2023.12.12NTTリーグワン2023-24 D2 第1節レポート(釜石SW 7-52 S愛知)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2(リーグ戦)第1節
2023年12月10日(日)13:00 釜石鵜住居復興スタジアム (岩手県)
日本製鉄釜石シーウェイブス 7-52 豊田自動織機シャトルズ愛知

最年少出場記録達成の高島來亜、その喜びを一番に伝えたい人は…

リーグワン最年少出場記録を更新した18歳の高島來亜選手(豊田自動織機シャトルズ愛知)

釜石鵜住居復興スタジアムで行われた、日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)と豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)との今季開幕戦。S愛知が8つのトライを奪い、ボーナスポイントを含めた勝ち点5を獲得する快勝で最高のスタートを切った。

「前半はなかなか流れがつかめなかったが、特に2トライとったあと、選手も少し落ち着きを取り戻して、流れがわれわれに傾いた」(徳野洋一ヘッドコーチ)

前半、立て続けにトライを決めたのはフランカーのガヴァイア・タギヴェタウアだ。13分、30分、そして35分の連続トライで自身初のハットトリックを達成した。日本での生活が長いガヴァイア・タギヴェタウアは試合後には日本語で、「ハットトリックは人生初なのでめちゃくちゃうれしい。これから家に帰って妻が作るフィジーのカレーライスを食べるのが楽しみです」と白い歯をのぞかせながら話し、喜びを表現した。

〝初〟のハットトリックに続き、今度はジャパンラグビー リーグワン〝初〟出場を果たした選手の姿に注目が集まった。高卒ルーキーでスクラムハーフの高島來亜だ。日が傾きかけた後半27分、リーグワンの公式戦のピッチを初めて踏んだ黄色のスパイクが、西日に照らされひときわ輝いて見えた。高島は18歳8カ月と17日で、リーグワン最年少出場記録を更新。長い手足に、身長184cmで体重77kgと細身な体系にはまだ若さがにじみ出る。それでも、積極的に仲間とコミュニケーションをとり、トライにつながる攻撃にも丁寧なパスで貢献した。

「緊張はまったくせず、いつもどおり臨みました。デビューは素直にうれしいです」と話す口ぶりにも、ルーキーとは思えない落ち着きを感じる。すでに指揮官からの信頼も厚い。「記録を更新させるためにこの場に連れてきたのではなく、プレシーズンとこの1週間、彼自身が本当に高いパフォーマンスを発揮した。ランニングやキックのスキルももちろん高いが、成長意欲がこのチームの中でもトップクラスに高い」。徳野ヘッドコーチもそう言って目を細める。

高島がリーグワンデビューを一番に報告したいのは、中継でその姿を応援してくれていたであろう「母親」だそうだ。「片親でずっとサポートしてもらいました。大学を経ずにプレーすることで不安な思いもたくさんさせてしまったので、試合に出ているのを見てもらうのが一番の恩返しになると思います」。

今後のラグビー人生で見据えるのは、4年後、8年後のラグビーワールドカップ。リーグワンデビューのこの日を新たなスタートに。高島はこれから一歩ずつ歩み続ける。

(佐々木成美)

日本製鉄釜石シーウェイブス

日本製鉄釜石シーウェイブス
須田康夫ヘッドコーチ

日本製鉄釜石シーウェイブスの須田康夫ヘッドコーチ

「本日はたくさんのサポーターの方にお越しいただいて素晴らしいオープニングマッチになったと思います。感謝しています。この中でプレーした選手を誇りに思いますし、最後まであきらめずに戦った選手たちに敬意を表したいと思います。また素晴らしいラグビーを見せてくれた豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんに関しては、非常に勉強になることも多かったです。まずはおめでとうと言いたいと思います。

その中で、われわれ日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)は、今季セットプレーに重きを置いて強化し、昨季のようにゲーム序盤に決められてしまうような展開ではなく、比較的粘って戦えるようになってきたと感じています。我慢の部分であったり、落ち着くところであったり、新しい課題が見えたと思いますし、さらに道筋が見えたゲームになったと思っています」

──試合の流れを相手に傾かせてしまった要因はどこにありますか?

「まず我慢できていたこと、しっかり体を当てていけて良かったですし、スクラムもペナルティを冒すようなことはなかったのですが、ディフェンスの中でペナルティの部分が少し続いて、前半8つも出してしまったのがゲームの流れを悪くした部分だと思います」

──スクラム強化の手ごたえはどう感じていますか?

