NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第14節 カンファレンスA
2024年4月21日(日)13:00 札幌ドーム (北海道)
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ vs コベルコ神戸スティーラーズ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスA)
旧友とファンの力を借りて。
1シーズンで新天地に馴染んだ男が抱く忠誠
「とても不思議な感じがします。ファニーフィーリング」
今節、4月21日の札幌ドームにおけるコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)戦を前にして、JD・シカリングはその胸中をこう表現した。昨季まで在籍していた古巣との初対戦。昨季も、一昨季もクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)と神戸Sは同じカンファレンスだったため、そのような感覚に陥るのも無理はないかもしれない。
「ですが、もちろんエキサイティングな気持ちもあります。神戸Sは相手としても申し分ない、強いチームです。タフなバトルになると思います。戦うのがとても楽しみです」
身長203cm、体重121kg。南アフリカ出身の“動ける”大型ロック。7歳のころからラグビーを始め、最初のポジションはウイング。ラグビー以外では高校時代に陸上競技にも打ち込み、得意種目は高跳びとハードル走だったとか。もしかすると、現在のJD・シカリングの大きな武器になっている高い機動性の原点はそこにあるのかもしれない。
高校卒業後は大学には進学せず、プロの道を選択。ウェスタンプロビンス、ストーマーズを経て2021年に神戸Sに入団。S東京ベイには今季入団したばかりである。1シーズンでチームに馴染み、レギュラーに定着した要因を本人はこのように分析する。
「やはりスピアーズのチーム文化によるところが大きいと思います。家族ファーストの考え方、そしてチームメートとのつながり。それにより、入団したばかりの私もすぐに馴染むことができました。また、南アフリカ出身の選手が多いところも、私がすんなりとチームに溶け込めた理由の一つです」
ちなみに、ストーマーズ時代には、リカス・プレトリアス、スカルク・エラスマス、アシスタントコーチのラッセル・ウィンターとチームメートになった経験がある。JD・シカリングにとって肩の凝らない環境が、S東京ベイにはすでにあった。
「そして、(当時の)試合前には相手のロックのことも入念に調べていました。だから当然、デーヴィッド・ブルブリング、ルアン・ボタのことも知っていましたし、彼らとの対戦は毎試合、ビッグバトルになると思っていました。いま、こうしてその二人と一緒にプレーができているというのは、私にとって素晴らしい経験になっています。彼らは本当に優れたロックです」
日本では今季が3シーズン目。スピードのある日本のジャパンラグビー リーグワンでプレーすることで判断力が磨かれ、走力も向上。この経験は「今後、絶対に生きてくると思います」。また、熱心に声援を送ってくれるS東京ベイのファン、通称『オレンジアーミー』たちも、いつしかJD・シカリングにとって特別な存在となった。
「私のラグビー人生の中でも、オレンジアーミーは忠義に厚い、本当に素晴らしいファンだと感じています。私もオレンジのジャージーを着て戦う以上、S東京ベイの勝利に貢献したいです。次の試合では、自分自身の能力を最大限に発揮して、試合をエンジョイしたいと思います」
苦しいときこそ、前に出よう。信じた道を、突き進もう。進撃する巨人が、札幌ドームをオレンジに染める。
(藤本かずまさ)
コベルコ神戸スティーラーズ(D1 カンファレンスA)
必勝戦で最高に“楽”しむ姿を。
山下楽平が刻む「100キャップの集大成」
札幌ドームでクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対戦する5位・コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)。今節は李承信がフルバックに入り、橋本皓が今季初先発するなど、メンバーや配置に変更も。トップ4入りへの必勝戦が続く中、チームの総力を挙げて勝利をもぎ取りにいく。
山下楽平が強い思いを言葉に変えた。今節出場すれば、公式戦100試合出場を達成する。
「加入前から憧れていたチームで100試合出場、シンプルにうれしい気持ちが最初にあります。ここまでこられたのは僕だけの力ではありません。初年度から使い続けてくれたチームのおかげですし、周りでサポートしてくれた諸先輩方のおかげでもあります。そういう人たちのために、今週末しっかり、自分の100キャップの集大成をプレーで見せたいと思っています」
ブロディ・レタリックと共同キャプテンを務める今季。まぎれもなく心身両面から神戸Sをけん引する存在だが、序盤戦はけがの影響から「守りに入ったようなプレー」が増えた。アグレッシブなプレースタイルは鳴りを潜め、「その間、『試合を100%楽しめていたか』と言われれば、そうではなかった」とも話した32歳。苦しい時期を過ごした。
それでも、クロスボーダーラグビー2024による中断期間も活用しながら状態を戻し、調子を上げてきた。「いまはすごく楽しめている」と笑顔を見せた彼から漂うのは、チーム屈指の躍動感だ。
鋭いインターセプトやビッグゲインで魅了し、技巧的なハンドリングでトライを奪えば、突破を図る世界的プレーヤーを巧みなタックルで止める。前節はジャパンラグビー リーグワンのプレーヤー・オブ・ザ・ウィークにも選出されるなど、ウイングは持ち前の翼を豪快にはばたかせている。
9歳下の後輩、李承信は楽しそうに先輩のことを話す。「面白い方で、尊敬できる部分も多いですし、そうでないところも…あります(笑)」。その上で、「グラウンドではチームで一番と言っていいほどコミュニケーションの取り方がうまい。入団当初から本当に助けてもらっています」と感謝があふれた。
神戸Sひと筋、“100キャップの集大成”へ。「全員がチームのためにハードワークできれば、おのずといい結果がついてくると思っています」。山下楽平は仲間と心躍るラグビーを披露する。
(小野慶太)