2023.12.11NTTリーグワン2023-24 D1 第1節レポート(相模原DB 30-29花園)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦) 第1節 カンファレンスB
2023年12月9日(土) 13:00 相模原ギオンスタジアム (神奈川県)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 30-29 花園近鉄ライナーズ

残り40秒での逆転ゴール。すべてのキックを成功させてヒーローになったジェームス・グレイソン

英国ノーサンプトンから緊急移籍。合流から10日での出場となった三菱重工相模原ダイナボアーズのジェームス・グレイソン選手。プレーヤー・オブ・ザ・マッチの活躍でチームの開幕戦勝利に貢献した

試合時間残り40秒、約30mのペナルティゴールを蹴った瞬間、英国人スタンドオフの顔が輝いた。

NTTジャパンラグビー リーグワン ディビジョン1開幕戦、三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)がシーソーゲームの末、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)に1点差で勝利した。

花園Lの向井昭吾監督が「(後半の)38分くらいまでプランどおり」と振り返ったように、最後まで勝負の行方は分からなかった。オフシーズンに守備の強化に取り組んだという花園Lは序盤、相模原DBの攻勢を粘りのディフェンスでしのいでトライを先取する。後半、連続トライで逆転されるも、すぐに二つのトライを奪い返し、相模原DBに2点差をつけて最終盤を迎えた。

プレーヤー・オブ・ザ・マッチは、相模原DBの10番ジェームス・グレイソン。10日前にチームに合流したばかりのスクランブル先発で司令塔の役割を果たし、決勝のペナルティゴールを含む6本のキックすべてを成功させた。

イングランド・ノーサンプトン出身の25歳。同ポジションの父はラグビーワールドカップ2003オーストラリア大会優勝メンバーであるポール・グレイソンだ。ラグビー一家で育ち、地元ラグビーチーム「ノーサンプトン・セインツ」で8シーズンに渡ってプレー。U20や各年代でイングランド代表に選ばれている。

ポール・グレイソンと対戦したことがあるという相模原DBのグレン・ディレーニー ヘッドコーチは、ジェームス・グレイソンを「若くして経験豊富な選手です。マット・トゥームアが急きょ帰国することになったので起用しました。仕事を遂行できたことがすごくうれしいです」と称える。

ジェームス・グレイソンはこの日の自身のプレーを振り返って、「自分のプレーでサビついているところがあってミスをしましたけど、最後に勝ててよかったです。大きな声でシンプルに明確に指示を出すことを意識しました。自分自身はキックをしっかりと決めることと、役割を果たすことにフォーカスしました」と語った。

来日理由について「リーグワンには世界トップレベルの選手が集まっています。すばらしい文化、異なるラグビースタイルを持つ日本に来るチャンスをもらったので、イギリスのシーズン中でしたが契約途中での移籍を決断しました。ノーサンプトン以外のクラブチームに所属するのは初めてです」と新天地でのプレーに意欲を見せる。

相模原ギオンスタジアムには昨季の最多入場者数だった横浜キヤノンイーグルス戦を超える7852人が来場。バックスタンドを緑色に染め上げて、おらが街のチームを大声援で後押しした。

「アメイジング」とジェームス・グレイソン。「たくさんの応援のおかげで勝つことができました。デビュー戦としては悪くなかったと思います。まだまだいいプレーを出せるのでこれからが楽しみです。若い時から見ていた10番のボーデン・バレットやリッチー・モウンガと戦えるとしたらうれしいし、勝てるように全力を尽くしたい」

相模原DBのファンは自チームの勝利に喜ぶとともに、今回も激闘を繰り広げた花園Lに大きな拍手とチャント(応援歌)を送った。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ

三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレイニー ヘッドコーチ

「とてもタフなバトルでした。有利なチームが何回も変わったシーソーゲームだったと思います。花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)は何年もこういうタイプのバトルをし続けているチームですし、今日もまったく同じような展開でした。

また、8000人のファンが来てくれて本当に感謝しています。自分たちのマネジメントスタッフが努力することで、本当に素晴らしい環境の中でできました。私たちにとってはかなりドキドキする試合ではありましたけど、ファンにとってはとてもいい試合だったと思います。相模原ギオンスタジアムで何千人のファンの前で勝てたことがすごくうれしいです。ここでプレーできることは本当に光栄ですし、楽しみです。自分たちはもっといいチームになって、もっと良いパフォーマンスを出せるようにチームとして努力します」

