NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン3 第15節
2023年4月23日(日)15:00 グローバルアリーナ (福岡県)
九州電力キューデンヴォルテクス 40-7 マツダスカイアクティブズ広島
託された“九州”の思い。
九州KVは『WE ARE KYUSHU』で入替戦へ臨む
NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023 ディビジョン3の最終節。試合前に2位が確定していた九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)は40対7でマツダスカイアクティブズ広島に勝利。清水建設江東ブルーシャークスとの入替戦に向けて、弾みをつけた。
今季のホストゲーム最終節の舞台は宗像市にあるグローバルアリーナ。昨季限りで活動休止となった宗像サニックスブルース(以下、宗像B)が本拠地として使用していたスタジアムだ。
「宗像Bのジャージーを着ているファンの方もいましたし、コカ・コーラレッドスパークス、宗像B時代のラグビー部の同僚も観に来てくれました」。九州のラグビー界をけん引してきた3チームすべてに在籍経験を持つ猿渡康雄はかつての本拠地に帰ってきた。そして、自分たちが託される立場であることをその光景から感じ取った。その思いはチーム全員に共通するものだった。
「九州を代表して戦う」(高井迪郎キャプテン)。その思いで九州唯一のリーグワンチームとして戦ってきた九州KVにとって、グローバルアリーナでの試合は意味のあるものになった。活動休止した2チームを「私たちの兄弟」とゼイン・ヒルトン ヘッドコーチはそう表現する。試合では敵として戦っても、九州のラグビー界の仲間として練習試合も数多く組み、公式戦ではしのぎを削る。常に高め合うよきライバルであり、兄弟だった。
「ビジターチームとしてここに来るときもビジターだと思うことはなかった。やっぱり、僕らは『WE ARE KYUSHU』なので、九州は常にホームだと思っています」(高井)
今季リーグ戦でのホストゲームでは1試合平均2,148人の観衆を集めた。昨季のリーグ戦1試合平均が984人であることを考えれば、飛躍的な伸びだ。「ファンの方々の熱量をわれわれのいいプレッシャーに変えて、今季は戦ってくることができた」(高井)。この数字の背景には九州のラグビーファンの九州KVに対する期待があったことは間違いないだろう。
切磋琢磨してきた兄弟たちの思い。九州のラグビーファンの思い。グローバルアリーナでの一戦は九州KVが託される側であることをあらためて認識させた。この思いを力に変え、九州KVは入替戦へ臨む。
(杉山文宣)
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ
「マツダスカイアクティブズ広島(以下、SA広島)のみなさん、ありがとうございました。SA広島さんもこのシーズンをとおして、試合内容を向上させてこられたので、今日は素晴らしい試合をありがとうございました。試合の中で私たちがコントロールできたところがたくさんありました。前半は7点に抑え、後半はゼロに抑えることもできて、自信がつく試合になりました。入替戦に向けて良い流れを作りたいところがありましたが、そこがしっかりできたと思うので、選手たちを賞賛したいと思います」
──前節から入替戦を見据えた準備も施してきましたが、入替戦に向けての心境は?
「リーグ戦が終わりましたが、入替戦はまったく異なったものになります。まったく違うコンペティションになると思います。違った準備をしていかなければなりませんが、私たちにとって利点なのは(敗れた場合)清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)さんのほうが失うものは大きいということです。彼らがいま、ディビジョン2にいて、私たちがディビジョン3にいます。私たちは昇格のためのチャンスが2試合残されているということでプレッシャーは彼らのほうに掛かっていると思います。私たちは楽しみながら最後の3週間、いい準備、いい練習をする。入替戦でも成功を収める自信が私にはあります。第1戦で東京に行き、第2戦をホストで戦えますが、九州での試合はいつも素晴らしいサポーターの方々が来てくださる。第2戦がグランドファイナルだと思っているので、その考えで準備していこうと思っています」
──入替戦での対戦相手が江東BSに決まりました。試合までの2週間はどんな準備を行っていきますか?
「(試合まで)10日間しかありません。本当にあっという間です。まず、最初にリカバリーをしなければいけない。この1カ月、江東BS、釜石シーウェイブスRFCのどちらが来ても大丈夫なようにコーチ陣は準備をしてきました。なので、準備はできています。ただ、相手が決まったことでここからは江東BSとの対戦に向けて、明日からしっかりとスイッチを入れていきます」
──今日は宗像サニックスブルース(以下、宗像B)がホストスタジアムとして使用していたグローバルアリーナでの試合でした。そのことへの思いはありましたか?
