NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1 第6節(交流戦)
2023年1月29日(日)14:00 ヤマハスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 21–0 NECグリーンロケッツ東葛
キャリア2試合目でMIPを獲得。
23歳の山口楓斗がチームにもたらしたもの
1月29日(日)にヤマハスタジアムで開催された今季3度目のホストゲームで、静岡ブルーレヴズは待ちに待った今シーズン初勝利を飾った。
フォワード陣の頑張りをベースにしたバックス陣のラインブレイク、マロ・ツイタマの独走トライ、清原祥の高難度なコンバージョンキックなど見どころも盛りだくさん。
特に後半、NECグリーンロケッツ東葛に何度もゴールライン直前まで押し込まれながら、チーム一丸の守備でトライを許さず、「とても誇らしく思っています」とクワッガ・スミス キャプテンも胸を張った。
その結果として、21対0の完封勝利。ボーナスポイント(3トライ差以上の勝利には勝点1を追加)がつく快勝だった。
そんな中でラッキーボーイ的な存在になっているのが、前節でNTTジャパンラグビー リーグワンデビューした23歳の山口楓斗だ。
同志社大学から昨年加入した山口は、167cm、76kgと小柄だが、スピードやステップワークに優れ、ランでの突破が最大の持ち味。彼にとって初のホストゲームとなった今節では、相手の大型選手の間をスルリと抜けて裏に飛び出すシーンが何度も見られ、そのたびにスタンドも大いに沸いた。
「先週はキックが多かったんですけど、今週は自分の強みのランのところもチームとして狙っていこうとなったので、そこが見せられて良かったです」(山口)と、果敢なプレーとは対照的な童顔をほころばせた。
また守備に関しても、後半20分の大ピンチに最後の砦となった山口が見事なタックルで相手を止めるなど、完封にも大きく貢献。本人も「気持ちで絶対負けないと思ってタックルに入りました」と言うように、メンバー中で最も若くて小柄な選手が見せた気迫が、ほかの選手にも火をつけたことは想像に難くない。
山口が先発に入ってからチームは負けなし。堀川隆延ヘッドコーチも「本当に将来が楽しみな選手で、これからもっと活躍してくれると思います」と期待を寄せる。
「(体が)小さいからといって負けないという気持ちが強いし、小さい選手に夢を見せられるようなプレーをしたいと思っています」と語った、今節のクラブ独自選定MIP(Most Impressive Player)。授賞式に拍手を贈ったレヴニスタも、今後も彼がチームに良い流れをもたらす予感がしたことだろう。
(前島芳雄)
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ
「みなさんこんにちは。今日の勝利を、まずはみんなで喜びたいと思います。本当に多くの方々に応援、支援していただきながら、なかなか勝利という結果を出せなかったので。ただ、チームはもがいた分だけ強くなったなと。今日の勝利については、本当にもがいてもがいて、いまのわれわれを表しているようなゲーム展開だったかなと感じています。今日、一番良かったところは、数々のラインブレイクをされたんですけど、そのとき常に人数で上回っていたということ。そういったプライドを選手たちは本当に80分間見せてくれたと思います。本当に自分たちの力を出し切っているかといえば、まだまだそうではないと思いますし、あまり先のことを考え過ぎずに、次の一戦に向けてまた強くなれる準備をしていきたいと思います」
──チームが良くなってきたというのは、急に何かが変わったというより、細かい積み重ねで良くなったということですか?
「そうですね。自分たちの“レヴズスタイル”というものを、この1年、2年……ずっとですが磨き続けてきている中で、敗戦続きでしたけど、例えば埼玉パナソニックワイルドナイツさんに接戦することができていました。これまでの試合、自分たちのセットピースからのアタック、ディフェンスに関しては、あともう少しこうすればというようなゲーム展開の中で、もどかしい部分がたくさんありました。それを毎試合、選手と自分たちのスタイルを発揮するために何が必要なのかという議論を重ねてきての今日だと思います。それはこれからも続くと思うんですけど、とにかく自分たちの“レヴズスタイル”という5ハーツの哲学をやり抜いていく覚悟というのが本当に必要だと思うので。そういった意味では、敗戦は続いていましたが、僕はチームとして成長し続けていたと思うので、その成長をこれから止めずに前進させていきたいなと思います」
──逆に今日、物足りなかったところは?
「前半は特に、たくさんの得点機会がありました。相手の22mに入ってのアタックとか、ラインブレイクしたあとのボールのつなぎなど、そういう取るべきところで取り切る力というのは、今日われわれの課題だったと思います。しっかりレビューして、次のゲームに生かせるようにしていきたいと思います」
──強みであるスクラムやラインアウトのところも、少しうまくいかないところもあったように感じましたが。
「そこはレフリーがあって、相手がいることなので、これはしっかり話をしないとわかりませんけど、改善できることは何か、しっかり詰めていきたいと思います」
──山口楓斗選手は、ジャパンラグビー リーグワンの2試合目で良いプレーをしていたと思いますが、どう見ていますか?
「元々、同志社大学時代に素晴らしい選手でした。ラインブレイク能力もあります。今日、アタックではラインブレイクしていくつか見せ場を作りましたけど、今日、彼が良かったのはやっぱりディフェンスだと思います。最後の局面での1on1でしっかりタックルして止めていました。本当に将来が楽しみな選手で、これからも、もっと活躍してくれるんじゃないかと思います」
──無失点に抑えての勝利というところについては、どのように評価していますか?
