2024.03.11NTTリーグワン2023-24 D3 第9節レポート(中国RR 21-22 江東BS)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第9節
2024年3月9日(土)14:00 Balcom BMW Stadium (広島県)
中国電力レッドレグリオンズ 21-22 清水建設江東ブルーシャークス

けがを乗り越えてたどり着いたファーストキャップ。
ルーキーはラグビーに取り組む日々を取り戻した

けがからようやく復帰しリーグワンの舞台に立った、中国電力レッドレグリオンズの北山絢大選手

中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)はリーグワン ディビション3第9節で清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)と対戦。21対22の1点差で敗れた。

後半10分、北山絢大がグラウンドに入った。昨年4月加入のルーキーはけがで出遅れたため、これがジャパンラグビー リーグワンでのデビュー戦。特別な試合でも「いつもどおりの空気を作って、いつもどおりのプレーを心掛けたい」と話していた。試合前の特別なルーティーンはない。ただ、いつもと同じように「いい緊張感」を持ち、23歳のウイングは自然体で試合に臨んだ。

北山は中国RR加入後すぐの夏にひざ痛めると、今季開幕前の昨年12月にけがが悪化して離脱。仕事とラグビーを両立する新しい環境に適応している中で、ラグビーだけが遠ざかっていった。

「長期のけがになると思ったので、かなり落ち込みました。ラグビーができないつらさや葛藤があって、気持ちのコントロールをするのがしんどかったです」

ただ、悶々とした中でも北山を前進させたのはやっぱりラグビーだった。「ずっとラグビーがしたい思いはあったし、僕の土台は全部そこにあるので、毎日モチベーションをキープしてやっていました」と復帰後を見据えて取り組んできた。

約3カ月の離脱を経て今節初めて試合のメンバー入りを果たした。出番は12点差をつけられた後半10分。それまで接戦を繰り広げていたチームの戦いを見ながら「自分が流れを変える」と意欲を高めていた。

「ボールタッチできる数は絶対に少ないと思っていたので、その限られたタッチ回数で結果を出したかった。自分がボールを持ったときには必ずゲインして、インパクトを与えるところは思い切りいこうと思っていました」

1点のビハインドで迎えた後半39分、北山は武器のスピードを生かして相手選手をかわし、鮮やかな突破を見せた。「自信がある1対1のところだったので、しっかり勝負して自分が前に出て後ろにつなげたかった」とチームを大きく押し上げて、逆転のアタックへの機運と観客の声援も加速させた。

中国RRはそのあとも懸命に攻め続けたが、1点差のまま惜しくも敗戦となった。30分間プレーした北山は、「悔しいし、個人的にも絶対に結果を出したいと思っていたので、全然満足していない」と振り返りつつ、「ラグビーができること、試合に出られることに感謝して挑もうと思っていました。やっと復帰できてホッとしました」と心境を明かした。

ラグビーに取り組む日々が戻ってきた。けがを乗り越えたいま、1年目の環境に向き合いながら前に進んでいく。「仕事との両立は難しいけど、自分に与えられた環境の中で、自分がどれだけ全力を出せるか、いかにモチベーションをキープして取り組めるかが、試合にもつながってくる」。ラグビーができる土台はまた整った。北山は次に出る試合も自然体で臨む。

(湊昂太)


中国電力レッドレグリオンズ

中国電力レッドレグリオンズの岩戸博和ヘッドコーチ(右)、西川太郎 共同キャプテン

中国電力レッドレグリオンズ
岩戸博和ヘッドコーチ

「まずは清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)のみなさま、リーグ運営関係者のみなさま、ありがとうございました。試合の総括は、ディフェンスの部分でわれわれがやろうとしていたことは後半の終盤ぐらいまで完璧にできたと思います。あとはスコアの部分で、最後に江東BSさんの粘り強いディフェンスにわれわれが我慢し切れなかったところが一つの敗因になったと思います。ただ、ラインアウトやモールといったフォワードのセットピースの部分はわれわれの強みになったと確信できた部分はあります。次は3週間後と試合間隔が開きますが、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)戦に向けて、またチャレンジしていきたいです」

──1点差を追ってアタックしている中で最後はキックパスが外に流れて試合終了になりました。最後のシーンを振り返ってください。

「江東BSさんにペナルティをしないディフェンスを粘り強くやられましたし、われわれとしても準備しているオプションがいくつかありましたが、(疲弊によって)フォワードの足が削られていたし、バックスの中でも選択肢があったと思います。今回はキックという選択で、それが良かったのか、良くなったのかは分からないですが、そこはしっかり振り返って次の試合に修正したいと思います」

