NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第14節
2023年4月15日(土)14:30 ヨドコウ桜スタジアム (大阪府)
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 35-33 九州電力キューデンヴォルテクス
自発的なチームの戴冠。社員選手中心の構成になったことによる好影響とは
4月15日(土)にヨドコウ桜スタジアムで行った第14節のホストゲームで、今季の全12試合を終えたNTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)。最後の試合では、ともにディビジョン2昇格を目指す九州電力キューデンヴォルテクスに逆転されて終盤を迎えたものの、再びスコアをひっくり返し、ホストゲームに駆けつけてくれた観客とこの日の勝利、そしてディビジョン3優勝とディビジョン2昇格の喜びを分かち合った。
チームが再編され、今季はディビジョン3から再スタートを切ったRH大阪。この日の試合で、同点トライを決めた茂野洸気は、この1年を「チームのメンバーが大きく変わり、それぞれがどういう人か分からないところからスタートした。マット・コベイン ヘッドコーチと杉下暢キャプテンを中心にして、シーズンが深まるにつれ、一つになっていくことができた」と振り返った。
昨季途中に再編が発表されたあとは、世間からネガティブに捉えられることもあったが、実際は「ラグビーに関する活動については、会社から引き続きサポートしてもらっているし、昨季までと何も変わらない」。
変化したのは、自分たちの姿勢だった。「チームが社員選手中心となったことで、社外向けはもちろん、社内でも応援してくれる人を増やすためにはどうしたらいいか、自発的に考えるようになった。とてもポジティブな変化」。これまでも力を入れて取り組んできていたホストタウンを中心とした社会貢献活動やラグビーの普及活動に加え、今季は運動会などの社内向けイベントも行い、RH大阪を通じて社員が交流し、楽しめる機会も作ってきた。
その一つの結果として、あいにくの雨の中での最終戦には、ファンはもちろん、「社員の方たちも多く駆けつけてくれた」。
RH大阪は、昨季から戦うディビジョンを二つも下げていたが、茂野はシーズンをつうじて「スタンドを見てさびしいと思うことはなかった」と話している。実際、昨季と比べても遜色ない観客数だった。
昨季のディビジョン3全体での平均観客数は847人だったが、今季、RH大阪のホストゲーム6試合における平均は、その3倍の2,657人。うち半分の試合では3,000人を超えており、第4節には4,050人をスタジアムに迎えている。4月16日までの試合を終え、今季はディビジョン2でも4,000人を超えた試合はない。自発的に考えるようになった選手たちとチームスタッフの志と努力、そしてディビジョンを下げても、チームが再編されてもなお応援してくれる人たちの愛は、数字にも十分表れていたと言えよう。
新生・RH大阪の第1章は、有終の美で幕を閉じた。社外でも社内でも、より愛されるチームへ。来季は、ディビジョン2で第2章を迎える。
(前田カオリ)
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
マット・コベイン ヘッドコーチ
「勝利できたことをうれしく思います。試合内容については、点を取っては取られてという展開となり、接戦でしたが、控えメンバーが本当に良い仕事をしてくれました。最後しっかりやり切ってくれました。ディビジョン3で優勝し、ディビジョン2への昇格をつかめたこと、いまは率直に本当にうれしく思っています」
──“アイズアップ”と“アップテンポ”を軸としていましたが、今季の出来具合はいかがでしたか?
「部分的には達成できたと感じています。“アップテンポ”に関しては、今後さらに向上させていくことができるでしょう。ディビジョン3で戦う中では、私たちのセットピースが強みとなりましたが、特にスクラムとモールに関しては、立ち返ることができるところになりました。シーズンをとおして、蹴り合いのところも毎週トレーニングしてきましたが、少しずつ向上しています。可能な限りスペースに対してボールを入れ、しっかりキックチェイスをするのは、シーズン後半はできるようになってきていたと思います」
──来季の目標は?
