NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第7節
2025年3月1日(土)14:30 柏の葉公園総合競技場 (千葉県)
NECグリーンロケッツ東葛 48-7 九州電力キューデンヴォルテクス
初めて経験した「ラグビーのない世界」。ベテランの復帰は、巻き返しに向けた最高の材料に

3月1日、柏の葉公園総合競技場ではNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と九州電力キューデンヴォルテクス、第6節終了時点で3勝3敗と並ぶチーム同士が対戦した。そしてこの試合では、けがで戦列を離れていたGR東葛のアッシュ・ディクソンが復帰を果たした。
ディクソンは、昨季のD2順位決定戦第3節、浦安D-Rocks戦を目前に控えた練習中に負傷。ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチによれば「比較的深刻な首のけが」だった。ディクソンは病院のベッドの上で2週間を過ごしたあと、治療のためにニュージーランドへ帰国した。
17年に及ぶ選手キャリアにおいて、もっとも重いけがであり、彼自身もラグビーを続けるかどうかを考えたという。だが「ずっとラグビーをしていたので、これは『少し休みなさい』という神様からのメッセージ」とポジティブに受け止め、再びプレーするために治療に専念した。
けがでプレーできなかった期間を、ディクソンは「ラグビーのない世界」と表現する。それは、彼にとってはとても新鮮だった。これまで以上に家族との時間を大切にしたことで、張り詰めていた緊張感から解き放たれ、気持ちの面は完全にリフレッシュされた。さらに、けがが日常生活に支障がないレベルにまで回復したあとは、息子が所属するラグビーチームのコーチを務めた。純粋にラグビーを楽しむ子どもたちのプレーに触れ、ディクソンはラグビーというスポーツの楽しさをあらためて実感した。
昨年5月のけがから約10カ月。ディクソンはグラウンドに帰ってきた。
27対0と、GR東葛がリードした後半18分に、大澤蓮との交代で出場したディクソンは、10カ月のブランクを感じさせないアグレッシブなプレーを見せるばかりか、後半34分には自ら復帰を祝うトライを決めた。最終スコアは48対7、ボーナスポイントを加えたGR東葛が勝利を収めた。
「今日は試合に出ただけで何もしていない。今日は20分だけだったが、もっともっとプレーしたい。(同じポジションの)大澤蓮が良いプレーをしているので、競争もある。来週は試合がないですが、練習からハードワークをして、コーチに成長を見せたいと思う」
ディクソンは満面の笑みを浮かべて試合を振り返り、リーグの後半戦に向けて抱負を述べた。
ピヴァック ヘッドコーチもまた「経験のあるアッシュの復帰は非常に大事なこと。キャプテンのティノ(マリティノ・ネマニ)の助けになってくれると思う」とディクソンの復帰を大いに喜んだ。リーグ後半戦の巻き返しを図るGR東葛にとって、ディクソンの復帰は最高のプラス材料である。
(鈴木潤)
NECグリーンロケッツ東葛
NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ
「5ポイントのボーナスポイントを取れて非常にうれしく思います。前節同様、この試合でも5ポイントを取ることが目標でした。ターンオーバーボールで相手にチャンスを渡してしまうというのが先週の試合だったので、そこを修正することが課題でした。そしてもっと規律を守ってプレーすることを達成しようと今週は取り組み、なおかつ先週の清水建設江東ブルーシャークス戦よりも良いスタートを切りたいという目標もありました。いま挙げた部分の中で、達成できたこともあって、風下の状態から点差を広げることができました。風下の前半の時点で24対0の状況に持ち込めたのは非常に喜ばしい状況なのですが、レッドカードを出してしまったことは残念に思います。カードに関してはマッチオフィシャルの意見と同意しています。
(レッドカード判定を受けた)パリパリ・パーキンソンは体が大きい選手ですが、相手の体の下に入ってしまい、あのように上げて落とす形になってしまったことを、パーキンソン自身もすごく申し訳なかったと、自分の行動を悔いています。試合中に相手選手に謝罪をしまして、試合後にも謝罪に行きました。ただ、14人で戦わなければいけない20分間はコントロールできたと思っていて、選手たちが九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を抑えられるように、非常にハードワークをしてくれたと思います。
後半も、その20分間も勝ち続けて、こういうゲームに持ち込めたことはすごく良かったと感じています。最後の10分、リザーブメンバーが全員出場したあとも、キッキングゲームで九州KVを敵陣側に抑え続けることができたので、全体的に良くなったと思っています。最後に、アッシュ・ディクソンは比較的深刻な首のけがをしまして、しばらくプレーできなかったのですが、この試合で再度プレーができてとてもうれしく思います」
NECグリーンロケッツ東葛
マリティノ・ネマニ キャプテン
「まずは選手たちを非常に誇りに思っています。ラグビーができる、良いアタックができるということを証明した日になったと思います。規律はまだ直さなければいけないところがあると感じますし、九州KVは2週間後に対戦する相手でもありますので、相手のホストゲームでも強度を保てるように集中して臨みたいと思います。ウェイン(・ピヴァック ヘッドコーチ)が先ほど述べたように、(TMOの検証後に)イエローカードからレッドカードに変わった時間も、相手に点を取らせないことができました。自分たちのチームにとってそれができたことが大事で、ディフェンスに誇りをもっているチームなので、ああいう形でゲームをフィニッシュできてとても良かったと思います」
九州電力キューデンヴォルテクス
九州電力キューデンヴォルテクス
今村友基ヘッドコーチ
「まずは素晴らしいグラウンドを用意してくださった関係者の皆さまにお礼を申し上げたいと思います。天候も良く、先週の負けをエナジーにして今日は戦おうと挑みましたが、自滅した部分が多かったと思っています。こちらがやりたいラグビーをNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)さんにやられてしまったかなと思います。これは誰の責任とかではなく、一人ひとりがもう一度、どうしてこういうゲームになったのかを振り返って次に生かしたいと思います」
──15人対14人の時間帯に流れを変えるチャンスがあったと思います。フェーズを重ねた良い攻撃がありましたが、そこでスコアできなかった原因をどのように捉えていますか?
「後半の最初ですよね、あそこでトライを取れていれば……というのはあります。シンプルなエラーや少し我慢できなかった部分や、もう一度振り返ってみないと細かいことは言えないですけど、取れなかったとしてもあそこまでボールを持っていって、我慢していればそのあとに絶対にチャンスは来るところで、敵陣でペナルティをしてしまったところ、そのあたりがこういうゲームになってしまったのかなと。ミスのあとにミスが重なり、一つのミスを断ち切っていかないと苦しい展開になると今日感じました」
九州電力キューデンヴォルテックス
ウォーカー アレックス拓也キャプテン
「まずは本日、試合を開催するにあたってご尽力いただきました関係者の皆さま、本当にありがとうございます。花園近鉄ライナーズ戦の負けから、今週はブレイクダウンのディテールにこだわろうと意識してやってきましたが、先ほどヘッドコーチからもありましたとおり、自滅というか、自分たちから詰め切れなかったところを相手に出てこられて、フィジカルの強さで削られたという感じの試合だったと思います。次の対戦相手も同じGR東葛さんですので、今日の反省点をしっかり修正して、次に向けて気持ちをリフレッシュして、チャレンジャーとしてバトルしていきたいと思います」