NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン1(リーグ戦) 第16節 カンファレンスA
2023年4月23日(日)14:00 東大阪市花園ラグビー場(大阪府)
コベルコ神戸スティーラーズ 26-52 横浜キヤノンイーグルス
大記録と悔しさが混在した最終節。
神戸Sは強くなって帰ってくる
コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の今季最終節が4月23日、東大阪市花園ラグビー場に横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)を迎えて実施され、奮闘したものの26対52で敗戦。神戸Sのリーグワン全日程が終了し、最終順位は9位となった。
ノーサイドの精神。
試合が終われば敵味方に関係なく、ラグビーを愛する人と人。ラグビーを詳しく知らない人でも広く浸透している言葉で、この日、それが一目で分かる光景があった。中心にいたのは神戸Sでの公式戦出場が初めて200キャップに到達した山下裕史。試合後、大記録を打ち立てた37歳のセレモニーが開催された。
ともに戦った赤のユニフォーム、対戦相手として戦った青のユニフォームが山下裕史を取り囲む。神戸Sでは『バックボーン』、横浜Eでは『ライザーズ』と呼ぶ、メンバー外の選手も加わった。快晴の青空の下、敵と味方など存在しなかったように笑顔に笑顔が重なり、それはスタンドにも広がる。ラグビーというスポーツの激しさとは正反対の、優しい幸福感に満ちていた。
もちろん、ラグビーは勝負の世界。その意味では今季の神戸Sの戦績は振るわなかった。チームの誰もが悔しさや至らなさを胸に宿したが、それでも立ち止まる者がいないのもまた事実だ。
全試合フル出場と気を吐いた山中亮平はチームのさらなる成長をイメージする。
「ディフェンスなど悪かったところが明確になりました。そこは来季、しっかりと修正できるんじゃないかなと思います」
22歳ながらバイスキャプテンを務め、司令塔である背番号10を背負った李承信も次を見据える。
「“神戸ラグビー”をどうリードして勝っていくのか。10番として考え続けていました。ボールを回すだけではいまのラグビーはディフェンスの良いチームが増えてきて、なかなか難しいですし、いかにキックゲームのところでエリアマネジメントして、敵陣で戦うか。自分としてもチームとしても気づけたので、そこはポジティブな収穫かなと思います」
来季へ向けてチームにも、選手にも成長への宿題が課せられた。キャプテンの橋本皓は試合後のセレモニーでファンに誓った。
「強くなって帰って来たいと思います」
万雷の拍手は来季に期待するファンの想い。神戸Sは必ずはい上がる。
(小野慶太)
コベルコ神戸スティーラーズ
コベルコ神戸スティーラーズ
ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ
「外(試合後のセレモニー)でも言いましたけど、まず、横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)さんに『おめでとう』と言いたいです。シーズンが始まる前のプレシーズンの初戦の相手も横浜Eさんで、(今季は合計)3試合で負けてしまったので、横浜Eさんに完全に上に行かれたと思っています。今日の試合を振り返ったときに、前半の4トライに関しては簡単に与え過ぎたトライだったと思っています。それでも、自分の目から見ても、ファンのみなさんの目から見ても伝わったかと思いますが、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)の良さが今日は試合の中でいくつかあったと思います。チームとしては、まだ戦う姿勢があるところを見せられた部分はあったと思うので、そこは良かったと思います。その上で、素晴らしい人間、ヤンブーさん(山下裕史)の(神戸Sでの公式戦通算)200キャップ達成の試合になったので、そちらのほうも本当に良かったです」
──5勝11敗はかつてない厳しい結果だったと思いますが、この成績をどのように受け止めていますか?
「会社、ファンのみなさま、自分たちにとってもそうですし、全員にとって本当に申し訳ない気持ちと、悔しい気持ちでいっぱいです。今季をとおして起きたミスであったり、エラーであったり、そういう部分から学んでいかないと来季もこの場で同じような話をする形になってしまうので、しっかりと学んで、来季は変えないといけないところは変えないといけないですし、やめるべき内容に関してはやめていかないといけないと思います。ただ、いまは一旦リセットして、来季に向けて変えなければならないところは何なのかをしっかりと突き詰めていきたいと思います」
──ディフェンスを修正し切れなかったシーズンだったと思います。終わったばかりですが一番問題だったのはどのあたりでしょうか?
