NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 D2/D3入替戦 第1節
2024年5月19日(日)14:30 いわぎんスタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 37-19 クリタウォーターガッシュ昭島

これまでと違う内側へのステップで奪ったトライ。
地元での勝利につなげた“思い切りのいい選択”

入替戦 第1戦の勝利に加え、自身の出身地での開催、初のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞と、充実した1日となった日本製鉄釜石シーウェイブスの阿部竜二選手

D2/D3入替戦第1戦。日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)とクリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)がいわぎんスタジアムで対峙した。奇しくも昨季の入替戦と同じ顔合わせになったこの試合。ディフェンスで圧力を掛け、コンスタントにスコアを積み上げた釜石SWが37対19で勝利し、勝点4を手にした。

「もっと我慢強くやらなければいけませんでした」(ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ)

「選手がよく我慢してキーモーメント、重要な局面で頑張ってくれたことが今日の勝因」(須田康夫ヘッドコーチ)

試合後、両ヘッドコーチから聞かれた「我慢」という言葉。我慢比べで上回った釜石SWは規律を維持し、多くのペナルティを獲得してスコアにつなげた。

試合展開とマインドの部分で大きな影響を与えたのが前半終了間際、自陣から得意のステップとスピードを生かして奪った阿部竜二のトライ。その後のコンバージョンキックも成功し、釜石SWは13対12と逆転して前半を折り返した。自身が「普段は内側にステップを切ることはないんですけど、あの瞬間は行ける感覚があったので選択しました」と振り返ったプレーは、試合前に須田ヘッドコーチから掛けられた「思い切ってプレーしてこい」という言葉も背中を押した。後半にビハインドで臨むか、リードして臨むか。その差はメンタルの面でも大きい。特にホストゲームで先勝したい釜石SWにとってはなおさらだ。試合展開を左右する貴重なトライとなった。

試合終了直前にもダメ押しのトライを奪った阿部は初のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。出身地の岩手県紫波郡紫波町からほど近く、高校時代に何度もプレーした思い入れのあるスタジアムで殊勲の活躍を見せた。

第1戦で勝てたこと、18点差のリードを得たことは第2戦に向けての大きなアドバンテージになるが、「2試合で1試合(2戦合計で結果が決まる)という入替戦ですので次で勝たないと意味がない」とキャプテンの小野航大は勝って兜の緒を締める。

WG昭島は次戦のホストゲーム、地元の声援を受け、逆転での昇格を死に物狂いで狙ってくるはず。D2昇格の椅子を懸けた第2ラウンド。勝利の女神はどちらに微笑むだろうか。

(髙橋拓磨)

日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ(左)、小野航大キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

「素晴らしい環境でゲームができて光栄に感じております。関係者の皆さまには感謝申し上げます。今日勝てたことをうれしく思いますし、また来週気を引き締めて頑張りたいなと思っています。

ゲームの内容はいつもどおりといいますか、序盤にわれわれのミスがあってスコアできない展開が続いていましたが、選手がよく我慢して、重要な局面に対して頑張ってくれたことが今日の勝因になったと思っています。来週も同じような展開になると思いますが、しっかり我慢して、来週も勝てるように準備したいと思っています」

──後半にいい流れをつかむことができた要因は?

「前半にいくつかラインブレイクされたところもあったのですが、そういうところで我慢してペナルティせずにディフェンスし続けられたこと。そしてセットピースでペナルティをせずにボールキープできたことが勝因かと思います」

──守備で圧力を掛け続けることができた印象も強いのですが、そのあたりをどのように評価していますか?

「前半に少しほころびがありましたが、修正できたことは評価できますし、スクラムのところで逆にウチがプレッシャーを掛けられたことが勝因だと思います。選手がよく頑張ってくれました」

──1戦目で先勝できたことについて、あらためてどういう思いか教えてください。

「昨シーズンの1戦目は冷や汗の同点でした。同じ立ち位置で(入替戦を)2年続けてやりたくはないのですが、今季はいいスタートが切れた。そこはポジティブに捉えていますし、選手たちも自信になったのではないかと感じています」

──スクラムではどのような対策をしてきたのか、トレーニングでどんなところを意識して臨んだか、教えてください。

「スクラムの高さの部分です。しっかり低く対応しようと思って今日の試合に臨みました。その結果、しっかり我慢できたかと思います。クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さんも特殊なスクラムの組み方をしてくるので、レフリーを含めてわれわれは“こういうスクラムを組む”というところの評価をいただいたと思っています」

──我慢強さは次戦でもポイントになると思いますが、今回はどんな準備をされて臨んだのでしょうか?

