2023.03.13NTTリーグワン2022-23 D1 第11節レポート(GR東葛 20-49 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(交流戦) 第11節
2023年3月12日(日)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 20-49 東芝ブレイブルーパス東京

“グッドデビュー”を果たした若武者。
堂々とした姿は大きな可能性を感じさせた

アーリーエントリーでリーグワン初出場。NECグリーンロケッツ東葛の吉村紘選手。「この試合を迎えるにあたって、できるだけ多く周りの選手とコミュニケーションを取って準備してきたので気負うことなくプレーできた」

NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)はホストゲームで東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)と対戦。後半開始直後に、一時は20-18と逆転したが、その後はBL東京の攻勢に4つのトライを許し最終的には20-49で敗れた。

現在5位とプレーオフ進出を争う強豪・BL東京相手に悔しい敗戦となったGR東葛だが、吉村のデビュー戦は将来へ向けての飛躍を大いに期待できる内容だった。

背番号10を着け、フィールドに登場した若武者は、そのファーストプレーから魅せた。

自陣でのスクラム。スクラムハーフの田中史朗が出したボールを22mライン付近で受けると、前方をいちべつした吉村は右足でロングキック。ボールは相手陣深いところでバウンドするとゴールライン手前まで絶妙なバウンドで転がる。一気に陣地を獲得したこのプレーが、序盤のGR東葛の攻勢を呼んだことは間違いなかった。

「この試合を迎えるにあたって、できるだけ多く周りの選手とコミュニケーションを取って準備してきたので気負うことなくプレーできた。試合開始から『強気でプレーしよう』と心がけていたのでああいったプレーができたと思います」

前半19分には自ら50:22のタッチキックを見事に決めて陣地を回復し、その後のマイボールラインアウトからGR東葛が左に展開するプレーの中で相手ディフェンスの意表を突くアウトサイドキックでトライチャンスを演出。このプレーの流れからGR東葛は、吉村自身のリーグワン初得点となるペナルティゴールへと結びつけた。

さらにGR東葛のファンが大いに沸いたのは後半開始直後のプレー。自陣深くからクリスチャン・ラウイがゲインラインを突破すると一気にインゴールまで突っ走ってトライ。その後のコンバージョンでは吉村が輝く才能にあふれていることをファンに披露する。

右タッチライン沿いからの距離のあるコンバージョンキック、吉村が右足を一閃するとボールは逆風を切り裂くように飛んでゴールポストのほぼ真ん中を通過し、スタンドからどよめきが起こる。このコンバージョンゴールでGR東葛は20-18と試合をひっくり返すことに成功。大型新人の堂々たるプレーぶりにファンは割れんばかりの拍手を送った。

この日スクラムハーフとしてコンビを組んだベテランの田中も試合後、吉村のプレーぶりについて「(ロバート・テイラー)ヘッドコーチからは『一緒にチームを引っ張ってくれ』と言われましたが、彼自信がもうゲームを理解してチームをけん引してくれた」と高く評価。「周りの選手としっかりコミュニケーションを取れる選手なので、自分も思っていることをお互いに言い合いながらプレーできた。これからの彼の成長についても、すごく楽しみです」。

前半9分にBL東京にレッドカードによる退場者が出て70分間以上を一人多い状態で戦えたGR東葛は、逆転したあと、BL東京の反撃に力負けし4トライを奪われ残念な敗戦となった。

しかし、早稲田大学で大学選手権決勝を戦った翌日にアーリーエントリーでチームに加わった頼もしい若武者の登場には、デビュー戦を見守ったGR東葛のファンも大いなる未来への希望を抱けたに違いない。堂々たる吉村の“グッドデビュー”だった。

(関谷智紀)

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)のロバート・テイラー ヘッドコーチ(左)、レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ロバート・テイラー ヘッドコーチ

「まずは東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)に『おめでとう』とお伝えしたいです。また、われわれ、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)のファン、サポーターのみなさまには『いつもサポートしていただきありがとう』と感謝を申し上げます。

試合については、後半立ち上がりにトライも奪え、もう少しで流れがGR東葛に来るのかなと思いきやそのあと、相手にリードを許す展開になりました。BL東京は自分たちのプレーを信じ、自信を持って展開していたので、そういうところから、点数を重ねていったのではないか。あとはわれわれ、GR東葛がちょっと点を与えすぎたのかなと感じています。

60分あたりまでは良い戦いができていました。ただ相手が14人の状況で、人数的な優位にあったことを鑑みると、もう少し良い試合を展開しないといけなかったと思います。前半のようにポゼッションをしっかりと保ったまま、それを生かして相手から点を取ることができればよかったのですが、本当に厳しい戦いでした。これから映像を見直してまた来週に向けて備えたいと思います」

──最終的に20対49というダブルスコアでの敗戦となりましたが、その要因は何だったのか?また、今後に向けての改善点は何でしょうか?

