リコーブラックラムズ東京(D1 カンファレンスA)
家族の前での初めての『ブラザー対決』。
兄として、絶対に負けられない意地がある
来日8年目。プロ選手になるために日本の大学への進学を選んだブロディ・マクカランは、コベルコ神戸スティーラーズで3年プレーしたあと、今季からリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)に移籍。NTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン1第11節、秩父宮ラグビー場で行われた古巣との試合ではトライを決め、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも輝いた。
「(プレーヤー・オブ・ザ・マッチをもらえたことは)うれしかったです。でも、チームのパフォーマンスの結果なので全員が良かった」。いつもどおりの献身的なディフェンスはあくまでも「自分の仕事」だと謙遜する姿勢を忘れない。
BR東京での1年目でありながら、早速リーダーグループの一員に任命された。その理由についてブロディ・マクカランは「プレシーズンのころから声を出していたからかな」と自己分析する。
「みんなと一緒に成長したい思いが強い。だからいろいろな人に声を掛けていたら、ちょっとだけ選手やコーチたちから信頼を得られたのかなと思っています」
その「ちょっとだけ」に語気を強めた。
現在チームは6位。昨季よりも大きく順位を上げる成績を紐解くと、開幕節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で負けたことが良い学びになったと振り返る。
「負けたことが良い経験になりました。練習中もよく、その試合の話が出るんです。最初の20分くらいは良いアタックをしていたのに、トライを取れなかった。そこで我慢できずに『いま、トライを取りたい』というマインドになってしまったことが僕たちの反省材料」
今季はこれまで5勝。勝利したあとであっても、反省会が開かれる。
「なぜ、その試合が良かったのか。なぜ、その人のプレーが良かったのか。僕たちはいま、きちんと考えることができています。そしてそれを練習にもフィードバックできている」
勝つことだけが大事なのではなく、なぜ、その結果になったのかを考えられるようになった。それが今季の特徴だ。
今週対戦する東芝ブレイブルーパス東京には弟のニコラス・マクカランが所属する。その直接対決に合わせ、両親と弟が初来日を果たした。ニュージーランドではかなわなかった『ブラザー対決』を初めて観戦する。
二人の戦績は、いまのところ「0対2で僕が負け」。だからこそ、今節は絶対に負けられない。
「6連戦最後の試合。良い終わり方をするためにも、自分たちの良いディフェンスからつながるエンターテイニングなアタックを観てほしいです」
「両親には黒のジャージを着て応援してもらいたい」。そう言って見せた笑顔に、闘志はみなぎった。
(原田友莉子)
東芝ブレイブルーパス東京(D1 カンファレンスA)
幼いときと変わらぬ高揚感。兄との
対峙を前に弟は「ワクワクしている」
東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は3月24日19時から、秩父宮ラグビー場でリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)と対戦する。リーグ戦4位の横浜キヤノンイーグルスを勝ち点3差で追うBL東京は、4連勝を狙う。
前節のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)との試合後には德永祥尭共同キャプテンが「試合をとおして自分たちが成長できていると思いますし、前に進んでいると実感しています」と手ごたえを語り、松永拓朗は「僕らにできることは1試合1試合、勝ち続けること」と集中力を研ぎ澄ました。
ボールを大きく動かすBL東京において、カギとなるセンターで11試合に出場しているのがニコラス・マクカラン。帝京大学出身の26歳で、12番としても13番としてもプレーできるのが強みだ。
「ここまではいい感じです。けがもなく、出場時間を増やせています。(12番と13番をプレーする難しさは)そこまでではないです。12番はよりボールをもらう回数が多いので、試合に関わることが増えるという感じでしょうか」
トヨタV戦では、前半27分にオフロードパスを受けてトライを奪い、同じセンターのバーガー・オーデンダールとともにグラウンド中央で何度もチャンスを生み出した。身長188cm、体重93kgの体をしなやかに使い、ラン、パス、キック、タックルとオールラウンドに活躍している。
プレーオフ進出に向けて負けられない戦いが続くが、今節の対戦相手であるBR東京は直近4試合で3勝1敗と調子を上げており、厳しい試合になることが予想される。
「体の大きなボールキャリアーがそろったチームなので、その勢いを止めなければいけません。そこにフォーカスします」
言葉数が少ないながらも真摯に受け答えをするニコラス・マクカランの表情が緩んだのは、BR東京に所属する兄、ブロディ・マクカランについて聞いたときだった。
「ワクワクしています。子どものときに近くの公園でプレーしていたのと同じですね」
ニュージーランドから東京に場所は変わったが、兄弟対決にワクワクする気持ちは変わらない。ニコラス・マクカランは純粋な気持ちでグラウンドを走り回る。
(安実剛士)