「宗像Bは私たちの兄弟です。コカ・コーラレッドスパークスも私たちの兄弟です。自分たちも含めたこの3チームは歴史をとおして、親しい間柄だったと思っています。去年、宗像Bさんが活動休止になったことはとても残念でした。(宗像Bに在籍経験のある)猿渡(康雄)選手とサミュ(ファイアラガ 望サムエル)選手を起用できたこと、彼らがここでプレーするということは大きな意味があります。私たちにとっても宗像Bのチームカルチャーは大きな力になっています。われわれのチームに加わってくれた彼らが九州電力キューデンヴォルテクスの新しいカルチャーを作ることを助けてくれています。(福﨑竜也)通訳も宗像BのOBでいい選手、いい10番でした(笑)。九州で試合をするというのはどこであっても意味のあることです。大きな責任があると思っています」
九州電力キューデンヴォルテクス
高井迪郎キャプテン
「応援に駆け付けてくださったみなさん、本当にありがとうございました。今日がリーグ戦最終節、ホストゲームもリーグ戦では最後というところで九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)のラグビーを楽しんでもらいたいなという気持ちで試合に臨みました。ラグビーをやっている以上、難しい時間帯というのは絶対にあるんですが、今日はそこで我慢ができたかなと思います。我慢比べで勝つことができて、スコアに出たんじゃないかなと思います。入替戦に向けて、いい勉強になったと思っていますので、この勝ちを弾みにして、再来週(の入替戦)に臨んでいきたいと思います」
──リーグ戦が終わり、順位、結果も出ましたが、今季の戦いについてどう感じていますか
「結果はまだ出ていません。僕たちの目標は入替戦に勝って、ディビジョン2に昇格する。それがシーズン当初からの明確な目標です。なので、まだ結果は出ていないと思っています。ただ、チョック(ゼイン・ヒルトン ヘッドコーチ)がこのチームに来てくれて、地力が少しずつついてきて、みんなのラグビーに対する姿勢が変わってきて、いよいよ、今季は九州を代表するんだというところもありました。責任感やラグビーに向かう姿勢というのはチームとして変わったなと思います。結果としてはNTTドコモレッドハリケーンズ大阪さんに3敗しましたが、いま、入替戦のステージに立つことができるチームに成長できたんじゃないかなと、私は思っています」
──入替戦の対戦相手が清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)に決まりました。いまの心境は?
「江東BSさんが来ても、釜石シーウェイブスRFCさんが来ても、どちらが来てもコーチ陣がしっかり準備してくれていると思っていたので、そこを信じるだけでした。僕の役割としてはどれだけチームにコーチ陣が準備してくれたものを10日間で落とし込めるか。各リーダー(九州KVは各ポジションにリーダーを置いている)を使ってになりますが、僕もシニアのメンバーなので、ベテランたちがこのビッグゲームに臨む若い選手たちをどれだけサポートできるか。若い選手たちがパフォーマンスを出せるような取り組みを10日間、やっていきたいなと思います。また、試合でもそういったことをシニアメンバーがやっていくべきだと思いますし、それが結果にも影響を与えるんじゃないかなと思っています」
──練習試合や公式戦でも対戦していた宗像サニックスブルース(以下、宗像B)がホストスタジアムとして使用していたグローバルアリーナでの試合でした。そこへの思いはありましたか?
「どのゲームに臨むにあたっても同じマインドセットで臨むというのは僕自身、チームには伝えているんですが、今日に関してはここに来られるということ。今日、1,000人以上(1,633人)の方々に来ていただきましたが、宗像Bの関係者やコカ・コーラレッドスパークスの関係者の方々もいたんじゃないかなと思うんですよね。そういったところから九州を代表することは意識していますし、われわれがやっていかないといけないと思っています。やはり、このグラウンドに来るのはうれしいです。今まではビジターでしたけど、宗像Bさんと試合をするときもここをビジターだと思うようなことはなくて、やっぱり、僕らは『WE ARE KYUSHU』で、僕たちは九州がホームだと思っているので、わくわくしましたね。このグラウンドで試合ができて」
──今季はホストゲームでの観客数が昨季と比べてもかなり増えました。九州KVが九州唯一のリーグワン参加チームとなって、九州のラグビーファンの熱量もより感じられたのではないでしょうか?