「先ほども申し上げたように、試合開始から60分間は良いプレーができていたと感じています。先週のリコーブラックラムズ東京戦の際にイエローとレッド合わせてカードを3枚、今日のBL東京戦もフェトゥカモカモ・ダグラス選手にイエローカードが出されたところは反省しないといけません。やはり、規律をしっかり守ってラグビーをすること、やってはいけないプレーはしない、ペナルティを犯さないことが重要です。

15人がフィールドにいることが大事ですので、今日の試合でいうと敗因はディフェンスの質になると思います。相手がレッドカードで14人になった状況の中でもしっかりとディフェンスをしていかなければならない。この課題は次節のコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けても重要ですのでしっかりとディフェンスの部分を強化、改善して臨みたいと思います」

──スタンドオフの吉村紘選手のデビュー戦となりましたが、彼のプレーの評価はいかがでしょうか?

「本当に今日はいいデビュー戦だったと思います。彼がやりたいプレーのイメージがクリアに伝わってきましたし、しっかりとチームに対してもコミュニケーションを取りながら落ち着いてプレーできていた。本当に成熟しているプレーヤーだと感じました。吉村選手にはこれからも長いラグビー人生が待っていると思いますが、将来が約束された選手と言ってもいいかと思います。メンタルの面においてもとても落ち着いたプレーができていました」

──スクラムハーフにベテランの田中史朗選手、スタンドオフにルーキーの吉村選手を並べた狙いは何でしょうか?

「大澤蓮選手をスターティングメンバーで起用したのもそうですが、多くの選手にチャンスを与えたいと考えていました。今日デビューした選手が何人かいたのはそれが理由です。

ご質問の2人については、スクラムハーフのニック・フィップス選手がここまでずっと試合に出続けていたので休ませたいという理由もありましたが、経験豊富な田中選手が吉村選手をサポートすることが良い結果につながるのではと考えて起用しました。吉村選手はまだチームに加わったばかりですし、シーズンをとおして安定したプレーを保てるかどうかはまだ難しいかもしれませんが、まずはチャンスを与えて継続性とどういった実行力があるのかを見たかった。今日は良いプレーを見せてくれたので、来週またスターティングのメンバー表に名前が加わっているかもしれません」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

「前半の早い段階で相手にレッドカードでの退場者が出て、それがプロップの選手だったのでスクラムなどでは8人対7人の形になりました。本来はフォワード戦で優位に立てるところでしたがそれほどではなかった。これについてはあとで映像を見て検証したいと思います。前半に良い形で攻めながらもペナルティを3、4回くらい取られたためにトライを取ることができなかったのが大きかったのは確かです。そこでトライを1本か2本取り切っていれば試合の展開が大きく変わっていたとは思います。もっと良いアタックができるようにしていかないと。

吉村紘選手についてはまったく新人という気がしませんでした。プレー中も走りながらわれわれ、チームメートに指示の声を出し続けていましたし、新人とは思えないレベルの高いプレーをしていたと思います。一般的な新人ならナーバスになってセーフティーなプレーに落ち着いてしまうと思うのですが、吉村選手はスペースを見つけるやいなやアタックを仕掛けていきました。キックも上手かったし、試合中にパニックになるようなこともなく、しっかりと考えた上でプレーしていたと思います。相手からのプレッシャーにさらされながらも自信をもってゲームコントロールを続けられていた。とてもレベルの高い選手で、これからの成長がとても楽しみです。

それから、スクラムハーフの史さん(田中史朗選手)とはひさしぶりに一緒にプレーしましたが史さんらしいプレーがいっぱいあって本当に楽しかった。まだまだ史さんはトップレベルでできると思います」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「まずはNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)で初試合となった3人の選手に『おめでとう』とお伝えしたいと思います。

そして、今日の試合に関して、隣にいる小川高廣選手もそうですが、戦いぶりを見てこれ以上ないほどに選手たちを誇りに思いました。特に、前半でタウファ・ラトゥ選手にレッドカードが出され、一人少ない状況が長く続きましたが、上手く順応でき、内容は本当に良かったと考えています。

(スクラムやラインアウトといった)セットピースにはこれまでも力を入れて取り組んで来ましたけれども、その点でも今日は良いプレーを見せることができたと思いますし、チャンスをしっかりと決め切ることができた試合だったと思います。

今日の試合で一番うれしかったことはやはり『跳ね返す力』が見られたことです。逆境を跳ね返すことができたと思います。いまはこの上なくハッピーな気持ちです。マスクを着けているので記者のみなさんには見えないと思いますけれども、この下には私の笑顔があります(笑)。われわれのチームにとってはとても良い一日になりました」

──レッドカードが早い時間帯で出されたほか、前半34分にイエローカードがあって13人となるなど人数的に不利な状況を強いられましたが、どのような指示を選手に出して対応したのでしょうか?

