NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第13節
2023年4月8日(土)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 0-31 NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
優勝が決まっても最後のホストゲームで負けても、なお前進。その姿勢がラグビーを面白くする
晴空のもと、強風が吹き荒れたBalcom BMW Stadium。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)はホストゲームでNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)を迎えて0対31で敗れた。
勝利したRH大阪は1試合を残してディビジョン3優勝とディビジョン2昇格が決定。広島に駆け付けたファンとともに栄光の瞬間を分かち合った。キャプテンの杉下暢は優勝までの戦いを振り返り、「一戦一戦、チームとして成長していくことができた」と胸を張る。
「自分たちの課題をしっかり見つめ直し、その課題を克服するためにコーチと選手が一緒に考えてクリアしてきたので、そういった『毎週よくなろう』というマインドセットが優勝という結果につながりました」
RH大阪はチーム再編成を経てディビジョン3から再スタートとなったが、『前回よりもいい試合をしよう』という『Better than before』の精神で前に進んできた。今節は強風や相手のエナジーを受けて「難しい試合だった」とマット・コベイン ヘッドコーチが振り返ったが、これまで積み上げてきた自信を表すような完封勝ちで優勝を成し遂げた。
対する中国RRも、今季最後のホストゲームで敗れたものの、課題に立ち向かう姿勢を見せた。今節、岩戸博和ヘッドコーチが掲げたのは「ラグビーの原点」と表した「前進」。ここ数試合は相手の勢いに対して受け身になっていたが、攻守において前に向かって戦うことにフォーカスした。
特にディフェンスでは立ち上がりから中国RRらしさを発揮。首位チーム相手でも受け身にならず、気持ちの入った泥臭いプレーで力強い試合の入りを見せた。岩戸ヘッドコーチも「ディフェンスのタックルの部分では前に出て止めていたシーンはいくつかあったので、フォーカスしてきた部分を選手たちが体現してくれた。そこは評価していますし、選手のことを誇りに思います」と話す。
ディフェンスでは手ごたえを得たが、アタックは相手の堅いディフェンスに阻まれて無得点に終わり、岩戸ヘッドコーチは「得点できなかったのが一番の反省点」と悔やんだ。それでも、また課題に向き合って次の試合に臨んでいく。その姿勢がチームを少しでも先に進める。グラウンド上でも、チームの成長でも、大切なのは前に進もうとする意思だ。
シーズンは終盤戦だが、どちらのチームも前進を止めない。RH大阪は次節、ホストで今季最終戦を戦う。杉下は「シンプルに今季のベストゲームをします」と最後まで気を抜くことはない。入替戦の可能性をわずかに残している中国RRは重要な2試合が残っている。共同キャプテンの西川太郎は「二つとも勝ちに行って、もっと成長していきたい」と意気込む。前に進もうとする意思、それがラグビーを面白くする。
(湊昂大)
中国電力レッドレグリオンズ
中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和 ヘッドコーチ
「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)のみなさま、リーグ関係者のみなさま、本日はありがとうございました。この2週間でアタックもディフェンスもラグビーの原点である前進という部分をフォーカスしてきました。ディフェンスはブレイクダウンのバトルでは若干やられる部分はありましたが、タックルの部分では前に出て止められたシーンがいくつかありましたので、フォーカスしてきた部分については選手自身が体現してくれたと思います。そこは評価していますし、選手のことを誇りに思っています。
アタックは早くサポートしようと話をしていましたが、ブレイクダウンでちょっとガバガバに取られるようなシーンがあったので、そこは次節に向けて修正したいと思います。負けて目の前でRH大阪さんの優勝を見せられた形になりましたが、総じて、次につながるゲームだったと思います」
──風が強かったですが、影響はどう見ていましたか?
「ディフェンスからモメンタム(勢い)をもって試合に入るために、いつもはコイントスでボールを選んでいましたが、今日は本当に風が強かったので今回ばかりは風上を取りました。前半はエリアをしっかり取れていましたが、敵陣に入ったときにスコアできなかったのが非常に痛い点でした。後半は風下になりますし、チームにロングキッカーがいないので、前半に敵陣に入ったところでスコアして帰ってこれず、苦しいゲーム展開になりました」
──目の前で優勝を決められました。
「われわれもいつかはディビジョン3のトップに立ちたい思いはあります。とは言いながら、明日のクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)とマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)の試合結果によりますが、入替戦にチャレンジできる機会はあるので、そこに向けて準備したいと思います」
──優勝したRH大阪とシーズンをとおして3度戦いましたが、対戦した印象を教えてください。
「セットプレーの精度、規律あるプレーはわれわれよりも上にあるチームなので、そういったところをもっと見習わないといけないと思います。フィジカルが強い選手も規律を持って試合に臨んでいると、やっぱり強いなと感じました。もっとわれわれも突き詰めないと何回やっても勝てないと思うので、そこは選手自身が気づいて、成長していけるきっかけをもらえたと思います」
──ジャパンラグビー リーグワン2年目でこれまで10試合を戦ったことで変化はありましたか?
