九州電力キューデンヴォルテクス(D3)

『WE ARE KYUSHU』の体現者。
それは“九州三位一体”の男

コカ・コーラレッドスパークス、宗像サニックスブルース、そして現在は九州電力キューデンヴォルテクスに在籍する猿渡康雄選手(前から3人目)

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3の戦いも最終節を迎える。すでに2位が確定している九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)はマツダスカイアクティブズ広島との一戦に臨む。

九州KVが練習を行う九州電力香椎競技場。その施設内の応接室には2つのジャージーが飾られている。コカ・コーラレッドスパークスと宗像サニックスブルース。いずれも九州のラグビー界をけん引しながら活動休止となったチームだ。

「おそらく、自分だけ」と話すのは猿渡康雄だ。今季から九州KVに加入したことで九州の3チームすべてに在籍した経験を持つ選手となった。

「あそこをとおるときには目に入るし、『あのジャージーを着ていたんだな』と思うことはあります。あれを着続けたかったけど、ラグビーができなくなった人もいるし、その人たちのぶんまで僕が頑張ろうと気持ちが引き締まる感覚はあります」

ジャージーに袖をとおした者だからこそ、感じる思いがある。他人にとっては日常の何気ない光景でも、猿渡にはいつもラグビーができることへの感謝を思い出させてくれる。

『WE ARE KYUSHU』のキャッチコピーで九州KVは戦っている。九州唯一のリーグワンのチームとして、九州を代表して戦うという思いが込められている。そんな九州KVが、かつて宗像サニックスブルースが本拠地として使用していたグローバルアリーナでホストゲームを行う。それもまた一つのドラマだ。

「コカ・コーラのときから応援してくださる方もいれば、サニックスのときから応援してくださる方もいますけど、いまは九州KVというチームを応援してもらえるようになっている。それをもっと広げて九州の価値を高めていきたい。プレーヤーだけが頑張っても周りの方々に共感してもらえないと輪が広がっていかない。そこを見てもらってファンの方々、地域の方々と一緒に盛り上げていけたら」

猿渡は“九州のラグビー”への思いをそう語る。

「3つのチームに在籍した自分にしかできないことがあるんじゃないか」

決してそれは大言壮語ではない。“三位一体”の男・猿渡が『WE ARE KYUSHU』を体現する。

(杉山文宣)


マツダスカイアクティブズ広島(D3)

それぞれ“120%”の最終節。父ちゃん、次はトライを取るよ

約半年間のリハビリから復帰したばかり。マツダスカイアクティブズ広島の金丸勇人選手。「子どもが応援してくれているので『頑張ろう』と思っています」

最終節に臨むマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)は、今季の集大成を見せるためにグローバルアリーナに乗り込んでいく。

中居智昭ヘッドコーチは「シーズンをとおして波のあるパフォーマンスでしたし、1試合をとおしても波があった」と今季の戦いを振り返り、「その波をコントロールするために自分たちからアクションをしていきたい。基本的なことを見つめ直して自分たちの最大のパフォーマンスを出す準備をしていきたい」と話している。

選手一人ひとりも最終節に向けてモチベーションを欠くことはない。

河野翼はシーズン中にけがをして離脱する時期もあったが、そのけがもポジティブに捉えて自分のレベルアップに向き合ってきた。

「シーズンが始まったころは控えで、スタートで出させてもらえるようになったところでのけがでしたし、自分的にはベストに近いパフォーマンスを出せた試合でけがをしてしまったので残念でした。だけど、けがをしている間に自己分析がしっかりとできた。自分の良さはスピードなので、最終節は途中から試合の流れを変えてみんなに元気を与えたいですし、テンポを上げて相手を圧倒したいと思います」

金丸勇人は昨秋に腰のヘルニアの手術を行い、約半年間のリハビリを経てピッチに戻ってきたばかり。前節に今季初先発した29歳は、ラグビーと向き合う情熱を持ち続けている。

「今季はチームもなかなか思うようにいっていなかったので歯がゆかった。最後にギリギリで間に合って良かったです。僕はラグビーがなくなったら楽しみが一切なくなるし、ラグビーで誰かに頼りにされていたい。あと、子どもが応援してくれているので『頑張ろう』と思っています。この間の試合が終わったあとに『父ちゃん、トライ取らんかったな』って言われて悲しかったので、次は頑張ります」

齊藤遼太郎は久しぶりにスタメンに抜擢されて燃えている。

「今季は苦しかったですけど、自分たちはまだ秘めた力も持っていると思っているので、良い雰囲気を作って自分たちで殻を破っていきたい」

SA広島は『仕事100% ラグビー120%』がモットー。シーズンオフに入ると社業に専念する選手たちは、最終節にラグビーで120%を出し尽くす。

(寺田弘幸)

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