NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1 (リーグ戦) 第14節 カンファレンスA
2023年4月8日(土)17:00 熊谷スポーツ文化公園ラグビー場 (埼玉県)
埼玉パナソニックワイルドナイツ 25-12 リコーブラックラムズ東京
150キャップの偉業にも堀江翔太は泰然自若。変わらぬ姿をこれからも積み重ねていく
強風が吹き荒れた春の熊谷スポーツ文化公園ラグビー場。ホストチームの埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)のゲームキャプテンを務めたのは、今節がリーグ通算150キャップ目(トップリーグとリーグワン通算)となる堀江翔太だった。
チームの先頭に立ち、空を見上げながらゆっくりと緑のピッチに足を踏み入れる。
「いろんな人の力をもらってプレーできたらいいな、と思って」
37歳。一回り以上、年齢の離れた後輩たちとともに、いつものようにグラウンドに立った。
同じフッカーというポジションを担う埼玉WKのキャプテン・坂手淳史は「本当に素晴らしい選手と一緒にラグビーができている」と感謝する。
「試合前、ロビー(・ディーンズ)監督からみんなに話がありました。『僕たちはいつも、堀江さんからいろんなものをもらっている。それを今日は返そう』」
試合後のインタビューエリアには、この日グッズ購入者へ配布された「堀江お面」を被って登場した。
たとえ、スクラムでペナルティを獲得しても、納得するまでレフリーと話し込む姿。交代し、ピッチをあとにしても、ベンチに座ることなく大きな声で仲間にディフェンスの指示を送り続ける姿。
メモリアルマッチであろうとも、そこにはいつもと変わらない堀江の姿があった。自らの手でスキルフルなファーストトライを決め、プレーヤー・オブ・ザ・マッチにも輝く。
節目の150キャップ。うれしい。だが、ここを目指してラグビーをしてきたわけではない。
「自分がどれだけ良いプレーをできるか、を考えて次に進みたいと思います」
これからも、自分、そしてチームの成長のために1試合を積み重ねる。
一方、敗れたリコーブラックラムズ東京は、チームとしても個々人でも、泥臭いラグビーでDNAを体現し続けた。
この日、先発の司令塔を務めた堀米航平は「埼玉県出身者として、埼玉でプレーできたことはうれしかった」と喜ぶ。風下だった前半を良い形で折り返したものの、逆に後半は相手のラグビーに付き合い過ぎてしまったことを悔やんだ。
昨季まで埼玉WKに所属していたハドレー・パークスにとっては、ひさしぶりの熊谷スポーツ文化公園ラグビー場。「風が強かったね」と微笑んだが、照準はすでに次の試合へ。「思いっ切りプレーして、ファンの方々に誇りに思ってもらえるような、良いパフォーマンスをしたい」
次節、リーグ戦最後のホストゲームへと挑む。
(原田友莉子)
埼玉パナソニックワイルドナイツ
埼玉パナソニックワイルドナイツ
ロビー・ディーンズ 監督
「今日はとても難しい試合だったと感じています。天候だけでなく、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんの気持ちが前面に出た試合でした。
堀江(翔太)選手も150キャップ目という節目にトライを取りました。とても素晴らしい出来事ですね。このチームの選手たちは堀江選手と一緒にプレーすること、練習することがとても好きです。私自身も、堀江選手とともに仕事ができていることをとても光栄に思います」
──粘り強い相手に対して、勝負を分けた大きな要因はどこにあると考えていますか?