「非常に感じました。お客さんももちろん、そうですが、社員選手である自分たちは職場のみなさんのサポートをスタッフ含めて、すごく感じています。どこかで僕、言ったと思うんですけど、九州にはもうウチしかないというのは逆にプラスに捉えて、九州のラグビーファンの方々に“ラグビーの試合を観るなら九州KVだよ”というくらいのつもりです。お金を払って観に来ていただいて、私たちは社員選手ではありますが、グラウンドに立ったらプロという気持ちで試合に臨んでいます。九州KVというのがどういうチームなのかをグラウンドでの80分でどれだけ表現できるかが大事だと思っています。そういった面ではお客さんの熱量をわれわれのいいプレッシャーに変えて、今季は戦ってこれたんじゃないかなと思っています」
マツダスカイアクティブズ広島
マツダスカイアクティブズ広島
中居智昭ヘッドコーチ
「今季、2敗している相手に対して、しっかりと勝ちを狙って挑みましたが、やはり、九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんのフィジカルになかなか最後のラインが奪えず、自分たちの形を見せることができない試合だったかなと思います。序盤から攻防の部分では長いフェーズの中で我慢強さも出せたんですが、最後の部分でのペナルティで相手に流れを持っていかれたのかなと思います。この試合でわれわれは今季のシーズンが終了となりますが、ここまで積み上げてきたものをしっかりと今後に生かしていけるように修正していきたいと思います。入替戦ではぜひ、九州KVさんには2勝してもらって、ディビジョン3のレベルがしっかりと上につながっていることを証明してほしいなと思っています。本日はありがとうございました」
──入替戦出場の可能性がない中での試合でしたが、選手たちにはどんな声掛けをしてこの試合に臨んだのでしょうか?
「われわれから見ても九州KVさんはすごくいいチームで、チームワーク、規律、そういった部分でも強さを見せてくるチームです。われわれはセットピースのところで優位性を生かして攻めていこうと挑戦したゲームでした。要所ではスクラムでもラインアウトでも、スコアも取りましたけど、(優位性を)見せることができたと思います。ただ、やはり、九州KVさんのディフェンスの前になかなかスコアが取れなかったというのが今日の結果になります」
──今季全体の総括をお願いします。
「自分たちの流れのとき、ゲームでも流れが来る中でそこでスコアが取れるかどうか。そこが勝敗に直結するのかなと感じています。そこの集中力やプレーの正確性、そこでスコアを取り切れるチームになり切れなかったことが反省かなと思っています。個々の部分についてはフィジカル含め、成長を感じられたシーズンだと思います。その中でピンチとチャンスの局面を選手自身も体感できたシーズンだったんじゃないかなと思います」
マツダスカイアクティブズ広島
﨑口銀二朗キャプテン
「本日はありがとうございました。われわれとしては今季最終戦となってしまったので、2敗している九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)さんに勝ちにいくことにフォーカスを当ててやってきました。序盤、攻め込まれても粘り強く守ることができて、風下の中でも7点差で折り返すことができました。後半は風上というアドバンテージもある中でしっかりと攻めていこうと後半に臨んだんですが、キックを使ったことが裏目に出てしまって、そこにペナルティも重なり、リズムに乗れませんでした。最後は九州KVさんに屈してしまったというのが素直な感想です。これで今季が終わりましたが、自分たちがやってきたことは間違いではないので、今日をスタンダードにして、また来季につなげていきたいと思っています」
──今季を終えて、チームとしての収穫と課題を教えてください。
「一年間やってきて、シーズンでいうと初戦に敗れて、そこから連敗が続きました。ただ、チームとしては成長して、どんどんアタックもディフェンスもクオリティーは高くなって自信につながったものもあります。ただ、まだまだ伸びる部分もあると感じています。課題は自分たちの形でやり切りたいところでちょっと欲が出てしまい、ミスにつながったり、ブレイクダウンで相手に絡まれてしまったりしたことがあったので、基本のところをやり切らないといけない。あとはペナルティ、規律のところですね。無駄なペナルティを減らしていくことで自分たちの流れをつかめると思います。やり切るところとペナルティ、規律が課題だと思っています」