2023.02.27NTTリーグワン2022-23 D1 第9節レポート(BR東京 64-10 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1  第9節
2023年2月25日(土)12:00 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京都)
リコーブラックラムズ東京 64-10 花園近鉄ライナーズ

ファミリーとつかんだ“我が家”での勝利。言い合い、受け止め、チームは結束した

先週初キャップ、そして今節初トライ。リコーブラックラムズ東京の佐藤康選手(右)

家族連れや女性同士での来場も多く見られた土曜日の昼下がり。ホストチーム・リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)は、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場に花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を迎えた。

試合は開始早々、ラインアウトのチャンスを得たBR東京がモールを形成し押し込むと、佐藤康がトライ。前半こそ14対10と接戦だったものの、後半はBR東京が8トライを奪って突き放し64対10で快勝した。

先週初キャップを獲得したばかりで、今節は初めての先発。そして前半2分に早速初トライを決めた佐藤は、後半14分にもモールで押し込み2トライ目を奪った。「うれしかったです。でも、チームが勝つことが一番」とあくまでもチームマンを貫く。

ピーター・ヒューワット ヘッドコーチも驚くような成長スピードを見せている佐藤。その秘訣は「なんでも素直に受け止めること」だと言う。「ファミリーだからこそ、強い言葉も受け止められます」。

リーダーグループの一人である柳川大樹も「先週の試合はフォワードがダメだった。そこはマストで改善しなければならなかった」と話す。そのためにも「僕たちはファミリー。言うことはしっかり言い合うのがファミリー」だとあらためて全員に意識付け、うまくいかなかったときにはみんなでカバーしようと意思を統一して挑んだ。

苦しいときに響いた、背中を押す応援歌。「プレーが途切れたときにふと聞こえる声が、助けになりました」とほほ笑む。一朝一夕には出来上がらない家族として、ようやくホストゲームでつかんだ勝利を喜んだ。

試合終了のホーンが鳴ってもなお、“ラスト駒沢”を楽しませようとプレーを続けることを選択したBR東京。10トライを奪い、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1での駒沢初勝利を祝った。

一方、敗れた花園Lは、前日のメンバー変更により二人のアーリーエントリー選手がピッチに立った。後半11分、最初にデビューを飾ったのは東洋大学の梅村柊羽。「憧れていた舞台。けがなく無事にデビューできて、まずは良かったです」と胸を撫で下ろした。「ルーキーなので、目の前のことに全力でガムシャラになるだけ。そういう意味では気が楽だった」と肝を据え、30分間堂々とした戦いぶりを見せる。「将来的にはパワーもあってスピードもある、チームにとって必要不可欠な存在になりたいです」と今後も見据えた。

そして、梅村から遅れること11分、青山学院大学の金澤春樹もまた大学4年生としてリーグワン初出場を果たす。「いまの自分にできることを全力でやろう」とグラウンドに入ると、この日はウイングとして役目を全うした。「ベテランの選手たち、そして一緒にピッチに立っていた選手たちにアドバイスをもらいながら試合を終えられた」と感謝する。「今日は緊張半分、ワクワク半分。これからはとにかく元気を、エナジーを与えられるような選手になりたいです」と、こちらも先を見据えている。

(原田友莉子)

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)のピーター・ヒューワットヘッドコーチ(左)、山本昌太ゲームキャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「本当に自分たちの結果に満足しています。選手のことを思うとハッピーです。

トップ4のチームと4戦続けて試合をした中で、自分たちとの差はそんなにないということが見えていました。そういう気付きもありながらハードトレーニングを続けてきました。そういった選手たちの姿勢をとても誇りに思いますし、何より今日はフォワードですね。この2週間はタフな状態が続いていましたが、月曜日にかなり厳しめのレビューをして。それを受け、フォワードたちがハードワークをし続けてくれた結果、みんなが誇りに思えるようなパフォーマンスを見せられました。彼らの頑張りを思うとうれしいです」

──前節はペナルティ数が多かったことも、レビューの中に含まれるのか?

