NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン2 第3節
2023年12月23日(土)12:00 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 vs 九州電力キューデンヴォルテクス
NECグリーンロケッツ東葛(D2)
二つの課題解決のため、着目したい二人の若武者
12月23日、NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)は、柏の葉公園総合競技場で行われる九州電力キューデンヴォルテクスとの一戦に臨む。
前節は、後半開始早々のトライによって一時は点差を19点にまで広げ、勝利への道筋を導き出したかに見えた。しかし後半の途中から豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)に試合の流れが傾くと、その流れを断ち切れないまま、25対36の逆転負けを喫した。
今季から就任したウェイン・ピヴァック ヘッドコーチの下、戦術面は確実に前進している。ただ、S愛知戦後に語ったレメキ ロマノ ラヴァの「最大19点差をつけていたのに、最終的に11点差をつけられて負けたのはメンタルの部分だと思います」という言葉を踏まえると、戦術面の構築のみならず、苦しい状況をはね返す屈強なメンタリティーもまた、チームが身に付けるべきテーマであることがうかがえる。
そこで着目したいのが、GR東葛の今後を担う二人の若武者の存在だ。
198cmと日本人チーム最長身を誇る山極大貴は、26歳になった今年、若手から中堅という立場に変わった。以下の彼の言動からは、リーダーの自覚が芽生えつつあることを感じさせた。
「中堅として自分がチームを引っ張る存在にならなければいけない。『ここで』というときにミスが続いていたら、シンプルなプレーをチョイスしたり、『ここは1回落ち着いて、集中していこう』という声かけや雰囲気づくりをしたりしていこうと思います。ロックを引っ張っている二人(サム・ジェフリーズ、ジェイク・ボール)がけがをしてしまったので、自分が試されている気がします」
そしてもう一人が山本耕生。ルーキーイヤーの昨季はチャレンジのシーズンだった。今季は開幕から2試合連続先発出場を果たし、揺るぎない主力選手へのステップアップを期して、その意気込みを口にした。
「試合の流れが相手に傾きかけたときに、ブレイクダウン、ヒット、タックル……、そういうシンプルな部分で流れを引き寄せることができていない。それができれば、前節も勝てたと思うんです。誰かが一発良いタックルをしたり、良いハードヒットができたりしていれば、流れはこちらに傾くと思うので、それができる選手になりたい」
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチがS愛知戦後に語った二つの課題、それは「セットピース」と「リーダーシップ」だった。ロックの山極はラインアウトの要となり、プロップの山本はフロントローとしてスクラムを支える。セットピースで良い流れを生み出し、苦しいときには自分がチームを鼓舞する。彼らがプラスアルファをもたらすことができれば、GR東葛は必ず強いチームへ変貌を遂げるだろう。
(鈴木潤)
九州電力キューデンヴォルテクス(D2)
「このチームを強くしたい」。
その思いの原点は“九州”にあり
連敗スタートとなってしまった九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)。今季初勝利を目指す今節は12月23日12時から柏の葉公園総合競技場でNECグリーンロケッツ東葛とのビジターゲームに臨む。
「このチームを強くしたい。その思いがあってここに来ました」。そう話すのは今季、新加入の王鏡聞だ。第1節では早速トライを決め、第2節ではトライにつながる鋭いタックルを披露。チームで確かな存在感を放っている。
「このチームを強くしたい」という思いの原点は九州にある。王は以前、宗像サニックスブルース(以下、宗像B)に所属していた。自身が移籍でチームを離れてから宗像Bは活動を休止。心の中で寂しさを感じていた。そんな中で再び、九州でラグビーをする縁に導かれた。
「コカ・コーラレッドスパークス、宗像Bが活動休止になり九州KVが九州で唯一のリーグワンのチームになった。開幕戦に3,000人を超えるファンの方々が来てくださって本当にありがたかった。あの声援に応えたい」
九州のラグビーファンが九州KVに寄せる期待とその熱量をひしひしと感じた。加入前に決意した「このチームを強くしたい」という思いはさらに強くなった。偶然にも今季、王とフロントローを組む猿渡康雄、ファイアラガ 望サムエルの二人も宗像Bでのプレー経験を持つ(猿渡はコカ・コーラでもプレー)。活動休止したチームの思いも背負う3人が顔を並べているのも、今季の特徴になっている。
王はそんな九州KVについてこう語る。
「みんながラグビーに必死なんですよ。社員選手が多くて、プロ選手が少ないチームですけど、そういったことにかかわらず、みんながラグビーに対して、必死に取り組んでいる。みんな、優しいし、いいやつが多い。一緒にプレーしていても、信頼できる選手しかいないと感じています」
九州のラグビーファン、そして、信頼できる仲間たちのために。王は最前列で体を張り続ける。
(杉山文宣)