2023.02.05NTTリーグワン2022-23 D1 第7節レポート(トヨタV 34-44 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第7節
2023年2月4日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 34-44 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

アンダードッグでは終われない。
RWC覇者が説く「信じて団結すること」の大切さ

後半からピッチに入ってチームに火をつけたトヨタヴェルブリッツのウィリー・ルルー選手

前半を終えて10対36。ホストチームのトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)は、初先発のウイング山口修平が見事なトライを決めたものの、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに5トライを奪われるなど、一方的な展開となっていた。

だが後半は、“緑の雷神”が本来の姿を取り戻す。カギになったのは南アフリカ代表のウィリー・ルルーだった。2019年ラグビーワールドカップの優勝メンバーでもある世界最高峰のフルバックが、山口に代わり後半開始からピッチに立った。

「まだ0-0の状態だと思って、ベーシックなところに立ち返ってプレーをしよう」と、ハーフタイムに声を掛けたというウィリー・ルルー。シンプルに、それでいて仲間の特性を生かすようにボールをコントロールすると、トヨタVは見違えるように息を吹き返した。

わずか15分で、立て続けに3トライを奪い返して7点差まで詰め寄る。だが、そのあと、敵陣に押し込み続けても、あと1本のトライとコンバージョンキックがなかなか決まらない。ピッチ上で何度も組んだ円陣の中で、ウィリー・ルルーは中心になってチームメートを鼓舞した。

「みんなには『Believe(信じる)』と言葉を掛け続けました。前半の大差で、ほとんどの人は自分たちにはチャンスがない、アンダードッグ(弱者)だと思っていたと思います。その中でも自分は最後の笛が吹かれるまで、パッションをチームメートに見せ続けようと徹底していました」

10点差で迎えた残り2分。ウィリー・ルルーは得意とする正確なキックパスで、ヘンリー ジェイミーのトライを御膳立てし5点差に詰め寄る。もう1トライで同点の状況にまで持ち込んだが、最後の最後にトライを奪われ、トヨタVは勝点を得ることができなかった。

今季のトヨタVは、この試合のように前半と後半で違うチームのようになることが多い。上位を相手に圧倒する力もあるが、下位に主導権を握られっぱなしになる時間帯も長くある。80分間、自分たちの力を出し続け、接戦を勝利に変換するためには何が必要なのか。ファンタジスタの答えは明確だった。

「やっぱり(自分たちの力を)信じることだと思っています。もう1回グループとして団結すること。今日の後半のパフォーマンスを今後に生かしてやっていきたいと思います」(ウィリー・ルルー)

7戦を終えて2勝5敗。伝統あるチームが、このままアンダードッグだと思われていいはずがない。後半立ち上がりのような力をフルタイムで出し、上位をなぎ倒す姿をファンに見せたい。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツ

トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)のベン・へリング ヘッドコーチ

トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ

「2分割していた試合だったと感じています。もちろん前半の結果に関してはチームとして非常に悔しい思いでいます。後半はチームの抵抗力、そして個性を出してくれた部分はあったのですが、最後まで超えることができませんでした」

──今後の戦いとして失点を減らすことを考えたいのか、もっと攻撃力を上げていきたいのか?

「もちろんトライを取りたいと考えています。後半のパフォーマンスに見られたような成果を、試合全体をとおして成し遂げることができればと思っています。繰り返しになりますが、トライを取りたいので、40分ではなく80分継続してできるようにやっていきたいと思います」

──後半からウィリー・ルルーを投入した意図と実際に起きた変化は?

「ウィリー(・ルルー)はフラットで、ボール運びの展開が得意な選手です。その中でも特にチャンスのときに外の場面を使うところや周りの選手へのオーガナイズ、声掛けといったところで、より効率的にフロントドアの選手、そして裏の選手を使うことができたので、そういった部分では、チームとして自信を得られたと考えています」

──初先発の山口修平選手の評価は?

「山口に関してはすごくいいパフォーマンス、内容だったと思っています。彼は生粋のアスリートで、そのアスリート性を生かしたトライが今回見られました。今後が楽しみな選手です」

──ウィリー・ルルー選手を先発で起用するプランはなかったのか。また2勝5敗という成績についてどう感じているのか?

「ピーターステフ・デュトイを試合直前で変更した関係、元々外国人選手登録の関係、そしてティアーン・ファルコンがいまはいいパフォーマンスをしているので、彼を10番で出す予定でいました。この敗戦に関するチームの学びとしては、常にチームが求めるような結果が得られるわけではないということで、もちろんチームとしてこういった局面の中でコネクトし続けることがチャレンジだと考えています」

トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)の古川聖人 共同キャプテン

トヨタヴェルブリッツ
古川聖人キャプテン

「ベン・へリング ヘッドコーチからもあったように、前半と後半で異なるゲーム展開になってしまって、前半はゲームをコントロールすることができずに相手にコントロールされてしまった。後半は自分たちがコントロールできたんですけど、ポジティブな面を言うと、今までの自分たちなら、前半を引きずってしまって、後半も同じような展開になってしまうことが多かったですけど、そういった前半から切り替えて、後半は自分たちが完全にゲームをコントロールすることができた。それは自分たちのチームとしての成長を感じたゲームでした。ただ最後、勝って終わる、フィニッシュをしっかりやり切るところができなかったので、そこはまだ反省点かなと思います」

──後半に注意したところは?

「前半はかなりボールを動かして、自分たちで自分たちを苦しめるようなゲーム展開を作っていました。後半はとてもシンプルにキック、ボールキャリー、シンプル、シンプル、シンプルにゲームを作っていくことによって、自分たちがリズムをつかんで、その中で相手が反則をしたときに、しっかり思い切って攻めることができたので、そういったところはシンプルにすることで、後半は自分たちに流れを引き寄せることができたと思います」

──ハーフタイムにそうしようと意識をしたのか?