「もちろんです。(日本語で)マイシュウ。先週は選手がリードしてミーティングをしてくれました。自分たちで互いにフィードバックできる環境は、すごく良い状況だと思います。

一番のポイントは、ディテール。そこに対して、自分たちが責任を持ってやろうと話ができて、それが今日の試合でも見せられたのではないでしょうか」

──前半多かったペナルティに関しては、どのようにハーフタイムで声を掛けたのか?

「ハーフタイムでのメインポイントは一つでした。期待していたほどうまくゲームが進まなかったのは、ペナルティの数が理由。みんなが頑張ろうとし過ぎればし過ぎるほど(うまくいかない)、というサイクルに入ってしまっていたんですね。ただ、頑張った結果なのでエフォート(努力)を疑う余地はありません。

なので、システムを守ったり、自分の仲間を信じたり。そういったところのディシプリンを保ち続けようと、ハーフタイムに話をして改善しました」

──初先発となった佐藤康のパフォーマンスについて。

「素晴らしかったと思います。公式には2トライですが、3トライじゃないかな、と。ネイサン・ヒューズと発表されたモールトライは、康のトライなんじゃないかなと思っています(笑)。

ここ6週間くらいで、彼はスポンジのようにいろいろなことを吸収してきました。PCを使って学ぶことも多く、特にこの2週間で大きな成長を見せてくれています。

今日はパディー・ライアンと一緒に組んでいたのもプラスに働いているかなと思います。パディー(・ライアン)からは『2年目の選手と考えると、すごく良いリードをしてくれた』と聞いています」

──プレーヤー・オブ・ザ・マッチのアマト・ファカタヴァへの評価について。

「(日本語で)ホント、スバラシイセンシュ。みなさんはラインブレイクやキャリーに目が行くと思いますが、118kgあるバックローなんです。それを考えたときに、ボールがないときの仕事量は本当に素晴らしいです。

もちろん成長もしていて、すごくいい選手になれると自分自身が気付き始めたというか……。準備のところがすごく変わってきました。でも、まだまだ成長できると思いますよ。チームメートを助けたいという意欲、気持ちが大きいと思います。

何より118kgのバックローがウイングぐらいのスピードを出せるのは、チームとしても助かりますね(笑)」

リコーブラックラムズ東京
山本昌太ゲームキャプテン

「フォワードで勝った試合かなと感じます。ラインアウト、スクラム、モール。フォワードがよく頑張ってくれたゲームでした。

結果が一つ出たことはもちろんうれしいです。タフなゲームが続いていて、その中でも互いに厳しいことを言い合いながら、厳しいレビューをしながら、それでもチームとしてバラバラにならずにコネクトし続けられた。毎週毎週しっかりと準備をし続けました。

先週の試合では自分たちにとって厳しいものがあった中でも、前を向き、チームとして準備できたことについてチームメートを誇らしく思います。チームとして成長できている部分です」

──月曜日に行われた厳しいミーティングでは、どんな言葉が交わされたのでしょうか?

「(フォワードのミーティングだったため)細かいことはわからないですが、先週のゲームを見ればわかるのかな、と思います。ああいう試合を見るのは選手としてはイヤですよね。自分たちがうまくできていない部分を見返し、どう改善するかは、選手にとってもコーチにとってもタフな時間でした。それを乗り越え、改善して、今日のゲームにつなげたのは本当に素晴らしいことだと思います」

──自身が決めたスクラムからのトライを振り返って。

「フォワードのプレッシャーがすべてかなと。フォワードのプレッシャーの結果、(自身の)トライにつながったのでフォワードのトライだと思っています」

──チームがコネクトし続けられたのはどういう要因があったのか?

「僕以外のリーダーたち、そして、リーダーでない選手たちの中にもリーダーシップを発揮してくれる選手がいます。しっかりとついていこうとする選手もいます。

いま、本当にチームがまとまっていると感じます。僕たちは家族なので。厳しいことを言い合いますし、そう言える関係をプレシーズンから築いてきたことが、シーズンでタフなゲームが続く中でもコネクトし続けられている要因かなと感じています」

──前半にペナルティがかさんだが、前半途中、そしてハーフタイムにはどういう声を掛けたのか?