「自分たちのディフェンスのどこの部分が悪かったというところですが、明確な答えを持っておけばシーズン最後のところになってもこういう状態にはなっていなかったと思います。その上で、明らかな部分で、2~3年前のディフェンスがまだ良かったときに比べて悪くなっているところに関しては、長いフェーズのディフェンスが自分たちはできていないのが一つ。二つ目に関してはタックル成功率。2~3年前に比べたら大きく数字を下げていると思います。三つ目に関しては、長いフェーズ、長い期間、自分たちはシステム内で動き続けること、システムから外れずに遂行し続けることができていなかったです。その三つは特に自分たちのディフェンスがうまくいっていないところの大きな内容だと思います」
──ディフェンスのシステムを保ち続けるには、どういうことをすればいいと感じていますか?
「何点かありますが、まず一つ目に関しては、仲間としっかりとコネクトし続けること、違うスペースを見ないようにコネクトし続けるところが一つで、もう一つに関しては立っている状態をどれだけキープできるか、タックルしたあとに、たとえブレイクダウンに2~3人以上巻き込まれてしまって、そこで人数を失い続けてしまったら自分たちのシステムは間違いなく遂行できないので、どれだけ14人が立っている状況を作れるか。
その次に関しては自分たちのディフェンスシステムの中で、どれだけ前を見続けてディフェンスができるか。前を見ていないと相手が動きを変えてきたときなどで、うまく反応できなくなってしまう。システムの中で動きつつ、前を見続けること、最後にタックルを完遂させること。タックルを完遂できなければどんなシステムがあろうと相手に乗られてしまうので、どれだけタックルを完遂できるかです」
コベルコ神戸スティーラーズ
橋本皓 キャプテン
「ニック(ニコラス・ホルテン ヘッドコーチ)が言ったとおり、自分たちの良い部分があって、相手に取られたトライは簡単に与えたトライが多かったと思います。ヤンブーさん(山下裕史)の(トップリーグ時代から合わせて公式戦通算)200キャップという偉業を勝利で祝いたかったんですけど、それができなかったのは非常に悔やまれます。
自分たちの良いところも見せられたと思います。ただ、シーズンをとおしてずっとそうだった。良いところもあるけど相手に簡単に取られるということがすごく多かったので、来季に向けてしっかりそこは修正したいと思います」
──ふがいない1年だったと話していたが、できなかったことは何だと感じていますか?
「失点が多いところですね。アタックに関しては今日もいくつか良い場面があったと思いますし、僕たちのアタックは良かったと思います。ディフェンスの部分や、ディフェンスうんぬんより『あっ』というようなトライが多かったです。細かいところはこれからなんですけど、シーズンとおしてそういう印象があります」
横浜キヤノンイーグルス
横浜キヤノンイーグルス
沢木敬介 監督
「みなさんお疲れさまです。試合をする前から自分たちはトップ4が決定していて、どういうふうに選手たちのモチベーションをキープするかというところで、『今日はプレーオフトーナメントのクォーターファイナルだと思って、しっかりこのゲームでも成長できる試合にしよう』と臨んだんですけど、前半はなかなか自分たちが支配することが難しかったですね。ただ後半、流れをしっかり引き寄せることができたんですけど、まだまだ成長できる部分はたくさんあると思うので、またさらにチーム一丸となって気を引き締めてプレーオフトーナメントに向かいたいと思います」
──金曜日の夜にトップ4が決まりましたが、どのような感情になりましたか?
「決まる可能性はあったんですけど、われわれは東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)がしっかりと勝ち点を挙げてきて、最後にここでしっかりと決着をつけるというマインドで1週間を過ごしていたので、BL東京(の敗退)が決まってからもチームのLINEにも誰一人、コメントがなかったです、なんでか分からないですけど(笑)。ただ、この試合にしっかり準備するマインドセットができていたんだと思います」
──BL東京の試合を監督はどこで見られていましたか?
「僕は家で見ていました。落ち着いて見ていました。ただ、あとから話を聞くと、プロパーの横浜キヤノンイーグルスの歴史を知っている選手たちは本当に感慨深いというか、感じるものがあったと思います。初のプレーオフトーナメント進出で、本当は喜びたかったと思いますけど、今日まで我慢したみたいです」
──最後の1週間でチームはどれくらい成長できたと感じていますか?
「1週間で急にスキルが変わるわけでもないし、フィットネスが良くなるわけでもないです。ただ、僕がずっと言ってきたのは勝負強さ。勝負強い選手、勝負強いチームになっていくというマインドセットで1週間を取り組んでいたと思います」
──トップ4が決まった中で、これからどう取り組んでいきたいと考えていますか?
