2023.12.26NTTリーグワン2023-24 D3 第2節レポート(日野RD 37-24 WG昭島)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン3 第2節
2023年12月24日(日)12:00 太田市運動公園陸上競技場 (群馬県)
日野レッドドルフィンズ 37-24 クリタウォーターガッシュ昭島

昨季の開幕以来となる連勝に導いたのは、「全員で完全に勝ち切った」伝統のスクラム

日野レッドドルフィンズの左プロップ、徳田悠人選手。「スクラムでもモールでも圧倒していこう、とフォワード全員が熱い心を持ってプレーしている」

クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)を迎え、日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)にとって今季初となったホストゲーム。苑田右二ヘッドコーチのもと、ボールも人もどんどん動く「エキサイティングラグビー」を掲げる日野RDの選手たちが群馬県太田市で躍動。日野RDは開幕2連勝を飾った。

前半2分、高野恭二のインターセプトからトライが飛び出すなど、4トライを挙げて試合の主導権を握ったかに見えた日野RD。しかし前半終了間際のプレーではラインアウトから2度、相手ゴールラインギリギリのところまで押し込むもトライを取り切れず、逆にWG昭島の快速ウイング濱副慧悟にカウンターからディフェンスラインを突破され、ラストプレーで7点を返されて30対12で折り返す。後半序盤にはラインアウトからモールを押し切ってトライにつなげたWG昭島が5点を追加。これで2トライ2ゴール差となり、盛り返してきたWG昭島に試合の流れが傾きつつあった。

厳しい流れとなった日野RD。しかし後半の勝負どころでチームを勝利にグッと近づけたのは日野RDのアイデンティティである「スクラム」だった。相手陣5mラインから2mほど手前でペナルティを得ると、スクラムハーフの橋本法史ゲームキャプテンは「フォワードがすごく行けそうな表情をしていて、自信を持っていた。行けるところまで託そう」とスクラムを2回続けて選択。その信頼にガッチリと応えたのが日野RDのフォワード陣だった。

プロップの徳田悠人は「前半は自分たちのスクラムが組めず苦戦していた部分はありました。でも後半に入って、相手うんぬんではなく自分たちのスクラムを組んでいこうと8人全員で意思統一ができた」とその場面について振り返る。「しっかりとトライを取り切れるまでスクラムは何度でも繰り返すぞ、とみんなの気持ちが一つになった瞬間でした」(徳田)。強い意志で組んだスクラムで相手の重圧をはね返す中、橋本が良い形でボールをピックアップしゴールポスト真下に走り込んでトライ。「スクラムを完全に押し切ることができていたので、橋本さんのトライの瞬間は『全員で完全に勝ち切ったぞ』という思いでした」(徳田)。

この試合ではナンバーエイトで先発した“日野のSHOEI”井島彰英も「WG昭島さんは外国人選手の個の力を生かした縦への突破は鋭いものがありました。でも自分たちもコンタクトプレーの部分で良いファイトができて、相手のアタックをしっかり食い止めたり、プレッシャーを掛けてノックオンやノットリリースザボールのペナルティを取れたりとディフェンスの部分でしっかりとプレーできた」と、フォワード陣全体の頑張りに対して胸を張った。

「スクラムでもモールでも圧倒していこう、とフォワード全員が熱い心を持ってプレーしている。その点を常に意識してこれからも戦います」と徳田。この勝利で日野RDは昨季に開幕で2連勝して以来、久しぶりとなるリーグ戦での連勝を手にした。

伝統であるフォワードの強さが日野RDのチーム力をしっかり支えているということを示した、ホストゲームでの勝利だった。

(関谷智紀)

日野レッドドルフィンズ

日野レッドドルフィンズの苑田右二ヘッドコーチ(右)、橋本法史バイスキャプテン

日野レッドドルフィンズ
苑田右二ヘッドコーチ

「まず、ここ太田市でホーム開幕戦を迎えることができて、関係者のみなさまに感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。先週に続いて試合前にコンディション不良の選手が出たりして急にメンバーが入れ替わったりしたのですが、7月から笠原雄太キャプテン、橋本法史バイスキャプテンを中心に取り組んで、本当にチームをドライブしてくれていました。選手には言っていないのですが、開幕1戦目、2戦目はわれわれが今季をスタートする上で大事な試合だと思って取り組んでいました。その2試合を勝ち切ってくれて、選手たちのことを心から誇りに思っています。引き続き、みんなが成長しながら、自分たちの目標を達成できるようにしっかり準備をして、次に向かって一戦一戦頑張っていきたいと思います」

──前半にいきなりインターセプトからのトライがありました。試合の入りから前半戦の動きについてヘッドコーチはどう評価しますか?

