2024.03.10NTTリーグワン2023-24 D1 第9節レポート(東京SG 34-14 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第9節
2024年3月9日(土)14:30 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 34-14 花園近鉄ライナーズ

45分間の出場でも示した大きな存在感。
みんなが慕う自慢の“アニキ”

「チームの中の“アニキ”のような存在」(堀越キャプテン)だという東京サントリーサンゴリアスのツイ ヘンドリック選手

3季目のジャパンラグビー リーグワンも後半戦に入ったディビジョン1の第9節。東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)は花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を34対14で下し、3位をキープした。

前節の完封勝利に続いてチームの結果は上向きだが、チーム状況は決して順風ではない。シーズンをとおしてけが人が続き、誰かが戻ってきては誰かが抜ける状態。そしていま、今季の目玉として鳴り物入りで入団したニュージーランド代表キャプテン、サム・ケインも手術のため帰国中。田中澄憲監督が試合後の会見で「シーズン終盤に間に合うかどうか」と明かすなど、緊急事態とも言える。

そのサム・ケインのポジション、ナンバーエイトでこの試合躍動したのがツイ ヘンドリックだ。2015年、19年のラグビーワールドカップで日本代表も経験した36歳の大ベテランは、守っては何度もジャッカルでボール奪取に成功し、攻めても今季初トライを決め、後半5分までの出場とは思えない存在感を披露した。

「自分のスタンダードを常に高く持とうと思っています。東京SGはトレーニングのハードさ、全員がハードワークをすることを誇りとするチームなので、自分の年齢は言い訳になりません。自分もハードワークを続けないといけない。試合のみならず、トレーニングでもハードワークをすること。それに尽きると思います」

ベテランになったいまもハードワークを怠らないツイ。彼の価値は、「試合中のプレー単体にとどまらない」と田中監督は語る。

「彼は本当に『東京SGへの愛』が非常に強く、このチームのスタイルやカルチャーをすごく大事にしている選手です。ほかの外国人にも東京SGがどんなチームなのかを伝えてくれますし、オフ・ザ・フィールドでもすごく価値のある選手だと思います」

堀越康介キャプテンもその存在感の頼もしさをこう明かす。

「チームの中の“アニキ”のような存在です。日本人と外国人のつなぎ役の部分でも助かっています。経験値があるだけに、チームの状況に合わせ、すごくいいタイミングでエナジーを上げてくれますし、若手も引き上げてくれます。キャプテンとしてものすごく助かる存在です」

困ったときには、みんなが慕う自慢の“アニキ”がいる。ここから上位チームとの戦いが続く終盤戦において、こんなに頼もしいことはない。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス

東京サントリーサンゴリアスの田中澄憲監督(右)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
田中澄憲監督

「花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんは先週、東芝ブレイブルーパス東京を相手にいいゲームをして、自分たちのスタイルや泥臭くプレーすることについて、自信を持って臨んできたと思います。われわれもそこに対して絶対に受けないというところで準備をしてきました。今日の天候や風の影響もあり、準備をしたプレーやプランを遂行できないところでもプレーを繰り返しやっていくことは今日の学びになりました。まだまだこれからタフな戦いが続くので、今日の学びをとおしてしっかりと準備をしていきたいと思います」

──9試合が終わって現在3位です。プレーオフトーナメントに向けて意識している部分はなんでしょうか?

「まず、プレーオフトーナメントに出ることは最優先ですし、目の前の勝ち点を取っていくことが最優先です。ただ、順位はコントロールできるものではないので、目の前の相手をしっかり倒して4ポイントでも5ポイントでも取っていくことにしか集中していません。プレーオフトーナメントに入れば、相手がどこかも見えてくる。すべての相手を倒さないと頂点は目指せないので、相手がどうかは、いまは考えていません」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「花園Lはフィジカルバトルが強く、そこで波に乗られるといい9番と10番がいて、そこからのアタックの勢いがすごいので、そこを封じていく形で試合に臨みました。良いところもありましたが、あまり自分たちでは満足していません。もっと改善が必要だと思います。前半も後半も、トライを取り切れる場面でしっかり取り切らないと、この先の厳しい戦いでは難しい。そこは自分たちでも反省しながら、この先のシーズンを戦っていきたいと思います」

──後半5分過ぎ、『50-22』を決められ、シンビンで14人になり、トライも取られてと、悪い流れになりかけました。そこですぐにトライを取り返せた要因は何でしょうか?

「一人少ないので、ブレイクダウンで人数を掛けないですぐにディフェンスラインに立とうという点と、もう1回シンプルなプレーを徹底的にやろうとハドルで話し合いました。結果として良い形から良いキャリーをしてトライを奪い返せたので、あのトライはすごく大きかったと思います」

──前節は「容赦なく」という週のキーワードがありました。今週のキーワードは何だったのでしょうか?

「今週は『徹底的に』というキーワードを準備しました。先週の『容赦なく』から、『もっと容赦ないところを徹底的にやろう』というイメージです。先週の試合は良いところもあったんですけど、ディテールを見たらまだまだ改善点があるという話になったので、先週の試合を忘れて、もっと自分たちで徹底的にどの場面でも制圧していこうという気持ちで臨みました」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(右)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「前節から調子も上がってきて、メンバーもそろってきて、“必勝”という形で来たんですが、やっぱり敵陣の22mラインの中に入ったときの決定力というところ。最後、相手の得点になりましたが、追い上げのところでトライを取っていれば7点差8点差になって、そこから勢いに乗れたかなというところです。そこがいま、負けているチームのうまくつながらないところだと思います。それを改善して次の試合に向けてまず1勝できるようにもっていきたいと思います」

──今日は9番がウィル・ゲニア選手ではなく、中村友哉選手でした。今日の試合で中村選手を起用した狙いと、試合を踏まえての評価をお願いします。

「私自身がチームを預かってから、このチームにどれくらいのポテンシャルがあるのか、どんな組み合わせをしたら力が出るのかというチャレンジもありました。中村選手は頑張ったと思います。世界を戦ってきた100近いキャップ数のプレーヤー(ウィル・ゲニア)と比べられると『もう少し』というところもあるのかもしれませんけれど、落ち着いてプレーしてくれたんじゃないかと私は思います」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「アタックでは、自分たちが継続しないといけない時間帯の中でのミスが多くて、結局スコアにつながらなかった。ディフェンスでは我慢し切れずに簡単にトライを取られてしまうので、それが敗因の一つです。チームの雰囲気の部分は徐々にビルドできていたかなと思いますが、また下がってしまったという印象を受けました。解決策は練習の中にしかないと思うので、しっかりと修正して次の試合に臨みたいと思います」

──結果的に、キックオフでトラブルを起こしてトライされた場面が痛かったのではないかと思いますが、いかがですか?

「まさにそのとおりです。今季の花園Lは波に乗れそうなところでキックオフから脱出できなかったり、ちょっと深い位置から展開されてトライを取られたり、手堅くいかないといけないところでリスクを負ってしまったり……。簡単なミスをしてしまって流れをそのまま手放してしまいました。もう一度チームとしてやるべきことをやりたいと思います」

──この1週間の取り組みはどのようなことを意識しましたか?

「アタック、ディフェンスともに明確に課題を挙げて、それに向かって尽力をしたんですが、ある種どこかで何も成し得ていないのにできたという達成感、できるという過信があったかなと思います。自分たちはチャレンジャーだし、まだ自分たちは何も成し得ていないことを再確認して進まないといけないと思っています」

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