「やってきた成果は非常に出てきていると思います。今後、対戦相手に対して分析しながら、さらにもっと良くなると思います」

──開幕前に大きな手ごたえを感じていたと思いますが、実際に開幕戦を終えた率直な気持ちはいかがですか?

「もう少しやれるのかなとは正直思いましたが、S愛知さんの成長、チーム力強化が素晴らしいという印象もあります」

──次の試合へ向けての一番の修正点はどこでしょうか。

「まずはマインドセットの部分で解決すると思うんですけど、規律の部分や、アタックのところです。落ち着いてアタックするところや、ブレイクダウンのところは、オプションも含めて見直せることができればもっと良くなると思います」

──ペナルティが多くなってしまった要因はどこにあったんでしょうか?

「ペナルティと言っても、S愛知さんのプレッシャーが少なからずあった上でのペナルティだったと思います。もちろんスクラムのカウンターラックのところや、ディフェンスの局面であれば、タックルしてはいますけども、乗られてしまうのでよけられないという状態が続いた部分もありました。そこで乗られたときの意識や、アタックで言えば、少しポジティブではないアタックだったとしても、しっかりブレイクダウンの姿勢になることは改善できると思っていますし、そこが差し込まれた部分かなと思っています」

──アタック面での修正点はどのようなことがありますか?

「ずっとボールを持つ機会があったときに、しっかり落ち着いて自分たちの形を作ることができればさらに良くなると思っていますし、後半はトライも取れていたのでいい部分も見えたと思っています」

──ラインアウトに関して課題があるように見えましたが、どのように修正していく考えを持っていますか?

「改善しなければいけない部分だと思っています。ラインアウトのところは、しっかりサインを出すところでサインミスがあったので、伝達のところをしっかりする、もう一度しっかり確認してやらなければいけないなと思っています。あとは大事な局面や、ミドルエリアのラインアウトのところでのノットストレートなどのミスもあるので、ここでミスしてはいけないというようなラインアウトのところをしっかりレビューして次に修正できたらと思います」

日本製鉄釜石シーウェイブス
小野航大 キャプテン

日本製鉄釜石シーウェイブスの小野航大キャプテン

「本日はありがとうございました。2023-24シーズンの開幕ということで、オープニングマッチはなんとか勝利でスタートしたかったのですが、S愛知さんのプレッシャーに耐え切れず、点差のついたゲームになってしまったと思います。前半はいい形で我慢ができていて、自分たちの時間帯もあったと思いますが、細かいエラーなどが多かったので、そこは修正しなければいけないポイントだと思います。ただ、体を当てた感覚としてはやれる感覚はありましたし、今季こだわってやってきているフィジカルバトルに関しては自信を持って次のゲームも臨みたいと思います」

──試合前のハドルではどんな声を仲間に掛けましたか?

「今シーズンは『CHAIN』というスローガンを掲げてきて、ゲームの中でそれを体現しようと話しました。ディフェンスのときもアタックのときも、しんどいときのメンタルを含めて全員でしっかりつながり続けようと話しました」

──次の試合へ向けては仲間にどんな声を掛けて臨みたいですか?

「長いシーズンですし、下を向いても仕方がないので、よかったところをしっかりつないで、次のゲームで自分たちの力を十二分に出せるように。ショートウィーク(試合までの間隔が短い)でトレーニングも少ないので修正はなかなか難しいと思いますが、まずはメンタルのところ、しっかり準備をして次のゲームに臨めればと思います。

──後半のトライの部分は練習から意識していた形でしょうか?

「特別決まったサインプレーではないですが、自分たちの持っている動きの中で空いたスペースにボールをしっかり運べたので、最後のフィニッシュのところはしっかり取り切ってくれました。サポートがいたのでパスでもキックでもいけるという感じでした」

──ペナルティが多かったですが、今後チームで共有したいことを教えてください。

「プレッシャーを受けた中でのペナルティというのはゲームの流れを左右してしまうと思うので、そこの修正ですね。自分たちで変えられる部分も多くあると思うので、まずはペナルティを減らすというのと、あとはラインアウトでもミスが多くあったので、敵陣深く入ったときに自信を持ってスコアにつなげられるように修正したいと思います」

日本製鉄釜石シーウェイブス
吉川遼選手

──釜石での初トライでした。振り返っていただけますか?

