2023.12.11NTTリーグワン2023-24 D1 第1節レポート(神戸S 80-15 三重H)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスA
2023年12月9日(土) 12:00 ノエビアスタジアム神戸 (兵庫県)
コベルコ神戸スティーラーズ 80-15 三重ホンダヒート

世界最優秀選手が魅せたすごみ。「常に100%」が信条のアーディ・サベアが巻き起こした熱狂

今年ワールドラグビーの年間最優秀選手賞、ニュージーランド代表81キャップを誇るアーディ・サベア選手(コベルコ神戸スティーラーズ)。開幕から大きなインパクトをもたらした

9日、ノエビアスタジアム神戸で三重ホンダヒートを迎え撃ったコベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)。開始4分、3季ぶりに復帰したニュージーランド代表で109キャップを数えるブロディ・レタリックが先制トライを挙げたのを皮切りに、李承信や山中亮平ら日本代表勢も続々とトライ。80-15の大差で開幕戦勝利を飾り、昨季9位からの巻き返しへ好スタートを切った。

世界的な大物プレーヤーが続々と圧巻のパフォーマンスを披露したジャパンラグビー リーグワン開幕節。ノエビアスタジアム神戸でも最注目の選手が、そのすごみを存分に見せつけている。

ラグビーワールドカップなどを主催する国際統括団体「ワールドラグビー」による今年の男子15人制世界最優秀選手(プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)に選ばれたアーディ・サベア。ニュージーランド代表で81キャップを数え、準優勝した今秋のラグビーワールドカップ2023フランス大会でも中心選手として活躍した、今季から神戸Sの門を叩いた大物中の大物だ。

「神戸でまずデビューできてとてもうれしいです。みんなすごくよくプレーしてくれたと思います」

柔和な笑みに人柄の良さを感じさせたこの日の7番だが、ピッチ上にそのような面影はみじんもなかった。チームを前進させる力強いアタック。相手の動きを逃さない鋭いタックル。個としての存在感は無論、味方の動きと常に連動し、猛攻を支え、引っ張っていく。後半の15分と18分には連続トライ。2つ目は圧巻のジャンピングトライだった。

世界最優秀選手の称号を手にした中、「注目度を高めるがゆえのプレッシャーはないのか」。そう尋ねられたアーディ・サベアは泰然自若に語っている。

「人のことを笑顔にできるんだったら、常に自分は100%でパフォーマンスがしたい。プレッシャーどころか、それを実行できる、実現できるパフォーマンスを出せることをうれしく思う」

この日のノエスタに集った観衆11,419人は度肝を抜かれ、熱狂し、リーグワンの新シーズン開幕に酔いしれた。アーディ・サベアもまた、「ベリー・グッド。ファンもすごく良かった」とスタジアムの雰囲気を楽しんだ様子だ。

今季のリーグワンは神戸Sが盛り上げる。それを強烈に主張した開幕戦、その中心には世界で最も優れた30歳がいた。

(小野慶太)

コベルコ神戸スティーラーズ

コベルコ神戸スティーラーズのデイブ・レニー ヘッドコーチ(左)、ブロディ・レタリック共同キャプテン

コベルコ神戸スティーラーズ
デイブ・レニー ヘッドコーチ

「まず、今日の結果に関してはハッピーです。アタックに関しては80分間、丁寧にやり切ることができたと思います。ディフェンスに関しては、良かった部分はあったんですけど、三重ホンダヒート(以下、三重H)さんもコベルコ神戸スティーラーズと同じように良いアタックをされたと思います。前半に関しては私たちのディフェンスは良くない部分があったと思いますが、後半に関しては修正できたところはありました。今日のパフォーマンスを見ても、本来であれば三重Hさんは間違いなく良いチームだと思います」

──より上を目指していくために、さらに成長させていきたいと思う部分はありますか?

「まず80点取れたことは悪いアタックの内容ではないと思います。ただ、すべてのエリアでまだまだ成長できる部分はあると感じています。トライに関しても、もっと取り切れたかと言えば、自分たちで点を置いてきてしまったなと思うところもあります。ディフェンスに関しては、三重Hさんがもちろん良いアタックをしたのはありますけど、ラインスピードを上げるべきところで上げ切れてなかった部分があったので、そこは成長できるところかなと思います。全員が分かっていることですが、リーグワンというのはタフなコンペティション、タフな大会になるので、常に自分たちがどれだけ成長し続けていけるかを大事にしていきたいと思います」