「そこは、後々お話ししていきます。いまはまだ、この勝利の喜びをみんなで分かち合わせてください」
NTTドコモレッドハリケーンズ大阪
杉下暢 キャプテン
「本当に勝てて良かったな、と思っています。優勝が決まった状態ではありましたが、今季のベストゲームをしようと臨み、フレッシュな若い選手たちがエナジーを持って戦ってくれ、良い結果をもたらしてくれました。チームとしての成長も感じることができた試合でした」
──ホストゲームでファンの方たちに優勝を報告でき、どう感じましたか?
「優勝も簡単な道のりではありませんでした。今日の試合もスタンドからの熱い応援があったからこそ、劣勢から盛り返すことができました。ここで負けてしまえば、良い報告ができないので、勝って報告できたことは良かった。優勝が決まったときとは、また違う喜びがありました」
──チームの成長は、どのような部分に表れていましたか?
「今回はフレッシュなメンバーも多く、試合の中で修正して勝ち切ることができたので、うれしく思っています。その中で、マット(・コベイン)ヘッドコーチが掲げた“アイズアップ”と“アップテンポ”を軸にセットピースとエリアマネジメントを強化したことで、今季の結果を得られました。試合を重ねるごとに、ディフェンス面も向上していきました。チームとしてのまとまりは、ディフェンス面によく表れていたかと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ
「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)さんが前節で優勝とディビジョン2昇格を決められたこと、とてもうれしいです。おめでとうございます。
第1節と今節、ビジターとして臨んだ二つのゲームでは、いずれも勝てるだけの力が私たちにはあったと思います。ですから、本当に残念です。私たちがディビジョン2に昇格するためには、しっかり勝つことが必要。勝つために何が必要か、しっかり見つめ直す必要があると感じました。1カ月後には入替戦もあるので、そこで勝てるようにしていきます」
──この試合で、入替戦に向けての収穫は何かありましたか?
「私たちはディビジョン2に昇格できるだけの実力があり、それだけの良いチームだと思っています。RH大阪さんには3回負けていますが、原因は私たちの規律のところ。キーとなる部分をレフリーに見てもらえなかったと感じ、大きなフラストレーションとなりました。レフリングに関して、私たちにとって良い判定ではなかったと思いましたが、そこはこちらに責任があり、良くしていく必要があります」
──最終節はホストゲーム、福岡での開催です。
「“WE ARE KYUSHU”。私たちは九州全体のラグビー界のためにプライドを持って戦い、そしてそのことに誇りを持っています。私たちの試合を観たいと思ってもらえるような試合をすることが大切だと考えています」
九州電力キューデンヴォルテクス
高井迪郎 キャプテン
「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)さん、勝利おめでとうございます。
この試合では、悔しさと感謝を感じました。RH大阪さんの完全なホームでの試合でしたが、グラウンドに入ると、『ともに昇格』『ともにディビジョン2へ!』という私たちへのメッセージが目に入りました。3度試合をしてきて、いずれも負けはしましたが、そのようなことをしていただいたことは本当にうれしく、感謝しています。試合内容については、勝てるゲームだったと感じています。しかし、そこはRH大阪さんの強さでもあったと思います。もっと良いゲームができるよう、ディビジョン2昇格を勝ち取るに値するチームになれるよう努力したいです」
──ディビジョン2昇格に向け、今日の試合から得られたことはありましたか?
「どれだけ自分たちをコントロールできるか、どれだけ相手をコントロールできるか。規律面や相手の勢いを止められなかったところなど、ディビジョン2昇格に向けての反省材料となりました。そのレベルには、あと一歩のところまで来ていると感じていますが、さらに向上させなければディビジョン2に昇格しても勝てないので、もう一度見つめ直し、練習から強度を上げていきます」
──今季は、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)もホストゲームに多くの観客が訪れました。
「九州のラグビーの発展のため、まずわれわれががんばっていかないといけないと思っていますし、それが良いプレッシャーにもなっています。今季は鹿児島での試合でも、九州全体に応援されていることを実感しました。どれだけの方が観に来てくれるかではなく、来てくれた方にどれだけわれわれのラグビーを楽しんでもらい、九州KVの価値を伝えられるか。九州を代表し、九州だけでなく、日本中に『九州には九州KVがある』と伝えたいので、そのためにもディビジョン2に昇格しなければいけないと考えています」