NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第12節 カンファレンスA
2023年3月18日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 18-19 東芝ブレイブルーパス東京
敗れてなお晴れやか。熱きリーダー・姫野和樹が語ったのは充実感
ラストプレー、入れば逆転のコンバージョンキックが惜しくも外れると、パロマ瑞穂ラグビー場にはどよめきが起こり、次第に大きな拍手に変わっていった。3月18日、トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)は東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)に18対19で敗れた。
終盤はスリリングな展開となった。6点を追うトヨタVが何度も突破を図り、BL東京は何度もはね返す。
「行け!トヨタ、取れるぞ!」「怖くないよ!大丈夫、東芝!」
スタンドからの声も熱を帯び、緊張感が高まった中の一瞬、インターセプトを狙ったBL東京のディフェンスの頭の上をやわらかなパスが通り、途中出場していた山口修平がインゴールに飛び込んだ。
そして、左サイドから逆転を狙ったティアーン・ファルコンのキックはわずかに外れた。敗れたトヨタVのメンバーはティアーン・ファルコンを抱きしめ、次第に笑顔が広がっていった。
試合後、トヨタVの姫野和樹共同キャプテンにどのような声を掛けたのかを聞いた。
「ティアーン(・ファルコン)には『ボウズな!』と」
静寂の会見場がどっと沸く。姫野は無邪気な笑顔を浮かべる。
「(外したから丸刈りにするのは)もちろん冗談です。ベストを尽くした結果なので、『気にするなよ』と伝えました」
敗れはしたが、1月22日の対戦では25対63で敗れた相手に1点差に迫った。姫野は「成長をすごく感じています」と充実感を口にした。
一時はチーム内が「疑心暗鬼になったことも……」(姫野)という状況に陥ったが、共同キャプテンの姫野は熱く、その閉塞感を打開している。
「チームを集めてみんなの目を見て、チームとしてやることを明確にしています。個人ではなく、チーム全員が一貫性を持つことが大事になります」
熱血漢のリーダーは、リーチ マイケルや徳永祥尭とのフィジカルバトルについても「楽しいです。シンプルに楽しいですね。一回、リーチ選手にやられたので、来年やり返したいと思います」とさわやかに笑う。
熱さと笑顔、ライバルとの切磋琢磨。主人公感あふれる姫野の姿は、勝敗に関係なく輝いていた。
(安実剛士)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツ
ベン・へリング ヘッドコーチ
「終盤にエキサイティングな終わり方をしましたが、東芝ブレイブルーパス東京さんがすごく良いプレーをして、特にラインアウトは支配されたので、われわれはプレーしづらかったです。その中で選手たちは信念を持ってプレーしてくれました。その結果、点数を後半に詰められたのは良かったですし、前回の38点差から1点差にすることができました。今回は残念でしたけど、試合の内容としては良いものもたくさんあったと思います」
トヨタヴェルブリッツ
姫野和樹 共同キャプテン
「結果としては残念でしたが、選手の努力を誇りに思います。前回負けてから、迷って疑心暗鬼になってしまったこともありました。でも、そこから一人ひとりがハードワーク、チームのためにオールインをしてくれて、みんなでコネクトして積み上げた結果、ここまできたと思いますし、成長をすごく感じています」
──最後にティアーン・ファルコン選手のコンバージョンキックが外れたときにどのような声を掛けましたか?
「ティアーン(・ファルコン)には『ボウズな!』と(笑)。それはもちろん冗談です。
蹴る前にも『プレッシャーに感じず、思い切って蹴って』と声を掛けていました。ベストを尽くした結果として外れてしまったのですが、それについてどうこうは言いませんし、『気にするなよ』と伝えて、『次の試合に向けてやっていこう』と声を掛けました」
──前回の対戦から比べて接戦になりましたが、どのようにチームが変わったのでしょうか?
「チームのコネクトのところ、チームとしてつながるところを意識してやっています。以前なら独りよがりなプレーをしてしまって、点を重ねられることが多かったのですが、リーダーシップを持って、チームを集めてみんなの目を見て、チームとしてやることを明確にしていって、それが機能していると思います。ピーター(ステフ・デュトイ)もそこに関してはすごくサポートしてくれています。ハドルで修正できるようになったことに、チームの良さを感じます」
──ラインアウトで苦戦した原因は?
「正直に言うと、ラインアウトは相手が一枚上手だったと思います。そこは素直に受け止めて改善するべきポイントです。分析もされて、サインも読まれていました。東芝ブレイブルーパス東京さんはラインアウトチームですし、秋山(大地)ら若い選手には良いチャレンジで良い経験になったと思います」
──来週は首位の埼玉パナソニックワイルドナイツと対戦しますが、大事なところは?
「今日の敗戦にがっかりするとは思いますが、下を向かずに一貫性を持ってやっていくことが大事だと思います。個人ではなく、チーム全員が同じ絵を見て、方向性は間違っていないので一貫性を持つことが大事だと思います。リーダーとして自分たちにフォーカスするようにやっていきます」
──リーチ マイケル選手らを相手に戦うことは?
「楽しいです。シンプルに楽しいですね。リーチ選手や徳永(祥尭)選手ら仲がいい選手がたくさんいるので、体でぶつかり合って楽しいなと思っていました。一回、リーチ選手にやられたので、来年やり返したいと思います」
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「まず、トヨタヴェルブリッツさんに『ありがとうございます』と言いたいです。タフな試合になることは分かっていました。選手のことを誇りに思います。良いマインドセットと計画をもとにこの試合に臨んで、素晴らしいラグビーができたと思います。
ときにはチャンスを決め切れないシーンもありました。また、我慢強くできなかった瞬間もありました。ただ、自分たちがフォーカスするポイントは変わりませんでした。
コンタクトプレーは良かったですし、スクラムもプレッシャーの中で逆境をはね返すことができました。ラインアウトのディフェンスは素晴らしかったです。こうした状況で選手が堂々と戦ってくれたことを誇りに思います」
東芝ブレイブルーパス東京
德永祥尭 共同キャプテン
「個人的な感想としてはすごく楽しい試合でした。トヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)さんはフィジカルのチームで、自分たちもそうなので、お互いの強みがぶつかり合った良い試合だったと思います。自分たちが焦って取り切れなかった場面もありましたし、(ペナルティゴールの)ショットを狙っておけば良かったかなという場面もあったので、リーダー陣とチームで話していきます。最後に14人になりましたが、プレッシャーを掛け続けましたし、チームで戦うラグビーを見せられたと思います」
──最後は負傷もあって14人になりましたが、チームにどのような声を掛けましたか?
「先週の試合では13人の時間帯もあったので、『それに比べたらラクだよ』と。自分たちのやることは変わらないので、14人で何をするのかが先週の経験があってよりクリアになったと思います。ポジティブに話していきました」
──1月22日の対戦(63対25でBL東京が勝利)とのトヨタVの違いは?
「フィジカルバトルのところで自信を取り戻していると感じます。アタックシェイプ(攻撃の形)も今までと違ったので、受けに回ることもありました。また、相手のキックに対しては早く戻らないといけませんし、バックスリー(11、14、15番)のリンクが切れないようにしなければいけないと思います」
──今節、横浜キヤノンイーグルスが負けて、勝ち点の差は3になりました。プレーオフ争いが激しくなっていますが?
「今日、勝ち点5が取れなかったのは残念ですが、試合をとおして自分たちが成長できていると思いますし、前に進んでいると実感しています。どこのチームにも簡単には勝てませんし、また良い準備をして来週に向かっていきたいと思います」