──同じニュージーランド出身のキアラン・クローリー ヘッドコーチと戦ったことについて、感想をお願いします。

「20年以上、(一緒に)プレーしたこともありますし、お互いにコーチとして試合を戦ったこともあります。本当に素晴らしいコーチだと思います。三重Hさんで指揮してまだ5週間くらいしか経っていないので、今からどんどん大きな変化、より良い変化をもたらしていくと思います。今までの経歴を見ても、イタリア代表もそうですし、カナダ代表もそうですが、チームにとってよりプラスになるものを与えて来ているので、三重Hさんにとって素晴らしいサイニング、契約だと思います」

──今日、インサイドセンター(12番)での起用だった李承信選手のプレーの評価と、スタンドオフとしての可能性について教えてください。

「今日の(李)承信のパフォーマンスに関しては素晴らしかったと思います。インサイドセンターで出ている理由にもなりますが、自分たちとしては10番をできる選手が二人いるのはチームにとって素晴らしいことだと思います。状況判断の観点においてもそうですし、スキルのところに関しても二人とも素晴らしいものを持っているので、ブリン(・ガットランド)と承信が今日は10番、12番という形で出ていました。試合の最後の20分に関しては、承信もスタンドオフとして出ましたけど、今後に関しては、チームの中の競争もあります。彼ら自身もそうですし、ほかの選手たちもそうですが、今日、10番でスタートしたブリン(・ガットランド)に関しても本当に素晴らしいパフォーマンスをしてくれました。今後に関しては、もちろん、承信が10番で出る可能性もゼロではないと思いますし、競争の中でどう動いていくかというところだと思います」

──アーディ・サベア選手の評価をお願いします。

「本当だったらプレーヤー・オブ・ザ・マッチだと思います(笑)。もともと80分出す予定ではなかったんですけども、80分出る形になりました。もちろん、パフォーマンスは素晴らしかったと思いますし、ボールを持って相手にとって脅威になる選手だと思います。周りの選手たちも(プロディ・)レタリックやアーディー(・サベア)と一緒にプレーできることを本当に楽しみにしている選手が多く、彼ら自身のパフォーマンスもそうですけど、周りの選手のパフォーマンスも本当に引き上げてくれていると思います。今後に関しても素晴らしいパフォーマンスを出してくれる選手なので、楽しみにやっていきたいと思います」

コベルコ神戸スティーラーズ
ブロディ・レタリック共同キャプテン

「ほとんど(デイブ・)レニー ヘッドコーチが言った内容と自分も同じ意見です。前半に関して、自分たちのディフェンスはワイドチャンネル(大外)でやられる部分が多かったかなと思います。ただ、後半に関しては、そこの問題解決をして修正することができたので、ハッピーです。自分たちのアタックに関しても、カウンターの部分ではアウトサイドバックスのトライやフォワードがハードワークして得たトライなど、全体的にハッピーです。もちろん、今日の試合から出た課題もたくさんあって、そこに関しては勝った上で反省して修正していけるのは初戦としてはハッピーかなと思います」

──より上を目指していくために、さらに成長させていきたいと思う部分はどこでしょうか?

「80点を今日の試合で取れているので、モメンタム(勢い)、試合の流れは基本的にコベルコ神戸スティーラーズ側にあったと思います。自分たちにとってチャレンジングになってくるのは、相手にも流れが多くあるとき、相手がボールをより多くの時間で持っている、ポゼッションが多いときに、自分たちが今日できたことを同じようにできるのか。そこは、自分たちにとってチャレンジング、成長しなければいけないところになってくると思います」

──ひさしぶりに日本でプレーしたこと、また、自身のパフォーマンスについて感想を教えてください。

「もちろんチームに3年ぶりに戻ってきたので、この状況を楽しんでいる途中です。プレシーズンもそうですし、今日の開幕戦を見ても分かるように、ディフェンスはすごくタフになっている、前回、在籍していたときよりもディフェンスが良くなっているチームが多いなと感じています。なので、今季、大会をとおして、戦っていく上で接戦になる試合が以前に比べたら増えるのかなと思います。そこはリーグワンというコンペティション自体がより面白くなるところの一つかなと思っています」

──かなり髪を切られていますが、その理由を教えてください。

「意図としては少しでも速く走れるように少なくしました(笑)。本来であれば、美容院にちゃんと行きたかったんですけど、日本に着いてからいろいろやらなければいけないことも多かったので、剃ってしまったほうが早いかなと」

三重ホンダヒート

三重ホンダヒート
キアラン・クローリー ヘッドコーチ

「コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)が非常に強かった印象を受けました。神戸Sが良いスタートを切ってくることは分かっていましたし、実際にいいスタートを切ってきました。われわれも前半の早い時間帯でファイトバックして何とか流れを取り戻そうとしたんですけど、それが良い形で叶うことなく、相手が良い形でアドバンテージライン(ゲインライン)を越えたり、われわれのタックルが非常に乏しいパフォーマンスだったので、非常に残念な結果になってしまいました。後半も相手のボールキャリーのほうで、非常にドミネート(支配)される、圧倒される場面があり、現実としてわれわれがそのレベルに達していなかったと。われわれが達するべきレベルというのは今日のゲームのレベルなんだということを実感しました」

