NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第16節 カンファレンスA
2023年4月22日(土)14:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 21-31 リコーブラックラムズ東京
敗戦の中にも得た自信。チーム史上初のディビジョン1残留へ士気は高まった
三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)のリーグ最終節は天気の変化とシンクロしているかのような展開を見せた。
薄曇りの前半、風下の相模原DBはペナルティを与え、ペナルティキックでリコーブラックラムズ東京に押し込まれる展開が続き、4トライを許す。晴れ間が見え始めた後半は一転して相模原DBが攻勢をかけ、3連続トライで3点差に詰め寄った。
前節の結果で入替戦に回ることが決まっている相模原DBにとっては、勝利だけでなく、入替戦の2試合に向けていい準備をすることも、この試合の「フォーカスポイント」(グレン・ディレーニー ヘッドコーチ)だった。
岩村昂太キャプテンやリンディ 真ダニエルらこれまで出場機会の多かった選手を外し、若手日本人やベテラン外国人を起用。メンバー入りした全選手が出場し、相模原DBは最後までアグレッシブなプレーを見せた。
相模原ラグビースクール出身の小泉怜史は前節に続き、左ウイングで2試合目の先発。これがホストゲームでは初出場となった。「慣れ親しんだ相模原ギオンスタジアムでプレシャーはなかった」と笑顔を見せるも、自身のプレーについては「欲しいタイミングでボールをもらえず、あまり良くなかったです」とディビジョン1での戦いの厳しさを口にし、悔しさをにじませた。
昨季のキャプテン、ヘイデン・ベッドウェル=カーティスは後半途中から8試合ぶりに出場。力強いボールキャリーを見せると、ラックからのピック&ゴーで3点差に迫るトライを挙げて、チームに勢いをつけた。
ヘイデン・ベッドウェル=カーティスは「途中から試合に入るときにトライを取らなければいけないことは分かっていました。自分が今日、出店したコーヒーキッチンカーでは売っていませんでしたが、『ミートパイ』(ニュージーランドでのトライの意味)を取ることができて良かったです」と冗談交じりに話す。
昨季も入替戦を経験したベテランはこうも口にした。
「自分が試合に出ても出られなくてもチームがディビジョン1に残れるように全力で戦います。英語で『いま』をプレゼントと言います。過去に起きたことは戻らないし、次に何が起こるかは分からないですが、『いま』はビッグプレゼント(大きな贈り物)のようなものだということを感じています。楽しみながら取り組みたいと思います」
ゲームキャプテンを務めた安江祥光は「一緒に戦った若いフレッシュなメンバーのハングリーに求める姿勢にあらためて勉強させられる部分もありました。一緒にやっていて心強いチームメートでした」と試合を振り返る。
「入替戦に向けていい準備になる試合、自信のつく試合でした。自分たちのポジションをキープするというところではなくて、シーズンを経ての決勝というメンタリティで入りたいと思います」とグレン・ディレーニー ヘッドコーチ。
50年を超える相模原DBの歴史で初めてとなる“ディビジョン1残留”へ、チームの士気は高まっている。
(宮本隆介)
三菱重工相模原ダイナボアーズ
三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ
「前半と後半でまったく違う試合になりました。自分たちが80分間、あきらめずにプレーできたのはうれしかったです。後半はいいトライも取れましたし、相手に1つトライを取られた一瞬以外は、コントロールしていたと思います。その1つのトライを取られたのは残念ですが、(入替戦の)次の2試合に向けていい準備になる試合、自信の付く試合でした。安江祥光ゲームキャプテンもいいリードをしてくれたので感謝しています」
──今節、これまで先発出場していたメンバーを休ませるなど入替戦を見据えた戦いの中で、これだけの内容の試合ができたことの評価。また、それが入替戦にどうつながるか、チーム全体としてどう捉えているかを教えてください。
「みんなが前向きに攻める意識で(試合に)入ったのはうれしかったです。フィジカルで勝てなかったところはありましたが、次の2試合に向けていい準備ができたと思います。先週、自分たちが入替戦に回ると決まった段階で、それがフォーカスポイントになりました。今節はそのための大事な試合で、最初のステップとしてはいいパフォーマンスを出せたと思います」
──今節、前半と後半でまったく違う展開になりました。第12節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦も同様の試合展開で、そのときはグレン・ディレーニー ヘッドコーチがハーフタイムに檄を入れたということでした。今節もそのようなことがあったのでしょうか?
