NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第2節(リーグ戦) カンファレンスB
2024年12月28日(土)14:30 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 26-24 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
王者経験者同士の激闘。ホスト開幕戦勝利に導いた新スタンドオフの本能
埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)はホスト開幕戦で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に苦戦しながらも26対24の逆転勝利を挙げ、開幕2連勝を果たした。試合後、激闘を演じた両チームの選手たちに1万人を超える観客から万雷の拍手が送られた。
今季の背番号10がホスト開幕戦での勝利を演出した。
ゲームの始まりは、山沢京平のペナルティゴールだった。盤石の守備を軸に陣地を進めた埼玉WKは最初の好機で確実に3点を奪った。
さらに3対3で迎えた前半19分にも山沢京平のペナルティゴールで加点、ゲームの主導権を手繰り寄せた。真骨頂が表現されたのは前半30分のディラン・ライリーのトライシーン。山沢京平はゴール前でボールを受けるとパスダミー(パスを行うと見せかけてパスを出さずに突破を図ること)からギャップへ突進。倒れ込みながらボールをライリーに託してトライをアシストした。
「普通にパスを放ろうと思ったときに前にギャップが見えたので前へ走りました。後ろからディランの声が聞こえたのでそのまま託しました」
埼玉WKは山沢京平の活躍によって前半を20対3で折り返す。しかし後半、選手交代によって迫力を増したS東京ベイの猛攻を受けて点差を詰められると後半31分にトライを許す。さらに、コンバージョンも決められ、23対24と逆転されてしまう。
絶体絶命。崖っ縁に追い込まれた埼玉WKは後半35分にペナルティを得るとショットを選択。キッカーの山沢京平が、静かにボールをセットすると30m強のペナルティゴールを決めて再逆転に成功する。埼玉WKの新スタンドオフは4本のペナルティゴールと1本のコンバージョン、そしてアシストによって勝利に導いた。
ロビー・ディーンズ監督は「(山沢京平は)緊張感のある大事な場面で、動じることなくペナルティゴールを決めてくれた。(日本代表での活動で)山沢拓也のチーム合流が遅れた中で、京平を10に選んでいるのは、能力はもちろん、プレシーズンからの継続性。彼は役割を十分に果たしてくれている」と称えた。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)に選出された山沢京平は「POTMは、チーム全体のハードワークによってもらえたもの。自分のことよりもチームが勝って本当に良かった」と激闘を振り返った。理屈ではなく本能でプレーする男が今季のチームをけん引していく。
(伊藤寿学)
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ監督
「タフなゲームだったことは明らかです。タフな試合を勝ち切れて光栄に思っております。勝ち切るためには、深く掘っていかなければいけないですし、選手たちは困難に直面したときに、勝利への執念を見せてくれました。最後の10分間で勝ち切れたことは自分たちの自信につながると思います。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイさんは後半にうまくプレーしていて、フィールドポゼッションを与えてしまうと、このように難しくなってしまうと感じました。オッキー・バーナード選手のデビュー、山沢京平選手のキックは誇らしく思っています。キックはプレッシャーを感じるところですが、しっかりとやってくれました。80分間、リードしてくれた坂手(敦史)キャプテンのことも誇らしく思っています」
──他会場では波乱が起きています。
「昨季からそういうゲームがありましたが、今季はよりタフなシーズンになる。“下位チーム”と呼ばれるチームがないのではないかと思っています」
──交代のカードを4枚しか切らなかった意図を教えてください。
「ゲームには変化が存在していたのですが、そこに(交代で)新しい変化を加えるのではなく、プレッシャーのある中で、一貫性のあるコンビネーションを選択しました」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「タフなゲームでした。フィジカル的にも得点、内容的なこともそうだったと思います。ゲームは、映像を確認してからでないと言えないのですが、こういうゲームが今季のリーグワンは増えてくる。こういうゲームを自分たちの勝利にできるかどうかが大切で、焦らずにどんなときも自分たちのプレーをすることが重要になってくると思います。今日はこういうゲームをみんなで楽しんで、つながり合っていきました。そういう意味で、教訓になる、良いゲームだったと思います。後半の部分で言うと、戦うエリアを改善すべきところであると感じています。自陣でプレーする時間が長かったですし、ミスも重なってしまいました。そういうところを振り返りながら前進していくためのゲームだったと思います」
──試合が終わったあと、ひざを着いていたがどんな心境だったのでしょうか?
「あまりああいう姿を見せたくなかったのですが(苦笑)、(フル出場は)ちょっと疲れました。最後もディフェンスの時間が長かったのでタフなゲームでした。次は弱いところを見せないようにしたいと思います(苦笑)」
──後半の戦いについてはどう振り返っていますか?
「後半の20分くらいまでは接点で下げられてしまったというイメージがあります。接点で下がることは、自分たちにとってペナルティが出やすい状況になってしまいます。最後の10分は、ほとんどのプレーで勝っていたと思いますが、どんな状況でもそういったものを表現できるようにすれば磨きがかかっていくと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「皆さん、こんばんは。毎回ここに来るたびにスタジアムが良い施設であることと、関係者のエネルギーを感じます。熊谷は来ることができると、うれしく思えるスタジアムです。前半は前に出ることができずに、自分たちで自滅して、ペナルティを重ねてコントロールできずにミスをして、さらにカードが出て、追いかける展開でした。
ペナルティのところで言うと、接点やブレイクダウンの精度が足りなかったのですが、ハーフタイムに自分たちで解決策を見つけることができて、後半は自分たちのラグビーができたと思います。今後も自分たちのラグビーができるように続けていきたいと思います。後半はポジティブな要素があったのですが、学びもありました。最後の2分間はどちらに転んでもおかしくない展開でしたが、ラストプレーではプレッシャーを掛け切れませんでした。ただ、先ほども伝えましたが、ポジティブな要素も多かったですし、この試合を糧に戦っていきたいと思います」
──若い選手が活躍したが彼らの評価を教えてください。
「若手の選手のプレーを評価してもらえてうれしいです。彼らは才能がある選手として獲得してきています。廣瀬(雄也)選手や山田(響)選手たちはプレシーズンで良いプレーを見せてくれたのでチャンスを与えました。強豪チーム相手にあのようなパフォーマンスをできたことは良かったと思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン
「前半に埼玉パナソニックワイルドナイツにプレッシャーを掛けられて、自分たちのやりたいラグビーができなくて終わってしまいました。ハーフタイムに修正して、自分たちがやろうとしているラグビーが(後半は)出せたかなと思います。そこはポジティブに捉えて、次に生かしていくことが大切だと思います」
──後半のメンバーチェンジで勢いがついたがグラウンド内での雰囲気はどうだったのでしょうか?
「インパクトプレーヤーはすごく良かったですし、自信がありました。みんなが入ってきたときにギアが上がって勢いがついたと思います」
──2点差を追っての最後の2分についてはどう感じていましたか?
「すごく難しいところでした。自分たちのプランを信じて、やるだけでした。ただ、そのまま終わってしまったのが悔しかったです」
──最後(後半38分)にショットを狙ったのはどういうプロセスがあったのでしょうか?
「そういうシチュエーションは想定していましたし、チームとして彼(バーナード・フォーリー)を信頼していましたし、決めてくれる自信がありました」