2023.03.25NTTリーグワン2022-23 D1 第13節レポート(BR東京 10-12 BL東京)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第13節 カンファレンスA
2023年3月24日(金)19:00 秩父宮ラグビー場(東京都)
リコーブラックラムズ東京 10-12 東芝ブレイブルーパス東京

雨中の“兄弟げんか”は弟に軍配。
兄弟の絆の強さを感じさせた試合後の握手

リコーブラックラムズ東京のブロディ・マクカラン選手(兄・左)と東芝ブレイブルーパス東京のニコラス・マクカラン選手(弟・右)

絶対に引かない。そんな互いの意地が伝わってくるようなディフェンスの応酬。雨の秩父宮ラグビー場で行われた試合は両者無得点で前半を折り返す。後半もヒリヒリするようなロースコアの展開の中、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が10点をリードするが、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は後半18分に原田衛のトライで追いすがるとBR東京がシンビン(一時退場)で14人となった好機を逃さずにジョネ・ナイカブラがトライ。12対10でBL東京が逆転勝利を収めた。

冷たい雨がそぼ降る中の激戦で輝きを見せたのがニュージーランドに生まれ、日本でラグビー選手として大きく成長を遂げたマクカラン兄弟だ。兄の、ブロディ・マクカランはBR東京の7番フランカーとして、弟のニコラス・マクカランはBL東京の13番センターとして二人ともに80分間フル出場。帝京大学で2年間、同じ釜の飯を食べ、切磋琢磨した二人はいまやそれぞれがチームに欠かせない存在へと成長した。

「お互いに負けられない試合だったし、全力でプレーした。最終的に粘って勝利をつかめたのは大きかったです。兄からは一度いいタックルをもらった」と弟のニコラス・マクカランは試合を振り返る。一方、兄のブロディ・マクカランは「体のぶつかり合いで自分たちBR東京らしいプレーができていたし、良いディフェンスからトライを取れたのは良かった。敗れはしましたが、いい戦いはできたと思う」と納得の表情。それでも、「これで弟とは0勝3敗だけど、次こそは勝ちたいね」と“初勝利”へ意欲を見せた。

勝利への執念からか兄弟で小競り合いとなるシーンもあった。それでも、「自分をイライラさせようといろいろやってきましたね。でも、クリーンなプレーでした」と弟が話せば、「外側から押し込んだときにそんな形になりましたね。試合後には、ちょっと冗談でパンチをするようなしぐさをしたりして仲直りしました」と兄。試合後のミックスゾーンでは互いの健闘を称え、がっちりと握手。雨中の激戦で力を出し切った二人だけに分かる感情のやり取りだった。

「(同じチームで戦った)大学のときも楽しかったけれども、普段なかなか会えない中、こうやって違うチームの選手としてバトルすることで、互いに『頑張っているな』と思えるし、いまのほうが兄弟の絆は強い気がします」と兄のブロディ・マクカラン。熱き魂を持つ兄弟二人の戦いにこれからも注目だ。

(関谷智紀)

リコーブラックラムズ東京

リコーブラックラムズ東京のピーター・ヒューワット ヘッドコーチ(右)、マット・マッガーン ゲームキャプテン

リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ

「自分たちのチームをとても誇りに思います。今日の試合ではほぼファーストプレーで12番(の礒田凌平)が倒れてしまった。水曜日にも池田悠希がけがをし、ナキ(ロトアヘア アマナキ大洋)も確認が必要な状態でした。そんな状況の中でも選手たちが80分間でしっかりと出し切ってくれた。先週は10%足りていないと申し上げたところがあったんですけれども、それに対して選手たちがチャレンジをしっかりとし、リアクションをしてくれた。すごく誇りに思います。

いつも言っていることですが、誰が出場するか、という点はウチとしてはあまり重要ではない。必ずその試合に選ばれた選手がステップアップしてくれる。ナキなどはあまりプレーしていないですし、シオペ・タヴォなどもそうですね。今季はあまり出場できていないメンバーも多かった中で、これだけのパフォーマンスを見せてくれた選手たちをあらためて誇りに思います。

とはいえ、われわれはもちろん勝つためにここに来ています。最後の20分間ですか……違うやり方もあったかもしれない。そうだったら、また結果も違ったとは思います。選手のことを思うととても悔しいです」

──ベースの部分では、ある程度しっかりできたという手ごたえはありましたか?

