NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第12節 カンファレンスB
2023年3月17日(金)19:00 秩父宮ラグビー場(東京都)
東京サントリーサンゴリアス 64-12 花園ライナーズ
世界で戦う女子プロゴルファー・渋野日向子が同級生。
刺激し合う存在をさらなる活躍の契機に
2連敗で順位を4位に落としていた東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)。秩父宮ラグビー場に花園近鉄ライナーズを迎えて行われた金曜ナイターゲームは、持ち前の『アグレッシブ・アタッキング・ラグビー』を体現して10トライを決め、64対12で勝利を収めた。
この試合で、2番の堀越康介はけがから復帰後、初スタメン。5番の小林航と11番の仁熊秀斗は今季初先発。21番の大越元気は今季初出場。そして、22番のトニー・アロフィポはデビュー戦……連敗脱出が至上命令の中、いつもとはまた違った顔ぶれで戦う難しいタスクが課せられても、東京SGらしさは失われなかった。
それどころか、堀越はこの日、自身初という3トライのハットトリック。小林航と仁熊も今季初トライを決めると、20歳のトニー・アロフィポはデビュー戦初トライで雄叫びを上げ、チームをさらに活性化。その活躍ぶりを田中澄憲監督も賞賛する。
「今日デビューした若いトニー(・アロフィポ)も、大越のようにひさしぶりにプレーしたメンバーもたくさんいる中、彼らがチームのモメンタム(勢い)を引き出してくれました。僕たちの強みは、誰が出ても今日のようなラグビーができることですから」
そんな“モメンタム”を生んだ一人、仁熊といえば先日、秩父宮ラグビー場でのある“再会”が話題となっていた。相手は同じサントリー所属の縁で東京SGの応援に来ていたプロゴルファー、渋野日向子。実は仁熊と渋野はともに岡山県岡山市出身で同じ中学校に通った同級生だ。今回のメンバー入りでは、その渋野からの応援メッセージも届いたという。
「『ファイト!』とメッセージをいただきました。同級生が世界で活躍しているのは刺激を受けますし、逆に僕が活躍して彼女に刺激を与えたい。今日の結果に満足せず、お互い刺激し合える存在になっていきたいです」
互いに刺激し合う―。それはチーム内でも同様だ。この日のメンバーの活躍は、普段、試合に出ることが多い選手たちにも緊張感を与えたはず。仁熊もまた、次節以降でのさらなる活躍を目指している。
「昨季は9試合に出場しましたが、準決勝、決勝には出られなかった。一番大事な試合で出番が来るように、自分の強みであるオフ・ザ・ボールの動きをさらに向上させていきたいです」
プレーオフ前のレギュラーシーズンは残り4節。刺激し合う東京SGのピークは、まだまだ先にある。
(オグマナオト)
東京サントリーサンゴリアス
東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督
「連敗したあとのゲームということで、大事な試合だと位置付けてわれわれも臨みました。東京サントリーサンゴリアスらしいプレーで、本当にいい勝ち方ができたと思っています」
──先週の試合をどのように見直しをして、今日はどのように試合に臨んだのか。
「先週は6回ルーズボールがあって、1回しか確保できず、埼玉パナソニックワイルドナイツさんに5回カットされた。シンプルに、そういったファンダメンタル(基礎的な技術)の部分を徹底する。あまり多くのことをやらずに、そこをしっかりとフォーカスしてやりました」
──選手個々のコンディション、あるいは競争の中でのモメンタム(勢い)を踏まえて23人を毎週選んでいると思います。メンバーセレクションでこれから大事にしていきたいポイントは?
