2024.01.28NTTリーグワン2023-24 D1 第6節レポート(静岡BR 50-12 花園L)

NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 ディビジョン1(交流戦)第6節
2024年1月27日(土)13:00 ヤマハスタジアム (静岡県)
静岡ブルーレヴズ 50-12 花園近鉄ライナーズ

クワッガ・スミス長期離脱が判明後の試合で
静岡BRに見られた二つの大きな収穫

開始20秒でジャッカルを決めてみせるなど活躍した静岡ブルーレヴズの庄司拓馬ゲームキャプテン

今季3試合目にしてようやくホストゲーム初勝利を飾った静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)。過去2戦はどちらも悔しい逆転負け、南アフリカ代表で静岡BRのキャプテンも務める大黒柱のクワッガ・スミスが負傷で長期離脱といった不安要素がある中で、50対12という快勝を収めた意味は非常に大きい。

またこの試合では、そのほかにも二つの大きな収穫があった。

一つは、クワッガ・スミスと同じフランカーの位置で今節はゲームキャプテンを務めた庄司拓馬の活躍だ。

ジャッカルやターンオーバーで傑出するクワッガ・スミスが抜けたことで、試合前には「自分がジャッカルを取ります」と語っていた庄司は、開始20秒でいきなりジャッカルに成功。これでチームが勢い付いてターンオーバーの回数も増え、庄司自身も前半だけで2回のジャッカルを記録した。

さらに前半15分には対面の相手をはじき飛ばしながらラインを抜け出し、きっちりとオフロードパスをとおしてチャールズ・ピウタウのトライ(チーム2本目)につなげた。

「最近はボールを持つ機会が少し減っていたので、ああいうふうにゲインしてトライにつなげられて良かったです。クワッガ(・スミス)の代わりではないですけど、自分らしいプレーを今日もできたので、引き続きやっていけたらと思います」と庄司は振り返る。

クワッガ・スミスの不在を感じさせない戦いができたことについて日野剛志は、「チームのみんなが意識高くやっていたし、庄司が本当にいい仕事をしてくれた」と言う。新たな日本人リーダーの頼もしさは、静岡BRの目指す上位進出に向けて大きな光明となった。

もう一つの収穫は、今節の目玉企画だった「磐田市中学生一斉観戦事業」が大成功したことだった。地元磐田市内すべての公立中学校に通う2年生、約1,500人を招待した今回の企画。バックスタンドの一角が中学生で埋まり、試合前のウォームアップから選手たちの一挙手一投足に新鮮な反応があった。ヤマハスタジアムは今までと違う活気にあふれた。

地元の中学2年生、約1,500人を招待した企画も大成功だった

ラグビーを生観戦するのが初めての生徒が多く、試合では大きなゲインや激しいぶつかり合いが見られるたびに歓声が沸き上がり、中学生たちがラグビーの迫力や楽しさを満喫していることが記者席にも十分伝わってきた。当然それは選手たちにも確実に伝わっていた。

「ラグビーのことをそれほど知らない子たちでも一緒に盛り上がってくれたあの雰囲気がすごく新鮮で、微笑ましいというか、うれしかったですね。盛り上がる瞬間には一気に若い力がワーッとはじけるのが聞こえてくるので、僕らにもすごく力にもなりました。これをきっかけに、また観に来たいという気持ちにつながってくれればうれしいですね。僕自身も招待シート(『ひのたけシート』)をやっていますが、子どもが生のスポーツを体験する機会を作るのはすごく大事だと思っているので、とても良い企画を立ててくれたと思いますし、なおかつ勝ててよかったと思います」(日野)

中学生にとって、もっともっわかりやすく盛り上がれるトライシーンを静岡BRが8回生み出し、試合後もあいさつに向かった選手たちに心からの祝福が贈られた大勝劇。これも今後のファン拡大につながる大きな一歩となった。

(前島芳雄)

静岡ブルーレヴズ

静岡ブルーレヴズの藤井雄一郎監督(右)、庄司拓馬バイスキャプテン

静岡ブルーレヴズ
藤井雄一郎監督

「前回の試合で最後の最後に負けてしまったので、(シーズン)前半の(「クロスボーダーラグビー2024」による)中断前でしっかり勝って終わりたい、(勝ち点の)ポイントも取って点数も取って終わろうということで(今節に臨みました)。点も取れましたし、5ポイントも取れたので、良かったんじゃないかと思います」

