2024.01.08NTTリーグワン2023-24 D1 第4節レポート(BL東京 24-20 S東京ベイ)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(リーグ戦)第4節 カンファレンスA
2024年1月7日(日)14:30 等々力陸上競技場 (神奈川県)
東芝ブレイブルーパス東京 24-20 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

拾って、キャッチして、抑えて。
勝利の立役者は多種多様なキックに対応した最後の砦

東芝ブレイブルーパス東京のフルバックとして攻守にわたって活躍した松永拓朗選手

東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)は1月7日、等々力陸上競技場でクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)を24対20で破り、開幕からの連勝を4に伸ばした。

S東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチが試合後の会見で「日本ラグビーの良いショーケース」と振り返った試合は、重量級のフォワードが激しくぶつかり合い、インターナショナルレベルのキックが飛び交う、最後まで勝敗が分からない熱戦となった。

昨季の王者であるS東京ベイは、立川理道キャプテンが「キックのプランを持って試合に臨んだ」と言うように、ハイパントやキックパスを駆使して攻撃を展開した。

それに対してBL東京は最後の砦を守るフルバック松永拓朗が奮闘する。前半2分に自陣深くに蹴り込まれたゴロパント(グラバーキック)を冷静に処理すると、3分には22mライン上へのハイパントをクリーンキャッチ。後半18分にはインゴールに蹴り込まれたボールを押さえてトライを許さず、80分間、多種多様なキックに対応し続けた。

S東京ベイの立川は日本代表56キャップ、リアム・ウィリアムズはウェールズ代表95キャップと国際経験豊富な二人との蹴り合いとなったが、松永は「あまり気にせずにやっていました」と笑い、「もっと駆け引きをして、もっとラクに処理できた部分もあると思っています」と、レベル向上を誓った。

松永は前半29分には流れるようなサインプレーからトライを奪い、アタックでもチームに貢献した。

「基本的にリッチー(・モウンガ)がサインのコールをかけます。コーチ陣がしっかり分析してくれて、僕らが信じて遂行するという良い関係性ができていると思います」

昨季は開幕からの4戦で2勝2敗だったが、今季は4連勝。チームが続けてきた努力が結果として表れている。

「自分たちのやっていることが間違いではなくて、それが強みに変わっているのはすごく自信につながっています。どの相手にもトップレベルの選手がいて、トップレベルのラグビーをしているので、一戦一戦大事にしていきたいと思っています」

一戦ごとに自信を深めるBL東京の最後の砦。満足せず、油断せず、さらなる成長を求めて走り続ける。

(安実剛士)

東芝ブレイブルーパス東京

東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(左)、リーチ マイケル キャプテン

東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ

「最初に、試合前に地震の被害者の方々へ黙とうしました。私自身も2011年にニュージーランドのクライストチャーチで地震を経験しております。被災すると、時間が経つにつれて、疲労などで大変な状態になることが分かっています。今日、みなさんで祈ることができたのは良いことだったと思います。

試合については、選手をこれ以上誇りに思うことがないぐらい、しっかりやってくれました。リーチ マイケルを筆頭にプレッシャーを掛け続けて、戦い続けてくれたメンタルがうれしかったです。最初の15分はかなりプレッシャーを掛けられましたが、その中でもやられそうにならなかったことは誇りに思います。後半もラインアウトのディフェンスでプレッシャーを掛けられたのは良かったです。最後にイエローカードがあって(リッチー・モウンガが一時退場)、14人になりましたが、終盤の4分間をリーチ中心に耐えられたのはチームの良い部分を見せられたと思います」

──まだ第4節ですが、埼玉パナソニックワイルドナイツと首位争いをしていることについては?

「当然リーグの結果は毎回見ていますが、1日1日にフォーカスしています。今日を良くして、明日もさらに良くしていく。自分たちのチームではそれがうまく機能しています。4連勝できたのはうれしいですし、選手はそれに値するハードワークをしてくれています。今日を楽しんで、準備の際はまたそれに集中する。スペシャルな人々が集まっているので毎日を大事に、しっかりやっていきます」

東芝ブレイブルーパス東京
リーチ マイケル キャプテン

「たくさんのファンの前で良い試合ができて良かったと思います。震災の被害に遭った方々はたくさん苦しんでいると思いますが、東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)はみなさんのことを考えています。

試合を振り返ってみると、1週間、一貫性を持って準備を実行できたと思います。ラインアウトはリーダーであるワーナー・ディアンズ、ディフェンスは眞野泰地が引っ張ってくれて、コネクションを保った80分間でした。昨季の王者に勝ったことは自信になります。来週の三重ホンダヒート戦に向けて、準備をしっかりと大事にしていきたいと思います」

──ペナルティが少なかったが、意識は?

「BL東京の中でもペナルティをする選手は特定できていて(笑)、トディ(トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ)が個人名を出して指摘して、周りからも厳しい声をもらっているので。練習では藤田(貴大)アシスタントコーチがレフリーをしてくれるのですが、厳しめにしてくれています。ペナルティは本当に痛くて、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)は簡単に自陣に入れてしまうと怖いチームなので、対応は良くできたと思います」

──大きくて強いS東京ベイと戦って、フォワード同士の力関係について感じたことは?

「S東京ベイにも強いランナーがたくさんいて、マッチアップで負けていたら試合には絶対に勝てないのですが、実際に当たってみて強かったです。リーグワンは全体的にコンタクトのレベルがすごく高くて、テストマッチに近いフィジカルになっていると思います。フォワードはパックとしてスクラムもそうですし、接点でドミネート(圧倒)できるように自分から体を当てにいく。接点で負けたら終わりと考えていました」

──開始直後に苦しい時間がありましたが?

