2023.12.17NTTリーグワン2023-24 D2 第2節レポート(S愛知 36-25 GR東葛)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2(リーグ戦) 第2節
2023年12月16日(土)14:30 パロマ瑞穂ラグビー場 (愛知県)
豊田自動織機シャトルズ愛知 36-25 NECグリーンロケッツ東葛

レメキも脱帽。S愛知、華麗なる逆転劇でその力を誇示

前半はノートライだった豊田自動織機シャトルズ。しかし徳野洋一ヘッドコーチは「私自身、80分トータルでひっくり返せるという自信があった」

試合後、百戦錬磨の日本代表であるレメキ ロマノ ラヴァが脱帽した。

「今日は普通に織機(豊田自動織機シャトルズ愛知。以下、S愛知)が強かったです」

前半はNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)が優勢に試合を進め、17対3でリードしていた。このままGR東葛が逃げ切ると予想したファンも多かっただろう。しかし、S愛知に焦りの気配は見えなかった。

「私自身、80分トータルでひっくり返せるという自信があった」(徳野洋一ヘッドコーチ)

「自分たちのプロセスを信じようということを、試合中、常々言っていた」(ジェームズ・ガスケル)

接触プレーで幾度となく倒されても立ち上がり、反撃のトライを取り切った齊藤大朗。正確無比なキックでゲームを支配したフレディー・バーンズ。会場中に響き渡る声でチームを鼓舞し、ハードワークを続けた松岡大和。サモア代表としての風格を存分に見せつけ、渾身のジャッカルとキックチャージでファンを沸かせたタレニ・セウ。ここでは言及し切れないほど、出場した全選手が各々の役割を全うした。それができたのは、「自分たちにはいま何が必要かを考え、それを遂行できるように準備をしてきた」(藤原恵太)からこそ。昨季から大きく成長した姿を見せたS愛知の選手たちは、最終的に36対25で華麗な逆転劇を演じてみせた。

ほぼ80分間フル稼働だった、1番の渡邊彪亮選手(左)、3番の深村亮太選手(中央)

中でも出色の出来だったのは、渡邊彪亮と深村亮太のプロップ二人。プロップは、スクラムなどのセットピースで重要な役割を担う。その重要性と負荷の高さから、試合の後半には交代を行い、フレッシュな選手を投入して勢いを再点火するのがセオリーである。しかし、彼らがピッチを後にしたのは後半40分のこと。つまり、彼らは交代をためらわせるほどの活躍を見せたというわけだ。徳野ヘッドコーチも「自分たちのセットプレーを一番体現できる二人。非常に頑張ってくれた」と賛辞を送った。

選手の獅子奮迅の活躍に呼応するように、会場に集まったファンも声援を送った。力強いモールやスクラムでその歩みを進めるたびに熱狂度が増していく。現場レベルではただの1勝に過ぎないが、日本ラグビーへの注目度が高まっているいまだからこそ、この勝利の価値はS愛知を取り巻くすべての人にとって大きい。

(齋藤弦)

豊田自動織機シャトルズ愛知

豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(左)、ジェームズ・ガスケル 共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日はホスト開幕戦ということで、たくさんのファンの方々、運営スタッフの方々、そしてNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)の方々に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。ゲーム自体は、前半に少しペナルティが多く、なかなかボールのポゼッションやテリトリーも奪えないという苦しい展開でしたが、後半に修正することができて、得点をひっくり返すことができたというところは本当に良かったと思っています。ありがとうございました」

──苦しんだ前半を受けて、反省点や修正点として話し合ったところは?

「GR東葛さんのフィジカリティの部分でプレッシャーを受けてしまい、レフリーのジャッジに対して適応できなかったところが、ペナルティが多くなった要因だと思います。ただ後半はフィジカリティの部分で負けず、レフリーのジャッジをリスペクトしながらプレーするところを改善できました。あとは、なかなかボールを持つ機会は少なかったですが、ディフェンス自体は大きく崩されることはなかったので、少し守り急いだり、取り急いだりしてしまうところで、もう少し我慢強く、自分たちを信じて戦おうという話をしました」

──逆転可能な点差で前半を終えて、後半に望みをつないだと思います。

「そうですね。この勝利は、多くの方々にとってはすごく驚きのある結果になるのかなと思いますが、私自身、80分トータルではひっくり返せるという自信が十分にありました。これまでのプレシーズンでしてきた準備を、われわれ自身が一番理解して、信じていますので、このような結果になったことは自信になりました」

──プロップの二人をほぼフルタイムまで引っ張りましたが?

