2023.12.25NTTリーグワン2023-24 D3 第3節レポート(中国RR 19-34 江東BS)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第2節
2023年12月23日(土)13:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 19-34 清水建設江東ブルーシャークス

1029日ぶりの公式戦復帰と、出場6分後の負傷。それでも、いまなら前を向ける

長いブランクからようやく復帰。今季の奮起に期待したい、中国電力レッドレグリオンズの石渡健吾選手

火が消えかけていた。「もうラグビーはできないと思った」。中国電力レッドレグリオンズの石渡健吾が負傷離脱していた約3年間を思い返す。

入社1年目の2021年2月27日、試合中に膝を負傷した。その後もさまざまなけがが重なって長期離脱。特にヘルニアによる腰痛に苦しめられ、日常生活や仕事にも支障をきたした。「手術しても良くならなくて、復帰の見込みもつかず、まったく時間が解決してくれなかった」

慣れない社会人生活が続く中、支えのラグビーができなくなり、自分自身を見失っていった。「引退を考えていた時期もあった。仕事が忙しくて練習に行けないときもあったし、自分の時間を作ってラグビーに向き合おうともしていなかった」

石渡の両親は、「私たちは見守っていただけだけど……」と当時を振り返る。「もしかしたらラグビーをやめる決断をするほうが簡単だったのかもしれない。でも、やめないで続ける道を選んだんです」。

苦しい日々の中で意識が変わったきっかけは、仲間の姿だった。「後輩の青木(智成)とか呉山(聖道)とか、みんな頑張っているのに、自分は勝手にナイーブになっていて、ダサいなと思うことがあった。ちゃんとラグビーに向き合っていない自分がダサいなって」。

また石渡のラグビー魂に火が灯った。このオフシーズンの結婚を機に環境も変わり、妻の支えもあって生活リズムが改善。仕事の忙しさも落ち着き、真剣に自分と向き合い始めた。腰の痛みに耐えながら体を鍛え上げると、徐々に状態が上向いた。

11月4日の練習試合で実戦復帰し、2週間後の練習試合では約60分を戦い抜いた。プレーすることでブランクの不安もなくなり、グラウンドにラグビーを楽しむ石渡の姿が戻ってきた。

「明日は体が痛いだろうなとか、ハードなことをしてもけがなく終われて良かったなとか。そんな試合後の独特な感覚をひさびさに味わえて、めっちゃ高ぶりました。(練習試合の)試合後の夜は興奮状態で眠れなかった。『まだラグビーができるんだ』と思って」

12月23日、第2節の清水建設江東ブルーシャークス戦で1029日ぶりの公式戦復帰を果たした。「久しぶりに爆発できる」と石渡は誰にも負けない気合を持ってリスタートを切った。

「この3年間のことを考えすぎるとウルっときちゃうので、あまり考えないようにしている。いろいろ考えちゃうと、胸が詰まっちゃうんで。とりあえず、いまの100%で、いまだけに集中していた」

しかし、試合開始6分、持ち味のタックルを見せた際に左ひざを負傷。テーピングをして試合に戻ったが、万全ではなく、無念の途中交替となった。キックオフから30分後、石渡はひとりベンチで仲間の戦いを見つめていた。「戦術的な交替じゃなかったから申し訳なかった。自分としても不完全燃焼だったのでやるせない気持ちでした」。

実質プレーできたのは20分ほど。それでも、「本当に楽しかった。強い相手に何回かタックルに行って、肌で感じて『いけるな』という感覚もあった」と手ごたえ。ラグビーを続けたからこそ、果敢にタックルしたからこそ得られたものがあった。

復帰戦で新たなけがを負ったが、苦しい時期を乗り越えたいまなら、まっすぐ前を向ける。「復帰の目標も見えているし、次どんなプレーをしてやろうかとも思っているので、全然モチベーションが違う。次はプレーできる自分を80分間見せられるように準備するだけです」。

いまの石渡健吾は以前と違う。魂が燃えている。

(湊昂大)

中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「まずはリーグワン関係者のみなさま、清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)のみなさま、本日はありがとうございました。総括としては、選手がゲームプランをしっかり遂行してくれた試合だったと感じています。ただ、個人の細かな規律の部分で、相手に流れを持っていかれたという印象です。とはいえ、選手たちが次につながるゲームをしてくれたと思っているので、今回の反省を次に生かして、またチャレンジしていきたいです」

──競った試合での敗戦ですが、率直な気持ちを教えてください。

「こういった試合は今後もあると思うので、今日は取りこぼしたくなかったです。自分たちのゲームプランや個人の役割を全うしていれば、間違いなく勝利につながった試合だと確信しているので、率直に悔しいです。江東BSさんとはあと2試合しかないので、次は必ず勝利したいです」

──先発でリーグワンデビューを飾った宮嵜隼人選手と東将吾選手のパフォーマンスについて、評価をお願いします。

「宮嵜はかなり落ち着いていて堂々とプレーしてくれました。チームも宮嵜にボールを集めることで『何かやってくれる』、『きちんとゲームを動かしてくれる』と思っていたと思います。前々から鉄のメンタルをしている選手だと思っていましたが、初めての試合で物怖じせず、しっかりパフォーマンスを出してくれました。

東はもう少しボールタッチを増やしてほしいと思いました。彼がボールを持てば、チャンスが来るということを彼自身に自覚してもらいたいと思っています。とはいえ、ボールキャリアーとしては魅力的なプレーをしているので、そこをもっと出していけば、チームにフィットして、さらにパフォーマンスが良くなると思います」

──2024年はどんな年にしたいですか?