「(前節の)コベルコ神戸スティーラーズ戦(46対39で勝利)も最初の10分間はすごいプレッシャーを受けました。『耐えろ!耐えろ!』と声を掛け合って、タックルして立ち上がることを繰り返しました。相手はどんどん攻めてくるのでそこを耐えよう、と。それが楽しかったです。(プレッシャーを受けてしまうのは良いのですか?)それがラグビーです。BL東京が最初から攻めるか、相手が攻めてくるか、どちらの状況もあるので。全部の局面で勝つことはできません」

──終盤の4分間にボールをキープした理由は?

「正直、ミスですね。4分間のあの攻め方はやっちゃいけないと思います。残り1分半ぐらいでリーダーがコールしてからキープする戦い方にするつもりでした。良い勉強になったと思います。ハーフウェイライン付近で中途半端な位置だったということもありますが、ロッカールームに帰ってリーダー陣で反省しました。次に同じようになったときにどうしていくか考えます」

──ご自身のパフォーマンスは?

「4戦目で調子は上がってきています。体もフィットしてきて、良い感じに仕上がっています」

──接戦が続いていますが、質の違う接戦を勝てている要因は?

「こういう試合はリーダーシップが出る試合だと思います。9番、10番、僕でどうまとめて、どう同じページを見るか、どうエクスキューション(遂行)するか。練習からシナリオを用意して、それを実行して、そのシチュエーションが試合で起こることもあるので良い準備になっています。勝てているのは試合中のリーダーシップが機能しているからだと思います。また、グラウンドにいるサポートスタッフのダン・ボーデン バックスコーチと藤田アシスタントコーチのコミュニケーションは世界一だと思っています」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(左)、立川理道キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「最後の状況一つで勝敗が変わったかもしれない試合で、日本ラグビーの良いショーケースと言えるような試合になりました。前半はプランどおりに遂行して、得点もコントロールできたと思っています。後半は腕相撲のような状況で、特に最後の5分は一つのプレーが勝利につながるかどうか、という大事な場面でした。いつも言うことですが、接戦でどう勝つのか、プレッシャー下でどれだけできるのか、ということを振り返っていきます。選手は80分間、一生懸命努力してくれました」

──フィジカルで相手チームが対抗してくる中、上位に浮上できない理由は?

「ほかのチームも接点のレベルが上がっていますし、特にBL東京さんはいつもコリジョン(衝突)や接点で強いイメージがあります。前節に比べたらオフフィートなどの反則を取られたシーンもありましたが、それも含めてラグビーです。不満は言いません。立川理道キャプテンが言ったように、プロセス、選手を信頼して、どう立て直すかを楽しみにやっていきたいと思います」

──差を分けたのは規律の部分かと思いますが?

「ペナルティからエリアを取られてプレッシャーを掛けられました。昨季はフェアプレー賞を受賞しましたし、規律はいつでもチームとしてプライドを持ってやってきたところではあります。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)周辺の判断は課題です」

──新加入のデイン・コールズ、リアム・ウィリアムズに期待することは?

「デイン・コールズは練習からスクラムでハードワークしてくれて良かったですし、二人とも良くなっています。リアム・ウィリアムズはシステムの理解度が高まって、カウンターアタックなどで相手の脅威になっていたと思います」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン

「フラン・ルディケ ヘッドコーチが言ったように最後に勝ち切れなかったのは悔しいです。勝てなかった理由としては、前半から大事な局面でポイントを取れないこともありました。年末の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦(19対23で敗戦)に続いて僅差で負けてしまっているのは、負けてしまうだけの理由があると思うので、チームとして振り返りながら、良い試合で満足せずに勝ち切る力を蓄えて、次の試合には勝ちたいと思います」

──キックを多く使っていましたが、どのようなプランで試合に臨みましたか?

「キックのプランを持って試合に臨んだので、ちょっと多かったかなと思いますが、うまくいったと思います。相手の強いフォワードを下げたい、ウチの大きなフォワードを前に出したい、という狙いがありました。キックを含めていろいろなバリエーションを使って前進したいと考えていました」

──最後の4分間に相手がボールをキープしましたが、ディフェンスの狙いは?

「ボールをどう取り返すかというところで、フォワードが頑張っていました。そこに関しては、BL東京さんがしっかり4分間保持したので、なかなか取り返せなかったのかなと思います」

──試合前に、ディフェンス面での対策をしていると話していたが手ごたえは?

「ディフェンスに関しては静岡BR戦もしつこくできていました。東京サントリーサンゴリアス戦(26対52で敗戦)の課題を修正して、モールディフェンスもそうですし、前半のゴール前のディフェンスも良かったと思います。アドバンテージを与えた上でのキック処理のミスなど、トライの取られ方が良くない場面もありましたが、全体としては良かったと思います。ブレイクダウンの判断は修正したいです」

──リーグワンでは初めてスタンドオフで出場でしたが?

「僕、元々10番だったんですよ(笑)。イメージが12番過ぎると思いますが、意外とできたな、と。ゲームの局面ではミスもしましたし、僅差で勝てなかった試合は10番の責任は大きいと思うので、勝ち切れるような10番にならないといけないと思います。感触は良かったです」

──連覇を狙うシーズンで1勝3敗となり、プレーオフトーナメント進出に向けて気になるところでは?

「結果がついてこないといろいろな面で不安になると思いますが、まだラウンド4なので、先を見過ぎずに自分たちがやるべきことを明確にやっていくことが大事だと思います。その中で結果がついてくればうれしいですし。正直、苦しいシーズンにはなっていますが、その先にある勝利や、小さな喜びを見つけていきながら、最終的に勝てれば良いのかなと思います。苦しくないと勝てないと思うので、苦しみをしっかりみんなで味わいながら、最後には勝ちたいと思っています」


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