「スターターとフィニッシャーで役割が違ってきますので、強い23人で戦うことが一番大事だと思います。これから大事なゲームが続きますので、そのプレッシャーにも勝つ選手。そういうところが大事かなと思います」
東京サントリーサンゴリアス
堀越康介 共同キャプテン
「今日の試合は、先週の負けからもう1回自分たちの自信を取り戻すという意味で、自分たちのやることをシンプルにやり続けることを選手間でも話し合いました。それがグラウンドで体現できたと思います。細かいところを見ると、まだまだうまくなれるところはたくさんある。そういう部分から目を背けず、一つひとつ課題をクリアして、いいチームにしていきたいです」
──今日のご自身のハットトリックの感想をお願いします。
「たぶん初めてだと思います。たまたまというか、フォワード陣の頑張りのおかげだと思っていますので、そこは本当にすごくうれしいですね」
──連敗していた中、チームではどんな声を掛け合って練習に臨んでいたのか。
「先週、埼玉パナソニックワイルドナイツさんに負けはしたんですけど、僕たちのアタックが通用する部分もありましたし、そこに対しての自信は先週から失わずにできました。ただ2連敗という中で、チームとして何が大事かを考えたときに、今までやってきたことをもう1回シンプルに、スタンダードを高くしてやり続ける、80分間リピートしてやり続けるところが一番大事かなと。
具体的に言うと、ルーズボールへの反応、ディシプリン(規律)のところを今週は意識してやりました。まだまだの部分もありますけど、よくできたのかなと思っています」
──「まだ課題がある」というのは、具体的には?
「フェーズを重ねたときのディフェンスや、アタックのポジショニングのところをもっと改善できると思いました。あとは、自分も含めてですけど、セットピースの精度をもっと高くしていかないと、東京サントリーサンゴリアスのやりたいラグビーができない。そこはもっと精度を高めたいと思っています」
花園近鉄ライナーズ
花園近鉄ライナーズ
水間良武ヘッドコーチ
「今日も規律の部分が悪くてシンビンを2回も出してしまった。自分たちの強みを出していこうという話をしていたのにできなかった。まだまだマインドセットの部分が足りない。これは本当に自分たちが変わらないといけない」
──今日のゲームのプランを教えてください。
「自分たちの強みであるトランジションですね。相手はアタックをしてくるチームなので、キックを蹴る。そこでディフェンスをして取り返してアタックをする。彼らがそこで攻められないと思ってキックを蹴り返してきたら、この数試合で良くなってきているカウンターアタックでそこを突いていく…というプランでした」
──けが人も出て、戻ってこられない選手もいる。ディビジョン1に上がって、昨季と違って感じる難しさなどがあれば教えてください。
「やはりディビジョン1はタフですね。毎試合、非常にコンタクトの強度が高くて、われわれは毎試合同じメンバーで戦えるだけの準備ができていなかった。『チームとして掲げた『トップ4以上』という目標を達成するには、自分たちでベストを超えないといけない』という話をしたんですけど、私の読みが甘かった。選手にもつらい思いをさせていると思います。とにかくチームが良くなっていくように、いまできる手を切っているところです」
──今日はアーリーエントリーの選手がたくさん出場しました。彼らに対する評価をお願いします。
「フッカーの福井翔(帝京大学4年)はラインアウト、スローイングがすごく良かったですね。ただ、リフトタックルをしてしまったのは良くなかった。プロップの井上優士(東海大学4年)はスクラムで苦戦する部分はありましたが、これは経験や財産になっていきます。梅村柊羽(東洋大学4年)も控えから入ってよく動いていましたし、金澤春樹(青山学院大学4年)もいつもとは違うポジションですけど試合で経験できたことは、すぐに実力が上がることはないですけど、3年、4年と経ったときに大きな財産になってチームに還元されるはずです」
花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン
「厳しい現状を突き付けられている中、どう変わっていこうとしているのか。本気で変えようとする人間が何人出てくるかで、これからの花園近鉄ライナーズの行方を決めると思っています。リーダーとして、僕もゼロから考え直してチームに真摯に向き合っていきたいです」
──前半の入りは良かったと思います。狙ったとおりの展開でしたか?
「いい入りはできました。ただ、小さいところでの伝達ミスや、自分たちの簡単なミスで相手に流れを渡してしまってトライを奪われるシーンが目立ったと思います」
──どのあたりを改善すべきなのか。
「コーチに示していただいている『ライナーズのラグビー』の大枠自体、僕は間違っていないと思います。でも、それを何%遂行できているか。そのパーセンテージが低い。そこをまず本当にみんなが理解できているのか、理解した上で100%に持っていけない理由は何なのか。組織としてどうやって解決していくのかが僕たちの課題だと思います」