静岡ブルーレヴズ(D1 カンファレンスA)
昨季に続き二度目のアイスタ開催。
良芝が静岡BRの後押しとなる理由とは
前節のリコーブラックラムズ東京戦では、非常に粘り強い戦いで接戦を制し、5試合ぶりの勝利を挙げた静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)。二人のキャプテン、クワッガ・スミスと奥村翔をけがで欠く中、「みんなでつかんだ勝利だと思いますし、今節に向けても良いモチベーションで良い準備ができています」と、ゲームキャプテンを務めた大戸裕矢も手ごたえを口にする。
ただ、ディビジョン2との入替戦を回避するには、まだ負けられない状況が続く。「今節も決勝戦、負けたら終わりという試合」と堀川隆延ヘッドコーチは選手たちを鼓舞する。
その大事な三菱重工相模原ダイナボアーズ戦の舞台は、静岡市清水区のIAIスタジアム日本平だ。清水エスパルスの本拠地である同スタジアム、通称『アイスタ』でのホストゲームは、昨年初めて開催され、今回が2回目となる。
静岡BRは、昨季のNTTジャパンラグビー リーグワンの始動に合わせて『ヤマハ発動機ジュビロ』から生まれ変わった。静岡県全域をホストエリアとし、県民全体から応援を得たいという願いもあって、昨季はスローガンとして『All for Shizuoka』を掲げた。
その一環として初挑戦したのが、アイスタ開催だった。静岡県は横に長く、東部、中部、西部の3エリアでそれぞれ歴史や文化に特徴がある。静岡BRの拠点は西部の磐田市にあり、ヤマハスタジアムも同市内。東部から応援に行くには100kmを優に超える移動を要する。それが中部でも東寄りにあるアイスタなら半分以下になる。
「中部、東部からも来やすくなるので、この機会にぜひラグビーの生観戦を体験してほしいです」と堀川ヘッドコーチは言う。天候に恵まれればスタンドから富士山も見えるアイスタは、西部の県民にとっても新鮮な環境だ。
「昨季の試合(埼玉パナソニックワイルドナイツ戦)では、関東からも含めて多くの方が観に来てくれて、ヤマハスタジアム並みのホーム感がありましたし、僕たちも楽しくプレーできました。アイスタで試合ができるのは本当に光栄ですし、意義のあることだと思うので、開催に協力してくださった方々に感謝しながらしっかり勝って、みんなで喜びたいです」と大戸も語る。
アイスタでの開催には、ほかにも大きなメリットがあると大戸は言う。
「芝生が本当に素晴らしくて、世界レベルだなと感じました。スクラムを組んでも全然滑らなかったですし、相手の選手も『すごいね。良い芝だね』と言っていました。僕らはスクラムに自信を持っているので、その強みが生きる場所でもあると思います」
Jリーグのベストピッチ賞を何度も獲得した清水エスパルスの聖地で試合ができる貴重な機会。それはチームに自信と勢いをもたらす2連勝に向けても、大きな後押しとなるはずだ。
(前島芳雄)
三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1 カンファレンスA)
予想される“雨中の戦い”。「雨しか降らないので慣れています」と話した一人のキーマン
三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)はIAIスタジアム日本平で静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)と相まみえる。
試合時間の降水確率は3月24日時点で90%、9位・静岡BRと10位・相模原DBの争いは雨中決戦になりそうだ。
雨を苦にしないプレースタイルを持つ両チーム。今季の降雨の試合では、相模原DBは東芝ブレイブルーパス東京に公式戦初白星。静岡BRも前節、雨の降る中でリコーブラックラムズ東京に逆転勝ちを収めている。
引き分けだった前回の対戦で相模原DBは、先行する静岡BRに追いすがり、後半40分に同点トライを決めた。スタンドオフで先発して、6本のキックを決めたジェームス・シルコックは「自分たちのスキルを遂行できれば勝てる試合でした」と振り返る。
決まれば逆転のコンバージョンキックを外したが、ほかの選手たちが10番の彼を囲んで励ます姿にチームの“絆”が見えた。そして前節、埼玉パナソニックワイルドナイツ戦のハーフタイム、大量失点して肩を落として戻る選手たちをジェームス・シルコックが迎える姿があった。
「(母国の)イギリスを含めて外国の試合では、選手は劣勢でも落ち込まないのですが、前半、相模原DBの選手が良くなかったのでサポートしたいと思いました」とジェームス・シルコック。
さらに、「プレシーズン、ほかの選手たちの努力のおかげで、外国人も日本人も楽しく、いいシーズンを過ごしています。だからみんなのためにも頑張りたいと思います」と控えめな様子で付け加えた。
予想される雨中決戦に向けて、ジェームス・シルコックは「イギリスは雨しか降らないので慣れています。前回は敵陣22m内にほとんど入れませんでしたが、今回は相手を奥深く押し込んで、脱出しないといけない状況を作りたいです」と展望する。
残り4試合、NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 ディビジョン1の生き残りを懸けて、し烈な戦いが繰り広げられる。
(宮本隆介)