NECグリーンロケッツ東葛(D1 カンファレンスB)

成長著しい俊英が今季初先発へ。今季最後のホストゲームで“魅せる”

NECグリーンロケッツ東葛の藤井達哉選手。日本の高校を卒業後、ニュージーランドに渡りキャリアを積んだ

全体練習終了後、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の藤井達哉は、田中史朗に相手をしてもらいながら居残りでハイパントキックの練習を入念に繰り返していた。

藤井は先月23歳になったばかりの若きスクラムハーフである。今季の出場10試合は、いずれも途中からの起用だったが、4月16日のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)との試合において、藤井は今季初スタメンを飾る。

10代のときにニュージーランドへ留学し、ハイランダーズU18やオタゴU19でプレーをしたあと、藤井は宗像サニックスブルースを経て、2021年にGR東葛に加入した。

GR東葛のスクラムハーフには、田中とニック・フィップスがいる。

「僕は経験がないぶん、少しミスをすると焦ってしまうんですけど、フミさん(田中)はどんなときでも落ち着いていますし、ニック(・フィップス)はパスとキックにパワーがあります。見ても学べるし、一緒にプレーをしても学べる。成長している実感はあります」

藤井がそう言うとおり、世界で活躍した二人から多くを吸収することで着実に実力を伸ばしている。

前節の横浜キヤノンイーグルス戦でも、藤井は成長を示した。後半17分、ニック・フィップスに代わって出場すると、特長であるスキルとスピードを生かしてアタックのテンポを上げた。「みんな疲れていたので、自分の持ち味の速いアタックで崩せたと思います」と自分のプレーに手ごたえをつかんだ。

「スピードがあり、球さばきがいい。状況判断も良くて手先が器用です。試合に出る機会が増えれば、もっともっと成長していくと思います。あとは、体を大きくして、もう少しキックの戦術を覚えること。そして、声を出してチームをコントロールできるようになれば、代表にも絡んでいけると思う」

田中も藤井のポテンシャルの高さにお墨付きを与える。

藤井のスタメン出場は、昨季第8節のリコーブラックラムズ東京戦以来、約1年1カ月ぶり。しかし、そこに過度な緊張や気負いはなく、むしろ笑みを浮かべて意気込みを口にした。

「失うものはないので、自分も、見ている人も楽しいと思えるラグビーをしたいです」

GR東葛にとって、今季のリーグ戦最後のホストゲーム。S東京ベイとの一戦で期待の俊英、藤井が魅せる。

(鈴木潤)


クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 カンファレンスB)

プロップとして歩み続けてきた人生。完全復活を期す男がスクラムの何たるかを示す

クボタスピアーズ船橋・東京ベイの北川賢吾選手。「次の試合には、ひさしぶりにスタートから出られます。そこで完全復活を果たしたいと思います」

5歳でラグビーを始めて以来、プロップ一筋25年。人生の3分の2以上をスクラムに捧げてきた男がいる。

「小学生のころは周囲の子たちよりも圧倒的に体がデカかったので、走りながら相手をぶっ飛ばしまくっていました。それでウイングをやってみようという話にもなったのですがうまくいかず、結果ずっとプロップです」

北川賢吾、2015年にクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)に入団したベテラン選手である。8人で組むスクラムの、その最前列は「1番=プロップ」「2番=フッカー」「3番=プロップ」。スクラムを組んで左にくるのが1番で、右にくるのが3番。北川はこの1番と3番の双方をこなす、貴重な存在だ。

「(スクラムを組むと)1番は相手(の3番)が右側にきます。3番は、相手(の2番と1番)に両方から挟まれる形になります。だから、1番と3番とでは組み方が全然違うんです。似て非なるものです」

この二つの異なるプロップを、高校、大学、そして現在に至るまで、ずっとこなし続けてきた。1番でも3番でも、存分に能力を行使できる。そこに北川のアイデンティティーがある。

「僕は両方をやるのが好きで、そこにはこだわりを持っています。まず、1番も3番もできることで、試合に出られるチャンスが広がります。そして、これが最大の理由なのですが、自分が1番のときは、相手の3番と組みます。僕は3番の組み方も知っているから、相手がやりたいこと、やられたらイヤなことが分かるんです」

また、プロップに求められるのが、巨大で強靭、かつ機動性に富んだ肉体。「冷蔵庫」と称される、北川のビルドアップされたボディ。これは近年になって築かれたもので、かつては「めちゃくちゃデブだった」という。

「大学生のころはカップラーメン、コーラにポテチ。S東京ベイに入ってからも、夜な夜なコンビニでカップラーメンを買って食べる。そのころの僕はアスリートではなかったです」

しかし、4年ほど前、同期の千葉雄太の提案で「やせているほうが勝ち」と体脂肪率で競うことになり、心に着火。本格的な肉体改造に着手した。そのあとには新型コロナウイルスが世に蔓延。行動制限がかかった中で自炊を始め、低糖質、高タンパクの徹底した減量食で体脂肪を体から排除していった。同時に、以前は「サボりがちだった」というウエイトトレーニングにも注力。ベンチプレスのレコードは165kg。ボディビル業界で言うところの、“バルクのある肉体”を手に入れている。

そして、昨季は15試合に出場。今季は昨年8月に負った左ふくらはぎの肉離れが尾を引き、出遅れることに。出場したのはまだ4試合。しかしながら、前節の花園近鉄ライナーズ戦では後半からピッチに入り、それまで押され気味だったスクラムの安定に貢献。実力の片鱗を示した。

「次の試合には、ひさしぶりにスタートから出られます。そこで完全復活を果たしたいと思います。僕がチームに期待されているのは、セットピースの安定感。そこに関してはチームで一番の存在でなければいけないと思っています」

今節、NECグリーンロケッツ東葛戦。スクラムを識(し)る男が、その本領を発揮する。

(藤本かずまさ)

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