「選手からも規律の大事さをチーム全体に共有してくれているので、その重要度はみんながよく知ってくれていると思います。自分たちは自分たちの姿勢を保てたということは非常に評価できると思いますし、称賛したいところです。そこがゲームに出たというのは、試合を見られた方にも感じていただけたと思います」

──地元・釜石のファンに今日の勝利をどのようにお伝えしたいですか?

「『勝ちましたよ!』とお伝えしたいです。ここ1、2週間はスーパーですれ違う方にも『ここが最低ラインだよ』とすごくプレッシャーを掛けられました(笑)。勝ちましたということを報告させていただくとともに、『また来週頑張ります』とお伝えしたいです。結果として来シーズンもディビジョン2で試合できるように、シーズンが終わってからそういった報告をしたいと思っています」

日本製鉄釜石シーウェイブス
小野航大キャプテン

「本日はありがとうございました。率直にまず一つ勝てたことはチームとして良かったと思います。ただ、内容としては特別いい内容だったわけではなく、我慢比べのところで勝った結果だと思うので、最後は今季の集大成としてパーフェクトなゲーム、チームとしてやってきたことを体現できるゲームをして、しっかり勝って残留を決めたいと思います。ありがとうございました」

──今日の試合の勝利、その価値をどのように感じていますか?

「来週のゲームに向けて、気持ちに余裕をもって準備ができるとは思います。ただ、メンバーには話したんですけど、“2試合で1試合”(2戦合計で結果が決まる)という入替戦ですので次で勝たないと意味がないですし、しっかり自分たちの強みを出してもう1試合勝って、残留できればと思います」

──今日の試合も後半で一気にスコアを重ねました。日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)の後半の強さというものをどう感じていますか?

「昨シーズンから、後半に相手の足が止まったところで走り勝てるところは強みだと思っています。ただ、今日も後半にスコアできましたが、一発のアタックで取る場面が多かった。もう少しフェーズを重ねて自分たちの形で取れると流れに乗れる部分はあると思うので、1週間しっかり準備したいと思います」

──地元・釜石のファンに今日の勝利をどのように報告しますか?

「地元の方に支えられてチームが成り立っていると思いますし、いろいろなところで声を掛けていただいたり、気に掛けていただいている中で、今季はなかなか勝利を届けることができなかったので、勝利といういい報告と恩返しができてよかったと思います。来週も頑張ります」

日本製鉄釜石シーウェイブス
阿部竜二選手

──入替戦で先勝できたことをどのように捉えていますか?

「1戦目で勝たないと、2戦目が厳しくなりますし、点差もある程度つけて勝てたので、次の試合に向けてよりポジティブに臨めると思います」

──阿部選手が決めた前後半の終了間際のトライは、チームとしても大きなトライでした。その手ごたえをどう感じていますか?

「個人的に今季のホストゲームは、(釜石鵜住居復興スタジアムではなく)いわぎんスタジアムでしかトライを取れていませんでした。今日の試合では自分の仕事としてトライを絶対に取りたかったので、スコアできたことは良かったと思います。特に(前半終了間際の)1本目は負けていましたし、得点もショット(によるもの)だけだったので、ここで決めてリードで後半を迎えられるという意味でも大きかったのかなと思います」

──ディフェンスから圧力を掛けて流れをつかんだ試合でしたが、その出来についてはどう感じていますか?

「WG昭島さんは外国籍選手、特に外の選手が中心でそこは脅威だったので、トレーニングから外に運ばせないような形を練習してきました。そこに関しては相手を自由にさせないディフェンスができたと思います。ピンチは何度もありましたけど、みんなでコミュニケーションを取りながら一人ひとりがやるべき仕事ができたのがいいディフェンスにつながったと思います」

──2戦目はどのような試合にしたいですか?

「スコアにつながりそうなところでミスが出て、相手にチャンスを与えるという場面が今日はありました。フェーズを継続していければゲインラインを越える回数も増えてくると思うので、細かいミスを減らすことやアタック中のコミュニケーションを取ることを意識したいです。ディフェンスは今日のような形を継続させていければいい結果につながると思います」

──プレーヤー・オブ・ザ・マッチは初めてですか?

「はい。それも地元から一番近くにあって、思い入れの強い、いわぎんスタジアムで取れたことも自分にとっては特別なものになりました」

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、中尾泰星ゲームキャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ パールー ヘッドコーチ

「前半はやりたいラグビーができていました。ボールを保持しているときにもう少し我慢強くプレーできていればもう2、3トライできていたと思います。前半は狙いどおりにできていましたが、後半は規律の部分がチームの足を引っ張ってしまいました。釜石SWが後半に良かったことも要因としてあると思います。レフリーとのコミュニケーションのところで行き違いもありました。レフリングの基準に自分たちがアジャストできていませんでした。メンバー全員、ゲームの結果には満足していません。レフリングの部分が読み取りづらかったところはありました」

──どんなゲームプランで臨み、その成果をどう感じていますか?