「ここまでの数週間、練習のときからいくつかのシナリオを想定してトレーニングしていました。上手く準備ができたと思います。

(レッドカードが出てからの)指示としてはディフェンスのときに『ラックにあまり人数を掛けないように』と伝えました。ハーフバック役をやるのは誰かとしっかり伝え、(スクラムハーフのジャック・ストラトン選手がイエローカードで10分間退場した際には)スクラムが上手くいかなかったのでアタックでスクラムハーフに14番の豊島翔平選手を入れようと話をしました。

フォワードが一人少なくなった上にハーフバックがいないという時間帯は、そのときはタッチライン際でドライブするには人数がいなかったのでより内側でプレーするような判断に変えました」

──レッドカードでプロップのタウファ・ラトゥ選手が退場となり、スクラムが7人の状況となってからいくつかのパターンを組み合わせて対応していましたがそれも想定の範囲内だったのか?また、急きょハーフ役を務めた豊島選手についてのコメントをお願いします

「相手ボールのスクラムでは7人にしたり、マイボールスクラムではフランカー役を二枚にしたりといった部分は自分たちのチームに勢いがあるかを判断して変えていました。現代のラグビーはこういった状況にどれだけ対応できるかということが大事になってくると考えています。

豊島選手がハーフバックをプレーした部分は、事前のシナリオでハーフバックがいなくなったときはどう対応しようかと話し合って準備していました。豊島選手はそこでとても良いプレーを見せてくれました。試合後に『小川選手よりも良いハーフバックだった』と伝えました(笑)。もちろん冗談ですが。

タウファ・ラトゥ選手がレッドカードで退場になって代わりにフロントローに入ったのが眞壁照男選手、(NTTジャパンラグビー)リーグワンのシーズン初出場がああいう形になりました。これまでの準備とフィットネスにしっかりと取り組んできた彼の努力が、今日素晴らしい仕事をこなしてくれたことにつながったと思います。

(レッドカードが出てから)70分間にわたりフランカーを1人欠くタフな状況でも自分たちのラグビーをしっかりやり遂げてくれて、本当に選手たちを誇りに思います」

──ワーナー・ディアンズ選手は流通経済大学柏高校出身、ホームタウンということで何かチームでお祝いはしましたか?

「特別に何かを話したということはありませんでしたが、ここで彼が育ったというのは知っていましたので、そういう意味でモチベーション高くプレーしてくれるだろうということは考えていました」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン

「今日はゲームに入る前にトッドさん(ブラックアダー ヘッドコーチ)から『一つになって戦おう』と声を掛けてもらって、まさにこの(レッドカードで1人少ない)厳しい状況でもみんなが一つになって戦うことができたと思います。いま、順位のほうもプレーオフに進出するには崖っぷちの状況だと思いますので、チームが本当に一つになって良い準備をし、また次の試合に臨みたいと思います。

自分が交代で入ったときはまだ2トライ差で、みんなも状況も分かっていたので、しっかりトライを取りに行こうという気持ちが強かったです。(14人の状況で長い時間プレーしていましたが)そんなに疲れているようには見えなかったですし、みんな、気持ちは燃えていた、そんな状態だったと思います。

そこから自分が入ってすぐにトライを奪えたのですけれども、そこからは(勝ち点ボーナスを得られる)3トライ差を絶対にキープしなければならない状況でした。そのため、風上でもあったのでしっかりとエリアを取って相手を自陣に釘付けにしてチャンスがあればトライを取ろう、あまり慌てずに進めて行こうと残り時間の状況を考えてプレーしていました」

──プレーオフに向けて厳しい戦いが続きますが、現在のチームの雰囲気はいかがでしょうか?

「まったく悪くないと感じています。みんな自分たちが立たされている順位の状況は分かっていますし、もっと自分たちのラグビーをどうやって表現できるかという点をしっかり考えて各自の役割を明確にしていくことができれば勝つ力は十分にあると思っています。そこをチームの誰もがみな理解していますし、プレーオフに向けて個々の準備はできていると思っています」

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