NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第13節 カンファレンスA
2023年3月26日(日)14:00 IAIスタジアム日本平 (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 30-20 三菱重工相模原ダイナボアーズ
トライは約2年ぶり。どんな状況でも安定感を出すために研鑽を続けた男へのご褒美
両チームの選手・スタッフが「本当に素晴らしい芝だった」と絶賛した、年に一度のIAIスタアジアム日本平での一戦。ディビジョン2との入替戦を回避したいチーム同士の直接対決だったこともあって、雨の中でさまざまなドラマが起こった。より白熱度が増した戦いの末に静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)が30対20で三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)を下した。
その中で、後半の大事な局面で2トライを奪ってプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのが、伊東力だった。
昨季はけがに苦しんで3試合しか出場できなかった伊東がトライを挙げたのは、2021年4月のジャパンラグビー トップリーグプレーオフ2回戦以来。後半12分の1本目は、ほぼ2年ぶりのトライでもあった。
「年齢を重ねてきて、自分のプレースタイル的にも強引に行くような感じとは少し変わってきていたので、仕方ない部分ではあったんですけど、今日はフォワードがゴール前で頑張ってくれた結果、最後に僕のところに来たのをトライに結び付けられたのは良かったと思っています」
今季は若手の台頭や負傷もあって今節が6試合目の出場だったが、そんな中でも黙々と最善の準備を積み重ねてきた。
「僕は(33歳で)もうベテランになりますし、槇(瑛人)など若くて良いウインガーがいるので、どんなタイミングで出たとしても、どんな状況だったとしても安定感を出せるようにしっかりと準備しようと思っています」
堀川隆延ヘッドコーチも「伊東はあまり目立たないところでしっかり仕事をこなしていく選手なんですが、今日もキッキングゲームで相手の10番が素晴らしいキッカーでしたが、よくフィールドをカバーしていたと思います。目に見えないところで本当に素晴らしい働きをしてくれたなと思います」と称賛する。
雨でボールが滑るコンディションでもハンドリングのミスを見せることなく、本人の言葉どおり安定したプレーを続けた伊東。
「キックのキャッチなども、こういう雨の試合ではすごく大事になるので、そこで自分がどれだけ見せられるかというのは一番意識しています。見えないところを確実にやるのが自分の仕事かなと思います」と言う。
勝利はチーム全員でつかんだものだが、2トライとプレーヤー・オブ・ザ・マッチはこれまで積み重ねてきた彼の貢献に対しての、ふさわしいご褒美だったと言えるのではないだろうか。
(前島芳雄)
静岡ブルーレヴズ
静岡ブルーレヴズ
堀川隆延ヘッドコーチ
「まずは悪天候の中、本当に多くの方に最後まで熱い声援を送っていただきまして、本当にありがとうございます。晴れたら富士山が見えて、本当に素晴らしい景観のあるこのスタジアムと、本当に芝生が今日も素晴らしくて、スクラムを組んでもめくれていませんでした。そういった本当に素晴らしい環境の中で選手たちがラグビーができたことをうれしく思います。
ゲームの中身に関しては、よく勝ち切ってくれたと思います。相手チームに(前半29分という)早い段階でレッドカードが出るというのはなかなか体験したことがないんですけど、やはり少しゲームの中でコンサバティブ(保守的)になってしまった状態が結構続いたのかなと。それを後半にしっかり自分たちで修正をして、勝ち切った選手たちは本当に素晴らしかったと思います。
まだまだ、ここはこうするべきだとか、たくさん成長するべき、成長できるポイントはあります。残り3試合、まず次の東芝ブレイブルーパス東京に勝つための準備を2週間しっかりやっていきたいと思います」
──伊東力選手が2トライを挙げましたが、伊東選手のパフォーマンスはいかがでしたか?
「スコアはあくまでもチームのスコアなので、彼一人のものではないと思います。あのスペースに全員で判断してボールを動かしたというところが評価されるべきで、本当に良いトライだったと思います。伊東は普段あまり目立たないところでしっかり仕事をこなしていく選手です。今日も相手の10番が素晴らしいキッカーで、キッキングゲームになりました。そこでよくフィールドをカバーしていたと思いますし、目に見えないところで本当に彼は素晴らしい働きをしてくれたと思います」
──最後のペナルティトライにつながるキーガン・ファリア選手のキックはいかがでしたか?
「素晴らしかったと思います。50:22というあのプレーは、フォワードに勢いを与えるプレーなので。先週のゲームはバックスリーが後ろに下げて下げて下げて、しんどいゲームをしてしまったので、そういった意味では本当に今日は素晴らしいパフォーマンスをしてくれたんじゃないかと思います」
──ミスが多かった中で、結果的に10点を上回れた要因というのは?