「昨季からチームスローガン『Grow Up(成長)』を掲げていて、今日の試合も昨季と比べるとしっかり成長できていると思いました。今日がベースだとすれば、もっといいチームになると思うので、とにかく昨季より勝利したいです。選手自身も『こんなもんじゃない』、『もっとやれる』と思っているはずなので、とにかく勝ち星を増やしていきたいです」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「リーグ関係者のみなさま、江東BSのみなさま、本日はありがとうございました。前半はペナルティをもらったらキックでとりあえず点差を詰めていこうというプランで、それを遂行できたと思います。試合前から規律の部分をしっかりしようという話をしましたが、江東BSさんの強いプレッシャーに押されてペナルティの数が増えてしまい、そこを突かれたのが敗因だと思います。アタックもディフェンスも自分たちのやりたいことが十分出せたと思うので、次節はいかにペナルティの数を減らして、自分たちがこの試合でできたアタックとディフェンスの時間をどれだけ増やせるかにかかってくると思います。試合は悲観する内容ではなかったので、2戦目に向けてまずは体をリカバリーして臨みたいです」

──競り合った試合での敗戦ですが、率直な気持ちを教えてください。

「本当に悔しい一戦です。規律の部分をしっかりしないと、自分たちのいい流れも相手の流れになってしまうので、そこを修正していきたいです。シーズンは始まったばかりなので、この悔しさを糧にして練習していきたいと思います」

──2024年はどんな年にしたいですか?

「とりあえず、勝つ。来ていただいているみなさんと一つでも多くの勝利を分かち合って、一つでも多く喜んでもらえるような試合ができるように、1月6日の次節に向けてしっかりスタートしていきたいと思います」

中国電力レッドレグリオンズ
宮嵜隼人選手

──リーグワンデビュー戦でいきなり初トライを記録しました。

「特に自分がチーム最初の得点を取ろうとは思っていなかったですが、開幕戦で活躍できたのは素直にうれしいです。今後の自信にもなりますし、これからも記憶に残る試合になりました」

──ゴールキックも5本中5本決めていましたが、キックの調子はいかがでしたか?

「今日はいい感じで蹴れていたので、外す気はしなかったです。自分のペースでしっかり蹴ることだけを心がけて蹴りました」

──自身のパフォーマンスを振り返って、いかがですか?

「今日は自分を褒めてあげたいです。でも良かったからこそ、勝てなかったのが悔しいです。もっとチームにいい影響を与えられたかなと思いますし、スタンドオフとしてもっとゲームのテンポをコントロールできていれば良かったと思います」

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスのシアレ・ピウタウ ゲームキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督

「まずは、試合の場を作っていただいた関係者のみなさん、中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)のみなさん、本当にありがとうございました。試合の感想としては、一つ勝つのがこれだけ難しいのかと思いました。中国RRさんのひたむきなディフェンス、ひたむきなプレーを受けてしまったところがあったと思いました。一つ勝つのが本当に難しいと、チームとしても経験になったと思います」

──今季初勝利の率直な気持ちを教えてください。

「勝利はうれしいですし、チームとしても良かったと思います。ただ、昨季はディビジョン2で悔しい思いをして降格したので、いまはディビジョン2に上がって、なおかつ定着する力をつけることを目標にしています。それを考えると、今日の試合はチャンスで取り切れないところもあり、ちょっとモヤモヤした部分はあります」

──前半も後半も先に相手に点を取られる展開でしたが、そこから巻き返せた要因は?

「試合が始まる前に『先手必勝』ということを、いつもしつこいぐらい選手に言っています。今日はそれができませんでしたが、選手たちの努力や頑張りによって巻き返してくれました。7月に始動してから、『どこよりも走ってきた』、『どこよりもキツい練習をしている』という自負があります。中国RRさんも同じように仕事とラグビーの両立をしていると思いますが、われわれもそこに対してプライドを持っているので、そういった意味でオンとオフのハードワークが今回は生きたのかなと思います」

──次の試合は新年ですが、新しい年に向けて意気込みを教えてください。

「現時点でのわれわれの力は見てのとおりの結果だと思います。ただ、成長過程の中で、まだまだ始まったばかりですし、前を向いていくしかないと思います。昨季はホームの夢の島(競技場)で1勝もできず、(今季の)開幕戦も負けています。夢の島には多くのファンが来てくれると思いますので、なんとかみなさんと笑顔で1勝というところを目標に、これから年末年始しっかりハードワークしていきたいです」

清水建設江東ブルーシャークス
シアレ・ピウタウ ゲームキャプテン

「間違いなくタフなゲームになると思っていました。その中でしっかり自分たちの姿勢を見せられたので、本当に選手全員を誇りに思います。チャンスがたくさんあったところを逃してしまったので、次の試合に向けてそこはしっかり修正していきたいと思います」

──今季初勝利の率直な気持ちを教えてください。

「ここまでたくさん努力をしてきて、まだまだ成長過程ではありますけど、1勝できて一安心です。これからも積み上げていきたいと思います」

──前半も後半も先に相手に点を取られる展開でしたが、そこから巻き返せた要因は?

「相手に先に点を取られてもパニックにならなかった大きな理由としては、週を通じてノンメンバーの人たちがしっかり相手を分析してくれたおかげで、慌てずに済んだと思います。だからノンメンバーのおかげでもあります」

──次の試合は新年ですが、新しい年に向けて意気込みを教えてください。

「チームとしてしっかりお互いに高め合って、成長し続けていきたいです。最終的な目標はディビジョン2に上がって戦うことなので、そこに向けてコーチ陣とも一丸となってハードワークしていきたいと思います」

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