──立ち上がりからターンオーバーがうまくできていたと思いますが、どういうところが良かったですか。

「そうですね。花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)さんは今までずっと負けていたということもあり、きっとあそこからアタックしてくるだろうということで。最初は庄司(拓馬)が取ったんですけど、ちょっとルーズなところをしっかりジャッカルできました。何が良かったというよりは、いつもやっていることがしっかりできたのかなと思っています」

──今日はオフロードパスも多く成功していたと思います。何かテコ入れはされたんですか。

「いえ、練習でずっとやっていたのと、裏に出られるチャンスはけっこうあると思っていたので、そういう意味で体が半分、あるいは全部がディフェンスの向こう側まで行けていました。そのぶん、オフロードを使えるチャンスがあったと思っています」

──欠場したクワッガ・スミス選手は長内転筋腱断裂で全治約5カ月という、シーズン中に戻るのが難しそうなリリースが出ましたが、その影響はありましたか?

「クワッガ(・スミス)が出られないぶん、どこかでもう一人外国人選手を使えることもあるでしょう。クワッガの持ち味はチームとして出せないかもしれないですが、庄司もずっとリーダーとしてやっていますし、チームとしてやることに何も変わりはないので、特に彼がいないからどうのこうのとは思っていないです」

──そういう意味では庄司選手もジョーンズリチャード剛選手も良いプレーを見せていたと思いますが?

「そうですね。今日もボール際に二人とも行っていましたし、アタックもすごく良かったと思います。そのぶん、例えばサム・グリーンが出られるなど、他の外国人選手を使えるので、チームとしてトータルではそこまで不安視はしていないです」

静岡ブルーレヴズ
庄司拓馬バイスキャプテン

「藤井監督が言ったとおりで、良い流れで試合を運べたと思います。その中でも、前半の初めのところや、後半のスクラムというところは課題があると思うので、そこはクロスボーダーマッチの関係で試合がない1カ月で調整していきたいと思います」

──立ち上がりからターンオーバーがうまく取れていたと思いますが、どういうところが良かったですか?

「相手が自陣から継続的にアタックしてくるところを、静岡BRとしてはしっかり我慢して崩れずにディフェンスできました。そこで僕やほかの選手のジャッカルでターンオーバー、というシチュエーションが増えたと思います。特別何かをやったというよりは、自分たちのスタイルを貫きとおした結果、ああいうターンオーバーが生まれたと思っています」

──今日は中学生がたくさん観に来ていました。新鮮な声援があったと思うんですが、どう感じましたか?

「アップのときからずっと中学生の一団のところが盛り上がってくれていて、新鮮な気持ちでプレーすることができました。試合が終わったときもしっかり歓声が聞こえて。全体的にこれが広がっていったら、もっともっとラグビーの会場が良くなっていくんだろうなと感じました」

──クワッガ・スミス選手が欠場することをどう受け止めて臨んだのでしょうか?彼からこの試合に先立って選手へのメッセージは何かありましたか?

「クワッガは世界レベルのすごい選手ですし、一人でペネトレイトできるような選手ですけれど、自分たちはプレシーズンでクワッガがいない中でも、しっかり“レヴズスタイルをやりとおす”という練習をしてきたので、クワッガがいない不安感というのはあまり抱えずに試合に挑むことができました。クワッガは、『早く帰ってこられるように頑張るので、南アフリカから応援しています』というようなメッセージをくれました」

花園近鉄ライナーズ

花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(右)、野中翔平キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「今日はありがとうございました。試合について、かなり得点差は開きました。前半はあれぐらいのゲームになって、後半にインパクトプレーヤーが入ったときに競った試合になるということを想定していたんですが、レッドカード、シンビンなどが出て、私たちのリズムで戦うことができなかったというのが今日の試合でした。そこまではプランどおりにいっていたので、こういうこともあるかと思いましたが、規律の守れない部分については、まだ私の指導が徹底されていないということを感じてしまった試合でした」

──今日は今までと違うメンバーで挑まれたと思いますが、どういう意図があったのか?その意図は達成されたのか、教えていただけますでしょうか?