「全員の共通認識として、『ちょっといまのままではダメだよね』という感覚があったので、シンプルにして、その中でスタンドオフがウィリー(・ルルー)に変わったので、ウィリー(・ルルー)がそこをうまくコントロールしてくれたと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)のフラン・ルディケ ヘッドコーチ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「非常にファンタスティックな良いゲームでした。前半は完全に(試合を)コントロールしていて、プレッシャーを掛けて点数に変えていました。後半は自滅したと思います。自陣に釘付けになり、トヨタヴェルブリッツさんもチャンスをしっかりモノにされていました。すごくハングリーにやられた結果だったと思います。でもそれが試合というかラグビーだと思います。ただ、その中でもここにいる(ピーター・ラピース・)ラブスカフニや(バーナード・)フォーリーたちリーダーがしっかりとチームをリードして、自陣で釘付けになった場面でもしっかりと戦ってくれました。最後のトライは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのラグビーを象徴するようなトライでした。それもいい結果につながったと思います。
学びだったり修正が多かったりという試合ではあるのですが、その中でもそういう基礎的なところ、別に難しい話ではないと思うので、来週はオフに入りますが、5連勝できたのはいい結果でしたし、シーズンはまだ途中なので、しっかりと休みを過ごして、また新たなエネルギーを生みつつ、自分たちのやってきたプロセスを、さらにいい形で終われるようにもっていきたいと思います」

──前節もリードしたあとに追い上げられたが原因は?

「そこも両チームの戦いです。エネルギーの戦いみたいなところで、リコーブラックラムズ東京戦についても、今回のトヨタヴェルブリッツ戦についてもそうやって前半はプランを遂行していました。相手チームのやりたいことをやらせない、そういう信念を曲げさせるみたいなところができればと思いますが、逆に今日もやられてしまった。先週のリコーブラックラムズ東京戦に関しては、イエローカードが出てから勢いを向こうにもっていかれて、そこをうまく使われてトライを奪われました。今週は、ピーター・ラピース・ラブスカフニも言っていたように、そういう基礎的なところができなくなって、逆にトヨタヴェルブリッツがそういうところを取っていった。もちろんラグビーですし、どこのチームが相手でも起こり得ることです。ただそこで大事なのは、やっぱりメンタルだったり、どれだけ一つになれるかだったり、そうやって結果を求めてファイトし続けた結果が、今日のこういう結果につながったと思います」

──ハーフタイムの指示は?

「ハーフタイムのメッセージ自体は良かったと思います。スタートは良かったですし、そのプロセスを追求して、自分たちをフォーカスしてやっていこうと話をしていました。トヨタヴェルブリッツさんが攻撃的に来ることは分かっていたので、味方とのコネクションのところ、あとはハードに行くところは話をしていましたし、そこはできていたと思います。その中で2本いいプレーがあって、前半のペナルティの3点につながったところ、そしてラストのカウンター。トヨタヴェルブリッツさんが追いかけていた状況でトライにもっていけたところ、その2点は良かったと思います。今回に関しての課題は、とにかくイグジットのところで、いい学びだったと思います。その修正はもちろん大事なところで必要なのですが、そういうところができれば、そのプレッシャーは挽回できると捉えていますし、あとはそれほど大きな問題ではないと捉えています」

──修正点を挙げるとしたら?

「先ほど言ったところと重なりますが、連続してペナルティを犯してしまったところ、ロールアウェイとか細かいところなのですけど、そういうのを続けると相手にプレッシャーをかけられずに、逆に相手にモメンタム(勢い)が生まれてしまうので、また映像で確認したいと思います。事実に基づいて、レビューしたいと思います。あとは、エリアをしっかり挽回できなかったところ。キックゲームだったりブレイクだったり、いろいろあるんですけど、ただ良かった点は3、4回ありましたが自陣に釘付けになって、そこでのフェーズをトヨタヴェルブリッツさんに重ねられても全員でハードワークしてくれた。そこの努力は良かった点だと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)のピーター ・ラピース・ラブスカフニ ゲームキャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ピーター・ラピース・ラブスカフニ ゲームキャプテン

「フラン・ルディケ ヘッドコーチも言っていたように、前半はすごくコントロールしていて、プレッシャーも掛けていて、チャンスをモノにしていたんですけど、後半はそこの遂行力のところが足りなくて、逆にトヨタヴェルブリッツさんがしっかり点数に変えていきました。ですが、そこもどれだけチームが一つになれるかということと、しっかりやり続けて最後の最後に挽回してああいうトライになったところは、今後につながると思います」

──苦しい時間でチームをまとめるためにどう声を掛けたのか?

「試合の中では、小さなミスがあったんですけど、あとは実際の遂行力、実行力が足りなかった中で、ポジティブなことは、そうやってプレッシャーが掛かった状態でもファイトし続けて、ハードワークし続けたところ。自陣を出たあとにもう1回ミスをしてまた自陣に釘付けになるところも多かったですけど、そこに関しても選手の感情としては、『もうできない』とかそういうネガティブなことは考えていなくて、全員がもう1回仕切り直して、そして敵陣に入ってというマインドだったのでファイトし続けられた。そしてそれを最後までやり続けたところが、ハラトア(・ヴァイレア)選手のトライにつながったと思うので、そういう信念というか信じる力があったと思います。だからそこも結局どれだけ一つになれるか、どれだけ自分たちがやることができるのかというところだと思います」

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