──開幕前にD1のスピード、パワーにどれだけ対応できるかがポイントと話していたが、開幕戦をとおして感じた手ごたえ、課題を教えてください。

「神戸Sがフィジカルを全面的に出してきたところに対して、われわれがまだちょっとマッチできてなかったのが非常に大きな原因であると同時に、ディフェンスのところで、われわれの乏しいパフォーマンスがありました。そこで相手がアドバンテージラインを越えてきて、いい推進力をつけてしまったところが一番反省すべき点かなと思います。やっぱり、ディフェンスのタックルをしっかり決めることができないと試合をなかなか組み立てることができない。それに対して神戸Sにいいボールキャリーをされていたところにもつながってしまった。われわれとしては今日出た課題を、しっかりハードワークをして、改善点を次の試合に向けてしっかりつなげていきたいと考えています。
われわれの収穫は、前半のある一定の部分や後半に、アタックをいい感じですることができればスコアを取れると証明できたことだと思います。まずはフィジカリティーの部分、フィジカルのレベルをD1のレベルに上げていかないといけないと感じました」

──けが人が何人か出ましたが、試合前からも主力が出ていなかった。小林亮太選手やトム・バンクス選手、ヴィリアミ・アフ・カイポウリ選手はどういう状態でしょうか?

「最終的に彼らがプレーをしていなくても、チームに良い選手層がいるかどうか試されている部分であるかなと思っています。確かに、今日は三重ホンダヒートのキープレーヤーが何人か欠けているところはあるんですけど、そのキープレーヤーの不在よりは、われわれが1週間、いい準備をして、この試合に臨んだことはチームとしてはしっかりと自覚はしていると思います。残念ながらわれわれが望んでいるものは手に入らなかったんですけども、しっかりとここから経験を生かして次のゲームにつなげていきたいと思っています。キープレーヤーに関しては情報もありました。トム・バンクスに関しては大体、第4節、第5節くらいで復帰する予定でいまリハビリをしています。同じく、ヴィリアミ・アフ・カイポウリも同じ形で進めています。小林亮太に関しては、おそらく来週には最短で復帰できる可能性はあるということです。われわれとしては彼らがいなくても、選手層のところでもっと厚みを持たせていかないといけない。そうでないとD1を戦っていけない。タフな戦いが続いていくのでしっかりと選手層に厚みを持たせないといけないということで、彼らキープレーヤーがいないのは逆に言うと、ほかの選手には出るチャンスが出てくるということ。ほかの選手たちの成長に期待しているところもあります」

──昇格チームが戦う難しさを感じたと思うが、どのようにシーズンを戦っていきたいですか?

「本当にハードワークを積み重ねていくしかないかなというふうに思っています。特に今日の神戸Sはアイデンティティーのすごくあるチームではありますし、来週は昨季のチャンピオンであるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、その次は東京サントリーサンゴリアスと続いていくわけで、非常にタフなゲームが続いていくと理解はしています。とにかく、われわれとしてはハードワークを積み重ねて、自分たちがいい準備をしっかりして、それはコーチも選手もいい準備をした上で、試合に臨んでいきたいと思います。ベストな良い準備を積み重ねた上で、そのゲームの中で何が起こるか。最終的にはシーズンの終わりに良い形でチームが成長できていればいいと考えています」

三重ホンダヒート
古田凌キャプテン

「前半から相手にいいスタートを切られて、特に自分たちがディフェンスのときに相手のフィジカルが僕たちを上回っていて、そこでやっぱり突かれて、突かれて、その結果、トライにつながっていました。そのスタートをどう改善していくか、ディフェンスの部分をどう改善していくかで次の試合が変わってくると思います。負けたのはもちろん受け止めて、まだまだ次の試合に向かっていきたい。試合はありますし、ここで終わりじゃないので。しっかり前を向いて、また次のレベルに向かってやっていきたいと思います」

──開幕前にD1のスピード、パワーにどれだけ対応できるかがポイントと話していたが、開幕戦をとおして感じた手ごたえ、課題を教えてください。

「キアラン(・クローリー ヘッドコーチ)が言ったところ、フィジカル、特にディフェンスのところはもっと強化しないといけないイメージはありますし、アタックはいい場面もあったので、そこは次に生かしたいです。あとは規律の部分、一つのミスが大きなミスにつながるところをこの試合で実感しました。一人ひとりが正しい判断、正しい行動、プレーをしないといけないなと思いました」


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