「後半、プレッシャーが掛かっていたにもかかわらずボールをキープできたこと。そして、それを得点につなげられたことがターニングポイントだと感じています。
理想としては前半の最後、相手にトライを与えなければ良かったですね。それが後半、彼らに勢いを与えてしまったと思います。後半はボールキープをしながら相手にスキを与えませんでした。ペナルティを犯してモールを組まれることが脅威だったので、相手にそれをさせなかったことが良かったと思います。それが勝敗を決めました。
いまの状況から見るに、BR東京さんにとっては1点1点がとても大切な得点になっていると思っていましたし、BR東京さんはディフェンスがとても良かったと思います。組織的なところだけでなく、個人個人のディフェンスも良かったと思いました」
──堀江選手がチームにもたらしているものを教えてください。
「堀江選手がチームに与えてくれる影響はとても大きく、チームからのリスペクトを勝ち取っています。
彼の習慣は本当に素晴らしいと感じています。選手として常に成長していきたいという気持ち、常に上を目指している気持ちは本当に素晴らしいです。周りの選手にも良い影響を与えてくれています。
技術だけでなく知識も豊富で、チームに影響を与えています。キャプテンとして3年連続でタイトルを勝ち取ったこともありましたが、キャプテンを退いてもなお後方からチームをリードしていく、その影響はキャプテンをしていた時期よりも大きな影響力を持っていると感じます」
埼玉パナソニックワイルドナイツ
堀江翔太 ゲームキャプテン
「勝って良かったです。この天候でなかなか自分たちの思ったラグビーができなくて。ディフェンスでプレッシャーを掛けながら、悪い天候の中、そしてリコーブラックラムズ東京さんの強いプレッシャーの中、どう自分たちのアタックをして、どうディフェンスするのか。グラウンド上でやりながら修正できたことが非常に良かったと思います」
──堀江選手らしいターンしながらのトライがありました。あの場面を振り返ってください。
「何回か日本代表のミーティングがあり、その中でジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチからあのようなところを狙ってほしいという指示がありました。(ラックから自分で)ピック&ゴーしたのは初めてぐらいなのですが、自分の中でやっていなかったことで成長する部分はそこかな、と思っていて。『どこか空いたら狙おう』、とずっと思っていました。そうしたらきれいに目の前が空いたので、思うままに持っていった感じです。ラックができたら、常に狙っていました。
ピックして行ったそのあとの条件がたくさんあるのですが、その条件を守りながら自分の中でうまいこと体の使い方やスペースを見ながらできたと思います。それが150キャップ目の試合だった、ということも非常にうれしいことです。
日本代表のミーティングでは、『あれが良い』、『これが良い』、『もうちょっとこうしたら良い』とレビューを受けています。自分の中でもそういうことを取り入れていきたいと思っていたので、それができて良かったです」
──毎試合良くなろうとされてきた、その向上心の源はどこにありますか?
「プロとして向上心を持つことは当たり前だと思っています。まだ自分には伸びシロがあることを教えてくれたのが、(トレーナーの)佐藤(義人)さん。教えられたことを試合で表現したい、と思うことがモチベーションになります。そして僕が良いプレーをすればチームのためになることも一つのモチベーションです」
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「まずは堀江選手に『150キャップおめでとうございます』とお伝えしたいと思います。本当にすごいことです。
試合については、差はそんなに大きくない、ということをいま選手たちに伝えてきました。選手たちのエフォートについても誇りに思います。あきらめない、という姿勢が良かったですね。ただ、一番大きな差があったのはターンオーバーされた回数。私たちが22回で、相手が10回ぐらいだったと記憶しています。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)のようなチームにそれだけのチャンスを与えてしまうと、影響は大きいです。それでも(集中力を)切らさずに、トライ数は埼玉WKが3トライで私たちが2トライ。差がすごく開いているわけではないので、残りの10%(上位チームとの総合的な差を数値化したもの)をこれからもやり続けていきたいと思います。
埼玉WKは日本代表や南アフリカ代表も数多くいる良いチームです。ですが人々が感じているほど、自分たちとの差は大きくないと感じました。チームのことをとても誇りに思います」
──アイザック・ルーカス選手がフルバックで出場したのは今季初めて。そこに至った理由を教えてください。
「アイザック(ルーカス)は試合に出ていない間もしっかりと準備をしていました。われわれの戦い方として、10番と15番は入れ替わりやすい部分があります。プレーのコール、そして相手からのプレッシャーを少し減らせるかな、ということも踏まえて15番にしました。今日のパフォーマンスは良かったと思います。まだ24歳の、10番、15番の選手です。まだまだ成長中であり、才能あるプレーヤーです」
リコーブラックラムズ東京
山本昌太ゲームキャプテン
「ヘッドコーチが言ったとおり、小さなところが最終的な結果につながったと思っています。ボールキャリーでノックオンをしたり、一つのブレイクダウンであったり、一つの判断であったり。そういうものが積み重なって、スコアで相手を上回れませんでした。
それでも、自分たちが今まで準備してきたこと、積み上げてきたことは何も間違っていないとこの試合をとおして感じています。(上位チームとの総合力の差である)10%を残りの試合でどれだけ埋められるか、ということを意識して来週のゲームを迎えたいと思います」
──強風が吹いていましたが、やりにくさを含めたゲームプランを教えてください。
「確かに風をかなり感じていました。前半は風下で難しいコンディションでしたが、自分たちとしてはプランどおりしっかりと戦って、良い状態で後半を迎えられました。
ただ後半、逆に風上になったときに相手のテンポ、リズムに合わせ過ぎたと感じています。相手の短いキックやアンストラクチャーなラグビーに付き合いすぎたかな、といまの段階では感じます」
──前半の最終盤、敵陣深くまで攻め込んだときに埼玉パナソニックワイルドナイツのラクラン・ボーシェー選手のジャッカルがありました。攻めているときにはどのような感触がありましたか?
「相手はかなりブレイクダウンにコンテストしてきているなと感じていました。前半は自分たちがブレイクダウンでファイトして、ボールを動かせればチャンスを生み出せていたと思います。
ただ、試合をとおしてターンオーバーなど小さいところで取り切れず、逆に相手はチャンスをしっかりモノにしています。そこが自分たちに足りない10%の一つかなと思います」