「基本的には、前半はボールを外に切らずにプレータイムを増やしていくことが狙いの一つでした。釜石SWはサイズが大きいチームなので運動量で勝負をしていく狙いでした。自分たちがプレーしたいエリアでプレーしているときにもっと我慢強くやらなければいけません。後半はキックオフレシーブのところでミスを犯すというスタートで、釜石SWが勢いに乗ってしまってそれをディフェンスすることができませんでした。前半に関しては自分たちの勢いに乗れていたのですが、トライにつなげられませんでした。釜石SWは逆に勢いをしっかりと利用してトライという結果につなげていました」

──第2節に向けての修正点について教えてください。

「自分たちがコントロールできる範囲、マイボールのときのキャッチングのところなど、対応していきたいと思っています。準備の時間は短いので、新しいことをしようとするのは難しいです。今回18点差がついてしまったからといって違う行動をするのではなく、(前述の部分に)取り組んでいきたいと思います」

──柳田翔吾選手が初スタメンでセンターでしたが、彼についての評価をお願いします。

「柳田はすごく良かったと思います。ボール動かしたいという狙いがあって、その部分でもフィットしていました。タフに見えないと思いますが、すごくタフですし、そういうところも生かせていたと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
中尾泰星ゲームキャプテン

「前半は1週間準備してきたことができたと思います。プランもエリアもそうですし、ディフェンスで我慢してアタックするというところでは前半うまく試合を進められたと思っています。ただ後半、ペナルティが続いて、エリアも厳しくなってきてフラストレーションがたまり、またペナルティを重ねてしまったことで自分たちで首を絞める形になってしまったと思います」

──今日の試合の収穫をどこに感じていますか?

「アタック、フォワードのバリエーションのところで、釜石SWの大きい選手を相手にしてもいいボールキャリーや、サポートをしながら前に出られたことは収穫です。また、スクラムのところもレフリングのところで釜石SW側に手が上がっていたこともありましたけど、セットピースでは勝っていたかなという感触です。このあたりは次、ホストゲームのときにスクラム、ラインアウトモールのところでプレッシャーを掛けていけると思うので、1週間いい準備をしていきたいと思います」

──今日はビジターゲームでしたが、多くのファンが声援を送ってくれていました。彼らに向けてメッセージをお願いします。

「盛岡までたくさんのファンが来てくださって、いつもの“クリタコール”や手拍子をしてくれたのは力になりました。次はホストゲームでたくさんのお客さんが来てくれると思うので、僕たちがまず一つひとついいプレーで見せて、会場一体となってやっていけたらと思います。次戦も応援よろしくお願いします」

クリタウォーターガッシュ昭島
柳田翔吾選手

──センターで初めてスタメンとしてプレーしましたが、振り返っていかがですか?

「試合前から体を当てて走るとシンプルに考えていたので、いいパフォーマンスが出せたかなと思います。緊張も思っていたよりはしなくて、リラックスして臨めました」

──前半はうまくいっていた中で、後半で失速してしまった点についてどう感じていますか?

「自分たちに矢印を向けて、やってきたことを出せたのが前半の良かったところかなと思います。ただ、後半、お互いに自分たちがやってきたことをどれだけ出せるかという我慢比べになったとき、釜石SWさんのほうが我慢して自分たちのスタイルを貫いたところ、そこが勝敗の分かれ道になったのかなと思います」

──試合前、「(チームの)強みであるウイングの力を生かしていきたい」とお話しされていましたが、今日の試合ではいかがでしたか?

「ラストパスや外に運ぶまでのパスの過程でミスが多く出てしまったと思います。そこは隣の選手同士のコミュニケーションやポジショニングが関係してくるところなので、時間はないんですけど修正していけたら、次のホストゲームではもっとウイングを走らせられるんじゃないかなと思います」

──試合をしていて意識していたことは何ですか?

「チームとしてはペナルティも多く出してしまったんですけど、ペナルティが出てしまったとしてももう一度自分たちのディフェンスに立ち返ることが大事だと思っているので、そこはネガティブに考えずに切り替えてプレーすることは意識していました」

──次節はホストゲームになりますが、どんな試合をしたいですか?

「今回負けてしまったことはもう切り替えて、試合で出た反省を次の試合で生かしてやっていきたいです。それから個人的には、いいパフォーマンスが出せた理由には、走って体を当ててというチームのためのプレーに立ち返った結果がそこにつながっていると思うので、そこは次も継続してチームのためにプレーしたいと思います」

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