何をするのかというところを言い続けました。(残り時間が)4分あったので、まずはエリアを取っていく、そして2分以内になってからはフォワードでキープしていくというところは共通認識でできたので、最後、勝ち切れたのかなと思います」
──チームとして昨季と比べて良くなったところは?
「この試合もそうですし、横浜キヤノンイーグルスと引き分けた試合もそうですが、大事な時間帯でみんながチーム全体として動けている、同じ絵を見て動けているというのが昨季よりも多くなっていると思います。それは昨季の経験を経て、みんなができていることです。また、あまりメンバーが変わらずに今シーズンもこられているというのも、一つの大きな要因だと思います」
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「負けたことについては非常に残念です。試合の中では、アタックしていこうというマインドセットの部分を見せられた局面はありました。ですが、最初の20分間で自陣のトライライン前でのディフェンスの時間があまりにも長過ぎたことが、最終的に自分たちのガス欠につながってしまったと思います。本来の自分たちが行うべきディフェンスの時間よりも、より長くディフェンスをしなければいけなくなってしまった部分に関しては、自分たちのスキルエラーだと思います。その上でディフェンスする時間が長くなったのですが、ディフェンスの部分では、いい内容をたくさん見せられたと思います。
最後に一つだけ。自分たちのトライがTMOされたぶん、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに対してもTMOしてもらえたら、正直ありたがたかったというのが率直な感想です」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓キャプテン
「先週、大敗を喫しまして、今週はしっかりと気持ちを見せようということで試合に臨みました。その点に関しては、すごく良かったと思っています。でも、試合の中でいくつかエラーであったり、レフリーと合わなかったり、そういった部分がありました。そういった部分を、次はうまく修正して、つなげていきたいです」