2023.03.05NTTリーグワン2022-23 D1 第10節レポート(埼玉WK 30-15 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第10節
2023年3月4日(土)15:00 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 30-15 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

首位攻防戦で「フルハウス」の快挙。日本代表スタンドオフ・山沢拓也が魅せた

「フルハウス」をNTTジャパンラグビー リーグワンで初めて達成してプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞、埼玉パナソニックワイルドナイツの山沢拓也選手

埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)が首位攻防戦を制した。

1位 埼玉WKと、2位 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の上位直接対決。序盤から球際で互いのプライドがぶつかり合う白熱の攻防戦となったが、埼玉WKが30対15でS東京ベイに勝利した。

上位対決は、日本代表スタンドオフ山沢拓也のペナルティゴールで幕を開けた。その後、S東京ベイにペナルティゴールを返されて3対3で迎えた前半25分、フィールド中央でパスを受けた山沢がハンドオフで相手をいなすと、鋭いステップでギャップを抜けていく。

一気に加速すると「山沢ロード」を駆け抜けてトライを決めた。そして風が吹く状況下、右45度からのコンバージョンキックも確実に決めてみせた。

埼玉WKは山沢のトライで勢いに乗るかと思われたが、S東京ベイの重量級フォワードのパワーに苦しめられた。ジワジワと押し込まれると、バーナード・フォーリーに3本のペナルティゴールを積み上げられて前半を10対12で折り返した。

後半も一進一退の攻防が続いた。均衡が破れたのは後半10分。快足を飛ばしてボールをキープしたマリカ・コロインベテのアシストを受けて、山沢がこの日2本目のトライ。17対12と逆転に成功した。仕上げは20対15で迎えた後半28分、モールの背後でボールを受けると、鮮やかなドロップゴールを決めて、8点差にリードを広げた。

「チームの全員が役割を果たしたことで、その結果、自分のところにボールが来た。自分が最後の役割を果たしただけ。ドロップゴールのシーンは、(アドバンテージの状況で)5点差だったので、入れば8点差になると考えて狙っていった」

最後は、後半39分に長田智希がダメ押しのトライを決めて引導を渡した。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた山沢は、トライ、コンバージョンキック、ペナルティゴール、ドロップゴールをすべて決める「フルハウス」をNTTジャパンラグビー リーグワンで初めて達成。熊谷スポーツ文化公園ラグビー場に集まったファンたちは、快挙を目撃した。

30点中25点を奪う獅子奮迅の活躍は、チームの勝利のために戦い抜いた証でもあった。

「フルハウスと呼ばれることは知らなかった。チームの勝利のためにプレーに集中した結果です。大事なゲームだったので結果を残せて良かった。この試合に勝つという目標を達成できた」(山沢)

首位をキープする埼玉WKは、3月11日14時から、秩父宮ラグビー場で行われるビジターゲームで、3位東京サントリーサンゴリアスと対戦する。

(伊藤寿学)

埼玉パナソニックワイルドナイツ

埼玉パナソニックワイルドナイツ(D1カンファレンスA)のロビー・ディーンズ監督(右)、坂手淳史キャプテン

埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督

「最高のラグビー日和でした。試合自体も、選手たちが期待に応えてくれたと感じています。ゲームは非常にフィジカリティーなゲームでしたが、選手のディフェンスを誇りに感じていますし、ここを乗り越えたことを誇りに思います。

平野(翔平)選手には、『おかえりなさい』と伝えたいです。長田(智希)選手は初めてウイングで出場した試合でのトライはとても喜ばしいことです。山沢(拓也)選手は言うまでもなく素晴らしかった。難しいゲームでしたが、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)さんにトライを取らせなかったことがすごく良かったところです。取られていたら厳しいゲームになったでしょう。

ラグビーという競技をリスペクトしたからこそ、勝利を奪うことができたと感じています。ファンの皆様へ『ありがとうございます』と伝えたいと思います。声援が選手の力になっています」

──「ラグビーをリスペクト」とは?