「どの試合もさまざまなコーチから応援の言葉を得ています。今節はホストゲームだったので、元コーチの武山信行さん(元相模原DBゼネラルマネジャー)からさまざまなアドバイスをいただきました。どのような展開になりそうなのかなど話し合い、サポートを受けました。日本で長くプレーあるいはコーチングをしている方の力を借りることは大事だと思っています。次の(入替戦・)豊田自動織機シャトルズ愛知戦も、安江選手のような対戦経験のある、あるいは経験豊富な選手たちにサポートしてもらいながら、いいパフォーマンスを出していきたいと思っています」
──入替戦についてうかがいます。昨季は勝って昇格をしました。今季は下のディビジョンのチームと対戦することになります。どう戦いますか?
「目線は違うかもしれませんが、同じ試合です。自分たちのポジションをキープするというところではなくて、シーズンを経ての決勝というメンタリティーで入りたいと思います。今季、初めて(対戦するチームが多く)印象に残ったところはたくさんあります。そこから学んだことを、この2試合で思いっきり相手にぶつけていくことももちろん大事だと思います。相手チームをリスペクトしながら、準備をして、学んだことを全部出せる、素晴らしい試合をしたいと思います」
三菱重工相模原ダイナボアーズ
安江祥光 ゲームキャプテン
「まず、大会関係者、レフリー、メディアのみなさま、ありがとうございました。われわれとしては、ビッグキャリーのできる人たちのいるリコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)さんにどう対戦するかを念頭に入れながら、また、自分たちがやらなければいけないプレーを心掛けて挑んだ試合でした。前半に関しては、自分たちのペナルティでBR東京さんに攻めるチャンスを与えてしまった。反省点をゲームの中で改善できたのが、残り2試合(入替戦)に向けていい学びになったのではないかと感じています」
──入替戦の相手は、豊田自動織機シャトルズ愛知とトップリーグ2018-2019の入替戦で戦った相手です。当時のことで覚えていることや今季の入替戦に向けてお話を聞かせてください。
「相手は燃えている部分もあると思います。われわれとしても、ビッグボス(グレン・ディレーニー ヘッドコーチ)が相手チームを解体(分析)してくれると思うので、今季、激しいディビジョン1を戦ってきたという自信を胸に戦うだけです」
──来週以降を考える中で、今週、選手たちが自分たちでやらなければならないこととは何でしょうか?
「今節、入替戦にフォーカスするという部分は少なからずあったと思います。ですが、BR東京さんは、今節の三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)戦の出場メンバーに対して、ホストゲームでどういうゲームをするべきなのかをしっかり伝えてくれました。スタジアム全面を緑に染めてくれるダイナメイト(相模原DBファンの呼称)に対してどういうプレーを見せなければいけないのかは、どの試合でも変わりません。相模原DBは、目の前のプレーに激しく、泥臭くいくという信念で戦っています。今節、ゲームキャプテンをやらせてもらい、一緒に戦った若いフレッシュなメンバーのハングリーに求める姿勢にあらためて勉強させられる部分もありました。一緒にやっていて心強いチームメイトでした」
──今節の試合で勝つためにやらなければいけないことがあって、それがチームのビルドアップにもつながると思います。セットピースなどで意識されたことはありますか?
「セットピースの安定に関しては、現代ラグビーにおいては絶対に譲れない部分なので、そこはしっかり意識しました。あとはボールを使う部分、アタックするシチュエーションにおいて相手のウイークポイントを攻める部分は出せたのではないかと感じています。ディフェンスに関しては、グレン・ディレーニー ヘッドコーチが、ボールキャリーをするのが好きな選手の多いBR東京さんに対するディフェンスストラクチャー(守備の構築)をしっかり落とし込んでくれているので、われわれはそこを信じて戦っていきました。80分間を見据えて戦い、後半に入って足が止まることなく、そういう部分を表現できたのかなと思っています」
──入替戦についてうかがいます。昨季は勝って昇格をしました。今季は下のディビジョンのチームと対戦することになります。どう戦いますか?