「結果オーライという感じで、前半も僕のキャリーでボールを下げてしまったことがあって、自分のリズムになかなか乗れていないところでのトライでした。だからチーム全員で取ったトライです。自分のおかげというよりはチームの、周りのおかげかなと思います。何かしら貢献しようと強く思っていて、それがトライという形になりました。もっとこれから貢献できればと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「ありがとうございました。本日無事に開幕を迎えられたということでうれしく思っております。開幕の試合でしっかり勝ち点5を取れた、アウェイで勝ち点5を積み上げられたというのはチームとしても評価しています。本日はありがとうございました」

──二つ目のトライあたりから徐々に流れが傾いたような印象でした。流れを持ってこられた要因はどういったところにありますか?

「前半は開幕戦ということもあって細かなミスがたくさんあり、なかなか流れがつかめなかったかなと思います。ただ、前半をとおしても細かいパーツのところはさほど悪くはなかったので、しっかりゲームに出て呼吸が合ってきたら勢いがつくだろうなと見ていましたので、特に二つのトライを取ったあと、選手も少し落ち着きを取り戻して、流れがわれわれに傾いたのかなというふうに見ています」

──日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)相手に警戒していたポイントはどんなところでしたか?

「釜石SWさんは強いフォワード、そしてボールを動かすチームですので、その2点はチームとして深くこの1週間で対策してきました」

──今日の一番の手ごたえはどういったところですか?

「得点をしっかり取れたのもありますが、その中で規律の部分、ペナルティの回数はしっかりコントロールできたというところ、そしてディフェンスは1トライしか失点していないというところで、その2点は評価できると思っています」

──リーグ最年少出場記録を達成した高島來亜選手の起用はどのように考えていましたか?

「彼は本日最年少出場記録を更新しましたが、記録を更新させるためにこの場に連れてきたのではなく、プレシーズンとこの1週間、本当に彼自身が高いパフォーマンスを発揮したということで、今日は最後モメンタムをもう一度生み出すところで彼の良さを発揮してほしいと思っていました。それが最後の15分くらいのタイミングかなというところで投入しました」

──高島選手について評価している部分はどういったところですか?

「彼自身、ランニングスキルも高いですし、キックスキルももちろん高いのですが、成長意欲がこのチームの中でもトップクラスに高い。そういう面が本当に彼の一番素晴らしいところだと思っていますので、彼のそういう成長意欲が開幕のメンバー入りを勝ち取ったと思います」

──高島選手への今後の期待を教えてください。

「将来的には日本を代表するような選手になってほしいです。そういう大きなビジョンを持ちながら、彼自身があまり先々を見据えるということよりも、日々成長を重ねてもらうということでチームとしても重要な戦力になると思うので、日々のこれからの彼の成長を期待しています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「徳野ヘッドコーチが話したように、シーズン1試合目、アウェイの試合でこのようないい形でボーナスポイントの5ポイントを取れてスタートできたことをとても誇りに思います。選手たちの試合に対する姿勢にも誇りを持てますし、いいシーズンのスタートを切れたと感じています」

──加入して2シーズン目、昨季よりも成長できた部分はどういったところですか?

「チームとして一番大きな成長は、今日の試合は52-7というスコアでしたが、昨季は釜石SWさんとの試合で44-38のクロスゲームをしていたことからも、スコアだけでも今季大きな成長をしていると感じていただけると思います。そして、今週試合に向けて私たちは、ディフェンスのことに関して話をしてきました。ルースレス(容赦しない、冷酷な)、的確な判断のところに関しては、52点取れたところもしっかり自分たちが体現できたのかなと思いますし、このチームが今後成長していく姿が楽しみです」

──次のホストゲーム開幕戦ではどんな姿を見せたいですか?

「NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と浦安D-Rocksの試合を見ていただければ、GR東葛がとてもフィジカルなチームでオフボールをつないでくるチーム、そして強いセットプレーをしてくるチームという印象を感じていただけたと思います。今週、私たちは試合までの時間が短い中で、しっかりリカバリーをして、試合に来てくださる方に誇りに思っていただけるプレーをグラウンド上で表現していけたらと感じています」

豊田自動織機シャトルズ愛知
高島來亜 選手

──リーグ最年少出場記録を達成しました。率直な感想を教えてください。

「うれしいです。(高卒ルーキーとしてデビューを果たしたことで)いまの高校生や中学生が観ていたら勇気を与えられたのかなと思います」

──デビュー戦の今日は自身にとってどんな日になりましたか?

「最高の1日になったと思います」

──今後の意気込みを教えてください。

「自分の持ち味であるランやキックを見せていきたいと思います。日本代表としても戦える選手を目指したいです」


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