「やはり雨が降る中での試合だったので、ディフェンスとセットピースをしっかり作っていかなければいけない。ほとんどの場合でそれはできていました。でも、ところどころスイッチをオフにしてしまった部分があり、相手にそこを突かれてしまった。

今夜の試合は普段とは違うポジションで出場した選手もいました。ミッドフィールド間のコネクションなどにも影響はあったと思います。しっかりとしたディフェンスはできていましたが、ほんの少しの間それが崩れたところでスコアされてしまった、と思います。

ラインアウトでは、雨ということもあり、両チームともに思っていたほどの精度は出せませんでした。とはいえ、セットピースの部分は普段の練習から磨いていますし、大事なプレーだと考えています」

──昨季もけが人が多く勝てない時期があった。今季はけが人が多くても勝てているのはどう捉えているか?

「昨季はハードトレーニングをし、いろいろなことを変えていった時期でもありました。練習のやり方などもそうです。それが今季、段々と形になってきたと感じています。良い方向に進めていると感じています。

今後もトップグループのチームに対してはどんどんプレッシャーを掛けていきたいと思っていますので、自分たちが作っているスコッドやメンタリティーの部分でトップ4のチームにチャレンジする機会は近づいていると感じます。昨季にけがの選手をカバーすることでチャンスを得た選手たちが良い経験を積んで、今季も引き続きよく戦ってくれているので、厳しい1年にはなりましたけれども、たくさん学ぶことで成長を果たせたと思います。

第6節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦や今夜の試合なども競っていますし、チャレンジができています。勝利にあと一歩というところですが、そこはまだ個人のレベル差かもしれません。こういった僅差の試合を経験することが、厳しいですが一番成長につながるのではないかと思います」

──後半20分から途中出場したアイザック・ルーカス選手について。

「アイザック(・ルーカス)はとても良いアタックプレーヤーですが、まだ23歳の10番(スタンドオフ)なのでこういう天気のときなどのゲームマネジメントはまだまだです。でも彼も成長しなければならないので短い時間ですが出場しました。

正しいエリアに彼が入ったら、彼のワンステップで大きくゲームが変わってきたりもするので、もっと時間を与えたい思いももちろんあります。けがなどのシチュエーションも含めた外国人の枠のこともありますので、もうちょっと試合で使いたいと思っています」

リコーブラックラムズ東京
マット・マッガーン ゲームキャプテン

「ヘッドコーチが話した内容と重なってきます。気持ちという部分ではまったく問題なかったと思います。いろいろなことがあった中で、自分たちのパフォーマンスをしっかり見せられたと思います。試合は最後の数分に勝負がかかっていたのですけれども……、結果はちょっとキツいですね。私から言えることはそれだけです」

──キッキングゲームとなり、マット・マッガーン選手自身への負担も大きい展開で消耗度も高かったのではないかと思うが、そのあたりは実際にプレーしてみてどう感じていましたか?

「キックで状況を打開するのはまさに『僕の仕事』です。キックを駆使しながらチームメートのみんなを導いていくのは毎試合しなければならない『自分の仕事』だと思っています。常に準備はしています」

──後半27分にシンビンで1人退場となり、14人で戦わざるを得なくなったが、どう対応したか?

「イエローカードが出されたのはけっこう大きな裁定だと感じました。ハーフタイムでは敵陣でプレーしようという意思統一があり、雨のコンディションですので、(ノックオンなどのミスの確率が上がるため)あまりボールを持ちたくないと双方が考える中、キックを蹴り合うバトルについては優位に立てました。どちらが先にキックミスをするかという状況でしたが、その点はできていたと思います。人数が少ない中でもゴールラインドロップアウトといったシチュエーションも作れていました。ただ、何回か自分たちが足りていない部分があったかもとは思います」

──今夜は秩父宮ラグビー場でのホストゲーム3連戦最後の試合でしたが、雨の中で多くの観客が駆け付けました。ファンに向けてメッセージをお願いします。

「素晴らしいです。金曜日の夜で、暖かい家のテレビで試合を観ることもできると思いますが、特にこんな雨の中でも会場に足を運んで応援してくれるのは、日本のラグビーを支えてくれている方々だと本当に感謝しています」

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、小川高廣 共同キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「まず、最初にひと言。『とてもラッキーだった』と言いたいです。タフなコンディションでプレッシャーの掛かった試合でした。両チームともボールをそこまで保持したくないという展開でした。最終的には重要な瞬間をどちらが取れるか、そういった試合となりました。その瞬間、瞬間でタフに選手たちが戦い続けることができたのは本当に誇りに思います。最高のラグビーだったとは言えない試合でしたが、ペナルティやボールを落とすといったミスのような形が連続で続く、まさにインテンシティの強度が高い試合だったと思います。われわれのチームが最終的にしっかりとチャンスをモノにすることができて、こういった結果を勝ち取ることができました。この段階になって、6連戦のうち4試合で勝ったことで、結果には満足しています」

──ハーフタイムにどんな指示をしましたか?