「われわれが目指す“レヴズスタイル”というのは、セットピースで相手にプレッシャーを掛けるというところが一番重要な部分なんですけど、そういった意味ではフォワードの選手たち8人がスクラム、モールで相手を圧倒してくれた。そこに尽きると思います」
静岡ブルーレヴズ
大戸裕矢ゲームキャプテン
「本日はこのような天候の中、開催していただいた関係者の皆さま、ありがとうございます。そして、年に一度ですが、中部地区のIAIスタジアム日本平で開催することができて、そこでプレーできたことを本当にうれしく思います。静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)の事業部の方々も、本当に試合前のイベントから試合中の盛り上げまでしてくれて、本当にプレーしていて楽しかったです。ありがとうございました。
試合内容はお互いミスも多くて、静岡BRもラインアウトのミスが多かったんですけど、勝ち切れて、バイウィークをはさんで次につながるということは本当にポジティブで。もちろん勝ち点の関係性もあるんですけど、勝てたことが一番よかったと思います。次節、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)戦。前回、負けているので、しっかりリベンジの気持ちを持って、また取り組んでいきたいと思います」
──このスタジアムでは1年ぶりにプレーされました。感想を聞かせてください。
「やっぱり芝生に関しては本当に世界レベルだなというのは、すごく感じました。去年もそうだったんですけど、スクラムをしていても芝がめくれ上がることもないですし、しっかりスパイクもかむので、レベルが高いスクラムが組めると思います。静岡BRのスタイルにとってはかなり強いアドバンテージがあると思います。またやりたいです」
── 一人多い場面を生かすという意味ではどんなことを意識していましたか?
「実はそんなに意識してなくて、前半、相手にレッドカードが出たんですけど、14人だからというのを意識し過ぎて、『簡単に(点数を)取れるんじゃないか』というマインドにみんながなってしまい、ちょっと(スコアが)もつれてしまいました。ハーフタイムでは、『相手が14人というのを1回(頭の中から)捨てよう』と僕は言ったんです。
そこからは、相手が14人だからというのはあまり気にせずに自分たちのラグビーをプレーできました」
──共同キャプテンの二人もけがで、けが人が多い中でも2連勝したことの意義というのはどう感じていますか?
「チーム全体の力が上がってきているというのは感じています。もちろん、いる選手で戦わないといけません。誰がいなくなったからスタイルが変わるということは一切ないので。まだ次節のBL東京戦のメンバーがどうなるか分かりませんが、しっかり勝ちにいくように頑張りたいと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「もちろん勝てなかったことは残念に思います。選手たちは14人で長く試合をしましたけど、そこですごく粘り強くプレーできて、良いプレーも見せていたと思うので、敗因はやっぱり最後の何個かの大事な一瞬一瞬で負けたところだと思います。悲しいですけど、それがラグビーです」
──最後のショットの選択をした狙いと、キッカーがジェームス・シルコック選手ではなかったことについて、その理由を教えていただけますか?
「シンプルに10点差から7点差にしてボーナスポイントを取りたかったというところです。あとワンプレー、コーナーに蹴ってそこからラインアウトを取っても勝つことはできないので。なぜ(ジェームス・)シルコックが蹴らなかったのか、私は分からないんですけど、ちょっとケアを受けていたところがありました。(ジェームス・)シルコックはこの試合ですごくいいキックをたくさん見せてくれましたけど、石田(一貴)選手も良いキッカーなので、彼が蹴るのは問題ではなかったと思います」
──カードやペナルティなどもったいないプレーが多かったと思いますが、原因としてどんなことを感じていますか?
「一つひとつのプレーのところでいろいろな理由はあると思いますが、前半はレッドカードもイエローカードもあって、両チームともペナルティトライもありました。いろいろなところの判断をしていた中で両チームが反応しないといけなかったと思います。こういう天候だといろいろミスもありますし、いろいろなプレッシャーを感じるところはあると思うので、やっぱりこういう雨の中は陣地をどれだけコントロールできるかどうかが一番大事な点だと思います。最後に相手がショットを狙って3点差でリードしていたところも相手がうまく陣地を取れていたからだと思います。そういうもったいないプレーについては、いろいろな理由があると思いますけど、やはり一番は自分たちで陣地のコントロールができなかったのが、一つの敗因だと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン
「(グレン・ディレーニー)ヘッドコーチがおっしゃったとおり、勝てそうだった試合を自分たちのペナルティやミス。そういったスキルのところでのミスがあり、苦しい展開になってしまいました。準備のプロセスのところに何か問題があったのか、またしっかり反省して、それをしっかり次に生かしたいと思います」
──このスタジアムでプレーするのは初めてだと思うが、どんな印象でしたか?
「本当に素晴らしい芝生で、観客席との距離が近かったので、すごく声援も聞こえましたし、走りやすいグラウンドでした。選手として、すごく気持ちが高まるスタジアムだったと思います」