「人生はリスペクトから始まります。今日は相手をリスペクトしたと感じています。相手に対してしっかりとディフェンスをして、それによって相手を抑えることができました。リスペクトしなければ痛手があったと思います」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン

「9,000人を超えるファンの皆さまに来ていただいて、素晴らしい雰囲気の中でゲームができてうれしかったです。感謝を伝えたいですし、僕らもさらに盛り上がっていけるように、ラグビーの質を高めて、さらにエキサイティングなゲームができるようにしたいと思います。

チームの価値はディフェンスに見えると思います。ゲインを切られた部分、トライに迫られたシーンがあったのですが、スクランブルディフェンスで、プライドを見せることができたと思います。ディフェンスに関しては、誇りに思います。

細かいところでは、ペナルティがたくさんあったことを反省しています。そこが前半、自陣に長い時間いることになった要因ですし、失点はペナルティゴールによるものでした。

ハーフタイムには『特別なことをすることなく、全員が役割を果たすのが埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の強みなので、それをやり続けよう』ということを伝えました。全員が一つひとつの仕事をやり切ることができたと思います」

──ディフェンス面で相手にトライを許さなかった要因は?

「ディフェンスで大事にしていることは、まずは早くセットをすること。誰が誰を見るのかを明確にして、ラインスピードを持って前へ出ることを意識しています。意識レベルが高くなってきていると思いますし、全員が仕事をし続けることができるのが埼玉WKだと思います。22mラインのところでは難しい部分があったのですが、時間とともにクリーンにプレーすることができました。それを遂行できるメンバーがいて、システムがあると思っています」

──クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)の強みをどう考えて、どう消したか?

「S東京ベイさんの強みとして考えていたのは、フィジカルのところです。また、プレー選択の幅も相手の強みと考えていました。メインとしては、相手のフィジカルにどう対応するか、自分たちのプライドをどう表現するか、マインドセットのところを1週間かけて落とし込みました。プレーに関しては変えていません。マインドセットに関して、準備をしてきました」

──今日の勝利の意味は?

「僕たちにとって今日の勝利はこれからの成長につながると思います。勝って、試合内容を反省できるのはポジティブです。S東京ベイさんも、この負けがあって、さらにチームが強くなると思っています。どのチームも私たちに対してアタックしてくると思うので、この結果に満足することなく、成長できるようにしたいと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)のフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「こんにちは。まずは熊谷スポーツ文化公園ラグビー場でのゲームを楽しませてもらいました。両チームのファンの皆さまが良い雰囲気作りをしてくれたので、ゲームをエンジョイすることができました。

トップ2の対戦ということで、試合を楽しみにしていました。その中で良い形ができたのですが、埼玉パナソニックワイルドナイツさんとの差は、後半のラスト10分の戦いでした。追いつけるチャンスはあったのですが最後の精度が足りませんでした。

成長するための多くの機会をもらいました。この試合から学び、今後もハングリーに向上していきたいです。試合を振り返り、改善すべきところを改善して、次のゲームへ向かっていきたいと思います」

──「後半ラスト10分の差」とは?

「後半のラインブレイクで、もし、トライになっていたらビッグモーメントになっていたと思います。ただ、できた部分もあったので、悲観することなくこれからにつなげていきたいと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「前半は風上に立って、チームとしてはうまく戦えていました。(後半になって)風下に立ったときは、相手のプレッシャーを受けて、なかなか自分たちのペースにならず、チャンスでも取り切ることができませんでした。

その流れで、最後の10分で差が出てしまいました。このゲームから学びを得て、これからもタフなゲームが続くので、しっかりと準備してつなげていきたい。先を見ることなく一戦一戦、戦っていきながら、もう一度、(プレーオフで)埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんと対戦できるように努力していきたいと思います」

──後半、チャンスを作っていたが?

「相手に最後までしぶとくディフェンスをされてしまいました。自分たちがゴールに迫っても、相手の厳しいディフェンスが待っていました。

次に対戦するときは勝ちたいです。年々、埼玉WKさんに対してチャレンジできるようになってきていると思います。その上で、現実を受け止めて、これからも良い準備をしていきたいと思います」

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