「開幕戦の清水建設江東ブルーシャークス戦勝利から1週間、選手たちが良いアチチュード(態度)をキープし、良い努力をしてくれて本当に良い1週間を過ごせました。今日の試合に臨むときには、もうみんなやることが何も必要ないような状況でした。直前でメンバーが変更になるなどはあったのですが、いいパフォーマンスを選手たちがこの試合でしてくれるという予感はありました。みんな自信を持ってグラウンドに立てたと思っています。そこがこの試合で良いスタートを切れた要因だったと思います」

──前半、最後の攻防でトライを取り切れず、逆に逆襲からトライを取られた部分についてはどう捉えていますか?

「あの場面で例えばモールでトライを取り切っていれば、さらに相手のダメージは本当に大きなものになったんですけども、クリタウォーターガッシュ昭島(以下、WG昭島)さんにとっても今日のゲームは落とせない大事な試合だったと思うので、やっぱり必死にプレッシャーを掛けて来ました。あのプレーについては、われわれもいい課題をWG昭島さんからいただけたと思っています。次の第3節、マツダスカイアクティブズ広島戦に向けてしっかり修正した上で、さらに成長していきたいと思います。ゲームを左右する緊迫した場面というのはこれからも何度もあると思います。あのトライを取られた場面で、われわれ日野レッドドルフィンズ(以下、日野RD)の守りを見せ、みんな必死に自陣に戻りながらプレーして簡単にトライを取らせなかった部分は評価できると思っています」

──この試合を前に「コンタクトの接点でのプレーで上回れるかどうかが試合の勝敗を分ける」とヘッドコーチは話していましたが、その点についてはどう捉えていますか?

「WG昭島さんは自陣から積極的にボールを展開してくるチームで、6、7人のボールキャリーが強い選手がおり、その選手に対してはどうしてもダブルタックルをしたり人数を費やさなければならなかったり、という場面がありました。そうすると違う場所にスペースが生まれてくるのですが、選手たちはその中でも本当に良いリアクションというか、緊急的な場面でも運動量をシフトアップして動き続けてくれました。そのあたりの高い意識が勝利につながったと思います」

──最終的に37対24という結果についてはどう捉えていますか?

「先ほども申し上げたように、開幕1、2戦目というのはわれわれ日野RDが今季良いスタートを切る上で非常に重要なゲームと位置付けていました。今回はボーナスポイントを取れなかったですが、2戦で勝ち点9ポイントを取れたというのは非常に良いスタートが切れたと評価しています。交代で出てきたメンバーがスクラムを組む中で良いプレッシャーを相手に与えることでノリ(橋本法史)のトライを生み出すなど、そういう面で誰が出てきてもチームに良いエネルギーを、勢いを与えてくれるチームになっていると思います。この良さを年明けにも続けながら、改善できるところはしっかり改善して、これからも成長しながら目の前の試合一つひとつで勝ち点を積み重ねていきたいと思います」

日野レッドドルフィンズ
橋本法史バイスキャプテン

「ホーム開幕戦ということで、まずは勝利できたことがすごくうれしいです。試合展開としては、前半は自分たちのペースでそれぞれゲームを進められていたのですが、前半の最後に敵陣から一気に持っていかれて、流れは少し傾いてしまったんですけれども、試合をとおしてメンバー全員で戦うという意識で最後の最後は全員で走り切って勝てたことはとても良かったと思っています」

──今日は2トライの活躍でした。トライについて振り返ってください。

「スクラムでフォワードが強いプレッシャーを掛けてくれて、スクラムからボールが出てボールアウトになったところを蹴りました。蹴ったらもう前が空いていたのでトライしたという感じなので、スクラムが良かったおかげだと思います。2トライ目もスクラムからで、フォワードが良い仕事をしてくれて僕がトライを取っただけなので2トライは本当にフォワードのおかげだと思います」

──二つ目のトライは追い上げられる厳しい流れの中、スクラムを2回続けて選択して最後にトライまでつなげました。あの選択についてはどのように考えていたのでしょうか?