「まずは『敵陣でプレーしよう』と話しました。ディフェンスに自信を持った中で、『我慢強く敵陣でプレーしてチャンスをモノにしよう』と、そういう話をしました。

『今夜のような雨の試合ではミスの数は多くなるだろう』と話をして、しっかりとテリトリーを取った上で、『ミスをするなら相手の陣地でする。ミスを起こしても敵陣で』、と話しました。ハーフタイムの前に3回連続でペナルティになるなど、かなりの回数でボールを失いました。自分たちのやりたかったことと実際にピッチで起こっていることは正反対でしたけど、さきほど小川高廣選手が言ったように我慢強く戦えた。ディフェンスは素晴らしかったと思います」

──控えの選手を投入したタイミング、その意図を教えてください。

「アグレッシブに行ってほしいということで、交代した選手には精度の高いプレーでインパクトを与えてほしい、という意図がありました。われわれは交代で入る選手を『アルファ』と呼んでいるんですけれども、ここまでの数試合彼ら、アルファの選手のインパクトが素晴らしくて、良い影響を与えてくれていると思っています。特にこういった拮抗した試合では、交代で入る選手のインパクトがとても大事になります。前節のトヨタヴェルブリッツ戦でも交代で入った選手が良い意味での違いを生み出してくれた。素晴らしかったです」

──残り3試合、今後どういうところを修正したいでしょうか?

「まずは選手の心身をリフレッシュしたいと思います。選手たちも少し小休憩を挟みます。しっかりと試合内容の再評価をして相手ごとに計画を立てて1週間ごとに対応していきたいと思います。さらにコーチ陣で集まって、どういう点にフォーカスするのかをしっかりとプランを立てた上で対応したいと思います。選手たちはここまで頑張ってきてくれていますので、目の前の1週間にフォーカスして対応したいと思います。休みを挟んで静岡ブルーレヴズ戦にワクワクした状態で臨みたいと思います」

東芝ブレイブルーパス東京
小川高廣 共同キャプテン

「まずは本当に、勝ててほっとしています。また2週連続でこういった競った試合を勝ち切れて、チームとしては強くなってきている証拠だと感じています。前半から我慢比べで、その中でもリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんもすごい集中力でやってくる中で、自分たちは途中、10点差になったときもメンタルが切れることなく、自分たちのやることを遂行しただけでした。特別なことをするわけではなく、自分たち一人ひとりの役割をしっかりできたので、最後はこういう結果になったと思います。このあと、バイウィーク(試合なしの週)を挟んで、また次のチームに対して一戦一戦準備していきたいと思います」

──前半は自陣の22mライン以内に相手を入れない守りができていたがその要因は何だったのでしょうか?

「ディフェンスは、やっている中でもそんなに怖さはなかったし、ディシプリン(規律)を守ってしっかりスペーシングしていければ全然怖くないなと考えていました」

──ペナルティゴールを蹴るかどうかの選択に迷った部分はありませんでしたか?

「ショットを狙うかどうかと言うところですか? 後半の何分ぐらいだったか分かりませんが、私はもうピッチを出ていたんですけれども、自分だったらショットを狙っていたかなというところはありましたね。7対10のときで、同点にするシチュエーションでした。そのときはタッチに出して、結局、ターンオーバーされてしまったシーンです。でも、結果的にそのあと、トライになったので、そのあたりは良かったかなと思います」

──雨の影響はありましたか?

「間違いなく影響はあったと思います。その中でも自分たちがちゃんとやらなければいけない部分をしっかりできなかった点と、BR東京さんが外でプレッシャーを掛けてくることは分かっていましたが、そこでプレッシャーを掛けられることで、ターンオーバーされるなどしてしまい、、そういう部分につながったのかな、と思います」

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