豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

グラウンド内外で着実な歩み。S愛知の努力は花開くか

いよいよ後半戦に突入するNTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2。豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は、全勝で首位を快走する浦安D-Rocks(以下、浦安DR)と対戦する。前回対戦時は16対55と完敗を喫した相手。どれだけ自分たちのラグビーを押し出せるかが焦点になる。

今季からディビジョン2に昇格し、ここまで3勝2敗と、ディビジョン1との入れ替え戦に参加できる3位に位置している。

目標とするディビジョン1昇格のため、勝敗に左右されることなく、全員が努力をする姿勢をここまで貫き通してきた。前節から3週間空いても、その期間をチームとしての成長にフォーカスすることで、後半戦に向けた準備を進めている。その成果を浦安DR戦で発揮し、そこで得られた収穫や課題をもとにまた努力していく。そういったサイクルがブレることはない。

また、グラウンド内だけでなく、愛知県内にあるラグビーチームとして努力し続けてきた成果も現れ始めている。

帝京大学に所属し、アーリーエントリー制度を使ってS愛知に加入している岡本泰斉は、地元・愛知県東浦町出身。S愛知の選手でもあった父親の影響で、ラグビーを始めた。小学生時代に所属した刈谷ラグビースクールは、現在シャトルズラグビースクール刈谷として活動中。普段、選手が練習しているグラウンドを使って、トップチームのコーチ陣が指導にあたることもある。

地域に根差した活動を続け、地元出身選手が力をつけて帰ってくる。この流れを「理想的なモデルケース」と語ったのは徳野洋一ヘッドコーチだ。

「合流して間もないので、彼が自身の良い部分を出せるような環境作りを意識している」(徳野ヘッドコーチ)。

岡本も「スタッフの方も含めてコミュニケーションを取りやすい環境にいるので、成長につながっている」と、その意図を感じている。

「アカデミーの子たちや地元の方に、『ラグビー選手ってカッコいいな』と思ってもらえるようなプレーをしたい」(岡本)。

S愛知はグラウンド内外で着実に歩みを進めている。

(斎藤弦)

この試合、リザーブとして出場予定メンバー入り。スクラムハーフの岡本泰斉選手


浦安D-Rocks(D2)

たどり着いた新天地でのデビュー。遅れてきた“新戦力”が目指す場所

前節の釜石シーウェイブスRFC戦に勝利して首位固めに成功した浦安D-Rocks(以下、浦安DR)。しかし、またしても課題が噴出した。前半を38対0の大差で折り返しながら、後半は26対26のタイスコアに。試合終盤に立て続けにトライを奪われるなど、後半に失速してしまう内容を改善できなかった。

「油断しているとか簡単な問題だけではないと思っていて。けがなどで急にメンバーが代わるアクシデントもこれまでありました。ウチは良くも悪くも新チームで、新しいサインやシークエンスの中、慣れないポジションに入ったりすると、どうしても崩れることがあると思います。新しいチャレンジをしていることもあります。でも、やっぱり心の油断もあると思うので、それを絶対に無くしていこうという声掛けはチーム全員でやっています」

プロップの竹内柊平は、メンタル面だけの問題ではないとしながらも、やはりメンタルを引き締めるのが肝要であると認識して取り組んでいる。

前節はアーリーエントリー制度導入後、最速デビューを飾った小西泰聖が話題となった。ただ、その若者に先んじて、浦安DR初キャップを飾った選手がいた。ジャパンラグビー トップリーグから数えてデビュー7年目となる庵奥翔太だ。

昨年10月に右足首の手術を行っていた庵奥は、12月末にようやく部分合流を果たす。そのときすでに、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン2は開幕していた。

「けがを治すだけでなく、若手としゃべることは意識していました。後輩たちがどう思っていたのかはわからないですけど(笑)、自分が若いときは不安な気持ちになることが多くて、年上の選手から話しかけてほしいなと思うこともあったので」

自分だけでなく周囲に視野を広げながら、年明けに全体合流。そのあと、すぐにフルコンタクトが可能な状態までもっていく。そして前節、ようやく新チームでのデビューを飾った。

「ずっと見ていただけだったので、それはそれは‥‥。やっと浦安DRのジャージーを着れたなと。試合に臨むチームメートの顔やプレーを近くで見るのは初めてでしたが、実際にプレーしてみてすごく心強かったし、楽しかったです」

庵奥には、チームの勝利だけでなく個人的な“借り”もあった。昨年、NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安のD1残留をかけた入替戦に出場できなかったことだ。

「すごく悲しい、不甲斐ない思いをしたんです。だから今シーズンは入替戦に勝って、そのときにグラウンドにいたい。去年負けたときからずっと、もやもやしているので、(その気持ちを)晴らしたいと思います」

また一人、頼もしい『新戦力』が加わった浦安DR。首位に満足することなく、全勝優勝とその先にあるディビジョン1昇格。そして、ディビジョン1優勝を狙う。

(沖永雄一郎)

けがから復帰して前節、ようやく新チームでのデビュー。浦安D-Rocksの庵奥翔太(あんおくかぶと)選手(手前)


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