──昨季は一試合一試合勝負している感じでしたが、今回はプロセスを感じます。プロセスとして今日の試合はいかがでしたか。

「今シーズンに大きく変わったのが、アタックコーチとフォワードコーチが新しく入ったことです。今日も脅威のあるアタックを見せることができたと思います。まだ完成していませんが、少しずつアタックのプロセスは良くなっていると思います。自分が担当しているディフェンスはあまり良くなかったと思うので、そこはプロセスとして続けないといけませんが、全体的には前に進めたと思います」

──トライを取られたことに不満があると思います。いまの時点で改善する部分で見えていることはありますか。

「試合後、選手に話したことですが、昨季に何回か勝利することができて、今季は外からのプレッシャーが多くなると思います。そのプレッシャーにチームとしてどう耐えるのか、どう対応するのかがとても大事です。常にスイッチオンすること、ディフェンスは特にスイッチオフしたときに、タックルに入れなかったりすることがあります。メンタル的に80分間通して自分たちがやらないといけないことをやり続けることが一番大事だと思います」

──ジェームス・グレイソン選手の強みについて。また三菱重工相模原ダイナボアーズが目指すラグビーにどんな形で貢献してほしいと期待しているか。そして今日のパフォーマンスについて評価をお願いします。

「強みはゴールキックです。加えて若いですが経験豊富な選手です。ノーサンプトンで6〜7シーズンプレーして、いろいろなラグビーを見てきています。父親は有名なラグビー選手で私も対戦をしたことがあります。ラグビー一家出身の強みを持っていると思います。チームに入ってすぐに先発した理由は、マット・トゥームア選手が急きょオーストラリアに帰らないといけなかったからです。それでも仕事を遂行できたことがすごくうれしいです」

──後半になって連続トライをしたあと、すぐにやられてしまいました。メンタルが原因ですか、それとも単純に遂行できなかったからですか。

「二つのトライで27対15になったと思いますが、そこからディフェンスのミスで相手がすぐにトライを取りました。ラグビーは勢いがとても大事です。勢いがあるときにチームとしてどう加速できるのかが、次のステップに進むために重要です。私たちのチームは全体として経験的に若いので、そういう学びを毎週しています。今週は悪い例でした。勢いがあるときは、それを使ってどんどん前に行けるようなチームにならないといけません」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「マネジメントスタッフたちがたくさんの観客を動員してくださって、8000人のファンの皆様の前でプレーできたこと本当にうれしく思います。ただ、簡単なミス、われわれのマインドセットで失ったボールが試合中数多くあり、反省点もあります。こういったレベルでそういうことをしてしまうとこのような展開になると思います。勝ちましたけど、すごくいい学びになりました」

──かなりボールを動かしてつなぐプレーが多く見られました。今季、アタックの部分では、どんなことをやろうとしていますか。

「チームとしてスペースにどんどんアタックすることをプレシーズンからやってきました。『スペースを探して、そこにアタックをする』など何個かあるキーワードに沿ったアタックをやるようにしています。ヘッドコーチも言ったとおり、まだ完成していませんが徐々に成長していると思います」

──序盤にいい形を作りながら取り切れないことがいくつか続いて、先に花園Lにトライされたことで、今日の試合の流れができてしまったように感じました。キャプテンはどのように捉えていますか。

「こういうタイトな試合で22mラインに入ったとき、ゴール前にいたときは必ず得点しないと厳しい展開になることがあらためて今日の試合で分かりました。そこは反省点です。22mラインに入ってゴール前のチャンスがあるときは必ず得点するというマインドセットを持ってアタックに取り組まないといけないというのを再確認しました。そういった面ではすごくいい学びになりました」

──キャプテン自身、30代最初の試合でしたが、期するものはありましたか?

「今まで誕生日を特別な日と思ったことはなく、今まで通り自分の仕事をしっかりやることにフォーカスしていました」

──トライを連続して取ったときはどんなことを意識していましたか?