「ゲームキャプテンだったので、あの場面でスクラムを選ぶかラインアウトを選ぶかは僕が決めていたのですが、あの時はフォワードがすごく行けそうな表情をしていて自信を持っていたので、フォワードに行けるところまで行ってもらって、仮にそれでトライを取れなくても次の手で取れれば良いと判断し、フォワードにプレーを託しました。そのスクラムからの流れで、たまたま前が空いたので自分が行ったという形です。WG昭島の12番の選手がバックラインのほうを気にしていたので、スクラムを何回も組んでいるうちに、これは行けそうだなと感じてアドバンテージが出たので、そこで思い切って勝負しようということで行きました」

クリタウォーターガッシュ昭島

クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、石井洋介キャプテン

クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ

「前半の入りがうまくいかなかった。ブレイクダウンを支配されてしまいました。そのためWG昭島としてはアタックを継続することが難しくなってきました。後半はミスが多かったので、自分たちでチームを苦しめてしまったのかなと感じています。2試合連続でこういう展開が続いているのは残念です。まずはこのあと1週間で試合に対するわれわれの準備がちゃんとできているか否かを見直していきたいと思います。ポジティブな点といいますか、選手の頑張りも見えていたので立て直していきます」

──前半の開始でいきなりトライを奪われましたが、どう立て直そうと試みましたか?

「あのシーンは日野RDにとってはラッキー、われわれWG昭島にとってはアンラッキーといいますか、インターセプトされていなかったらたぶんわれわれがトライできていた、というシチュエーションだったので、精神的な部分ではそこまでダメージではなかったと思っています。もう1回リセットして、普段どおりプランを変えずに戦っていこうと臨みました」

──前半終了間際の攻防で日野RDの攻撃を守り切り、逆にボールを展開してトライを奪いました。また後半の入りも良かった。その点はどう評価していますか?

「チャンスがあったら確実にトライを奪おう、という点を掲げて取り組んできたので、あの前半最後のトライのシーンは、選手たちが冷静にプレーしてくれた結果だと思います。そこまでの前半は、フィールド上の違う部分で違うアタックをしてしまった部分がありましたし、キャッチアップラグビーという追いかけるラグビーを早めにし過ぎてしまったかなという反省がありましたが、後半は敵陣でラグビーをしようというマインドセットにできたと思います」

──後半戦で盛り返せた点についてどう評価していますか?

「ラインアウトからモールを組んでトライへ、という流れでしっかりトライまでつなげられた、その点はうまくいったと思います。交代で出場した選手がチームに勢いをつけてくれました。前半は日野RDのブレイクダウンでのプレッシャーに少しびっくりしたといいますか、後手に回りましたが、後半はそのプレッシャーにもしっかりと対応できたのでチャンスを生み出せました。最後のパスの精度などフィニッシュについては決め切れるようにこれからも取り組んでいきたいと思います」

クリタウォーターガッシュ昭島
石井洋介キャプテン

「やはり前半のところで、自分たちがやりたいラグビーができなかった。少し焦ってしまって相手にボールを渡してしまい、われわれのラグビーがうまくできなかったという感じです。全体をとおして、自分たちのミスで自分たちを苦しめてしまったという試合だったのかなと思います」

──後半だけ見るとWG昭島が得点差で上回りました。その点は次の試合につながるのではないでしょうか?

「僕たちがやりたいラグビーを後半は体現できました。ランニングラグビーで敵陣に入って、ボールを保持し続ける。そういう点では一つの形が見えましたので収穫ではあったと思います」

──日野RDとは今季初対戦でしたが、実際に戦ってみた印象はどうでしたか?

「かなりアグレッシブなチームであると感じました。80分間をとおしてチームとしてつながって攻めてくるという印象がありました。ブレイクダウンでもそうですし、スクラムを組む前などでもそうでしたね」

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