「われわれは今季、ディビジョン1でチャレンジャーの気持ちで臨みました。次のゲームに対しても、ディビジョン1のチームだという気持ちではなく、相手チームをリスペクトした上で、チャレンジャーとして戦っていきたいと思います。その中で、いま、グレン・ディレーニー ヘッドコーチが言われたように、入替戦というよりはファイナル、決勝という気持ちで戦わなければいけません。それだけの準備をしなければ厳しい試合になると感じています。スキを見せない、チャレンジし続ける、泥臭くやり続ける相模原DBを表現できればと思っています」
リコーブラックラムズ東京
リコーブラックラムズ東京
ピーター・ヒューワット ヘッドコーチ
「前半と後半で全然違う試合でした。前半、いいスタートが切れて4トライを取れて、24対0でハーフタイムを迎えました。そのままいきたかったのですが、三菱重工相模原ダイナボアーズさんも食らいついてきて、さらにファイトバックしてきたので、タフな相手だな、1年をとおしてハードファイトを見せてくれたチームだなと思います。最後の10分、もう一度流れを取り返せたのはよかったと思います。両チームとも、モチベーションの持ち方が少し違ったかなと思いますが、勝ちで終われてよかったです」
──今季をつうじて、チームはどう成長しましたか?
「今季、最初の2試合に負けました。スロースタートではあった中で、うまくビルドアップしてきたと思います。チームのリーダーシップという点でも成長したと思います。キャプテンやリーダーシップグループが何か言うのを待つのではなくて、それぞれが責任をもって自分の準備をし、マインドセットもできたと思います。しかし、トップ4にチャレンジできるチームになるには、あと10%くらいはそこを伸ばしていかなければいけません。それでもいい方向に進んでいると思います」
──後半、風の影響もあったかと思いますが、キックを使ってエリアを取っていくというのがあまり見えませんでした。
「(後半と前半で戦い方を)変えようということに大きくフォーカスしていません。地面に近い、下のほうはそれほど風が強くはなかったかもしれませんが、上のほうは強めだったようです。キックはもちろんやりたかったのですが、ブレイクダウンのプレッシャーも受けていました。キックしようとしていたときのターンオーバーも3、4回ありました。キックをしないようにしていると見えてしまったかもしれませんが、キックプランは変えていません。でも、グラウンドレベルで風の強さを感じていたと思うので、そこでの判断を僕はサポートしたいと思います」
リコーブラックラムズ東京
山本昌太 ゲームキャプテン
「勝ちで終われてよかったです。前半と後半で自分たちが全然違うチームになってしまったので、そこは来季に向けての反省点です。今節に向けては、開幕戦、ホームで負けた相手なので、なんとしても借りを返すというモチベーションで臨みました。100点満点ではありませんが、とにかく勝ちを取れたのはよかったと思います」
──今季をつうじて、チームはどう成長しましたか?
「結果、優勝できていません。勝ったり、負けたりがありました。しかし、チームとして一貫性を持てるようになりました。『なぜいい試合ができたのか、なぜ勝てたのか、なぜ勝てなかったのか』、それを毎週、しっかり話し合って新しい1週間を始めます。こういうところはチームとして成長している部分かなと思います」
──後半、風の影響もあったかと思いますが、キックを使ってエリアを取っていくというのがあまり見えませんでした。
「正直、グラウンド上で風をストレスに感じていました。ただ、その中で自分たちがしなければいけないことができていなかった。相手のプレッシャーもあってのことですが、しっかりボールをキープする、ブレイクダウンをファイトする、ボールキャリーで前に出るという基本的なところが風下で戦う上でできていない時間が長過ぎたかなと感じています」