2023.02.07NTTリーグワン2022-23 D1 第7節レポート(GR東葛 0-45 埼玉WK)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第7節
2023年2月5日(日)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 0-45 埼玉パナソニックワイルドナイツ

2試合連続の完封負けも、百選錬磨の男の復帰はこれからのチームを変える

NECグリーンロケッツ東葛の田中史朗選手。「自分の役割は声を掛けること」

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)にとって約1カ月ぶりのホストゲームは、0対45と大差で敗戦を喫し、開幕から6連勝とリーグを席巻する王者・埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の圧倒的な力をまざまざと見せつけられる形となった。

「1点も取れずに終わってしまったので、僕がもっと声を掛けたら良かったと思います」

試合後、そう反省の弁を口にしたのは田中史朗である。

日本代表として75キャップを誇り、過去3度のラグビーワールドカップ出場経験を持つスクラムハーフは、今節の埼玉WK戦が今季の初出場となった。
出場機会がなくともチームにおける田中の存在感は絶大だった。若手選手たちは田中のラグビーに向かう姿勢や、グラウンド外の振る舞いから多くを学び、それを成長の糧にしている。彼の日々の姿勢や振る舞いについては、ロバート・テイラー ヘッドコーチも「田中選手の影響力は大きく、チームが良くなるように日々やってくれている、GR東葛にとってはすごく大切な選手」と称賛の言葉を述べた。

田中が投入された後半19分の時点で、スコアは0対38と大きく開いていた。意気消沈のチームに対し、グラウンドに立った田中は仲間を鼓舞した。

「特にフォワードに声を掛けてエナジーをもっと持ってもらうようにしました。自分の役割は声を掛けること。僕もいままでの人生で負けたことはいっぱいありますし、ハイランダーズの1年目はずっと負けていました。そういうときにどう声を掛けるか、チームをどういうふうにアップさせるかというのは自分の経験から落とし込みたいと思います」

後半34分には尾又寛汰のランからGR東葛が一矢報いるトライを決めたかに見えたが、TMOの結果ノックオンの判定となり、GR東葛は前節に続き2試合連続で無得点に終わった。試合全体を通じても、5mラインを越えるエリアまで攻め込む場面は何度かあった。しかし、あと一歩インゴールには届かなかった。田中は「集中力が足りなかったので、もっと練習中から口を酸っぱく言って、トライを取り切る意識を持ってもらいたい」と苦言を呈した。さらに前後半の立ち上がりに失点が多い点についても「スイッチが入ったときのディフェンスはしっかりできているけど、前半始めにポンポンと取られてしまったようにスイッチが入るのが遅い」と言い、攻守両面におけるチームの課題を指摘した。GR東葛が改善すべき点は多い。

前述のとおり、2013年のハイランダーズは負けが込み、田中は苦しいシーズンを経験した。しかし2年後の15年、ハイランダーズはスーパーラグビーで優勝を成し遂げている。つまり田中は「どん底からはい上がり、チャンピオンになった」という稀有な経験を持つ。

GR東葛は数多の激闘をくぐり抜けてきた名手から、この先もさまざまなことを学び得る。この苦境を乗り越え、強いチームになるために。

(鈴木潤)

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)のロバート・テイラー ヘッドコーチ(左)、レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ

「まずは来てくださったファンのみなさん、ありがとうございます。それから埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)は勝利おめでとうございます。相手の埼玉WKはバックスもフォワードも強いチームなので、チャンスをつかまなければ、ミスを犯してしまえば、相手に逆に突かれてしまいます。今週、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)はブレイクにいこうということでリスクを負ったプレーをしましたが、そういうことをすると間違ったプレーをした場合にはリスクになるということは間違いないと感じました」

──田中史朗選手が今シーズン初出場しました。これまで試合に出ていなくてもチームに良い影響を与えていたと思いますが、田中選手の影響力、存在感をどのように評価していますか?

「田中史朗選手は影響力の大きい選手で、クラブハウスでもすごく良い影響を与えてくれる選手の一人です。若手の中でも特に藤井達哉に対しては、すごく良い先輩として教えてくれるというのと、本当にチームパーソンで、チームを思って行動することも多いですし、チームが良くなるように日々やってくれています。GR東葛にとってはすごく大切な選手です」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「すべてヘッドコーチのコメントと同じです」

──5mラインを越えてモールで押し込む場面が何度かありましたが、そこからトライを取り切るためには何が必要でしょうか?

「相手が横から入ってもペナルティが与えられない。みんなフォワードは頑張って押しているけど、よく見てくれないとそれ以上は何もできない」

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1 カンファレンスA)のロビー・ディーンズ監督(左)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ ヘッドコーチ

「まずはありがとうございます。とても良い結果だったと感じていますし、選手たちから良いパフォーマンスが出たのではないかと感じています。バイウィークに入る前の試合だったということで、すごく堅い試合だったと思っています。全員に出場機会がありましたし、特に長田智希選手については3試合連続出場ということで、とても誇りに思います。特に5連戦だったので、次の連戦に向けてとてもワクワクしています」

──今日は長田選手がトライを決めました。最近彼を先発で起用していますが、どういうところに期待して、どういうふうに応えていますか?

「彼に与えているチャレンジに向けてすごく良い反応を示してくれていると感じています。チャレンジに対して乗り越えてくれている、たとえば、彼のパフォーマンスのレベル自体もそうですし、フィジカルのところでもジャパンラグビー リーグワンのレベルに合ってきていると思います。それだけではなくて、とても賢いプレーをする選手だと感じていて、対戦相手に大きい選手がいるにもかかわらず、脅威と感じずにフィジカルに当たっていく姿勢は良い反応だと感じています」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「勝ったことはハッピーですし、ボーナス点5を取れて、この5連戦が終わったことはすごく良かったと思います。ゲームの中では点数をたくさん取りましたけど、反省する点はたくさんあって、ペナルティの部分は自分たちのモメンタム、勢いというのを止めてしまう一つの要因になると思うので、そこに関してはすぐに修正していかなければいけないと思います。でも、チームメンバー23人はその役割を果たすことができましたし、そのときどきで良い判断をしながら形だけじゃないプレーでもゲームを動かすことができたので、よくコネクションができてきたなと、だんだんチームとして良くなってきているのを感じています。
そういうところをこれからも伸ばしていきたいですし、修正するところを修正しながら次の6連戦に向かっていきたいと思います。が、まずはこの1週間、体を休めて、この5試合はだいぶ体も当てましたし、結構タイトなゲームがたくさんあったので、しっかり1週間休んで、しっかりエナジーを溜めて、次の6連戦に向かいたいと思います」

──前半、自陣に攻め込まれてからの相手のラインアウトでペナルティが増え始めましたが、その要因をどう分析していますか?

「それはプレッシャーが掛かっているので、NECグリーンロケッツ東葛さんが掛けたプレッシャーによってペナルティを犯してしまったと思いますし、それを2回繰り返してしまって、レフリーの川原さんからも『次(ペナルティが)起こったときにはイエローだよ』ということは言われたので、そこからペナルティをしないところに切り替えることができたと思います。要因としてはプレッシャーが掛かっているところだと思います。そのペナルティは、遅いサックをしてしまったのと、ジャンパーが飛んでいるときに入ってしまった、2個のペナルティだったと思うんですけど、そのペナルティは一人ひとりの判断でどうにでもなるという感じなので、その判断は良くしていきたいと思います。それはグラウンドの中でのコミュニケーションで、それからはなかったと思います」

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