「リーグワンというステージで試合がしたいという欲は選手たちの中で強くなっていると思います。当然どんな試合でも持っていてもらいたいですが、やっぱりリーグワンという新たなステージでやりたい意欲のところで成長を感じています」
中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン
「リーグワン関係者のみなさま、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)のみなさま、ファンのみなさま、ありがとうございました。ルーズボールへの反応や攻守の切り替えといった泥臭いプレーをしようというところと、相手にしっかりプレッシャーを掛けて自分たちのディフェンスをしようというところは、試合前に僕からも伝えました。そのフォーカスしたところは試合を通じて概ねできたという印象です。
ただ、アタックのところで得点できなかったのは悔しかったです。ラインアウトで相手に背の高い選手が2、3人いる中で、こちらも工夫してやったつもりでしたが、そこでプレッシャーを掛けられて、僕らの強みを消されたのは痛かったです。次節に向けて、また1週間時間があるので、まずリカバリーして、次の試合に向けてやっていきたいです」
──ここ数試合は試合の入りが課題でしたが、今節は勢いを持って試合に入れた要因をどう捉えていますか?
「この数試合は相手にやりたいようなプレーをする時間を与えてしまい、自分たちのディフェンスができていなかったので、まずは最初にプレッシャーを掛けて自分たちのディフェンスをしようというところがまず一つです。あとは、今まで2回RH大阪さんと試合をして、スクラムですごいプレッシャーを掛けられてペナルティを取られていたので、スクラムの意識については練習で取り組んだ成果が前半からいくつか出ていて、そこでペナルティを取られなかったのが要因かなと思います」
──優勝したRH大阪とシーズンをとおして3度戦いましたが、対戦した印象を教えてください。
「1試合目は負けましたけど、やっている側としては『次はいけるぞ』という気持ちでした。でも2試合目にコテンパンにやられて、3試合目はシャットアウトされて、RH大阪さんの細かいプレーの精度がどんどん上がっていったなと、やりながら思いました。今回シャットアウトされたとおり、ディフェンスの強度もしっかり整備されていると思いました。アタックもすごくパワフルな選手がいますし、すごくいいチームと思います」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ
「難しい試合になりました。風がすごく強くてプレーしづらい部分もあり、リズムに乗ってプレーすることが難しかったです。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんはエナジーがある元気のいいチームなので、それが難しい試合になった要因だったと思います。遂行力については自分たちにプレッシャーを掛け過ぎて、自分たちのパターンやスタイルでプレーできなかったことが多かったですが、最終的にはいい結果を得られたと思います。相手をゼロ点に抑えることができて、特にディフェンスコーチは満足しています」
──風が強かったですが、チームの対応はどうでしたか?
「キックするタイミングが大事だと思っていました。相手にプレッシャーを掛けられて無理やりキックするのではなく、僕たちのタイミングでいいキックをしようと心がけていました。風はどのチームにとってもコントロールするのが難しいですが、特に後半はキックをより長く蹴っていて、いいスペースに出していたので、いい対応ができていました。風は一貫して同じ方向には吹いていなかったですが、しっかり対応できたと思います。タッチキックを何度かミスしてしまったので、そこはしっかりポゼッションを保ち続けられるように力強くプレーしたかったです」
──これまでのシーズンを振り返って、優勝という結果で終えた感想を教えてください。
「新しいチームとして新加入選手も多く、ディビジョン3からの再スタートでした。とてもいい選手が15、16人も抜けたので、影響がなかったことはないと思います。その中でもチームとして一体感を持って、毎週、反省点を見返し、『Better than before』という僕らのキーワードにフォーカスを置いて、特に最後の3、4週間はいい方向に進んでいたと思います。選ばれた23人だけではなくて、チームの全員が貢献してくれたので、最初からいいチームの文化があったと思います。ディビジョン2昇格ということはあまり口に出さなかったですが、みんなでディビジョン3を勝ちにいこうと常に意識した結果だと思います。もちろん課題はたくさんありますが、そこは来季に向けてしっかり話し合っていきたいと思います」
──大差の試合が多い中でチーム力を上げるのは難しいですが、どう心がけて取り組んできましたか?