「相手も決まっていますし、トップ4になれたということは優勝にチャレンジする権利を得たということのなので、埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦に向けて準備していきたいです。もちろん、埼玉WKは素晴らしいチームで、力があるし、良い選手がいます。そういうチームに向けて、僕は『当たって砕けろ』という滅びの精神は嫌いなんですけど、本当にチャンピオンに対して勝つ準備をして、しっかりとした自信をつけてチャレンジしていきたいなと思います」
──途中交代したシオネ・ハラシリ選手の状態は?
「大丈夫だと思います。さっき走ってました、ロッカーで(笑)」
横浜キヤノンイーグルス
梶村祐介 キャプテン
「お疲れさまです。今日の試合は、選手としては『この一戦でさらに成長してその先に向かおう』という話はしていて、(沢木敬介)監督がおっしゃったように前半は自分たちの時間がすごく短くて、それを自分たちから手放してしまうシーンも多くて、課題が多く残る前半だったかなと思います。ただ、後半はある程度、自分たちに流れを引き寄せることができましたし、結果的に5ポイントを取ることができたので、チームとして試合中に修正する力がちょっとずつ付いてきたのかなと思います。ただ、これからもっと成長していかないとこの先、ノックアウト(一発勝負)の試合ではなかなか難しくなってくるので、ここから少し時間が空きますけど、そこでさらにチームとして成長していきたいと思います。本日はありがとうございました」
──プレーオフトーナメント進出が決まった試合をどこで見られましたか。また、そのときの心境を教えてください。
「家で試合を見ていました。プレーオフトーナメント進出が決まって、よりこの試合が楽しみになった感覚はありましたね。プレーオフ自体が決まって、喜びもあったんですけど、さらにトップ4にふさわしい力を証明できる機会になるなと思いました」
──多少はLINEでのやりとりもありましたか?
「いや、チームのグループLINEもまったく動かなかったですし、選手LINEもあるんですけど、誰一人、載せなかったので…(笑)。いい意味で全員がこの試合にフォーカスしていたのかなと思います」
──試合中に修正することができたとの話だが、具体的にはどういう部分でしょうか?また、それはプレーオフトーナメントに向けてどのような収穫でしょうか?
「まずはディフェンスのバランスのところ。自分たちがボールを手放したときに、簡単に相手にラインブレイクされてしまうシーンが多くて、ディフェンスのバランスがすごく悪かったので、ハーフタイムにスタッフから話もありましたし、選手間でもそこの修正は行いました。あとは試合前から監督からも話があったんですけど、コンタクトレベルの強度、ここがトップ4になると上がってくるということで、そのスタンダードで試合を進めようと話をしていたんですが、前半はなかなか自分たちの求めている高いレベルでいけなかったので、後半もう一度、コンタクトの部分、そこの強度を上げようという話はしました」
──試合が終わったいま、モチベーションを保ってプレーオフトーナメントに臨める心境でしょうか?
「試合前からプレーオフトーナメント進出は決まっていましたけど、他のチームのポイント関係なしに、昨季はそこのギリギリのところでプレーオフを取れなくて、今季やっと自力でプレーオフ進出を決められるシチュエーションにもってこれたところに喜びを感じましたし、選手自身もそれは感じていたので、結果が試合前に決まっていたのは別にしてモチベーションは全選手が高かったかなと思います」
──NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 プレーオフトーナメント 準決勝・埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)戦に向けて、今日の試合をつうじてどういうところを修正したいですか?
「埼玉WKさんはアンストラクチャー(陣形が整っていない状態)からスコアに持っていくのがすごくうまいチームなので、自分たちがボールを手放したときに、しっかりと3フェーズをコンプリートするところ、そこをしっかり修正していきたいと思っています。あとは前回、戦ったときに自分たちは本当に勝つ可能性があるところまで持っていけたのはブレイクダウンのところ、そこでプレッシャーを掛けることができたのでああいう試合ができたと思います。なので、次戦もブレイクダウンのところはチームとしてこだわっていきたいなと思います」
──ボールの失い方で気になることも多かった?
「チームとしてのボールの動かし方ではなく、個人個人になってしまって、チームとしてのつながりがなかったので、そこはしっかりと練習から修正できると思う。何をするにしてもチームとして動くことにフォーカスしたいと思います」