NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)
枯渇を知らない無限の向上心。
期待の新鋭、いざリーグワンデビューへ
今年1月にアーリーエントリーでNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)に加わった吉村紘は、全体練習終了後も数人の選手と一緒に居残り練習に励んでいた。12日の東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦でのデビューを控えたこの新鋭は、その後も選手がまばらになったグラウンドに残り、ボールの感触を確かめるように黙々とキック練習を繰り返していた。
練習から切り上げてきた吉村は、デビュー戦への思いをこう口にした。
「楽しみですけど、スタメンには責任が生じますし、とにかく勝ちたい。緊張と不安を同時に感じています」
1月8日の第59回全国大学ラグビーフットボール選手権大会の決勝戦を戦ったあと、吉村はすぐにGR東葛に合流した。だが、その決勝戦で負ったけがが思いのほか長引き、全体練習に合流したのは2週間ほど前だった。練習では、プレースピードやディフェンス面のプレッシャーで大学ラグビーとの決定的な違いを感じた。ただ、「そこは慣れですね」と特に気にする様子を見せなかった。
早稲田大学では数多の勝利を手にしてきた。15人がつながり、チームとして素晴らしいトライを決めたときは充実感を得たが、自分自身のプレーに満足することはなかった。むしろ、試合の映像をあらためて見返したときには、自分のプレーを見て「下手だな」とも感じた。体内から湧き出る向上心に枯渇はない。練習では一切、妥協はしない。それが吉村のプレーの根底にはある。
けがが癒え、練習に合流した吉村は、控えにも入れないメンバー外からのスタートになった。東福岡高校、早稲田大学と、常に主力を張り続けてきた彼にとって、メンバーから外れるのはひさしぶりのこと。その状況すらも自らの成長につなげようとする吉村は「イチから這い上がっていくのは嫌いじゃないです」と笑みを浮かべた。
前節、GR東葛はリコーブラックラムズ東京に7対54の大敗を喫した。この敗戦から立ち上がり、スタンドオフとしていかにチームに良い流れをもたらすか。試合へ向けて意気込みと抱負を聞いた。
「ほかの14人をつなげる役割をしたいと思っています。ウチには大きい選手、パワフルな選手はたくさんいるので、その人たちの強みを最大限に引き出せるようなプレーをしていきたいと思います。それは声の部分や、僕の強みだと思っているパスやキックのところで、僕以外の選手が気持ちよくできるような80分を作っていきたいと思っています」
そして最後に「僕も楽しみですし、観ている人に楽しんでもらえるように頑張ります」という言葉を残し、彼は練習場をあとにした。
3月12日の柏の葉公園総合競技場、吉村は満を持してNTTジャパンラグビー リーグワンのグラウンドに立つ。
(鈴木潤)
東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)
加速する成長速度は学びの姿勢から。
成長著しい新鋭が目指す輝かしい未来
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月12日14時30分から、柏の葉公園総合競技場でNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と対戦する。
前節、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)に51対12で快勝したBL東京は現時点で5位。上位4チームが出場するプレーオフに向けて、小川高廣 共同キャプテンは「全勝できるように準備していきます」と力を込めた。
かつて、大学時代まで無名だった大野均氏や、大学時代にハンマー投げで活躍した知念雄(三菱重工相模原ダイナボアーズ)を日本代表に育て上げたBL東京において、いま新たな才能が輝き始めている。
プロップのタウファ・ラトゥ、24歳。関東大学リーグ戦2部の白鴎大学ではセンターでプレーし、BL東京で本格的にプロップに転向した。今季は第3節でNTTジャパンラグビー リーグワンデビューを果たすと、前節まで8試合連続出場と着実に経験を積んでいる。
「センターからプロップへの転向は簡単ではなかったです。いまもプロップとしての仕事を学び続けています。プレーするチャンスをもらえて、学びたいという意識でいっぱいです」
タウファ・ラトゥが挑んでいるのは『プロップは30歳から』という言葉もあるほど、経験を必要とするポジションである。試合ごとにタイプの違うチームとスクラムを組むことについては「大変です」と認めながらも、前節の神戸S戦ではスクラムで相手にペナルティを誘発させるなど成長を見せている。
また、183cm、120kgの体格を生かした迫力あるボールキャリー、元センターとしてのスピード、パススキルを併せ持つタウファ・ラトゥは、BL東京にとってもユニークな存在となりつつある。
謙虚な姿勢で学び続けるタウファ・ラトゥは、GR東葛戦に向けても、変わらぬスタンスで臨む。
「まだ名前が知られていない選手ですから、自分ができることをしっかりやって、毎日、毎週、継続して良くなっていくところを見てもらえたらと思います」
同じフォワード第一列の選手だけでなく、リーチ マイケルやマット・トッドにも積極的に質問して、ラグビーの知識を増やそうとしているタウファ・ラトゥ。一歩、一歩、確実に進んだ先の未来はさらに輝かしいものになりそうだ。
(安実剛士)