釜石シーウェイブスRFC(D2)

釜石にとって大事な3月。
「釜石魂」を胸に誇りを持って戦う

釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)は3月5日、釜石鵜住居復興スタジアムに、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)を迎え、およそ2カ月ぶりのホストゲームに臨む。そのあとも3月は釜石での試合が続く。

ホストチームのプライドを持って臨むと意気込みを示したのは、プロップの高橋拓也だ。「釜石SWはディビジョン2の中でホストというアドバンテージが一番大きいチームだと思っている。プライドを持って戦う」と、最下位からの巻き返しに向けて燃えている。

高橋拓也は在籍13年目の30歳。今季全試合に出場してスクラムの最前列で体を張り、チームを支えている。「3月は釜石にとって大事なとき。復興の象徴である場所でプレーする意味を胸に戦う」と、言葉に力がこもる。

高橋拓也は岩手県の黒沢尻工業高校を卒業後、すぐに釜石SWに入団。その翌年の2011年、東日本大震災が発生した。当時、選手だった須田康夫ヘッドコーチなどとともに物資の運搬や仮設住宅に住む人たちの引越しの手伝いなど、まさに“ラガーマンの力”で地域を支えた。しかしそのとき、「ラグビーはやらなくていいの? ラグビーをやる姿に力をもらっている」。そう釜石の人に言葉を掛けられたときのことが高橋拓也は忘れられない。「被災してつらいはずなのに、僕たちを応援してくれている。このチームはそんな釜石のみなさんに支えられているからこそ、存在している」。当時19歳の高橋拓也の心に深く刻まれた。

2シーズン前には左足首のじん帯を切る大けがで一時戦列から離れたが、復帰した昨季からここまで全試合出場を続けている。須田ヘッドコーチやスタッフ陣から全幅の信頼を得ているのは、常に自分を変えようと前に進む東北人らしい愚直な姿があるからだ。そんな高橋拓也は2012年、トップイーストリーグでの初出場から、次で公式戦通算90キャップとなる。「決して器用なほうではないので、とにかくがむしゃらにひたむきにやってきた。東北民ならでは、温かく見守ってくれている釜石の人たちのおかげで続けられている」(高橋拓也)。

声出し応援も全席で可能になり、高橋拓也を常に後押ししてきた「釜石コール」もひさびさにスタジアムに戻ってくる。「釜石魂」のプライドを胸に、チームを引っ張る覚悟だ。

(佐々木成美)

2011年3月11日の東日本大震災から12年。「復興の象徴である場所でプレーする意味を胸に戦う」と語る釜石シーウェイブスRFCの高橋拓也選手(左から2人目)


豊田自動織機シャトルズ愛知(D2)

勝負の3月。準備を怠らない男たちは
それぞれの役割でチームに貢献する

いよいよ、勝負の3月に突入する。今月でリーグ戦は終了することから、順位などの面で現実的なターゲットが見えてくる時期だ。今節を含め3試合(第8節の日野レッドドルフィンズ戦は中止)を残す豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)は、釜石シーウェイブスRFC(以下、釜石SW)と対戦する。S愛知としてはここでしっかり勝ち切り、ディビジョン1との入れ替え戦に臨む3位をキープしたい。また、前節の浦安D-Rocks戦から中6日。選手のコンディション維持もカギになる。

今節のメンバーリストに戻ってくるのが、ジェームズ・ガスケルだ。イングランド代表キャップを持つ男は、開幕戦での出場を予定していたが、試合前のウォーミングアップで負傷していた。ロックとしてラインアウトの高さや強さを出せるのはもちろん、同じポジションのヨアン・マエストリとの共演も楽しみな要素の一つ。「開幕戦をとても楽しみにしていたので、離脱は非常に残念だった」と語るジェームズ・ガスケルだが、その間もジムでのトレーニングに励み、出場している選手に自身の経験を伝えることでチームに貢献。試合に出られないもどかしさを感じていたはずだが、チームのため、いつか復帰する自身のため、懸命な準備を続けてきた。

また、プロップの小寺晴大にも注目したい。これまで先発・控え問わず全6試合に出場している欠かせない存在だ。今節は控えからのスタートとなるが「試合に向けて準備することは変わらない。ただ、控えのときは試合の流れや自分の役割を把握することを意識している」(小寺)。その中でも、一番重要なのはスクラム。「前節はファーストスクラムで自分が崩れたので、悔しかった。今節は途中から出てチームに勢いをつけたい」(小寺)と息巻いている。

試合に出るまでの「準備」を怠らない。決して簡単なことではないが、彼らを始めとして、S愛知にはそれを当たり前にできる選手がそろっている。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知のジェームズ・ガスケル選手は身長201cm。同じくロックの202cm マエストリ選手との共演にも注目


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