「われわれにとってセットピースというのは非常にストラクチャーになっています。自分たちのセットピースを一番体現できる二人が渡邊彪亮と深村亮太だったので、最後の勝負どころで仕掛けるために、可能な限り彼らに仕事をしてもらいたかったです。最後のスクラムからトライも取りましたので、非常に彼ら二人は頑張ってくれたなと思います」

──この勝利をどうつなげていきたいですか?

「今回の勝利で少し背伸びをするということではなくて、われわれが向かうべき道やゴールに対して、しっかりと同じ鼓動を打ちながら進むことが大事だと思います。まだまだ2試合戦っただけなので、これからも道を誤らずに進みたいと思います」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「徳野ヘッドコーチがおっしゃったとおり、前半はディフェンスのところでハードワークできたと思いますが、自分たちがプレーしたいエリアでプレーができませんでした。それに対して、後半はエリアをしっかりとコントロールできて、プレーしたいエリアでプレーできたと思います。GR東葛さんは非常に良いチームで、このようなチームに勝てたことは自信が持てると思います」

──怒涛の追い上げを見せていた中で、キャプテンとしてチームにかけた言葉は?

「試合中は、自分たちのプロセスを信じようということを、常々言っていました。フレディー・バーンズは素晴らしいキックのスキルを持っている選手ですし、ブレイクダウンにおいては、松岡大和だったり、タレニ・セウだったりがしっかりとブレイクダウンをターンオーバーしてくれました。そして、徳野ヘッドコーチもおっしゃいましたけど、渡邊彪亮や深村亮太といった選手がしっかりとセットピースをリードしてくれて、最後のスクラムペナルティを最終盤に取れたところ、あのようなスペシャルな瞬間で良いプレーを発揮することによって、良い形で前に進めたのかなと思います」

NECグリーンロケッツ東葛

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(左)、レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「GR東葛視点からすると、非常に残念な結果になってしまいました。特に先週のパフォーマンスから、同じパフォーマンスを発揮できなかったことは残念に思っています。前半でうまくプレーができないところからでも、17対3というスコアで折り返すことができました。後半はもっと良いスタートを切ろうという話をして、キックオフからのトライは、最高と言えるスタートだったのではないかと思います。ですが、そのあと相手に追いつかれてしまいました。セットピースが必要なレベルで機能しなかったことが要因の一つです。向こうが全身全霊で来たものに対して、こちらがうまく対応できなかった。豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)さんが勝利に値するチームだったと思っております」

──前節と同じパフォーマンスを発揮できなかった要因は?

「スクラムでプレッシャーを受けて、機能しなくなってしまったことですね。前半でのセットピースが特に良くなかったと思っています。そういったプレーがうまくいっていれば、そこからバックスにつないで、ハーフタイムの時点でより良いスコアを収められていたと思います。後半からはセットピースを良くしてフェーズを重ね、そこから得点につなげることが本来したかったことでした。非常にシンプルなことですけれども、それがうまくいかなかったと思います。今日みたいに流れが滑ってしまったことがもう一度起こらないように、リーダーシップのところは今後の課題の一つかなと感じています」

NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノラヴァ キャプテン

「ヘッドコーチが言ったように、ミスが起きたものの前半を17対3でリードして、後半の最初のプレーも良かったですけど、そこから攻められなくなって、コンタクトでも負けて、相手を勢いづかせてしまいました。それで負けてしまったと思います」

──S愛知の強さはどう感じましたか?

「ちゃんとエリアを取れなくて、フォワードの勝負ではS愛知のほうが強かったと思います。ラインアウトとスクラムがちゃんとファンクション(機能)しないと、バックスは何もできなくなります。フォワードにプレッシャーをかけられて、ゲインなどされてしまいました。今日は普通にS愛知が強かったです」

──次節に向けて改善したいところは?

「僕にもっとボールを渡してほしい。というのは冗談ですけど(笑)、もっとセットピースを意識して、チャンスのときにトライを取り切らないといけません。最大19点差をつけていたのに、最終的に11点差をつけられて負けたのはメンタルの部分だと思います」

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