NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第6節
2023年2月4日(土)15:00 ベスト電器スタジアム (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 30-6 マツダスカイアクティブズ広島
やらずに後悔するのではなく、まずはやり切る。
初キャップの試合で示した、自らの特徴
2週間前に広島で激突した九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)とマツダスカイアクティブズ広島。舞台を福岡に移してのリターンマッチは九州KVが30対6で勝利。ホストチームは4連勝となり、第2クールを絶好の形でスタートさせた。
「ドキドキというよりワクワク。そして、責任の大きさ。試合に出られない人のぶんまでやらないといけないという気持ち」
試合2日前、入社2年目にしてスタメンでの初キャップが確定した金堂眞弥の胸の中には高揚感と責任感が去来した。公式戦は慶應義塾大学以来であり、今節前までチームは3連勝中。大きな重圧が掛かっていたことは想像に難くない。それでも、試合が近づくにつれ、心は整理されていく。
「とにかく楽しもう、変なことをせずに自分らしくやろう」
その言葉どおり、試合ではキックオフから自分らしさを表現した。「強いボールキャリー、激しいプレーでチームを盛り上げる」ことがチームに貢献できる自分の道だと話していた金堂は、何度も力強いランを見せる。本人は「ちょっとボールキャリーし過ぎてしまったかもしれない。そこは反省点」と振り返ったが、これも試合前に自らに誓った決意の表れ。「ボールを持ったらどんどん、ボールキャリーしていこうと思っていたので、それは思いどおりにできてよかった」。やらずに後悔するのではなく、まずはやり切る。自分を出し切ることに集中した金堂は大学3年以来のフル出場を達成した。
「今まではスタンドから勝利を見届けることしかできなかったんですけど、今回はグラウンドで勝利を迎えることができて、これが本当の勝利かという清々しい気持ち。これをまた味わうために次の試合までの練習を頑張りたいなと思えました」
ピッチ上で勝利の瞬間を迎えるという格別の喜びは金堂に「また次も」という思いを芽生えさせた。これが、チーム内競争をさらに激しくさせる要因になるのは間違いないだろう。“勝ちながら、さらにたくましく”が第2クールのテーマである九州KVにとって、今節はまさに会心の勝利だった。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ
「2週間前の対戦でもマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)さんはすごく強い相手だと感じていました。(今節も)前節からかなりレベルが上がっていると感じましたし、タフな試合でした。私たちの脱出のところでかなり、苦戦したところがありました。そこにしっかり対応して、試合に勝ち切ったことについて私たちの選手は良い仕事をしたと思います。いま、勢いがチームの中にはあると思います。4連勝というのはかなりひさしぶりのことですし、九州のために私たちのラグビースタイルで試合に勝つことは私の目標でもあります。私たちが九州の人たちを代表するということを心掛けて試合に臨んでいます」
──今日は外国籍選手をフォワードで3人起用しました。これまでの試合とは違う編成にしましたが、その意図はなんだったのでしょうか
「元々、この試合ではフォワードに3人(の外国籍選手)を使おうという考えがありました。いま、チームに良い選手がたくさんいるというのもあります。ディビジョン2に上がるためにはどのコンビネーションが一番、良いのかを見つけなければいけないと考えています。(外国籍選手を)3人、フォワードで使うことで日本人選手たちにも良い反応が生まれたと思います。負傷から戻ってくる選手もいますし、これからの1カ月で次のレベルに進むためにはこのコンビネーションのタスクがすごく重要になってくると思います」
──金堂眞弥選手が2年目で初キャップでした。彼を起用した意図とパフォーマンスの評価を教えてください。
「彼が初キャップを飾ったところを見ることができて、すごくうれしかったです。去年、このチームに加入して、ほかのフルバックの選手たちの後ろに控えるということになってしまいましたが、今日はホームで家族やファンの前でしっかり、プレーできていましたし、プレーもすごく良かったと思います。(フルバックには)荒牧佑輔選手、加藤誠央選手、本田佳人選手といっぱい良い選手がいるので、良い競争になっていくと思います。いま言ったのは一つのポジションですが、ほかのポジションでも良い競争があって、どんどん、みんなが良くなってきていると感じています」
──登壇が遅れたのは試合後のロッカールームで盛り上がっていたからのようですが、チームの雰囲気も良いのでは?
「勝利後のロッカールームにいられるというのはすごく良いことだと思います。勝ったことをしっかり祝福するというのは大事なことです。(登壇が遅れるのは)毎週、起こることではないので(笑)。来週、クリタウォーターガッシュ昭島さんとの試合があることはわかっていますし、もう一度、集中しなければいけないこともわかっています。ただ、勝ったことはしっかり、祝福したかったんです」
九州電力キューデンヴォルテクス
山田有樹キャプテン
「まず始めにマツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)のみなさん、ありがとうございました。今日は自分たちで相手を敵陣に抑え込んでプレーしようという話だったんですが、ちょっと、SA広島さんのプレッシャーによって、自分たちの思いどおりにいかなかったです。しっかり、相手をノートライに抑えることができたというところがチームの成長かなと思っています」
──SA広島との前回対戦ではスクラムの部分に課題があったと思います。今日の試合でのスクラムについての感触は?