「どうして自分たちにプレッシャーが掛かっているのか、と考えたらやはりペナルティ。前半3つぐらいペナルティが続いた場面で、レフリーとしっかりとコミュニケーションをとって、チームで話し合う時間をもらいました。そこで『自分たちはいまこういう状況で、3つペナルティが続いている』と現状を知り、『じゃあどうする?』と話をすることができました。

15人がしっかりと理解して、実行できたこと。それがこれ以上ペナルティを重ねない、自分たちにプレッシャーを掛けないことにつながったのかなと思います。ハーフタイムにも同じような話をして、それがうまく後半につながりました」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズ(D1 カンファレンスB)の水間良武ヘッドコーチ(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ

「前半は風下。ポゼッションもテリトリーも取れ、スコアも取れたのですが、もう少しスコアできるときに取りたかったですね。

後半はこれから、というときでしたが、相手の勢いにのまれてスキを突かれ、トライを取られました。最後まであきらめない姿勢は見せられたと思いますが、ディフェンスだけでは勝てません。アタックしないといけないところで、攻める機会が少なかったと思います。

一つひとつやっていくしかないので、今後も一つひとつ丁寧に成長できるようやっていきます」

──直前にメンバー交代がたくさんあったが?

「今週は試合前も含め、けが人が出てしまいました。これは私のスケジュールミスです。激しい練習を週の中でやり過ぎているので、そこが原因です」

──その影響もあり、アーリーエントリーの選手たちが名を連ねました。どういうアピールの結果、メンバー入りしたのか?

「梅村(柊羽)に関しては、先週行った埼玉パナソニックワイルドナイツとの11人制のゲームで一番良いパフォーマンスをしていたため、彼を選びました。金澤(春樹)に関してはバックスにけが人が多く、メンバーがいない中でメンバーに入ってきました」

──どういうところで激しい練習があったのか?

「ブレイクダウンですね。コンタクトもそうですし、ボールキャリー、タックル、ブレイクダウン。そこの量が多過ぎたところが私のミスです。けが人も多く出て、試合も選手が疲労した状態で戦わなければいけなくなりました。これは私のミスであり、選手に責任はありません」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「戦術以外のところで結果を振り返ると、感情で言えば『すごく恥ずかしい』というのが試合を終えた率直な感想です。ラグビーというコンタクトスポーツにおいて、体を張ってチームに愛を示す、という自分たちが大事にしたかったことができなかった。本当に悔しいですし、恥ずかしい気持ちです」

──具体的に恥ずかしい気持ちをどのようなときに感じ、どう改善しようとされたのか、また、それができなかった原因はどこにあると感じるか?

「僕は、フィジカルはニアリーイコールメンタルだと思っています。細かく分析すれば戦術的なミスがあったかもしれないですが、コリジョンで勝とうとする意思が客観的に、ファンの方から見てもなかったのではないかと感じました。組織的にメンタルを上げることはもちろんですが、個々人で『絶対に勝つ』という意思を出せるかどうかだと思っています。

来週はいつもよりミーティングが多い週に設定されています。もう一度、自分たちにとって(花園近鉄)ライナーズとは何なのか、どういうところを大切にしていきたいのか、大切にすべきなのかを見つめて、次の試合でお見せできるようにやっていきたいと思います」

──後半に相手を止められなくなった要因は?

「前半は風下なこともあり、ディフェンスでしっかりと我慢してキープボールでアタックしていこう、というのはある程度体現できたかなと思っています。後半は風上になったタイミングでキックを織り交ぜながらコリジョンバトルで勝っていこう、としていた中で簡単にトライを許す展開が続きました。メンタル的につながり続けることが難しかった。インゴールで話をしているときの空気感にも、少し一体感がなかったと感じます。

ディフェンスは一体感がないとできないと思っていますが、そういう一体感のなさが、プレーに引き込まれてしまったのだと現段階では思っています」

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