「さっき、少し言いましたけど、ウチのディフェンスラインを破られてピンチな状態のときに、われわれの選手のほうが密度があったということ。多くの選手たちがそこにバッキングアップに帰っていました。そういうシーンが今日、たくさん見られたと思うんですね。最後まであきらめない気持ちが本当にいろんな局面でたくさん見られたので、それが無失点につながった一番の大きなところじゃないかと思います。それは最後まであきらめないという気持ちの強さや、今日、絶対勝たなきゃいけないという選手たちの強い思いだったと思います」
──ブリン・ホール選手が、「コンビネーションが良くなってきた」と言っていましたが、ヘッドコーチはどう見ていますか?
「ブリン・ホールは、スーパーラグビーという最高峰のリーグで100試合以上出ています。本当に彼の持っているゲームコントロールというものがチームにフィットしてきた感じがすごくします。外国人選手が初めて日本に来たときというのは、なかなか言葉の壁やいろいろな壁があって力を発揮しづらいところがあるんですが、彼は積極的にチームに溶け込んでくれて、彼の持っているものが、もっともっと、これから良くなっていくんじゃないかと思っています。 特にゲームコントロールのところですね。うまくフォワードをコントロールしていますし、エリアに行く判断などもすごく良くなってきていると思いますし、これからもっともっと良くなると思います。特に相手陣22mに入ったときの判断を始めとしたゲームコントロールは彼の強みだと思います」
静岡ブルーレヴズ
クワッガ・スミス キャプテン
「本当に私たちのチーム、選手は今日、すごくよくやってくれたと思います。誇らしく思っています。しっかりとフェーズを重ねながら、向こうにフェーズを重ねられたときも、相手に最後までトライを許すことはなかったということ。これは自分にとっても本当に素晴らしいことだったと思います。自分たちにチャンスがあったときに、最後までトライを取り切れなくて逃してしまったところもあったんですが、今回はボーナスポイントを得ながらの勝利ということで本当に誇らしく思っています。今までやってきた厳しい時間のトレーニングを経て、こういう勝利がつかめたことを、とても誇らしく、うれしく思っています」
──今日戦っていて、グラウンドの中の選手の雰囲気とか声掛けなどにいつもと違いがありましたか?
「特にコミュニケーションや雰囲気が変わったというより、チームの中からというよりも、やはりホストゲームということでサポートしてくれるファンのみなさんの前でプレーしていたということが、すごく強みになったと思います。今週は雪が降る中で練習があったんですが、そのときの公開練習にもファンの方が見に来てくださって、寒い中、ずっと応援してくださっていました。そうやってチームのつらいときでも、キツいときでもしっかりとファンのみなさんが支えてくれたということが大きかったと思います。本当に感謝をしたいし、また支えてくれている皆さんにしっかりと返していきたいと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ
「まずは静岡ブルーレヴズ、勝利おめでとうございます。NECグリーンロケッツ東葛のファンのみなさん、ここまで足を運んでくださってありがとうございます。 前半40分は、自陣でプレーする時間がまず多かったので、それによってプレッシャーがかかって、トライにつながるというのが少し難しかったです。後半は、あと少しというところで、1個のパスなどで、次の人に渡すということができなかったところでトライにつながらなかった。結果、静岡ブルーレヴズはそういうミスを見てディフェンスができていたというところです。かなり接近したゲームではあったんですけども、やっぱりスタートのところで良くしないと勝つことはできません」
──レメキ ロマノ ラヴァ選手が「どう変えたらいいかわからない」という話をしていましたが、ヘッドコーチとしてはどんなお考えですか?
「まず、次の仕事に進むということが大事です。まだ、試合はたくさんあるので、その中で今までやってきた努力を実らすということが大事です。ラグビーというのは何が起こるかわかりません。来週からまた(試合の)レビューをして、どういう改善をしていけばいいかということをまず考えて、次につなげたいと思います」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン
「まずチームとしては、やりたいラグビー、やりたいことをうまくできていなかった。攻めて、何回もチャンスがあったけど最後に取り切れなかったから……ちょっと今日はしんどいです。静岡ブルーレヴズはフィジカルのバトルでもほぼ勝っていて、ブレイクダウンもそうだけど。何をやればいいのかわからない。ずっとここ6試合続いていて全然勝てないから、何を変えればいいのかわからないです」
──今日試合をしている中で、静岡ブルーレヴズに対して優位に立てていたなと感じたところは?
「個人的にはボールが回ってきたら何かできると思っていたけど、そこまで全然回ってきてないし、外まで運べないように(静岡ブルーレヴズが)ディフェンスをうまくやってきて。サポートが来ても、転がしたり、フィフティ・フィフティのボールしか来ていなかった。ウチのラグビーは、ワイドに振って勢いをつけて、そこから前にどんどん攻めるけど、たぶん1フェーズか2フェーズまでしかできてなくて、そこからターンオーバーとかミスが起こって。プレッシャーの中でしっかりスキルを成功できないと、このリーグは試合に勝てないです。最初の30分もそうだけど、すごくミスが多かった。後半になっても同じような感じでした。ロバート(・テイラー ヘッドコーチ)が言ったように前を見ないといけないけど、次の試合に関しては、相手を意識してやるより、自分たちにフォーカスしてやったほうがうまくいくと思います」