NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第18節(リーグ戦)カンファレンスB
2025年5月10日(土)14:30 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 14-37 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
悲喜こもごもの最終戦。伝統と新しい力のハイブリッドで来季こそは上位進出を
この試合を、今季の最終戦であり、来季へのスタートと位置付けたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)であったが、プレーオフトーナメント進出を決めているクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)との現状の差を感じさせる試合になった。
「まるで今季を要約する最終戦だった」と、トヨタVのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチはこの試合を振り返った。ストレスの溜まる時間帯がありつつも3位のS東京ベイと互角に渡り合えるシーンもあった。しかし、80分間をとおして違っていたのはディテールへのこだわり。細かなところの積み重ねが得点差であり、順位の差になった。
例えば、前半の攻防では相手に13点を先行された。立ち上がりの悪さは今季のトヨタVの悩みの種であったところ。ゴール前で粘り強く守る姿勢は見せていたものの、先にペナルティを犯してしまい圧力を受け続けてしまった。その数は前半だけで8本もあり、特に前半終了のホーンが鳴ったあとに奪われたトライはもったいなかった。
もうワンプレー指摘をしたいのは、後半39分に奪われた最後のトライ。こぼれたボールに誰も反応できずにピックアップされ、そのままトライを奪われてしまった。細部にこだわってプレーをすれば、防げた失点だったかもしれない。
それでも良い時間があったのも事実である。ベテランの彦坂圭克は「特にフォワード戦で押せているときは自分たちのラグビーができていたし、モールもスクラムもやられていたという感覚はなかった」と語る。フォワードの強さはトヨタVの伝統。そこで相手にやられてしまう場面があったことも低迷した要因の一つなのかもしれない。

今季もキャプテンを務めた姫野和樹は、試合終了後のセレモニーで「来季はトヨタVらしさを取り戻す」と誓った。それは泥臭くても絶対に負けず、一歩でも前進すること。姫野は「そういうメンタリティーが自分たちのラグビーを育んできた」と、気持ちの重要さを語る。
優勝候補にも挙げられるほどスコッドがそろった中で、まったくかみ合わなかったシーズン。それでも若手の台頭などポジティブな面もあった。伝統と新しい力のハイブリッドで来季は上位争いに食い込みたいと思わせる最終戦だった。
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「今日のゲームはまるでシーズンの要約であるような、そういった試合内容で非常にフラストレーションの溜まる時間帯もありました。またその反面、ゲームの内容に関しては非常に満足できる部分もあったように思います。チームとしては対等に戦っていながらもエラーを起こしてしまい、それをトライにつなげられてしまう、そういった細かいミスをなくしていく必要があると思います。プレー中にボールを落としてしまったり、相手にクリーンにボールを取られてしまったり、そういった状況が3つくらいあって、簡単に相手に取られてしまった場面がありました。とはいえトップ3の相手に対して、対等に戦えている場面が長かったと思いますので、今後のチームの成長を楽しみにしています。プレシーズンはチームとしてよりハードに練習に取り組んでいく必要があります。また、今季で退団する選手、新たに加入する選手もいますので、チームの現状の一つであるサイズ感、このリーグで勝つためにはよりフィジカルが必要だと認識しているので、そういった方面からチームの強化を続けていきたいです。またウィリアム・トゥポウに関しては本日またけがをしてしまいました。本人、そしてチームとしても非常に残念に思っています。今季、チームは非常に細かなところを継続して取り組んできましたが、今後もそういった部分に継続的に取り組み、そしてハードワークを重ねていくことが重要です。
最後に、チームが大きく成長した面として、リーダーシップグループの強化というところが挙げられます。姫野和樹、彦坂圭克を中心に大きな進歩を見せてくれました。来季はさらにリーダー、そしてチームの支柱として成長することが期待できます。このリーグに関しては、どのチームも勝ちたいと思っている、非常に競争率の激しいリーグです。その中でわれわれとしても成長が必要ですし、チームとしては今季の進歩において満足している部分もあります。その一つが先ほど挙げたリーダーシップであり、チームの未来です。MIRAI MATCH(練習試合)では1敗のみでしたし、チームの層の厚さはより評価することができます。最後に今季応援していただいたファンの皆様に心より感謝を申し上げたいです」
──細かなミスはシーズンを通した課題だったと思いますが、修正するために何か方策はありますか。
「細かなミスを減らすためには精度を高める必要があると思っています。今日の試合に関しても試合の終盤でキャリーをした際にボールをこぼしてしまうという場面がありました。ボールを大事にし、ターンオーバーしないというところが重要です。また、そういったプレーを80分間やり切ることが重要です。今日の試合の中でもブレイクダウンのクリーンをする際に、ラックを通り過ぎてしまうなどのミスがありました。自分たちの与えられている役割、それを高い精度で集中力切らさずに実行するといったことが重要で、それはメンタル的なことであり、フィジカル的なことでもあります。またそういった実行力というものを、これだけテンポの速いゲームの中、プレッシャーの下で遂行する必要があり、それは練習での取り組みから始まると思います」
トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹キャプテン
「非常に残念に思っています。ただ、これだけ負けながらもこうやってファンの人がたくさん足を運んでいただけたこと、まずはそこに感謝をしたいと思っています。ゲームに関しては、課題は明確だったと思います。ボールをもっと大事にしないといけなかったですし、ペナルティもかなり犯してしまいました。そうなると自分たちのラグビーができなくなってしまいます。それはこの試合でもすごく表れたと思っています。ただ、スティーブ(・ハンセン)が言ったように、良い場面もたくさんあったと思うので、そういったところを伸ばしつつも、来季につなげられるところがあったのは良かったと考えています」
──最終戦セレモニーで「トヨタVらしさ」という言葉を使いました。今季はそれを見失っていると感じる時期もありましたが、あらためてどんな思いで口にしたのでしょうか。
「僕が思うトヨタVらしさというのは、泥臭く一歩でも前へ、一歩でも相手より勝ることです。カッコ悪くても泥臭くても良いし、そういったメンタリティーというのが自分たちのラグビーを育んできたと僕は思っています。それを自分自身もう一度取り戻したいと、イチキャプテンとして思います。それは自分自身の大事なものでもあるので、そこを常に見せ続けるということがまずは自分の仕事だと考えています。来季はそういったメンタリティーをもって戦っていけたらいいかなと思っています」
──姫野選手個人としての今季を振り返るとどんなシーズンでしたか。
「ケガをしたらアカンですよね。そこに関してはコントロールできないことかもしれないですけど、自分でもっとケアをするとかしないといけないと思いました。(シーズン中に)チームを離れるということは良くないと思うし、けがをしたら自分の成長も止まってしまうので、しっかりと一貫性のあるパフォーマンスをグラウンドで出し続けるというのがリーダーとして必要です。第3者目線で見ることが多かったシーズンでしたが、そこがまずは反省点かなと考えています」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「ここのスタジアムの施設というか、環境がすごく良く、初めて訪れましたがいい経験ができたと思います。チームとしてはノックアウトステージ(プレーオフトーナメント)を見据えてというところで、とても強いパフォーマンスを見せてくれて満足の結果でした」
──プレーオフトーナメントに準決勝から進出できる2位以上に入れる可能性もあった試合でしたが、選手たちに意識させたことはどんなことでしょうか。
「まず、自分たちは先週ミスが多く、そのミスをどれだけ改善できるか、ゲームキャプテンのバーナード・フォーリーが言っていたようにトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんもいいチームで、リスペクトしていますが、チームとして改善されていました。勝つためにしっかり自分たちがやるべきことをきっちりやっていくことを求めました。
もちろん、結果として(レギュラーシーズン)1位、2位もあることは頭に入っていましたけど、自分たちで何かを言うとか、そこにフォーカスすることはなかったです。その結果としてボーナスの1ポイントが最後に取れました。そういうパフォーマンスをとにかく重視しました」
──プレーオフトーナメントを順調に勝ち進むと3週連続の試合となります。
「プレーオフトーナメントに残ることができたことはうれしいです。ノックアウト(の戦い)で自分たちがどれだけやることができるのか、そのチャンスを獲得できたことはうれしいですし、楽しみです。ただ、まずは1試合ずつですので、日曜日の準々決勝、東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)さんとの試合に備えていく。その前にしっかりリカバリーして、まずは1日1日でスペシャルな1週間にしていきたいと思いますし、日曜日の試合で勝ちにつなげられるように、いい勢いをもって進めていきたいと思います」
──その東京SGの印象を教えてください。
「順位表を見てもらえば分かるように、本当にラクなシーズンではなくて、東京SGさんに関しても6位に入るためにチャレンジして、一生懸命やってきたチームです。来週の火曜日からまずはプランを立てて、相手をしっかりリスペクトして、良いチームだと踏まえた上で準備をしていきます。ボールをキープするところはトヨタVさんと似ていて、そこも準々決勝を踏まえていい準備ができたと思っています。ただ、そこもいろいろなところにこだわるのではなく、まずは自分たちにフォーカスして、それができれば相手チームからしたら負かすことが難しい、タフなチームになれると思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
バーナード・フォーリー ゲームキャプテン
「今日の試合は良いチャレンジができたと思います。トヨタVさんは前回対戦したときよりもすごく良くなっていました。いろいろなエリア、分野で想定してボールを回してくる、ボールをアライブし続けてくるところに対して、われわれはしっかりカウンターを打つことができたと思いますし、こういう暑いコンディションの中、しっかり集中してやってくれました。結果としては満足していますし、レギュラーシーズンをいい形で終えることができたのは満足していますけど、ここからも1日1日しっかりやることをやっていきたいと思っています」
──終始、自分たちの流れで試合をしていましたが、チームメートにはどんな声を掛けていたのでしょうか。
「どれだけ試合に集中できるかというところで、トヨタVさんもいろいろアタックしてくる中で、自分たちのスタンダードをどれだけやれるか。どれだけ準備したこと、今季やってきたことを実行できるか。言い方としてはターゲットをしっかりというところで、ディフェンスから自分たちのチャンスにつなげる、ターンオーバー、アタックにつなげていくことが今日はしっかりできたと思いますし、選手たちも集中して、最後のトライもプレッシャーをしっかりと掛けることができていたと思います」