NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 ディビジョン 2/ディビジョン 3 入替戦 第1戦
2023年5月6日(土)12:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
釜石シーウェイブスRFC 25-25 クリタウォーターガッシュ昭島

得点も、トライ数も、トライ後のゴール数もイーブン。同点劇を生んだのは「17点差までは許容範囲」という一種の暗示

第1戦を終えて、勝ち点も、勝利数も、得失点差も、トライ数も、トライ後のゴール数も、すべてイーブン

NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 D2/D3入替戦第1戦。釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)と、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)が、釜石鵜住居復興スタジアムで激突した。釜石SWは、今季のホストゲーム初勝利とディビジョン2残留を懸けて。対するWG昭島は、初めてつかんだディビジョン2昇格のチャンスをもぎ取りに。譲れない両チームの戦いは、80分のホーンが鳴ってからの同点劇で25対25のドロー決着となった。

引き分けといっても、試合へのアプローチは対照的だった。スクラムやブレイクダウンの局地戦で相手を圧倒すること、キックをうまく使いながらエリアを取ることを目指したWG昭島は、試合開始から戦術面で優位に立った。その結果、後半9分にはこの試合で最大の得点差となる19点のリード。「前半の入りはプランどおり、やりたいようにできた」とWG昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ。しかし、ゲームはそこから動き出す。

一方の釜石SWは、試合前に一つのキーワードを掲げていた。「前半終了時点で17点差までは許容範囲」。その点差までであれば、後半に逆転できる──。一つの暗示的効果もあったかもしれないが、実際にこの日の試合は、その言葉どおりに、前半を終えて15点差を追い掛ける展開となった。「後半はメンバーを入れ替えて、スクラムハーフの村上(陽平)と修正点を確認して、選手たちを送り出しました」と釜石SWの須田康夫ヘッドコーチ。一時は最大19点差を付けられながらも、最後に同点に追い付くことができた、その精神力を支えていたのは、自分たちの想定した戦略がことごとくハマっていたという手ごたえだったに違いない。

試合を終えて、両ヘッドコーチは、それぞれに課題を挙げた。WG昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチが、「後半は相手に勢いに乗られてしまって、その勢いを止めるのが難しかった」と、80分間をどう戦うかという戦略的なデザインの重要性を語れば、釜石SWの須田ヘッドコーチは、「スクラムもラインアウトも、頭を働かせていれば、われわれのラグビーができて、スペースを突くことができていた」と、局地戦で勝つための戦術の練り直しを誓う。

第1戦を終えて、勝ち点も、勝利数も、得失点差も、トライ数も、トライ後のゴール数も、すべてイーブン。次の試合で勝つか、負けるか、答えはシンプルだ(仮に第2戦も引き分け、かつ、トライ数もトライ後のゴール数もイーブンだった場合は、釜石SWがディビジョン2残留となる)。持てる力すべてを懸けて、いざ決戦の舞台へ。リーグワン入替戦史上、後々まで語られる試合になる、そんな予感がする。

(平野有希/Rugby Cafe)

釜石シーウェイブスRFC(D2)

釜石シーウェイブスRFCの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

釜石シーウェイブスRFC
須田康夫ヘッドコーチ

「本日は雨の中、お越しいただいた皆さまに感謝申し上げます。入替戦という非常に大事なゲームでした。今回はホストとビジターの2試合だが、(ホストでの)第1戦は同点に追い付いて次につなげられたことは良かった。課題のところは来週までに集中して、しっかり挑みたいと思います」

──追い付いての引き分けだったことについて、どう評価されていますか?

「本来であれば勝って、勝ち点を優位にして第2戦に臨みたいというのが互いの思いだったと思うが、プランのところを含めれば、こういったゲーム展開になるのはある程度想定していました。ラインアウトのミスなどがありました。どうやったらこうなってしまうかを把握できたことは次につながると思います」

──後半開始からメンバーを替えたが?

「選手にも試合前に話したが、歴史上、17点差というのがポイントになっていて、ディビジョンが下のチームが勝つことが多い。17点を取られる前に点を取ろうということでメンバーを変更しました。スクラムハーフの村上ともポイントを確認して、送り出しました」

──来週の第2戦に向けて、スクラムがポイントになる?

「スクラムもそうですし、ラインアウトもできることをやっていきたいです。頭を働かせていれば、われわれのラグビーができて、スペースを突くことができていました。そうなるように、修正してやっていきたいです」

釜石シーウェイブスRFC
小野航大キャプテン

「なんとか追いつけたのはチームとしての収穫だと思うが、ホーム最終戦、なんとしても勝利を見せたかったというのが本音です。同じ相手と2週連続試合ということで、本当の意味で大事な目標のために、1週間しっかりといいトレーニングをしたいと思います」

──後半30分ごろ、TMOで時間が掛かっていた際に、話したことは?

「得点差はあったが、焦らずに、敵陣に入っていけるようにやっていこうと話していました。敵陣に入ればスコアをできる自信もありました。ペナルティには気をつけようということも確認してやっていました」

──残り10分、どこが良かった?

「点差をどんどん詰めていけたのは、ブレイクダウンなどを重ねていったなかで、相手が我慢できないところまでもっていけたからだと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島(D3)

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「この場を提供していただきありがとうございます。前半の入りはプランどおり、やりたいようにできたが、後半は相手に勢いに乗られてしまって、その勢いを止めるのが難しい展開になりました。しっかりレビューして、来週は勝たなければならないので、そこに向けてやっていきたいと思います」

──第2戦に向けての修正点は?

「(第1戦は)ポイントを取れるところでポイントを取れなかった。特に後半、敵陣でラグビーをしていたが、ポイントを取れなかった。そこでミスが多くなっていたと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「ヘッドコーチからあったように、前半は自分たちがやりたいようなラグビーを遂行できていましたが、後半に入っていく中で、細かいところで自分たちでペナルティを犯して、相手にペースを与えてしまったと思っています」

──スクラムは良かったと思うが?

「しっかりと自信をもって取り組んできました。自分たちの形でスクラムを組めれば、というところで、結果的に勝つことができたと思っています」

──前半と後半でスクラムの違いはありましたか?

「前半と後半の違いはないですね。僕らとしても取り組んできたものがありますから。ただ、やりたいことの意識が後半にかけて薄まっていったところはあったのかなと思います」

──後半に追い付かれるという展開で、先週は後半に大量失点という試合でしたが、それと比べて?

「今日の後半は、追い付かれてしまったものの、フィジカル面のところは良かったので、成長したところだと思います。最初から、激しい試合になると思っていましたので」

──来週に向けて。

「変わらず、まずは自信のあるセットピースを、しっかりと取り組んでいきたいです」

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