「後半が始まる前に話していたとおりに試合を進められたと思うので、『準備してきたものを出せばこういう結果がくるよね』とグラウンドの中で話していました」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾監督(左)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾監督

「今日の試合はお互い勝ちたいという気持ちで戦ってきたと思いますけど38分くらいまでプラン通りになっていました。しかし最後はペナルティで負けました。ほとんどゲームプランどおりに進んで、だいたい30点以下に抑えて勝つということでしたけれども、最後は“あや”で負けたかなと。このへんのところが、まだまだチームの習熟度が足りていないところだと思います。そのへんをやはり、1試合、1試合丁寧に戦って、今度は勝ちにもっていけるようにできればと思っています」

──プランどおりということでしたが、最も注力して、こういうふうにしたいと意図していたこととはなんだったのでしょうか。

「三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんは、非常にアタック力があって、そこのところで、たぶん受けるというよりは仕掛けられるところがあって、そこが我慢できるかというところで、今季においてはディフェンスをしっかりやってからの切り返しということを思っていました。その部分においては前半もしっかり守れてペナルティをもらったり、後半もそういうところがあったりしました。攻められてもしっかり規律を守って、ディフェンスし切れば、私たちの自信になるというゲームにしたかったです。それが出た部分と、いまキャプテンも言っていたように、最後ペナルティで負けているので、守り切れなかったところがあるので、その辺りを修正して、また次にというところだと思います」

──花園近鉄ライナーズをD1で戦えるようにするために、どういうことをここまで重要視してやってきて、それを初戦でどういうふうに出してもらいたかったのか。

「昨季を私は預かっていないですが、昨季のデータだけをみると、非常に得点されているので、そこをまず修正すること。なおかつ、アタックにおいてはタレント性もあるので、タレントだけではなくて、今日みたいに自分たちでしっかり作り出して、スペースでトライを生むというところは、昨季からできている部分があるので、それを磨いていければというふうに思っていました。1年目の私がやることは、しっかりとしたディフェンスができるベースです。ある程度点を取られなくて、競ったゲームをすべてのゲームでやることによって勝ちがどっちかに転んでくるというような、そこのところまで試合を組み上げるのが重要かなと思っています。今日の一番の反省は、ペナルティされて、すぐトライされたこと。押し返されたときに、もう一度押し返して、1対1を作っていけるようになれば、チームはもっともっと強くなれると思っています」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「最後も含めて、ペナルティが勝負を分けたのではないかと思っています。そういうところは練習や日頃の生活とつながってくることだと思っているので、意識さえすれば、お互いに厳しくすることができれば、直せる部分だと思っているので、もう一度規律と厳しさというのを日頃から実行できるようにやっていこうと思っています」

──序盤、相模原DBのアタックをギリギリのところで止めて、いい形で最初にトライを取りました。それに、前半はスクラムで反則を取れていました。後半に逆転されたことについて、うまく流れに乗れなかった部分はあったのでしょうか。

「最初に流れをうまく断ち切れたことが、昨季の自分たちと違うところかなと思っています。昨季ならたぶん簡単に点を取られたのではないかなと。そこで、スキルもシステムもそうですが、マインドセットのところで、絶対に取らせないということを結果として出せたのは、自分たちにとってプラスです。ただ、同じ話になってしまうのですが、流れを相手に渡してしまったのは、個人的にはペナルティのところではないかと思っています。あと、最初のほうから中盤でのラインアウトモールのディフェンスがちょっとパッシブ(受け身)になってしまったところが、最後の1点のところなのかなというふうに思っています」

──ディフェンスの部分で、がんばれていた時間とがんばれていなかった時間があったと思う。その差について。

「いろいろな要因があるので、一概に『これが要因です』と言えないですが、特にファーストタックラーが外されたとき、セカンドマンが近くにいないときは、やはり大きな穴に、大きなゲインにつながっていたのではないかというふうに思います。僕たちはラインスピードも上げていきたいし、コネクションも保ちたいというチームの中で、インサイドの上がりからカットインして相手が入ってきたときに、内側からプレッシャーをかけ続けるということが今日は不十分というか、自分たちの思い描いているディフェンスのレベルまではいけていなかったかなと思います」

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