「スクラムのところでちょっと前半は何度か押されたところもあったんですが、そこから修正できて、後半はこちらがペナルティを取ることができた。そこはすごく成長したところかなと思います。あとはスクラムにはこちらも自信をもって取り組んできているので、それを今後、強みにしていけたらと思っています」
──SA広島の中居智昭ヘッドコーチが「完敗」とおっしゃっていました。それだけのゲームができている現状についての手ごたえは?
「普段の練習から本当に競争が激しくなって、今日、新しくスタメンに入った金堂眞弥選手やひさびさの出場だった中島謙選手など、練習中からお互いが切磋琢磨しながらやれているのが、試合に出ているかと思います」
──登壇が遅れたのは試合後のロッカールームで盛り上がっていたからのようですが、チームの雰囲気も良いのでは?
「すごく良いです(笑)。あんまり、調子に乗り過ぎないようにします(笑)」
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ
「本日のゲーム、ありがとうございました。率直に完敗です。素晴らしい九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんのパフォーマンスの前になかなか、自分たちのプレーができず、終始、押されてしまったと思います。もちろん、われわれも前回、負けた部分があったので、そこをひっくり返そうと準備はしてきたんですが、やはり、一つひとつのミスが重なり、やはり、九州KVさんと対等以上にやるにはミスというのが自分たちの命取りになり、リズムが作れない結果となったと思います。この結果もありますが、まだ、われわれには何試合もチャンスがあるので、一つひとつのゲームでもう一度、自分たちを取り戻す戦いをしていきたいと思っています。本日はありがとうございました」
──2週間前に対戦した九州KVとのリターンマッチでした。前回の敗戦を踏まえて、対九州KVという点で力を入れて準備してきたことは?
「セットピースの部分でうまくいかない部分がありましたので、特にラインアウトの部分。新しいオプションも用意したりして、準備はしたんですが、やはり、最初の入りのところで続けてミスが出てしまった。選手の部分での精度の高め方というのがまだまだ足りなかったんじゃないかなと思っています」
──次のゲームまで2週間の準備期間がありますが、勝つために高めていきたい部分はどんなところになりますか?
「ベースの部分。細かいスキルの部分で抜け落ちているもの。そこが、ミスが起こっている原因だと思うので。ずっと、夏から積み上げてきたものをまた、見直して、新しいエッセンスも取り入れながらレベルの高いプレーができるようにやっていきたいと思っています」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン
「本日はありがとうございました。いま、中居さん(中居智昭ヘッドコーチ)も言われたとおり、九州KVさんの強さに完敗だったなというのが正直な感想です。アタックにしてもディフェンスにしても自分たちがやろうとしていることの上を行かれたなというところがあって。アタックのところでは前の試合に引き続き、ブレイクダウンでプレッシャーを受けてリズムに乗り切れない。ディフェンスでは粘り強く守れたシーンもあるんですが、やはり、フェーズが重なったところで相手の強いランナーに対して受けてしまい、どこかでスペースを作ってしまった。そこをしっかり突いてくる九州KVさんのうまさがありました。そういうところはこれから、自分たちが見習っていかないといけないなと思っています。この先、もう一度、九州KVさんと対戦するチャンスもあって、ほかのチームとも二度対戦するチャンスがあるので、自分たちはチャレンジャーとして一つひとつの試合に向けて、自分たちのベクトルを高めて、初勝利を目指して、頑張っていきたいと思います。本日はありがとうございました」
──5連敗になりましたが、試合後、選手間ではどんなコミュニケーションがありましたか?
「試合が終わったときは5連敗という結果を受けて、沈んでしまってはいるんですが、自分たちはこのまま、沈んでしまっていてはいけない。やっぱり、自分たちの力を受け入れて、そこから上に向けて、積み上げていくしかない。『前を向いて行こう」という声掛けをして、『次の練習からもう一度、自分たちの悔しさをぶつけて次の試合に向けてやっていこう」という話をしました』
──苦しい状況ですが、勝つために一番必要なことは何だと考えていますか?
「一番はやっぱり、勝ちたいという気持ちを練習から一人ひとりが前面に押し出してやること。みんな、それは思ってはいて、負けたあとは悔しいという気持ちを見せているんですが、それを前面に出せていない。そこを出し切って殻を破れれば、勝利が見えてくるんじゃないかなと思っています」