トヨタヴェルブリッツ(D1 カンファレンスA)

“今季絶望”の負傷を乗り越えて。
支えてくれた人々への感謝を胸にピッチに立つ

ビジターゲームで2連勝し、3週間ぶりにホストゲームを迎えるトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)。プレーオフ進出をあきらめない緑の雷神に、さらなる追い風が吹いてきた。

今季新加入の大型ロック、イングランド代表のジョー・ローンチブリーが今節から復帰するのだ。

ジョー・ローンチブリーは、ラグビーの母国イングランド代表として70試合に出場した世界的な選手。イングランドのプレミアシップでは、歴史と伝統を誇る強豪・ワスプスで13年間プレーし、キャプテンを務めたこともあった。しかし、クラブが破産したことで昨年11月にトヨタVの一員となった。

トヨタVでも、クラブ初のイングランド代表として大きな期待が寄せられた。だが、NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1第2節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で右手を負傷。初の日本挑戦でいきなり戦線離脱を余儀なくされてしまった。

「けがをしたときは、自分自身に怒りがこみ上げてきて、すごくフラストレーションを感じました。でも主治医がすごくよくしてくれましたし、メディカルスタッフみんなのおかげで、すぐにコントロールできるようになりました」(ジョー・ローンチブリー)

ジョー・ローンチブリーが他国ではなく、日本移籍を決断した理由は2019年に日本で行われたラグビーワールドカップも関係している。その大会で準優勝メンバーとなったが、そのとき、日本にとても良い印象を持ったそうだ。

「4年前に来たときに日本が大好きになりました。景色も良いし、今日みたいないい天気はイギリスでは考えられないし、食べ物はおいしいし、日本人の親切さもすごく伝わった。だから移籍の話があったときには迷わず『ぜひやってみたい』って思ったし、妻も『いいチャンスだね』って後押ししてくれました」(ジョー・ローンチブリー)

その妻は3人目の子どもを出産するために先日イングランドに帰国した。少しだけ寂しさは感じているものの、トヨタVのチームメートは、秋に合流したばかりの自分にも分け隔てなく接してくれて、本当に一つのチームのようだと感じているという。

今でも金属が埋め込まれている右手は、人差し指が裂けるように折れ、当初は今季中の復帰が不可能だと言われたそうだ。そんな絶望的な状況の中でも、メディカルスタッフは懸命の努力でジョー・ローンチブリーの復帰を後押しし、けがをしながらでもジョー・ローンチブリーは、仲間のために自分ができる最大限のサポートをしてきた。もちろん妻や間もなく産まれる赤ちゃんを含めて子どもたちも支えになった。

「やっぱりピッチでプレーすることが一番だと思う。みんなのためにプレーできること。それを一番の楽しみにしている」(ジョー・ローンチブリー)

あらゆる人々への感謝を込めて世界的大型ロックが、パロマ瑞穂ラグビー場のピッチに立つ。

(斎藤孝一)

トヨタヴェルブリッツは、イングランド代表キャップ70を誇るジョー・ローンチブリー選手が待望の復帰


東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)

すべてを成長のために捧げる日本屈指の万能選手が、BL東京をプレーオフへ導く

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月18日14時30分から、パロマ瑞穂ラグビー場でトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)と対戦する。ここまで勝ち点31でリーグ5位のBL東京と、勝ち点23でリーグ7位のトヨタV。ともに上位進出に向けて重要な一戦に臨む。

1月22日の前回の対戦ではBL東京が63対25とトヨタVを圧倒した。ただ、共同キャプテンの徳永祥尭はすでにそのイメージは持っていない。

「トヨタVさんは東京サントリーサンゴリアスさんに勝っていますし(3月5日、27対20)、チームとして乗っていると思います。前回の試合では姫野和樹選手が欠場していて、チームとしてもあまり元気がない印象でしたが、今回は仲のいい姫野選手が帰ってきたのでやり合えるのが楽しみです」

一方のBL東京も2連勝と勢いを取り戻しており、前節では13人になる時間帯がありながらもボーナスポイントを含む勝ち点5を獲得。徳永も「自分たちがやっているラグビーに自信を持っています」と手ごたえを口にした。

徳永は日本代表15キャップを誇り、7人制日本代表ではリオ五輪でベスト4。サンウルブズでは負傷者の関係でウイングでもプレーするなど、日本屈指の万能選手として知られている。

ラインアウトジャンパーとしても優れていて、競られても確実にキャッチする球際の強さが印象的だ。

「自分では分かりませんが、そう言ってもらえてうれしいです。ウォーミングアップなどでは片手で捕ることを意識していて、それが生きているのかと思います。ワンハンドキャッチはリーチ(マイケル)さんが得意で、やり方やコツを教えてもらったり、サンウルブズのときにスラッシーさん(田邉淳=現 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ アシスタントコーチ)に教えてもらったりしたことをウォーミングアップでやるようにしています。ラインアウトは風の影響を受けたり、競られることもあります。ミスで終わるか、トライチャンスにできるのかが試合を大きく変えるので、そこをすごく意識しています」

「趣味がない」と語る徳永は、プライベートでも自身のさらなる成長に向けた投資をしている。

「トレーニングが好きなので、個人で佐藤義人さん(アスレチックトレーナー)のところに行ったり、国立市にあるRe-Vive(トレーニング、コンディショニングをサポートする施設)にも行っています。体の使い方やインナーマッスル、背中の使い方などアプローチが違うので、そうしたことにお金をかけています。僕は趣味にお金を使うことは全然ないんです(笑)」

タフでスキルフル、勝負強さも安定性もあり、向上心も持ち合わせる。頼りになる共同キャプテンがプレーオフ進出を目指すチームを力強くけん引している。

(安実剛士)

日本代表15キャップ、7人制日本代表でもリオ五輪でベスト4のメンバーだった、東芝ブレイブルーパス東京の徳永祥尭 共同キャプテン


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