「静岡BRさんは非常にスクラムが強くて、ここというときにはスクラムでペナルティを取れるような、リーグワンの中でも一番のスクラムを持っています。私たちにもアンドリュー(・マカリオ)というフッカーがいて、三竹(康太)という選手もかなり優秀なので、その布陣でスクラムでは壊れないようにして、そこからセットを安定させた中でディフェンスもアタックもしっかりやっていこうというのが前半でした。

後半においては、ランナーの(セル)ホゼ選手や(パトリック・)タファ選手、それにヘンドリック(トム・ヘンドリクソン)も入れて、ボールを動かすときに、起点になるところとランナーをうまく活用ができたら私たちのペースに引き込めるというプランニングは考えていました。ですが、そこまで到達しないで人数は(イエローカードで)減るわ、戻ってきたと思えばまた人数が減るというような形で、自分たちで自分たちの首を絞めてしまったというのが、今日の試合の流れでした。それが、普通どおりに押し返して、押し戻してというような形の、テニスで言うとラリーみたいなことができれば、もっと競った面白い試合になったと思っています」

──やはり一番大きな敗因は人数が減ってしまったところになるでしょうか。

「そうですね。ここからもう一段ペースを上げようと思ったときに自分たちで崩してしまったというところはありました」

──今日はベテランの松岡勇選手をスタートで起用しましたが、その意図と、選手のパフォーマンスをどのように感じられたでしょうか?

「エナジーがなくなってくると少し精度は落ちてきますが、やはりスタートからのラインアウトを含めて、すべてにおいて平均以上のプレーをするというプレーヤーなので信頼して出しました。出ていた時間についてはそれをやってくれたように思います。一つ二つのミスはしょうがないと思っています。私たちのチームの柱でもありますし、エナジーをくれる選手でもありますので。今日出た部分においては、しっかり自分の仕事をやってくれたんじゃないかと思っています」

花園近鉄ライナーズ
野中翔平キャプテン

「本日はありございました。僕もヘッドコーチと同じく規律の部分……ただアタックで今まで以上に良い局面もあったと思っています。ボールキープの時間を長くするところと、我慢強いディフェンスができるチームにならなきゃいけないという課題を今日学ぶことができました。ディフェンスではちょっと我慢し切れないというか、強い相手に対して二人でタックルに行こうと試合前に話していたんですが、1対1の局面を作られることが多くて、そこでラインブレイクされて乗られて、そのままトライを取られるシーンが何度かありました。そこのディフェンスの枚数を増やして、しっかりダブルで当たり続けるようにならないといけません」

──良い局面のアタックができたということですが、具体的にどういう部分が良くなったと感じられましたか?

「15番より外にボールをしっかり運べてゲインラインを切れていたところです。今までもそこにボールを集めたかったんですけど、なかなか運び切ることができずに、真ん中で当てて、当てて、簡単なミスでターンオーバーされるというのが多かったです。しっかり外まで持っていってゲインラインを切るという流れが作れました。特に最初の10分がそうですし、それができた良い時間帯もあったと思っています」

──スクラムでは危ないところでペナルティを取った場面もありましたが、実際に押し合ってみて感触はいかがでしたか?

「やっぱりすごく強いですね。ラグビーを知っている人なら誰もが静岡BRさんのスクラムは強いと思っているでしょうし、そのとおり強かったです。ただ、特に後半のメンバーでは松田(一真)というフッカーが入ってきまして、彼は久しぶりの試合でした。そこで成果を出すというのはすごく難しいと思うんですが、その中でも1番と3番を試合中ではコントロールしながら、トークしながら解決してペナルティまで取り切ったので、一人だけの力ではないですけど、この松田選手の活躍というのが、スクラムの勝利を導いたと個人的には思っています」

──先発した松岡選手と一緒にプレーしていかがでしたか?

「チームを引っ張るという役割の中で……安心します。マイナスイオンが出ているんで、勇さんからは。すごくリードしやすいですね。そんなに口数が多い人じゃないんですが、本当に体で見せるというか、“近鉄と言えば松岡勇”というプレーヤーだと思っているので、リスペクトしながらチームがもっともっと良くなるように一緒に頑張っていきたいと思っています」


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