「シーズン序盤にスコアが大差だった試合もありましたが、相手がどうこうというよりも自分たちがどう良くなるかを考えようとは言っていました。毎試合、チャレンジになると思っていましたし、相手をリスペクトして、その中で自分たちが結果に対してどうリアクションしていくかが大事だと思っています。クリタウォーターガッシュ昭島さん、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんとは接戦も多かったですし、九州KVさんとは来週試合があるので、それもすごく面白い試合になると思います。スコアどうこうというよりも、自分たちがどうやって向上させていくかが大事だと思います」
──来季、ディビジョン2で戦う上で必要なことを教えてください。
「すごくシンプルな答えではありますが、継続して自分たちのスタンダードを高めていきたいと思っています。それは練習や試合に限らず、いいスタンダードを持って、そして一人ひとりが責任を持ってそれを遂行したいです。特に新しいことはなく、いいスタンダードを示して、練習でも試合でもやっていきたいと思います」
──次節は今季最終戦でホストゲームですが、意気込みを教えてください。
「とりあえず今日は楽しんで、明日にもちょっと影響が出るかもしれないですが、来週の月曜日から切り替えて、練習と今日のレビュー、そして九州KV戦のプレビューを始めていきたいです。来週の試合は、ホストゲームのファンの前でできるので、選手たちは高いモチベーションを持っていると思います。ホストゲームでプレーすることは大阪の地域を代表してプレーできることなので、全員が責任を持ってやっていきたいです。何人かの選手は地元の学校を卒業したり、地元のアカデミーで子どもに教えていたりしていますし、家族や友達の前でパフォーマンスできるので、そういった人たちに誇りを持ってもらえるようなパフォーマンスをしていきたいです。来週、変なパフォーマンスをしてしまうと、最悪な形でシーズンを終えてしまうので、最後まで気を抜かずに、1敗のまま今季を終えたいと思います。しっかりファンの前でいいパフォーマンスをして、来週勝っていい感じでオフシーズンを迎えたいです」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
杉下暢 キャプテン
「まずは優勝できてうれしく思っています。今日の試合は風が強くて、スクラムもなかなかレフリングが合わずに難しい試合ではありました。その中で、決してきれいなトライではなかったですが、チームとしてスコアを重ねることができ、相手のスコアはゼロに抑えることができて、こういう結果になったので非常に満足しています」
──これまでのシーズンを振り返って、優勝という結果で終えた感想を教えてください。
「一戦一戦、チームとして成長していくことができたと感じています。リーグ戦の1周目はタイトな展開になることが多かったですが、その中で自分たちの課題を見つめ直して、課題を克服するためにどうすればいいか、コーチだけではなく選手も一緒に考えてクリアしていったので、そういった、『毎週良くなろう』というマインドセットが優勝という結果につながったと思います」
──次節は今季最終戦でホストゲームですが、意気込みを教えてください。
「ファンの方々、試合に関わる方々が僕たちの最終戦を楽しみにしてくださっていると思うので、シンプルに今季のベストゲームをします」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
島田久満 選手
──試合を振り返ってください。
「個人的にはあまり良くなくて、もっと落ち着いて試合を展開できたら良かったと思いました。中国電力レッドレグリオンズさんは気持ちがすごいので、そこは自分たちもエナジーで負けないと思って、僕も強くエナジーを出していきました」
──昨季は出場がありませんでしたが、今季は試合に出続けています。これまでの感想を教えてください。
「これだけ試合に出られて、やっぱりうれしいです。試合に出ているほうが楽しいので、まだあと1試合残っていますが、すごく良いシーズンだと思います。1年目は積極的にできなかったので、2年目はもっとガンガン行こうと思っていて、それがいい形でできたと思います。評価してくれた監督にも感謝しています」
──優勝と昇格が決まりましたが、率直な気持ちを教えてください。
「優勝は絶対にしないといけないと思っていたので、当たり前だと思っていました。ディビジョン2の試合を見ていると、現状だと戦えないところが多くあると思うので、もっと詰めて、セットプレーでは僕がもっとリードしていけるようにやっていきたいです」