──アタックとディフェンスでの手ごたえを教えてください。

「ディフェンスで言うと、前節の日野RD戦でいいランナーにやられて後手になった部分があったので、(今節は)やられたときの準備という部分が非常に良かったと思います。相手のやりたいことを気持ち良くやらせないようにするディフェンスを今週はフォーカスしてきたので、そこは日野RD戦から成長できていたと思います。アタックの部分はセットピースと、継続してアタックしていけば必ずどこかでスペースができると話はしているので、そこは引き続き次の日野RD戦も同じフォーカスになると思います」

中国電力レッドレグリオンズ
西川太郎 共同キャプテン

「まずはありがとうございました。自分たちのラグビーをしようと試合に臨み、それを80分とおしてできたと思います。ただ、1点差で勝ち切れなかった。それは悔いが残りますが、しっかり自分たちのラグビーができたので、これをベースにさらに成長していけるようにやってきたいです」

──1点差を追ってアタックしている中で最後はキックパスが外に流れて試合終了になりました。最後のシーンを振り返ってください。

「(キックの選択については)結果論だと思います。最後は江東BSさんもペナルティをしない規律の高いディフェンスで、ウチが我慢できずにああいう終わり方になってしまいました。あのゾーンでのアタックは精度を上げて、これから突き詰めていければ、スコアできると思いますし、まずはチーム全体でどうやってスコアするのかというところを、これからも話し合っていきたいです」

──アタックとディフェンスでの手ごたえを教えてください。

「江東BSさんはハンドリングのスキルが高いので、相手のやりたいアタックをさせないように、ウチのディフェンスをしようと試合に臨みました。そこは横とのリンクやコミュニケーションを取って80分間やり続けられたと思います。規律のところはペナルティ自体そこまで多くなかったですけど、まだ改善の余地があると思うので、修正していきたいです。モールはこの試合に限らず、今季をとおしてフォワード陣でいいマインドを持って、いい勝負ができていますし、試合でも自信を持ってモールトライを狙いにいけています。自分たちの武器だと思っているので、そこは継続してやっていきたいです」

清水建設江東ブルーシャークス

清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(右)、シアレ・ピウタウ ゲームキャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督

「まずはこの試合の開催にあたり、ご尽力していただいた関係者のみなさま、ありがとうございました。本当に中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)さんをリスペクトするような試合内容だったと思います。勝って兜の緒を締めるという意味でも、山ほど反省点があると思います。本当に中国RRさんのひたむきなプレーは敵ながら感動すら覚えました。それを見習うところと身を正すところがいっぱいあるので、帰って次の日野RD戦に備えたいと思います」

──風が強く、雨が降ったり止んだりする天候でしたが、影響はありましたか?

「両チームにとって同じ環境ですので、それに関して基本的に(影響は)なかったと思います。本当に、メンタルのところ、フィジカルのところを含めてすべての面で中国RRさんに上回られたと思います。ただ、結果が1点差で勝ったということだけだったと思います」

──ハーフタイムに選手たちにどんなことを伝えましたか?

「7対7の振り出し(という状況)でしたし、いつも選手には『先手必勝』だと言っています。前半は幸い控えも一人しか使っていなかったので、後半はもう出し惜しみせず、最初から行こうと思い、とりあえず後半のホイッスルが鳴った瞬間から一気に行こうという話はしました」

──最後はどちらに転ぶか分からない展開でしたが、どう見ていましたか?

「もちろん厳しい展開でしたし、どっちに転ぶか分らからない状況だったと思います。本当に最後、ただ勝てただけだったと思いますし、今回の試合に関しては中国RRさんを見習うところが山ほどあったと思います。われわれはディビジョン3優勝を目標にチームを作ってきましたが、まだまだだなという反省点を含めて、改善していかないといけないと思います。ただ、勝てたので、しっかり前を向いて次にチャレンジしていきたいと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
シアレ・ピウタウ ゲームキャプテン

「必ずタフな試合になると分かっていました。勝てたものの、フィジカルの部分ではやられてしまってすごく悔しいです」

──風が強く、雨が降ったり止んだりする天候でしたが、影響はありましたか?

「天候というよりも、新しいメンバーが入ってきていたので、そこのコンビネーションをしっかりしていこうと話をしていました。その中でフィジカルのところで負けてしまったのは残念でした」

──後半の入りで意識したことを教えてください。

「前半、後半に限らず、スタートは意識しようと監督からもコーチ陣からも言われていました。ハーフタイムにもそう言ったメッセージをクリアにいただいたので、まずは最初の仕事をしようという話をして臨みました」

──最後はどちらに転ぶか分からない展開でしたが、どう見ていましたか?

「規律のところがすごく重要になると思っていて、ペナルティを与えないというところを最後はやり切れたと思います」

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